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三省堂辞書の歩み 新漢和大字典

2015年 3月 18日 水曜日 筆者: 境田 稔信

三省堂辞書の歩み 第38回

新漢和大字典

昭和7年(1932)2月6日刊行
宇野哲人編/本文1743頁/四六判変形(縦191mm)

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左:【新漢和大字典】32版(昭和11年)
右:【本文1ページめ】(クリックで拡大)

 本書は、昭和2年(1927)刊行の『明解漢和辞典』と同じく、宇野哲人が編者である。収録親字数は9111。字源の説明はないが、親字数も熟語数も増え、出典・用例もある。

 前著と同様に呉音・漢音・唐音の表示はなく、音がふたつ並んでいるときは右が漢音、左が呉音である。慣用音や通用音は「(慣)(通)」としている。さらに、「延音・促音・唐宋音・広東音」の表示もある。

 巻頭には部首が分かりにくい漢字を引くための「検字」(総画索引)があり、巻末には「音訓索引」がある。音訓索引は発音的仮名遣いだが、「じ・ぢ」「ず・づ」は使い分けている。

 前著では五十音順だった本文の配列を本書では部首順に戻し、間違えやすい部首の漢字は空見出しを設けた。

 それでも、現代的な熟語を載せる方針は変わっていない。例えば、「社」には「社家(しゃけ)」「社格」「社掌」の神道用語があり、日本語独自の熟語は「*」に似た記号を付けた。そのほかに、「社説」「社員」「社交性」「社会学」「社会党」「社会意志」「社会教育」「社会主義」「社会進化」「社会政策」「社会問題」なども掲載されている。

 術語には、「仏」(仏教)、「哲」(哲学)、「心」(心理学)、「法」(法律学)、「動」(動物学)といった表示がある。現代国語ではない漢文で使われた熟語には出典・用例を載せている。

 三省堂の漢和辞典で初の試みは、熟語項目の後に、親字が下に付く熟語の一覧を載せたことである。付録には、「常用漢字便覧」を兼ねた「草字便覧」が付けられた。

●最終項目(画像はクリックで拡大)

●「猫」の項目(画像はクリックで拡大)

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●「犬」の項目(画像はクリックで拡大)

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◆この連載のほかの回をお読みになる方は⇒「三省堂辞書の歩み」目次へ

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【筆者プロフィール】

境田稔信(さかいだ・としのぶ)

1959年千葉県生まれ。辞書研究家、フリー校正者、日本エディタースクール講師。
共著・共編に『明治期国語辞書大系』(大空社、1997~)、『タイポグラフィの基礎』(誠文堂新光社、2010)がある。

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【編集部から】

2011年11月、三省堂創業130周年を記念し三省堂書店神保町本店にて開催した「三省堂 近代辞書の歴史展」では、たくさんの方からご来場いただきましたこと、企画に関わった側としてお礼申し上げます。期間限定、東京のみの開催でしたので、いらっしゃることができなかった方も多かったのではと思います。また、ご紹介できなかったものもございます。
そこで、このたび、三省堂の辞書の歩みをウェブ上でご覧いただく連載を始めることとしました。
ご執筆は、この方しかいません。
境田稔信さんから、毎月1冊(または1セット)ずつご紹介いただきます。
現在、実物を確認することが難しい資料のため、本文から、最終項目と「猫」「犬」の項目(これらの項目がないものの場合は、適宜別の項目)を引用していただくとともに、ウェブ上で本文を見ることができるものには、できるだけリンクを示すこととしました。辞書の世界をぜひお楽しみください。
毎月第2または第3水曜日の公開を予定しております。

2015年 3月 18日