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大規模英文データ収集・管理術 第34回

2012年 10月 1日 月曜日 筆者: 富井 篤

(6) 数量表現別・1

今回から3回にわたって「数量表現別」を取り上げていきます。「数量表現」というのは、もちろん「数」と「量」に関する表現ですが、ただ、それだけではなく、「数」という概念として取り扱う「表現」と、「量」という概念として取り扱う「表現」とがあり、これが、英語と日本語とでは、厳密さという意味で、全く違っています。そこに大きな難しさ、厄介さがあります。
「トミイ方式」では、「数量表現」を次の3つに「中分類」しています。

1 数量表現の基本パターン
2 数量表現のスタイル
3 各物理量の表現

1 数量表現の基本パターン

これを今回取り上げます。数量表現を構成する各要素、すなわち、数値、単位、物理量、名詞の4つをどのように組み合わせて「文」や「句」を構成するかについて記述している分類です。

2 数量表現のスタイル

これは次回(第35回)で述べるもので、基数詞、序数詞、単位、分数、小数、数量表現周りの語句、以上・以下、超え・未満などにつき、和訳する時ではなく、どちらかというと英訳する際の重要なルールなどについて説明している分類です。

また、ここでは、「数量表現」を単に分類して解説するだけではなく、上述した、「数」および「量」という概念として取り扱う「表現」の違いにもスポットライトを当てて分類しています。

3 各物理量の表現

これは第36回で扱います。温度、湿度、速度、圧力、電圧、電流、価格、高さ、幅、長さなど、重要な物理量を79個取り上げ、そのそれぞれを、1 数量表現の基本パターンに基づき、分類しているものです。

1 数量表現の基本パターン

「トミイ」方式では、これをさらに次の4つに「小分類」しています。ついでに、それぞれの「小分類」に対して「細分類」まで表示してあります。「小分類」は(a)、(b)、(c)、で「細分類」は(i)、(ii)、(iii)、で表示してあります。

(a) 何々は何々である
 (i) ……は×□である
 (ii) _____の……は×□である
 (iii) _____は……が×□である

(b) 何々の(が)何々
 (i) ……が×□の_____
 (ii) ×□の……
 (iii) ×□の_____
 (iv) ×□(単独の形)

(c) 何々は何々もある[何々しかない]
 (i) ……は×□もある[何々しかない]
 (ii) _____の……は×□もある[×□しかない]
 (iii) _____は……が×□もある[×□しかない]

(d) 何々もある[何々しかない]何々
 (i) ……が×□もある[×□しかない]_____
 (ii) ×□もある[×□しかない]……
 (iii) ×□もある[×□しかない]_____
 (iv) (最大[少、小、高、低、など])×□も[×□しか]

ここで、×は数値を、□は単位を、……は物理量を、_____は名詞をそれぞれ表わしています。

(a)と(b)は通常の数量表現を表わしており、(c)と(d)は、驚き、嬉しさ、失望、困惑など、感情を表わす数量表現を表わしています。そして、(a)と(c)は、それぞれ数量表現全体が完全な文になっており、(b)と(d)は数量表現が文の中の一部となっています。

それぞれの「細分類」に対する対応英語は下記の通りです。対応英語ですからこれを「分類」とは言いませんが、対応英語が2つ以上あるものもありますので、これを便宜上、「細々分類」と呼び、(1)、(2)、(3)、で表示しています。

(a) 何々は何々である

(i) ……は×□である
 (1) …… is ×□.

(ii) _____の……は×□である
 (1) …… of ____ is ×□.
 (2) ____ …… is ×□.
 (3) ____ has a …… of ×□.

(iii) _____は……が×□である
 (1) _____ is ×□ in …….
 (2) ____ is ×□ ===.

注:…… は物理量ですので名詞ですが、時には、その物理量を形容詞で表現することもあります。=== がその形容詞形です。例えば、lengthに対するlong,heightに対するhigh,depthに対するdeepなどがそれです。

(b) 何々の[が]何々
(i) ……が×□の____
 (1) 数量語句 + 名詞
  ① ×□ …… + ____
  ② ×□ === + ____
  ③ ×□ + ____

 (2) 名詞 + 数量語句
  ① ____ + ×□ in ……
  ② ____ + ×□ ===

 (3) 名詞+他の語句+数量語句
  ① ____ +  of + ×□ in …… [===]
  ② ____ +  having + a …… of ×□
  ③ ____ + 範囲語 + ×□ in …… [===]
 ここでは、「極細分類」まで使っています。

(ii) ×□の……
 (1) 一点の物理量
  ① a …… of ×□
  ② a ×□……

 (2) 範囲のある物理量
  ① ……s (of) up to ×□
  ② ……s (of) down to ×□
  ③ ……s below [under] ×□
  ④ ……s over [above] ×□
  ⑤ ……s 範囲語 ×□
  ⑥ ……s of ×□ or [and] 形容詞の比較級

 (3) 範囲ある物理量の一点
  ① a …… of from ×□ to y□
  ② a …… of ×□ or 形容詞の比較級
  ③ a …… (of) up to [down to] ×□
  ④ a …… of more [less] (または形容詞の比較級) than ×□

(c) 何々は何々もある[何々しかない]
(i) ……は×□もある[何々しかない]
 (1) …… is as ~ as ×□.

