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地域語の経済と社会 第242回 名古屋の方言絵はがき Dialect picture postcards of Nagoya

2013年 2月 23日 土曜日 筆者: 井上 史雄

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第242回 名古屋の方言絵はがき
Dialect picture postcards of Nagoya

 これまで戦前方言絵はがきを紹介してきました。山形(第222回)、大阪(第227回)、博多(第232回)、青森(第237回)などです。主に桜井隆氏のコレクションの紹介でしたが、第1段階の整理がすんで、このほどインターネットで公開しました。絵はがき画像と文字化データ、一覧表などが入っています。「明海大学 外国語学部 日本語学科」のホームページの左側の「方言関係資料(井上史雄)」の「方言絵はがき.zip」にあります。

http://www.urayasu.meikai.ac.jp/japanese/

 全国のデータを一まとめにしたので、実際に見るためにはダウンロードが必要で、時間が10分ほどかかります。待っていると、パソコン本体にpcardというファイルができます。それをクリックすると、県別のファイルと全体の説明(ワードファイル)とエクセルファイルができます。この作業にまた2分ほどかかります。ダウンロードの時に少し大変ですが、ファイルを取得してしまえばあとは自由に使えます。

 県ごとのファイルをクリックして、「大アイコン」または「特大アイコン」にすると画像が出ますから、どんな絵はがきがあるか、一覧できます。画像をクリックすると、大きくして見ることができます。

 またエクセルファイルには文字化データが入っていますから、画像で読み取りにくい文字も読めます。さらに、一番上にある全国の「今村作業データリンク」というエクセルファイルを開いて、文字を検索すれば、ある言い方が使われているかが分かります。

 ところで、名古屋は戦前方言絵はがきの研究が進んでいます。インターネットでも次のようなサイトで画像と解説が見られます。

① 成田道子「名古屋言葉絵葉書」にみられる昭和初期名古屋弁の再現

http://www.bur.aichi-pu.ac.jp/kyoken/education/jishu/pdf/h21_report.pdf

②犬飼隆・成田道子 2010 「名古屋言葉絵葉書の書誌的研究」『国際文化研究科論集』第11号(日本文化編1号)愛知県立大学大学院国際文化研究科, 49-67.

http://ci.nii.ac.jp/els/110007645583.pdf?id=ART0009464857&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1360516630&cp=

 また井上善博2009『名古屋絵はがき物語』(風媒社)にも2点の画像が収められています。

 成田道子さんの私信によると、この1年ほどで収集に進展があって、「名古屋言葉絵葉書」は、127点、40種類の存在が確認されたそうです。ただ「焼き直し」もあるため、まとめると26種類になるそうです。

【図1】『名古屋言葉絵葉書』「芝居を話題にした男女二人」
【図1】『名古屋言葉絵葉書』
「芝居を話題にした男女二人」
(クリックで拡大表示)

 今回インターネットで公開した桜井コレクションには「名古屋言葉絵葉書」は入っていません。しかしその後入手できました。「御隠居と熊さんという男性」「年配婦人二人」「芸子と女将との電話による会話」「芝居を話題にした男女二人」で、26種のうちの4種にすぎません。このうちの1種を【図1】に掲げます。

 全国で戦前に出された方言絵はがきは数百枚あるでしょう。(画像を)全部集めるのは無理でしょうか。

 絵はがきは、インターネット上のバーチャル博物館に最適です。博物館や資料館に展示したら、劣化するし、実物の字は細かくて読み取りにくいからです。公開した桜井コレクションはカラーだし、拡大すれば細かいところまで読み取れますから、どうぞご覧ください。また未知の情報がありましたら、お知らせください。

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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

『経済言語学論考  言語・方言・敬語の値打ち』『日本語ウォッチング』井上史雄(いのうえ・ふみお)
明海大学外国語学部教授。博士(文学)。専門は、社会言語学・方言学。研究テーマは、現代の「新方言」、方言イメージ、言語の市場価値など。
履歴・業績 http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/inouef/
英語論文 http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/affil/person/inoue_fumio/ 
「新方言」の唱導とその一連の研究に対して、第13回金田一京助博士記念賞を受賞。著書に『日本語ウォッチング』(岩波新書)『変わる方言 動く標準語』(ちくま新書)、『日本語の値段』(大修館)、『言語楽さんぽ』『計量的方言区画』『社会方言学論考―新方言の基盤』『経済言語学論考 言語・方言・敬語の値打ち』(以上、明治書院)、『辞典〈新しい日本語〉』(共著、東洋書林)などがある。

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。

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2013年 2月 23日