地域語の経済と社会 ―方言みやげ・グッズとその周辺―

第265回 大橋敦夫さん:包装紙で讃岐弁をアピール(香川県高松市)

筆者:
2013年8月3日

知り合いの方からのお土産の包装紙【写真1】を見て、ドッキリ・ワクワク。

【語彙表】包装紙「ちっとたんねるけど 讃岐の方言 知っとんな」に載る香川方言
【写真1】包装紙「ちっとたんねるけど 讃岐の方言 知っとんな」
(クリックで包装紙に載る香川方言の語彙表(PDF)を表示)

包みの中身は、讃岐天ぷら。製造・販売元(讃岐天ぷら うえ松)のホームページには、次のような紹介文が掲げられています。

一般的には、魚のすり身を油で揚げたものを「さつま揚げ」と呼んでいますが、讃岐では甘さを抑えて、魚本来の味を素直にいかした上質のすり身の揚げたものを「讃岐天ぷら」といいます。

ふつうのすり身の揚げものとは、一線を画すというところに、その名乗りの意味があるという訳ですね。

と、予備知識をふまえたところで、包装紙作製の背景について、伺ってみました。

*

●包装紙に香川県方言をあしらったねらいはどんなところにありますか?

弊社で製造している商品が讃岐にしかなく、創業以来変わらぬ味を守ってきたからです。お客様に香川県出身の方が多く、商品が届いた時に、包装紙を見て、読んで、ご自分の故郷を懐かしんでいただきたいからです。

●方言はどのようにして選ばれたのですか?

従業員や祖父母に、昔から使っている讃岐弁をピックアップしてもらい、その中から、今も香川の人が普通に使っている言葉を選びました。

●お客さんの反応はいかがですか?

「包装紙だけください」とか、「包装紙を大切に家に貼ってある」とか、おっしゃってくださるお客様が増えました。地元のリビング新聞やマスコミなどでも取り上げていただきました。

(専務取締役・植松 繁氏談)

*

ふるさとの産物に対する思いのこもった品物であることを知っていただくと、また一味違うような気がしてきます。

筆者プロフィール

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics

井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。

(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

 

  • 大橋 敦夫(おおはし・あつお)

上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。

大橋敦夫先生監修の本

編集部から

皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。

方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。