(ii) ____ の……は×□もある[×□しかない]
 (1) …… of ____ is as ~ as ×□.
 (2) ____ …… is as ~ as ×□.
 (3)  ____ has a …… of as ~ as ×□.

(iii) ____ は……が×□もある[×□しかない]
 (1) ____ is as ~ as ×□ in …….
 (2) ____ is as ~ as ×□ ===.
 (3) ____ is as ~ as ×□.

(d) 何々もある[何々しかない]何々
(i) ……が×□もある[×□しかない]____
 (1) 名詞+数量語句
  ① ____ + as ~ as ×□ in ……
  ② ____ + as ~ as ×□ ===
  ③ ____ + as ~ as ×□
 (2) 名詞+他の語句+数量語句
  ① _____ + of + as ~ as ×□

(ii) ×□もある[×□しかない]……
 (1) 物理量 + 数量語句
  ① …… + as ~ as ×□
 (2) 物理量+他の語句+数量語句
  ①…… + of + as ~ as ×□

(iii) ×□もある[×□しかない]____
 (1) 数量語句が物質名詞を修飾
  ① as ~ as ×□ +  of + _____
 (2) 数量語句が普通名詞(可算)を修飾
  ① as ~ as ×□ +  _____

(iv) (最大[少、小、高、低、など])×□も[×□しか] 
 (1) 動詞の目的語としての用法
  ① 動詞 + as ~ as ×□
 (2) 前置詞の目的語としての用法
  ① 前置詞 + as ~ as ×□

基本パターンは以上です。数量表現は、文であっても句であっても、ほとんど上に述べて来たパターンの中に納まるのではないかと思います。

最後に、基本パターンの中で重要なパターンを3つほど、例を挙げて説明します。

その1 have動詞を使った表現

「(a) 何々は何々である」の中で、「(ii) _____の……は×□である」の中に英語の表現方法には次の3つがあると説明しました。

(1) …… of ____ is ×□.
(2) ____ …… is ×□.
(3) ____ has a …… of ×□.

例えば

水の沸騰点は100℃である.

という日本語を英語で書く場合、多くの日本字は、「(1) …… of ____ is ×□.」を使って

The boiling point of water is 100°C.  …………①

と書きます。もちろん、これで間違っているわけではありませんが、ネイティブは、よく「(3) ____ has a …… of ×□.」を使って

Water has a boiling point of 100°C.  …………③

と書きます。③ のように発想できるようにしておくと、便利な場合が非常に多いです。

その2 1点の物理量の表現

例えば

100℃の温度

という場合、「(b) 何々の(が)何々」、その中の「(ii)  ×□の……」、さらにその中の「(1) 一点の物理量」の中にある「① a …… of ×□」を使って

a temperature of 100°C

と書きます。これは基本中の基本で、必ず正確に覚えておかなければならない表現です。すなわち

不定冠詞 + 物理量(単数形) + of + 数値 + 単位

という5つの要素を、正しい語順で正しく書かなければなりません。

その3 範囲のある物理量の表現

例えば

100℃までの温度

という場合、「(b) 何々の(が)何々」、その中の「(ii) ×□の……」、さらにその中の「(2) 範囲のある物理量」の中にある「⑤ ……s 範囲語 ×□」を使って

temperatures up to 100°C

と書きます。これも基本中の基本で、必ず正確に覚えておかなければならない表現です。すなわち

無冠詞 + 物理量(複数形) + 範囲語 + 数値 + 単位

です。

次回は、2 数量表現のスタイルをお届けします。

【筆者プロフィール】

富井篤(とみい・あつし)
技術翻訳者、技術翻訳指導者。株式会社 国際テクリンガ研究所代表取締役。会社経営の傍ら、英語教育および書籍執筆に専念。1934年横須賀生まれ。
主な著書に『技術英語 前置詞活用辞典』、『技術英語 数量表現辞典』、『技術英語 構文辞典』(以上三省堂)、『技術翻訳のテクニック』、『続 技術翻訳のテクニック』(以上丸善)、『科学技術和英大辞典』、『科学技術英和大辞典』、『科学技術英和表現辞典』(以上オーム社)など。

2012年 10月 1日