« 古語辞典でみる和歌 第29回 「らむ」「けむ」を含む和歌 - 人名用漢字の新字旧字:韓国の人名用漢字は違憲か合憲か(最終回) »

三省堂辞書の歩み 類語活用必携

2016年 10月 5日 水曜日 筆者: 境田 稔信

三省堂辞書の歩み 第53回

類語活用必携

昭和15年(1940)6月15日刊行
三省堂編輯所編/本文272頁/三五判(縦146mm)


左:【類語活用必携】1版(昭和15年)
右:【本文1ページめ】(クリックで拡大)

 本書は三省堂における最初の類語辞典である。サイズは『用字用語必携』(昭和12年)と同じで、書名に「辞典」ではなく「必携」を用いたことも共通していた。

 日本語の近代的な類語辞典は、『日本類語大辞典』(晴光館、明治42年)から始まる。それを簡約化した『同意語二十万辞典』(北隆館出版部、明治43年)も出た。大正2年には、それぞれ版元や書名を変え、『国民必携類語大辞典』、『読書作文日本大辞典』として刊行されたが、昭和9年に『詩歌作文表現類語辞典』(交蘭社)が出るまで新たな類語辞典の刊行はない。

 ただし、類語を載せた辞典がなかったわけではなく、『類語類例新詞藻辞典』(東光社、昭和12年)のように、類語、類句、文例などを載せたものはあった。それらは、手紙文や作詩・作歌のための文例を主体にしていたのである。


【類語活用必携】1版のカバー
(クリックで拡大)

 本書は、類語に特化し、類書にないハンディーサイズという点に特色があった。附録には「書翰文便覧」62頁が加えられている。

 本書の見出しは発音通りの仮名遣いで、見出しの下に歴史的仮名遣いをカタカナで載せた。当時の国語辞典も、見出しは発音式が主流だったのである。『用字用語必携』は異なっていたが、見出しにも歴史的仮名遣いの語釈にも、小書きの仮名「っゃゅょ」を使っている点は同じである。

 戦後は、改訂された『類語活用必携』が昭52年に出て、現在は『必携類語実用辞典』(昭和55年初版、平成22年増補新版)となった。さらに、平成17年に『三省堂類語新辞典』、平成18年に『文章表現のための類語類句辞典』、平成27年に『新明解類語辞典』が刊行されている。

●最終項目(画像はクリックで拡大)

われら〔我等〕 吾人(ゴジン)・吾輩(ゴハイ)・我輩(ガハイ)・吾曹・我曹・我儕・我徒・我們(ガモン)。

●「猫」の項目(画像はクリックで拡大)

ねこ〔猫〕 女奴(ヂヨド)・猫児・似虎・鼠将。

●「犬」の項目(画像はクリックで拡大)

いぬ 〔犬〕ケン。普通のイヌ。〔狗〕コウ・ク。犬と同じ。特に犬の子をいふこともある。〔尨〕バウ。ムクイヌ。毛の多い犬。彡は毛の長い意を示す。〔戌〕ジュツ。十二支のイヌ。

*

◆この連載のほかの回をお読みになる方は⇒「三省堂辞書の歩み」目次へ

* * *

【筆者プロフィール】

境田稔信(さかいだ・としのぶ)

1959年千葉県生まれ。辞書研究家、フリー校正者、日本エディタースクール講師。
共著・共編に『明治期国語辞書大系』(大空社、1997~)、『タイポグラフィの基礎』(誠文堂新光社、2010)がある。

*

【編集部から】

2011年11月、三省堂創業130周年を記念し三省堂書店神保町本店にて開催した「三省堂 近代辞書の歴史展」では、たくさんの方からご来場いただきましたこと、企画に関わった側としてお礼申し上げます。期間限定、東京のみの開催でしたので、いらっしゃることができなかった方も多かったのではと思います。また、ご紹介できなかったものもございます。
そこで、このたび、三省堂の辞書の歩みをウェブ上でご覧いただく連載を始めることとしました。
ご執筆は、この方しかいません。
境田稔信さんから、毎月1冊(または1セット)ずつご紹介いただきます。
現在、実物を確認することが難しい資料のため、本文から、最終項目と「猫」「犬」の項目(これらの項目がないものの場合は、適宜別の項目)を引用していただくとともに、ウェブ上で本文を見ることができるものには、できるだけリンクを示すこととしました。辞書の世界をぜひお楽しみください。
不定期の水曜日の公開を予定しております。

2016年 10月 5日