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大規模英文データ収集・管理術 第40回

2012年 12月 24日 月曜日 筆者: 富井 篤

7 英文データの実践的収集方法(カード方式)

前回までは、「トミイ方式」の分類について説明してきました。今回から、英文データを実際に収集し、それをどのように分類し、収納するか、その実践的手法について述べていきます。

この連載の第10回(2011年10月24日公開)に述べたように、「トミイ方式」は

1 赤線時代
2 ノート時代
3 カード時代
4 コンピュータ時代

というようにいくつかの時代を変遷してきました。現在では、10数年前から「コンピュータ時代」に入っているわけですが、「カード時代」の方式を完全に捨てきることができず、TPOに合わせて、いまだに、適宜、「カード方式」も使っています。そのため、ここでは以下に示すように、7回にわたって「カード方式」と「コンピュータ方式」の両方について述べていきます。

(1) カード方式 (第40回から第43回まで)
(2) コンピュータ方式 (第44回から第46回まで)

この「カード方式」というのは、30数年前から「トミイ方式」に取り入れ、10数年前にその主体が「コンピュータ方式」に移行した後も、これから順次述べるいろいろな理由により、長い期間「コンピュータ方式」と併用してきました。

いかなる方式とも同じように、「カード方式」にもさまざまな変遷があります。以下は、この連載の第11回(2011年11月7日公開)に詳しく説明してある、大まかな変遷を示したものです。

(a) 複件一葉式
(b) 1件一葉式
(c) 複文一葉式

ここでは、上記したさまざまの方式について、実例を挙げて、実践的なデータの収集法を示していきます。初期の頃の方式は、今では全然使われていないものではありますが、読者の環境によっては向いている部分もありますので、それらの方式も含め、最初から順に述べていきます。

その前に、一体、「カード」とは何かということですが、「カード」というと、ともすると、学生時代の「単語カード」を連想してしまいますが、「トミイ方式」でいう「カード」とは、いわゆる「図書カード」のことで、タテ7.5cm、ヨコ12.5cmのカードです。そして「カード方式」とは、そのカードに、英文データを、ある時は手書きしたり、またある時はタイプライタで打ち込んだり、さらには原稿をコピーし、該当部分をcut-and-pasteしたりして移していくことをいいます。

この際、一番大事なことは、採取するデータというのは、語や句ではなく、採取したい英文データの入った文章を文単位で採取するということです。あるいは一歩譲っても、節単位で採取する必要があります。

ただ、この「カード方式」が、その前の「ノート方式」と決定的に違うところは、この「カード方式」は物理的な収納場所が必要になるということです。その収納場所にもいろいろな変遷がありますが、これにつきましても、順次述べていくことにします。

(a) 複件一葉式

これは、「1枚のカードに複数の同種の英文データを記入する」というやり方です。しかし、記入した時は同種のデータだと思っていても、件数が増え、分類も細かくなっていくと、その中のあるデータは別の場所に移籍しなければならなくなってしまったりすることがあり、あまり実用的ではないことから、ごく短期間で、次の「1件一葉式」に切り替えざるをえませんでした。したがって、この「複件一葉式」については、実例は挙げません。

(b) 1件一葉式

これは、「1枚のカードには絶対に1件の英文データしか記入しない」というやり方です。実例を挙げてみますので、「添付-A」を見ながらお読みください。英文データが収録されているカードを3枚載せていますが、これ以降、これを「データカード」と呼ぶことにします。

atomii40.jpg

「データカード1」「データカード2」は手書きした例であり、「データカード3」は英文原稿をコピーし、該当箇所をcut-and-pasteした例です。

いずれの「データカード」も、乱雑な出来あがりですが、これが、実際に翻訳しながら、限られた時間内でデータ収集できる限度です。

データカード1

これは、前置詞inの用法を学習するために採取した英文です。
上部には 前置詞、in、(〜の)と赤字で書いてありますが、これは

中分類が「前置詞」、小分類が「in」、細分類が「〜の

であることを表しています。大分類が「品詞別」であることは分かっていますので、それは省略しています。

中ほどには英文を書き込み、該当する単語、ここではin、に赤でアンダーラインを引きます。

下部には出典(必要であれば、収集年月日も)と、出典文献の中のページ番号およびページ中の英例文の場所を書き込みます。

この例文は

increase in viscosity

とありますが、「粘度の増加」という意味です。この場合には、英語からアプローチしていますので、この部分を「粘度の中の増加」などと訳す人はいませんが、和文英訳の際、「粘度の増加」という日本語を英訳しようとする場合、ともすると日本語の「の」に引きずられ

increase of viscosity

としてしまうことがあります。そこで、和文英訳の際に「の」を「of」としてしまうような間違いを犯さなくなるように採取したものです。このような意識を持って英文データを集めていくと

「変化・変動」、「増加・減少」、「差・バラツキ」など + in + 物理量

も例がたくさん集まってきます。

なお、この例文では、1つの文から1つの英文データしか採取していませんが、1つの例文から2つ以上の英文データを採取することもでます。昔、このようにして1つの文から複数の英例文を採取していたころは、カードを何枚か重ね、その間にカーボン紙を入れ、同じ例文を一遍に複数枚作り、いろいろな場所に入れていました。この例でいうならば、increase という単語を「増加」という分類で採取し

大分類が「表現別」、中分類が「増加」、小分類が「名詞形

と分類します。この種の方法については、この後、何回も出てきます。

実際には、複数の英文データを1枚のカードに記入するということは絶対にありえませんが、ここでは、解説用として、2つ目の英文データである increase には赤の点線でアンダーラインしておきました。

カーボン紙を入れて書き込む方法だと、最大3枚まではコピーできます。

データカード2」以降については、次回に取り上げます。

【筆者プロフィール】

富井篤(とみい・あつし)
技術翻訳者、技術翻訳指導者。株式会社 国際テクリンガ研究所代表取締役。会社経営の傍ら、英語教育および書籍執筆に専念。1934年横須賀生まれ。
主な著書に『技術英語 前置詞活用辞典』、『技術英語 数量表現辞典』、『技術英語 構文辞典』(以上三省堂)、『技術翻訳のテクニック』、『続 技術翻訳のテクニック』(以上丸善)、『科学技術和英大辞典』、『科学技術英和大辞典』、『科学技術英和表現辞典』(以上オーム社)など。

2012年 12月 24日