地域語の経済と社会 ―方言みやげ・グッズとその周辺―

第249回 山下暁美さん:「よかっぺ号」が関西へ

筆者:
2013年4月13日

茨城県の水戸市・石岡市・つくば市から京都市・大阪市(梅田,天王寺など)方面を結ぶ夜行高速バス(関東鉄道株式会社と近鉄バス株式会社による共同運行)があります。その名も「よかっペ号」【写真1】。「~っぺ」は茨城県また千葉県の方言を特徴づけると言ってもいいくらい,両県では勢力のある語法です。

(写真はクリックで全体表示)

【写真1】
【写真1】よかっペ号

Googleトレンド

【図1】Googleトレンド「っぺ」の検索結果(2013年3月15日時点)

Googleトレンドで調べてみると、2010年から2011年前半にかけて,「っぺ」の人気が高くなっていました。この時期でもっとも高い頃(D)の例は「茨城のおいしい魚をPRするっぺ」(日刊スポーツ)です。次にEの例は「サケは絶対帰って来っぺ」(読売新聞)、A「鎮魂・感謝がんばって生きっぺ!」(NSN産経ニュース)、C「東日本大震災・宮城・石巻へショベルを“兵庫っぺ絆”募金」(毎日新聞 ※「ショベル」についてはここでは省略しますが、おもしろい方言調査があります。)のように使われています。Bは「千葉は東京のおまけになってっぺ」(朝日新聞)です。

【写真2】
【写真2】よかっぺ餅

茨城県の水戸市に「よかっぺ餅」【写真2】(株式会社井熊総本家)があります。茨城県の方言については、第244回でも紹介しましたのでご参照ください。

筆者プロフィール

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics

井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。

(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

 

  • 山下 暁美(やました・あけみ)

明海大学客員教授(日本語教育学・社会言語学)。博士(学術)。
研究テーマは、言語変化、談話分析による待遇表現、日本語教育政策。在日外国人のための「もっとやさしい日本語」構想、災害時の『命綱カード』作成に取り組んでいる。
著書に『書き込み式でよくわかる日本語教育文法講義ノート』(共著、アルク)、『海外の日本語の新しい言語秩序』(単著、三元社)、『スキルアップ文章表現』(共著、おうふう)、『スキルアップ日本語表現』(単著、おうふう)、『解説日本語教育史年表(Excel 年表データ付)』(単著、国書刊行会)、『ふしぎびっくり語源博物館4 歴史・芸能・遊びのことば』(共著、ほるぷ出版)などがある。

『書き込み式でよくわかる 日本語教育文法講義ノート』 『海外の日本語の新しい言語秩序―日系ブラジル・日系アメリカ人社会における日本語による敬意表現』

編集部から

皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。

方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。