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古語辞典でみる和歌 第19回 「小倉山…」

2015年 12月 8日 火曜日 筆者: 古語辞典編集部

古語辞典でみる和歌 第19回

小倉山峰のもみぢ葉心あらば今ひとたびのみゆき待たなむ

出典

拾遺・雑秋・一一二八・藤原忠平(ふぢはらの/ただひら) / 百人一首

小倉山の峰のもみじの葉よ。もしおまえに心があるなら、今一度のお出ましがあるときまで、(散らずにその美しさのまま)待っていてほしい。

「なむ」は、他に対する願望を表す終助詞。

参考

詞書(ことばがき)によれば、宇多上皇が都の西にある大堰(おおい)川(=上流は保津川、下流は桂川)にお出ましになったとき、紅葉の美しさに感嘆され、わが子醍醐(だいご)天皇にも見せたいとおっしゃったので、お供をしていた作者が、天皇に申し上げましょうと言って詠んだ歌。

(『三省堂 全訳読解古語辞典』「をぐらやま・・・」)

◆参考情報
このたびは、百人一首でもよく知られる、「もみぢ」を詠んだ歌を取り上げました。

終助詞の「なむ」は、同形であっても意味が異なる「係助詞のなむ」や、「完了の助動詞「ぬ」の未然形+推量の助動詞「む」の終止形か連体形」などとの識別が必要で、受験にも頻出です。『三省堂 全訳読解古語辞典』〔第四版〕の888pには、「なむ」の識別のしかたが一目で分かる表が入っています。

また終助詞「なむ」には、以下のようなコラム「読解のために」が付いており、「小倉山・・・」歌をはじめとする例文がより深く理解できるようになっています。

[読解のために]終助「なむ」は手の届かない対象への願望
終助詞「なむ」の意味 終助詞「なむ」は、望む事態の実現を相手に直接はたらきかけるというより、むしろ望む事態の実現を相手にもちかけられない場合に使用される。そのため、次のように、自分の力では直接にはたらきかけられない自然現象を対象とする場合が多い。[例]「寄する波うちも寄せなむ」〈土佐〉([訳](浜辺に)打ち寄せる波よ、(忘れ貝を)打ち寄せてほしい)。人物に対して用いるときも、相手に向かって直接訴えるのではなく、相手が不在の状況で、独り言を口にしたり心の中で思ったりといった箇所に見られるのが一般的である。用例に挙げた『源氏物語』〈夕顔〉の文(「『惟光(これみつ)とく参らなむ』とおぼす」([訳]「惟光が早く参上してほしい」))も、惟光がその場にいない状況での光源氏の心中のものである。
終助詞「ばや」との違い「なむ」と同様に願望を表す終助詞「ばや」は、自己の行為についての願望を表す。[例]「世の中に物語といふもののあんなるを、いかで見ばやと思ひつつ」〈更級〉([訳]世の中には物語というものがあるそうなのを、何とかして読みたいとしきりに思い。)

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2015年 12月 8日