三省堂辞書の歩み

第12回 漢和大字典

筆者:
2013年1月16日

漢和大字典

明治36年(1903)2月22日刊行
重野安繹、三島毅、服部宇之吉監修、三省堂編輯所編纂/本文1746頁(修正増補版は1766頁)/菊判(縦220mm)

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【漢和大字典】初版(明治36年、革装)

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【本文1ページめ】

本書は、日本最初の漢和辞典である。これ以前の漢字の字典は、和玉篇(わごくへん)と言われるもので、漢字の音や訓を羅列しただけだった。わずかに熟語を載せた例もあったが、語義分類をしたり、出典を載せたりしたものはなかった。三省堂編輯所の斎藤精輔は、英和辞典を手本にして漢語と和語の画期的な対訳辞典を創出したのである。

収録した漢字は3万0732字、熟語は5万4862語。当時、活字メーカーが標準的に製造していた漢字は1万字ほどだから、三省堂印刷部の存在が大きかった。現在でも、『大漢和辞典』(大修館書店)は5万字あるが、1冊ものの漢和辞典では1万字前後が普通で、多くても2万字程度。そのためか、本書の熟語にはかなり小さな活字が使われている。

前付には「索引」(部首順)、「検字」(画数順)、「弁似」を載せ、後付には「国訓」「国字」「篆文」を載せた。本文はほとんど現在の漢和辞典と同じ形式ながら、大きく違う点がふたつある。ひとつは、音や韻が異なっていて字義も異なる場合、同じ親字を載せて区別していること。もうひとつは、熟語は末の字が親字と同じものを掲載していることである。この熟語は、中国の『佩文韻府』という漢詩のための韻書を手本にしている。

実質的な編集は、斎藤と同郷で読売新聞社にいた足助直次郎を招き入れ、深井鑑一郎・福田重政とともにあたらせた。そして、監修と編纂の名義を区別したのも最初だった。

大正4年には修正増補版の刊行があり、本文は20頁の増加。さらに、後付に「首部総画索引」「首部字音索引」「字音系統漢字便覧」の計212頁が追加されている。

●最終項目

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●「猫」の項目

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●「犬」の項目

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漢和大字典:

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筆者プロフィール

境田 稔信 ( さかいだ・としのぶ)

1959年千葉県生まれ。辞書研究家、フリー校正者、日本エディタースクール講師。
共著・共編に『明治期国語辞書大系』(大空社、1997~)、『タイポグラフィの基礎』(誠文堂新光社、2010)がある。

編集部から

2011年11月、三省堂創業130周年を記念し三省堂書店神保町本店にて開催した「三省堂 近代辞書の歴史展」では、たくさんの方からご来場いただきましたこと、企画に関わった側としてお礼申し上げます。期間限定、東京のみの開催でしたので、いらっしゃることができなかった方も多かったのではと思います。また、ご紹介できなかったものもございます。
そこで、このたび、三省堂の辞書の歩みをウェブ上でご覧いただく連載を始めることとしました。
ご執筆は、この方しかいません。
境田稔信さんから、毎月1冊(または1セット)ずつご紹介いただきます。
現在、実物を確認することが難しい資料のため、本文から、最終項目と「猫」「犬」の項目を引用していただくとともに、ウェブ上で本文を見ることができるものには、できるだけリンクを示すこととしました。辞書の世界をぜひお楽しみください。
毎月第2水曜日の公開を予定しております。