三省堂辞書の歩み

第19回 模範英和辞典

筆者:
2013年8月14日

模範英和辞典

明治44年(1911)4月17日刊行
神田乃武・樫田亀一郎・横井時敬・高松豊吉・中村達太郎・藤岡市助・江木衷・寺野精一・有賀長雄・肝付兼行・神保小虎・平山信共編/本文1963頁/三六判変形(縦167mm)

【模範英和辞典】1版(明治44年)

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【本文1ページめ】

明治35年(1902)の『新訳英和辞典』を全面改訂したもの。収録語数は約10万、挿絵は約4000点もある。さらに、前付の扉と「発音符号表」、後付の「類語及対語」39頁は、赤・黒の2色刷りになっているのが目を引く。

見出し語にウェブスター式の発音記号が付けられているのは今までどおりだが、さらに詳しくなっている。記号が定められないものは、センチュリー、ウェブスター、オックスフォード等の英語辞典を参照したという。また、常に大文字で書き始める語には「‖」が、多く使用しない語には「」が付された。

訳語は、難解な漢語をなるべく避け、平易な和語が使われている。カタカナ交じり文のため、外国の固有名や外国語はひらがな書きにした。そして熟語には、日本的英語表現を “ ” で括って例示してある。読み仮名も多くあり、利用者に親切な辞典となっている。

編者は12人もいて、神田乃武、横井時敬、藤岡市助、有賀長雄、平山信の5人は前著と同じ。新たに加わった7人は、医学、工学、法学、理学などの専門家である。

大正5年(1916)5月28日発行の15版からは巻末に263頁の増補が加えられた。

●最終項目

Zyxomma, n. 【動】一種ノ蜻蛉(トンボ)[印度産].

●「猫」の項目

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●「犬」の項目

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◆辞書の本文をご覧になる方は

模範英和辞典:

明治学院大学図書館『模範英和辞典』のページへ(本文29頁まで)

筆者プロフィール

境田 稔信 ( さかいだ・としのぶ)

1959年千葉県生まれ。辞書研究家、フリー校正者、日本エディタースクール講師。
共著・共編に『明治期国語辞書大系』(大空社、1997~)、『タイポグラフィの基礎』(誠文堂新光社、2010)がある。

編集部から

2011年11月、三省堂創業130周年を記念し三省堂書店神保町本店にて開催した「三省堂 近代辞書の歴史展」では、たくさんの方からご来場いただきましたこと、企画に関わった側としてお礼申し上げます。期間限定、東京のみの開催でしたので、いらっしゃることができなかった方も多かったのではと思います。また、ご紹介できなかったものもございます。
そこで、このたび、三省堂の辞書の歩みをウェブ上でご覧いただく連載を始めることとしました。
ご執筆は、この方しかいません。
境田稔信さんから、毎月1冊(または1セット)ずつご紹介いただきます。
現在、実物を確認することが難しい資料のため、本文から、最終項目と「猫」「犬」の項目を引用していただくとともに、ウェブ上で本文を見ることができるものには、できるだけリンクを示すこととしました。辞書の世界をぜひお楽しみください。
毎月第2水曜日の公開を予定しております。