続 10分でわかるカタカナ語

第3回 オルタナティブ

2017年3月18日

どういう意味?

「既存・主流のものに代わる(何か)」のことです。「オルタネイティブ」「オルターナティブ」ともいいます。

もう少し詳しく教えて

オルタナティブ(alternative)は、もともとは「AとBから1つを選ぶ」、すなわち「二者択一」という意味です。そこで日本語の文章でも、オルタナティブがこの意味で使われる場合があります。例えば「コストと安全性はオルタナティブな関係であってはならない」といった用例がこれにあたります。ただし日本語では、このような使われ方はまれです。

いっぽう英語では「Aに代わるB」という意味もあります。このうちAは、多くの場合「既存・主流の何か」を意味します。そこでオルタナティブは「既存・主流のものに代わる何か」という意味でも使われます。例えば「オルタナティブな政策」とは「既存・主流のものに代わる政策」を意味します。

どんな時に登場する言葉?

あらゆる分野で登場する言葉です。また技術・貿易・医療・教育・音楽・投資などの分野では、オルタナティブ○○という語形の専門用語も存在します。

どんな経緯でこの語を使うように?

オルタナティブという概念が注目されたのは1960~1970年代のこと。この時代にオルタナティブテクノロジー、オルタナティブトレード、オルタナティブメディシン(オルタナティブメディスン)といった新概念が相次いで登場しました。

このうちオルタナティブテクノロジーは「省エネルギーまたは無公害の技術」のこと。具体的には、再生可能エネルギー(風力・太陽光など)の利用技術などをさします。またオルタナティブトレードは、現在で言う「フェアトレード(公正貿易)」のこと。さらにオルタナティブメディシンとは「西洋医学とは異なる医療的手法」、すなわち漢方、鍼灸(しんきゅう)、ヨガなどをさします。いずれの概念も、既存・主流の手法とは異なる手法を提示しています。

オルタナティブの使い方を実例で教えて!

○○のオルタナティブ

既存・主流のものではない何かを表現する場合に「○○のオルタナティブ」と表現することができます。例えば「既存・主流のものに代わる政策」のことを「政策のオルタナティブ」と表現できます。

オルタナティブな○○

また同様の意味を「オルタナティブな○○」とも表現できます。例えば「既存・主流のものに代わる政策」のことは「オルタナティブな政策」とも表現できます。「オルタナティブな技術」「オルタナティブな働き方」などとも使われます。

オルタナティブ教育

オルタナティブを含む複合語はたくさんあります。例えば「オルタナティブ教育」(代替教育)とは「伝統的または正規のものとは異なる教育方法や教育機関」を総称する概念です。日本におけるフリースクールなどがこれに該当します。

オルタナティブロック

ロック音楽の世界では、オルタナティブロック(略称はオルタナ)と呼ばれるジャンルがあります。1980年代に「既存の商業主義的なロックへの対抗」として広まった音楽的傾向とされます。

オルタナティブ投資

投資の世界では株式や債券への投資が、伝統的あるいは主流の投資手法とされます。そのいっぽうで「これに含まれない投資手法」のことを、オルタナティブ投資(代替投資)と呼んでいます。具体的には不動産、プライベートエクイティ(未公開株)などへの投資や、ヘッジファンド(投機的な運用を行う投資信託)の投資手法がこれに含まれます。

言い換えたい場合は?

まず「オルタナティブな○○」を言い換えたい場合は「従来とは異なる○○」「主流とは異なる○○」「代替的な○○」「代わりの○○」「もうひとつの○○」「別の○○」などの表現を試してみてください。また名詞の「オルタナティブ」を言い換える場合は「代替(手段・手法・案…)」「別の可能性」「代わりの選択肢」などの表現を試してみてください。

さらに複合語の言い換えについては、オルタナティブを「代替」に差し替える方法が定着しています。例えばオルタナティブ投資は「代替投資」と言い換えることが可能です。ただし単純な言い換えだけでは、言葉の背景を伝えることが難しいかもしれません。その場合は「言い換えようとする言葉が、従来の概念や主流の概念とどう違うのか」という点を考えて、文章を補足してみてください。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

ALT (オルト/アルト)キー  パソコンをお使いの方は、キーボードの中に「Alt」と刻印されているキーが存在することをご存知のことでしょう。この Alt とは、 alternate(=代替・交互)の省略形。つまり alternative の親戚ということになります。

筆者プロフィール

もり・ひろし & 三省堂編修所

新語ウォッチャー(フリーライター)。鳥取県出身。プログラマーを経て、新語・流行語の専門ライターとして活動。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)の「流行観測」コーナーや、辞書の新語項目、各種雑誌・新聞・ウェブサイトなどの原稿執筆で活躍中。

編集部から

「インフラ」「アイデンティティー」「コンセプト」等々、わかっているようで、今ひとつ意味のわからないカタカナ語を詳しく解説し、カタカナ語に悩む多くの方々に人気を博したコンテンツ「10分でわかるカタカナ語」が、ふたたび帰ってきました。

「インテリジェンス」「ダイバーシティー」「エビデンス」など、日常生活の中で、新たなカタカナ語は引き続き、次々に生まれています。世の中の新しい物事は、カタカナ語となって現れてくると言っても過言ではありません。

これら悩ましいカタカナ語をわかりやすく考え、解説してゆきます。

毎週土曜日更新。