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ネット座談会 ことばとキャラ 第5回

2016年 7月 29日 金曜日 筆者: 宿利 由希子

ネット座談会「ことばとキャラ」第5回

【発言者】宿利由希子

 神戸大学院生の宿利由希子です。ロシアのノボシビルスク国立大学や韓国,香港,日本の日本語学校などで計10年間,日本語を教えてきました。異文化コミュニケーションがうまくいかない,さまざまな誤解や行き違いを目の当たりにする中で,「本人は良かれと思ってやったのに,他者には悪くとられてしまう言動」に興味を持つようになりました。そういう言動の問題はどこにあり,どうやったら防げるか,日本語学習者に何をどう教えるべきかを考えています。この座談会にも,そういった問題意識で参加させていただきます。どうかよろしくお願いいたします。

 良かれと思ってやった言動がかえって悪くとられるという現象は,従来,ポライトネスの観点から,つまり相手の持つ2つの意向「他者に受け入れられて面子を保ちたい」「他者に干渉されて面子をつぶされたくない」を尊重しようとする際の失敗として説明されてきたように思います。しかし,それでは説明しきれないケースもあるのではないかと私は考えています。

 アパートで飲み会をしたときのことです。一人になりたくなって,空いている皿を持って台所に下がりました。皿を洗っていると,A子ちゃんが「私も洗います!」と言って台所に入ってきました。「一回空いてるお皿洗っちゃうんで,持ってきてくださーい!」と他のメンバーに声をかけ,みんな台所に集合してしまいました。罰当たりなことに,私は「一人の時間を奪っただけでなく,気が利く女子アピールかよ」と心の中で毒づきました。親切にしてもらったのに,私は「感じが悪い」と評価しました。

 後日,男性の知り合い2名に話すと,一人は「なんで? 超気が利く子じゃん」と高く評価しました。「いやいや,計算高くて怖くない?」と反論すると,もう一人が「宿利さん,そういう計算も含めてかわいいんだよ」と言うんです。

 過去を思い返してみると,男性でも女性でも,親切にしてくれているはずなのになぜか嫌な気分にさせられる人というのがいつも一定数いました。同じことを他の人にしてもらうと素直に「ありがとう」と言えるのに,A子ちゃんのような人には私はなぜかわざとらしさと胡散臭さを感じてしまうんです。その飲み会に気になる男性がいたから演技したというわけではなく,彼女はいつでもどこでもそういう感じなのですが。

 私はA子ちゃんに狙った男を横取りされたわけでも,彼女のせいで「気が利かない人」に格下げされたわけでもありません。(実際どうかわかりませんが,そう思っています。) 気を遣って手伝ってくれたはずなのに,礼儀正しくてポライトだったはずなのに,私がA子ちゃんを「感じが悪い」と評価してしまう理由はなんなのでしょうか? なんだか悩み相談のようになってしまいましたが,よろしくお願いします。

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【筆者プロフィール】

宿利由希子(しゅくり・ゆきこ)
1980年生まれ。
群馬大学社会情報学部卒業,東北大学大学院文学研究科(修士課程)修了,神戸大学大学院国際文化学研究科(博士課程)在学。
韓国,香港,仙台の日本語学校および宮城県国際化協会(非常勤講師),ノボシビルスク国立大学(国際交流基金日本語専門家),東北大学(日本語・日本文化交換留学コーディネータ)。海外産業人材育成協会関西研修センター在職(非常勤講師)。
専門は,日本語教育。

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【編集部から】

新企画「ことばとキャラ」は,金田純平さん(国立民族学博物館),金水敏さん(大阪大学),宿利由希子さん(神戸大学院生),定延利之さん(神戸大学),瀬沼文彰さん(西武文理大学),友定賢治さん(県立広島大学),西田隆政さん(甲南女子大学),アンドレイ・ベケシュ(Andrej Bekeš)さん(リュブリャナ大学)の8人によるネット座談会。それぞれの「ことばとキャラ」研究の立場から,ざっくばらんにご発言いただきます。

2016年 7月 29日