古語辞典でみる和歌

第2回「妹に逢ふ…」

2014年7月8日

(いも)に逢(あ)ふ時かたまつとひさかたの天(あま)の川原に月ぞ経(へ)にける

出典

万葉・一〇・二〇九三

恋人(=織女)に逢うときをひたすら待って、(ひさかたの)天の川原でいく月もいく月も過ごしたことだ。

「ひさかたの」は「天」の枕詞。

参考

「かた」は対(つい)になるものの一方をいうが、ここの「かた」は一部に集中する意で、「ひたすら心から待つ」となる。一説には「一方がその相手を待つ」の意もある。

(『三省堂 全訳読解古語辞典』「かたまつ」)


◆関連情報
七夕は元来、「陰暦七月七日」の行事でした。新暦の七夕で星が見られなかった方も、古典の世界ではチャンスはまだこれからです。
『三省堂 全訳読解古語辞典』で「天の川」を引くと、こんなコラムが付いています。

一年に一度の出会い―「あまのがは」
中国の伝説 「七夕」は、陰暦七月七日の夕、天の川の両岸に現れる牽牛(=アルタイル)と織女(=ベガ)の二星が、かささぎの翼を橋として、渡って逢うという中国の伝説に基づく祭事。七夕伝説は奈良時代に伝来したらしいが、天平(てんぴょう)年間から年中行事として二星を祭る(=乞巧奠(きこうでん))ようになったので、『万葉集』から「天の川」は歌われている。
はかない逢瀬 日本では男が女のところに通うという結婚形態から、牽牛が天の川を渡って織女に逢いに行くというように詠まれている。舟で天の川を渡る例をはじめとして、かささぎの橋を渡る、徒歩で渡るなどあるが、天の川をはさんで、一年に一度しか逢えぬ二星の逢瀬(おうせ)のはかなさをわが身になぞらえて嘆くという趣向が多い。

筆者プロフィール

古語辞典編集部

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