三省堂辞書の歩み

第13回 漢和新字典

筆者:
2013年2月13日

漢和新字典

明治37年(1904)3月24日刊行
重野安繹、三島毅、服部宇之吉監修、三省堂編輯所編纂/本文1452頁/四六判半裁(縦126mm)

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【漢和新字典】初版(明治37年)

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【本文1ページめ】

前年に刊行した『漢和大字典』の内容を簡約化した小型漢和辞典。監修者などの名義は変わらず、語義分類の方法もおおむね同じだが、若干変えた箇所も見られる。また、音や韻が異なっていて字義も異なる場合に同じ親字を別に載せ、熟語は末の字が親字と同じものを掲載しているのも『漢和大字典』と同様である。

小型化するにあたっては親字数を減らし、用例を大幅に削っている。さらに、熟語の数もかなり減らし、改行せずに●印を付けて追い込んだ。前付には「目次」(部首索引)、「検字」(画数順)、「弁似」を載せ、後付はない。

読書・作文に必要な漢字や熟語を掲載した学生向けの小型漢和辞典として『漢和大字典』の1年後に刊行され、大正2年(1913)には14版が出ている。しかし、明治39年以降に他社からも漢和辞典が相次いで出版され、ほかはすべて熟語の頭の字が親字と同じ形式だった。そのためか、大正4年の広告でも14版のままになっていて、『漢和大字典』よりも短命に終わったようだ。

●最終項目

●「猫」の項目

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●「犬」の項目

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筆者プロフィール

境田 稔信 ( さかいだ・としのぶ)

1959年千葉県生まれ。辞書研究家、フリー校正者、日本エディタースクール講師。
共著・共編に『明治期国語辞書大系』(大空社、1997~)、『タイポグラフィの基礎』(誠文堂新光社、2010)がある。

編集部から

2011年11月、三省堂創業130周年を記念し三省堂書店神保町本店にて開催した「三省堂 近代辞書の歴史展」では、たくさんの方からご来場いただきましたこと、企画に関わった側としてお礼申し上げます。期間限定、東京のみの開催でしたので、いらっしゃることができなかった方も多かったのではと思います。また、ご紹介できなかったものもございます。
そこで、このたび、三省堂の辞書の歩みをウェブ上でご覧いただく連載を始めることとしました。
ご執筆は、この方しかいません。
境田稔信さんから、毎月1冊(または1セット)ずつご紹介いただきます。
現在、実物を確認することが難しい資料のため、本文から、最終項目と「猫」「犬」の項目を引用していただくとともに、ウェブ上で本文を見ることができるものには、できるだけリンクを示すこととしました。辞書の世界をぜひお楽しみください。
毎月第2水曜日の公開を予定しております。