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ネット座談会 ことばとキャラ 第11回

2016年 10月 21日 金曜日 筆者: 宿利 由希子

ネット座談会「ことばとキャラ」第11回

【発言者】宿利由希子

 ちょっと間が空いてしまいましたが,定延先生,お返事ありがとうございました。私はA子ちゃんの言動から彼女を「偽者」と認定していたのですね。「意図的な振る舞いを越えたところにある「人物論」は,ポライトネスではどうしようもない」とのこと,納得です。

 しかし,定延先生と瀬沼先生のやりとりから,また疑問が出てきました。どうすれば「偽者認定」されずに済むか,です。

 瀬沼先生は,「若者たちが,仲間たちから与えられたキャラという名のレッテルを素直に受け入れて」おり,「他者とうまく接していくために,与えられたキャラという役割を「演じる」場面が多い」ことをご指摘されています。また,定延先生も第3の「キャラ」として,「オレは実は学校とバイト先でキャラが違うんだ」と書き込んだり,「この人たちと一緒にいると,私はいつのまにか姉御キャラになってしまって,若い男の子たちが寄ってこない。悲しい」とブログでぼやいたりするような「キャラ」を例に挙げられています。つまり,現代の日本語社会では,多くの人が「キャラ」を「演じて」いるということですよね。その中には「偽者」と認定される人もいれば,「本物」と認定される人もいます。

 日本語非母語話者の方々に日本語を教える際,キャラごとの言動パターンをどのように指導すべきかいつも悩みます。非母語話者は,母語でない日本語を用いるわけですから,母語話者以上に「演じる」必要があり,「偽者認定」される可能性も高いはずです。日本語教育の世界では,初級の段階から「丁寧さが伝わるように話しましょう」と指導する傾向にあるように思います。しかし,その学習者の丁寧さが,日本人に「わざとらしい→偽者→感じが悪い」と評価される可能性も十分にあるわけです。

 以前,ベケシュ先生の「ハビトゥス」に関するご講演で「行為者の言動は習慣の繰り返しにより規則化された傾向「ディスポジション」となり,さらに無意識的な「ディスポジション」の集合体「ハビトゥス」になる。それがキャラにつながる」というお話をお聞きしました。

 「ハビトゥス」は行為者のキャラの「本物認定」につながるでしょうか。また,その言動が「ハビトゥス」になれば,行為者の外見や声質がその言動と合っていなくても「偽者認定」を受けずに済むのでしょうか。もしそうなら,日本語教師はキャラの言動のサンプルを学習者に提示し,学習者がそれを最初は意識的に練習し,徐々に無意識にできるようになれば,「キャラ完成!」というわかりやすいパターンで指導でき,現場としては大変ありがたいのですが。

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【筆者プロフィール】

宿利由希子(しゅくり・ゆきこ)
1980年生まれ。
群馬大学社会情報学部卒業,東北大学大学院文学研究科(修士課程)修了,神戸大学大学院国際文化学研究科(博士課程)在学。
韓国,香港,仙台の日本語学校および宮城県国際化協会(非常勤講師),ノボシビルスク国立大学(国際交流基金日本語専門家),東北大学(日本語・日本文化交換留学コーディネータ)。海外産業人材育成協会関西研修センター在職(非常勤講師)。
専門は,日本語教育。

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【編集部から】

新企画「ことばとキャラ」は,金田純平さん(国立民族学博物館),金水敏さん(大阪大学),宿利由希子さん(神戸大学院生),定延利之さん(神戸大学),瀬沼文彰さん(西武文理大学),友定賢治さん(県立広島大学),西田隆政さん(甲南女子大学),アンドレイ・ベケシュ(Andrej Bekeš)さん(リュブリャナ大学)の8人によるネット座談会。それぞれの「ことばとキャラ」研究の立場から,ざっくばらんにご発言いただきます。

2016年 10月 21日