地域語の経済と社会 ―方言みやげ・グッズとその周辺―

第277回 井上史雄さん:コインランドリーの探し方(1)―コインランドリー・ランドロマット・ランドレットの世界的方言差 ―
How to find a coin laundry (1) ― Global dialectal differences of coin laundry, laundromat and launderette ―

筆者:
2013年10月26日

今回は日本を離れて、世界的な言語差・方言差について考えましょう。コインランドリーについてです。旅先のコインランドリー探しは大変で、インターネットで「コインランドリーの探し方」を検索すると、国内・海外の苦労話が見つかります。海外で探そうとしたら、その国の言い方を知らないとたどりつけません。英語版ウィキペディアwikipediaではSelf-service laundryという項目でまとめて説明してあります。アメリカ・カナダ・オーストラリアではlaundromatで、イギリスではlaunderetteと書いてありますが、そう単純ではありません。

これはグーグルマップGoogle mapsで検索して(第127132137回)、画面を世界全体にすると分かります。【図1】によるとlaundromatはアメリカだけでなく、ほぼ全世界に分布しています。

(図はクリックで拡大)

【図1】Laundromatの世界的分布
【図1】Laundromatの世界的分布

でもふつうの人は近くの店を探すでしょう。グーグルマップGoogle mapsで都市名を入れてイギリス英語launderetteか アメリカ英語laundromatで検索すると、店の場所が出て来ます。シンガポールのlaundromatの地図を【図2】に示します。イギリス英語のlaunderetteでもほぼ同じくらいの店が出ます。なおシンガポールで見つけた店の機械にはLaundromatと書いてありましたが、商品名なのです。

【図2】Laundromat Singapore
【図2】Laundromat Singapore

グーグルマップGoogle mapsによると、コインランドリー coin laundryは日本以外にアメリカ・カナダでも使われていますが、世界全体に通じるわけではありません。

英語圏以外でコインランドリーを探すときにはどうしたらいいでしょう。

第277回 コインランドリーの探し方(2) へ続く ››

筆者プロフィール

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics

井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。

(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

 

  • 井上 史雄(いのうえ・ふみお)

国立国語研究所客員教授。博士(文学)。専門は、社会言語学・方言学。研究テーマは、現代の「新方言」、方言イメージ、言語の市場価値など。
履歴・業績 //www.tufs.ac.jp/ts/personal/inouef/
英語論文 //dictionary.sanseido-publ.co.jp/affil/person/inoue_fumio/ 
「新方言」の唱導とその一連の研究に対して、第13回金田一京助博士記念賞を受賞。著書に『日本語ウォッチング』(岩波新書)『変わる方言 動く標準語』(ちくま新書)、『日本語の値段』(大修館)、『言語楽さんぽ』『計量的方言区画』『社会方言学論考―新方言の基盤』『経済言語学論考 言語・方言・敬語の値打ち』(以上、明治書院)、『辞典〈新しい日本語〉』(共著、東洋書林)などがある。

『日本語ウォッチング』『経済言語学論考  言語・方言・敬語の値打ち』

編集部から

皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。

方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。