辞書引き学習・辞書指導

名古屋市立正色小学校訪問

2013年4月16日

深谷圭助先生の積極的なご活躍で、さらに大きな広がりを見せている「辞書引き学習」。

今回は、全校で「辞書引き学習」に取り組んでいる名古屋市立正色小学校(愛知県名古屋市中川区 首藤太郎校長)をご紹介いたします。

正色小学校が「辞書引き学習」に取り組むきっかけは、昨年、全校生徒に『例解小学国語辞典』『例解小学漢字辞典』を購入し、中部大学准教授で「辞書引き学習法」の開発者、深谷圭助先生をお招きした「辞書引き学習」の授業からでした。

深谷先生が授業を行ったのは、10月。3か月後の1月に再び訪れた深谷先生の目にしたものは、全校で熱心に「辞書引き学習」に取り組む、先生と児童の姿でした。数多くのご指導を行われてきた深谷先生ですが、その中でも正色小学校は先生の予想を上回って、熱心に辞書引きが行われていて、先生自身驚嘆されたとのこと。さっそく、正色小学校での取り組みを見学に伺いました。

深谷先生にもご同行いただき、 訪問したのは、2013年2月19日。朝一番の訪問にもかかわらず、首藤校長、竹内教頭をはじめ、諸先生方にあたたかく迎えていただきました。

まず、校長先生、教頭先生にお話をうかがいました。

――本校では、今年度の努力目標として、漢字力の向上に取り組むことにしましたが、平成23年度の学習状況調査で指摘されたのが、漢字力もさることながら、辞書を活用する力の低さでした。そこで、全校児童に『例解小学国語辞典』と『例解小学漢字辞典』を購入し、深谷先生をお招きして、先生の「辞書引き学習法」の授業を行っていただくことにしました。

――2年生のクラスで行われた、国語辞典を使っての「辞書引き学習法」の授業は、いざ始まってみると子どもたちはいつにない集中力を発揮し、黙々と付箋を増やしていきました。全職員で参観いたしましたが、先生方も児童の集中力に驚嘆し、この学習法の効果を実感いたしました。このクラスでは、授業が行われた週末には、すでに付箋が1000枚を超えた児童も出たほどで、児童の熱心さにあらためて驚き、この取り組みを全学年に広げていくことをあらためて確認いたしました。

――年が明けた1月からは、今年度の目標でもある漢字力の向上を目指して、漢字辞典を使っての「辞書引き学習」を始めました。部首索引からの活用から始めましたが、子どもたちはぐんぐん力をつけ、部首索引、音訓索引と、抵抗なく漢字辞典を使いこなすようになっています。2月には日本漢字検定能力試験にも全校で取り組みました。

――本校は全校児童数約130名と、規模の小さな学校で、また、先生方が一丸となって意欲的に取り組んだことがこの「辞書引き学習」の成果を助けたということがあると思いますが、何よりも子ども自身が興味を持って、自発的に取り組むように向けさせる、この学習法自体の魅力が大きいと思います。もちろん個人による温度差はありますし、高学年になると「辞書引き学習」にあてる時間もなかなかとれませんが、多くの子どもたちは国語辞典のみならず、漢字辞典も使いこなしており、最近は四字熟語辞典(『例解小学四字熟語辞典』)にも取り組み始めています。

ということで、いよいよ、実際の教室の見学です。

多くの付箋が貼られた辞書がどの机にも置かれています。中には、ボール上になった辞書もあります。深谷先生が、何枚?と尋ねたところ、「4万枚」との答え!

また、見事に美しく付箋のそろっている辞書もあります。今まで見た中で最も美しい「辞書引き学習法」の成果でした。

四字熟語辞典にも付箋が付きはじめています。「愛別離苦」(!)など、難しい言葉にも引かれた後がしっかりと残っています。

この日は、3年1組(担任 坂野晃嗣先生)で漢字辞典を使った授業がありました。

坂野先生、まずはウオーミングアップとして、黒板に平仮名ばかりの文章を書き出します。この文章の言葉を、子どもたちは漢字辞典を音訓索引から引いて次々に漢字に置き換えます。

次に、いよいよ、「漢字おきかえゲーム」の本番です。坂野先生は「ももたろう」の話がすべて平仮名で書かれた紙を配り、黒板にも貼り出しました。

制限時間内に、このプリントの平仮名の言葉をできるだけ漢字に置き換えます。子どもたちはいっせいに漢字辞典と国語辞典を使って、漢字を調べていきます。

なかには、先生の持ってきてくれた『新明解国語辞典』まで引きはじめる子どももいました。

制限時間を過ぎても、子どもたちはまだまだ続けたいということで、時間を延長して辞書引きによる「漢字おきかえゲーム」は続きました。

深谷先生は言います。

――子どもたちの意欲を低下させずに、高いレベルで辞書引きが続いていて、素晴らしいと思います。付箋が増えていくことで、成果が目に見えると、子どもたちは急に火がついたように一生懸命取り組み始めます。積み上がっていく楽しみを見いだし、辞書引きをすることが喜びになっていくのです。ぜひ、ずっと続けていってもらいたいと思います。

帰り際、校長先生から、以下のお言葉をいただきました。

――まだ、はじめて4か月ですが、成果の大きさに驚いています。今後はこのやる気を維持していくことが課題ですが、来年度も引き続き「辞書引き学習」を続けていきたいと思っています。