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広告の中のタイプライター(7):Underwood Standard Typewriter No.5

2017年 5月 18日 木曜日 筆者: 安岡 孝一

タイプライターに魅せられた男たち・補遺

『Rotarian』1922年9月号

『Rotarian』1922年9月号(写真はクリックで拡大)

「Underwood Standard Typewriter No.5」は、ワーグナー・タイプライター社が1900年6月に発売したタイプライターです。ワーグナー・タイプライター社は、ワーグナー親子(Franz Xaver Wagner & Herman Lewis Wagner)が、アンダーウッド(John Thomas Underwood)と共に設立した会社で、設立当初からフロントストライク式タイプライターのみをターゲットに、開発・製造をおこなってきていました。「Underwood Standard Typewriter No.5」の爆発的ヒットにより、ワーグナー・タイプライター社は、傘下のアンダーウッド・タイプライター・マニュファクチャリング社をアンダーウッド・タイプライター社に改組し、さらに、ワーグナー・タイプライター社をアンダーウッド・タイプライター社に吸収合併しました(1903年1月29日)。その後、約30年間に渡り、アンダーウッド・タイプライター社は、「Underwood Standard Typewriter No.5」を製造・販売し続けたのです。

「Underwood Standard Typewriter No.5」は、42キーのフロントストライク式タイプライターで、円弧状に配置された42本の活字棒(type arm)が特徴的です。各キーを押すと、対応する活字棒が立ち上がって、プラテンの前面に置かれた紙の上にインクリボンごと叩きつけられ、紙の前面に印字がおこなわれます。30年以上に渡る歴史の中で、様々なキー配列の「Underwood Standard Typewriter No.5」が製造されたのですが、基本的にはQWERTY配列のものが多く、また、最上段の数字キーは234567890-と並んでいるのが基本配列でした。最下段の「Z」の左横と、「/」の右横には、それぞれ「SHIFT KEY」が配置されています。通常の状態では小文字が印字されるのですが、「SHIFT KEY」を押すとプラテンが持ち上がって、大文字が印字されるようになります。右側の「SHIFT KEY」の上には「SHIFT LOCK」キーがあり、「SHIFT KEY」を下げたままにできるようになっています。最上段の「-」の右横には「TABULATOR」キーが、「2」の左上には「BACKSPACER」キーがあります。

上の広告に掲載されている「Underwood Standard Typewriter No.5」は、黒赤2色のインクリボンが使えるモデルで、黒赤を切り替えるボタンが、「TABULATOR」キーのさらに上に付いています。この切り替えボタンは、左右にシーソーの形になっていて、左を下げると黒い文字が、右を下げると赤い文字が、それぞれ印字されます。ちなみに、初期の「Underwood Standard Typewriter No.5」には、この切り替えボタンが付いておらず、黒一色での印字だったようです。

【筆者プロフィール】

安岡孝一(やすおか・こういち)

京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター教授。京都大学博士(工学)。文字コード研究のかたわら、電信技術や文字処理技術の歴史に興味を持ち、世界各地の図書館や博物館を渡り歩いて調査を続けている。著書に『新しい常用漢字と人名用漢字』(三省堂)『キーボード配列QWERTYの謎』(NTT出版)『文字符号の歴史―欧米と日本編―』(共立出版)などがある。

http://srad.jp/~yasuoka/journalで、断続的に「日記」を更新中。

2017年 5月 18日