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続 10分でわかるカタカナ語 第9回 ドメスティック

2017年 4月 29日 土曜日 筆者: もり・ひろし & 三省堂編修所

10分でわかる「ドメスティック」の意味と使い方

どういう意味?

 「家庭内の」「国内の」という意味です。

もう少し詳しく教えて

 ドメスティック(domestic)は、多く、他の語に付いて、「家庭内の」や「国内の」という意味を表します。

 メディアなどでよく耳にするのは、配偶者や恋人からの暴力を意味する「ドメスティックバイオレンス(domestic violence)」という語としてでしょう。この場合、ドメスティックは「家庭内の」を意味します。

 ドメスティックはまた、「国内の」という意味でも使われます。例えばファッション分野では、国内のブランドのことを「ドメスティックブランド(domestic brand)」と呼ぶ習慣があります。

 「ドメスティックな企業」のように、「~な」の形で使われることもあります。

どんな時に登場する言葉?

 おもに社会問題・ファッション・航空の分野でよく登場します。まず社会問題の分野ではドメスティックバイオレンスが、ファッションの分野ではドメスティックブランドがよく登場します。また航空業界では「国内線」を意味するドメスティックがよく登場します。

どんな経緯でこの語を使うように?

 古くは、大正時代に出版された外来語辞典に「家庭の。一家の。国内の。」という説明で「ドメスティック」という項目が見られます。また昭和の初期に出版された新語辞典にも「国産の」を意味するドメスティックが掲載されていました。

 ただし、一般社会でドメスティックが注目され始めた時期は、比較的最近です。例えば、新聞記事でドメスティックという言葉の登場回数が増えたのは、90年代の末期からゼロ年代(2000年〜2009年)の初期にかけてのことでした(注:朝日・読売・毎日・産経調べ)。この時期にドメスティックバイオレンス防止法(通称。2001年成立)に関する議論が活発化していたことが背景にあります。

ドメスティックの使い方を実例で教えて!

ドメスティックな○○

 おもに国内を意味する文脈で「ドメスティックな○○」と表現することが可能です。例えば「ドメスティックな商品」と言えば「国内製の商品」「国内向けの商品」といった意味です。「ドメスティックな会社」と言えば「海外展開をしていない会社」「日本的な企業風土の会社」というニュアンス、「ドメスティックな作品」と言えば「(内容、流通などの面で)国内市場向け、内向きの作品」ということになります。

ドメスティックブランド

 ファッションの分野では、海外ブランドに対する国内ブランドのことを「ドメスティックブランド」と呼びます。略して「ドメブラ」と言う場合もあります。

ドメスティックバイオレンス

 配偶者や恋人あるいは元配偶者や元恋人から受ける暴力のことです。「DV」と略される場合もあります。日本では、2001年にドメスティックバイオレンス防止法(正式には「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」)が成立したことで、その対策が本格化しました。

 なおDVのうち、恋人間で行われるDVのことを特に「デートDV(和製英語)」と呼びます。

ドメス

 航空業界やその関連業界(旅行代理業など)では、飛行機の国内線を「ドメスティック」と呼ぶ習慣があります。これは英語の domestic line を略した表現です。会社によってはドメスティックをさらに略して「ドメス」「ドメ」などと表現するところもあるようです。

言い換えたい場合は?

 単純にドメスティックを言い換える場合は、「家庭内の」あるいは「国内の」を用いると良いでしょう。またファッションのドメスティックブランドは「国内ブランド」に、また航空のドメスティックは「国内線」に言い換えることが可能です。

 ドメスティックバイオレンスを言い換える場合は、ケースに応じて「配偶者間暴力」「配偶者や恋人による暴力」のような文章表現を試してみてください。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

GDP の D は? 国内総生産(一年間に国内で生み出された付加価値の総額)を意味する「GDP」という言葉。これは Gross Domestic Product を略した言葉です。つまり GDP の D とは、ドメスティックのDなのです。

ドメ男(お) 『現代用語の基礎知識』の若者用語欄に、1991年版から1994年版にかけて「ドメ男」という項目が載っていました。その解説を1994年版から引用しましょう。「英会話ができなくて、外国へも一回ぐらい観光旅行しただけの、もっぱら国内向きの男。海外勤務をする見込みのない会社員。ダメ男(だめな男)に通わせた表現。」

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【筆者プロフィール】

もり・ひろし & 三省堂編修所

■もり・ひろし
 新語ウォッチャー(フリーライター)。鳥取県出身。プログラマーを経て、新語・流行語の専門ライターとして活動。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)の「流行観測」コーナーや、辞書の新語項目、各種雑誌・新聞・ウェブサイトなどの原稿執筆で活躍中。

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【編集部から】

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 これら悩ましいカタカナ語をわかりやすく考え、解説してゆきます。
 毎週土曜日更新。

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2017年 4月 29日