地域語の経済と社会 ―方言みやげ・グッズとその周辺―

第285回 大橋敦夫さん:方言と外国語で感謝──大手企業の言語戦略──

筆者:
2013年12月21日

本欄執筆者からすると、目にした瞬間、一気にテンションが上がる商品がありました(発売期間は2012年3月から、4か月ほど。残念ながら、現在は販売終了)。

その名も「THANK YOUのキモチガム」【写真1】。「方言でキモチつながる」「世界の言葉でキモチつながる」のコピーと共に、「ありがとう」の意を表す日本各地の方言と外国語が包み紙に印刷されています。

THANK YOUのキモチガム
【写真1】(写真提供:ロッテ)
(クリックで拡大)

方言研究の面からも、興味をそそられる内容であり、いろいろとお話を伺ってみました。

*

●方言を取り上げたねらいは、何ですか?

この商品が発売される前に、伝えたいキモチを選んで、応募してもらうキャンペーンを実施し、弊社から12種類を提示したのですが、その中で1位に選ばれたのが「ありがとう」でした。キモチを伝える上で、色々な表現があるなと考え、方言やさまざまな言語を使ったらどうだろうと考え、採用しました。

ガムは、コミュニケーションツールでもあるので、ガムを渡した時に、包み紙に書いてあるちょっとした話題になればと思いました。

●御社の過去の商品において、類例がありましたか?

ありません。

●「ありがとう」(感謝)をテーマに選んだのは、なぜですか?

上記のように、キャンペーンで提示した12種類のうちから1位に選ばれました。

●方言(地域)や外国語は、どのようにして選び出されたのですか?

方言が5種類、外国語が3種類、メッセージが書き込めるようになっているのが1種類で、計9種類です。
 全国で発売する商品なので、エリアに偏りがないようにしました。

●お客様の反響はいかがでしたか?

本品と同時に、「甘ずっぱい恋のキモチガム」「シャキッと1枚!のキモチガム」【写真2】も発売しました。

「甘酸っぱい恋のキモチガム」「シャキッと1枚!のキモチガム」
【写真2】(写真提供:ロッテ)
(クリックで拡大)

ブログなどで取り上げていただきました。お客様の印象に残ったのではないかと考えております。

●今後も、同種(方言をあしらった)の商品展開をお考えですか?

現在のところ、同様の企画は考えておりません。

(株式会社ロッテ・大峠美貴氏談)

市場調査をふまえた上での商品開発であることが理解できるお話でした。全国的な商品展開をする中にあって、現代における方言の位置づけ(気持ちを込めるには方言が有効)が示されている好例と思われます。

筆者プロフィール

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics

井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。

(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

 

  • 大橋 敦夫(おおはし・あつお)

上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。

大橋敦夫先生監修の本

編集部から

皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。

方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。