続 10分でわかるカタカナ語

第12回 ユニバーサル

2017年5月27日

どういう意味?

「全世界にわたる」「すべてで通用する」という意味です。

もう少し詳しく教えて

ユニバーサル(universal)とは「宇宙に関わる・世界的な」「普遍的な」「汎用・万人向け」などを表す言葉です。これらの意味の中核には「すべてで通用する」というイメージがあります。

例えば「ユニバーサルな視野に立つ」という表現は、文脈にもよりますが「世界的な視野に立つ」とか「普遍的な視野に立つ」などを意味します。言い換えると、その視野が世界的あるいは普遍的に「通用する」様子を意味するわけです。これは、特に社会の国際化や環境問題の深刻化などとの関わりにおいてよく使われる意味です。

また「ユニバーサルな機能」という表現は、「汎用の機能」とか「万人向けの機能」を意味します。言い換えると、その機能があらゆる用途やあらゆる利用者に「通用する」様子を意味するわけです。特に福祉分野でこの表現が登場する場合、その多くがノーマリゼーション(性別や年齢、身体能力等に関わらずすべての人がともに普通に暮らせる社会の実現)と関わる概念を表します。

もともと英語の universal は、宇宙や森羅万象のことを意味する universe(ユニバース)の形容詞形です。また universe の語源はラテン語の ūniversum で、直訳で「ひとつになった」ことを意味する言葉でした(参考:「ランダムハウス英和辞典」小学館)。つまり universal という言葉には「ひとつ」というイメージが隠れています。これが「ひとつのことがすべてに通用する」イメージにつながっています。

どんな時に登場する言葉?

あらゆる分野で登場する言葉です。またユニバーサルを含む複合語もあらゆる分野で登場します。例えば福祉(ユニバーサルデザイン)、情報(ユニバーサルアクセス)、社会基盤(ユニバーサルサービス)、電気(ユニバーサル電源)など、さまざまな分野に専門用語が存在します。

どんな経緯でこの語を使うように?

古くから使われている言葉です。例えば明治時代に発行された外来語辞典『日用舶来語便覧』(棚橋一郎・鈴木誠一著/光玉館/1912年)には「ユニヴァーサル」の項目があり「全き(まったき=完全である)、全般の、普遍的」という解説が付いていました。

また21世紀以降では、ゼロ年代(2000年〜2009年)前半のマスコミで、ユニバーサルという言葉の出現頻度が高まった時期がありました。電話事業におけるユニバーサルサービス(後述)について、議論が活発化したことが背景にあります。

さらに、福祉関係で使われ始めていた「ユニバーサルデザイン」という言葉が一般に広がったのも、おおよそゼロ年代以降のことでした。

ユニバーサルの使い方を実例で教えて!

「ユニバーサルな観点」

いずれの意味においても「ユニバーサルな」「ユニバーサルに」などの形を使うことができます。例えば「ユニバーサルな観点」「ユニバーサルに展開」といった具合です。

「ユニバーサルデザイン」

障害の有無などに関係なく、すべての人が使いやすいように製品・建物・環境などを設計(デザイン)することを「ユニバーサルデザイン」といいます。ここでのユニバーサルは「万人向け」という意味です。似た概念に「バリアフリー」がありますが、こちらは「障害者・高齢者」などの視点を重視する概念。ユニバーサルデザインは「万人」の視点を重視する違いがあります。

「ユニバーサルアクセス」

情報・通信・放送などの分野では「障害の有無や社会階層の違いなどに関わらず、誰でも情報や情報システムを利用できること」を「ユニバーサルアクセス」と呼びます。またその権利のことを「ユニバーサルアクセス権」とも呼んでいます。

「ユニバーサルサービス」

また社会基盤(電話・電力・ガス・水道・郵便・放送・医療など)の分野では「社会全体で誰もが平等に享受できるようにすべき公共サービス」のことを「ユニバーサルサービス」と呼んでいます。ここでもユニバーサルが万人向けの意味で使われています。

例えばNTT東日本・西日本には電話事業におけるユニバーサルサービス(固定電話の全国網の維持、緊急通報のシステム運用など)が義務付けられています。そのサービスを運営するための原資は、他事業者が拠出する(=他事業者の利用者が利用料金を通じて支払う)基金によって賄われています。

「ユニバーサル電源」

汎用を意味するユニバーサルにも、さまざまな複合語が存在します。例えば電気・電子機器の分野では、世界各地の様々なプラグ形状や電圧に対応した電源装置のことを「ユニバーサル電源」と呼びます。またカメラの分野では、異なるメーカーでも共用できる交換用レンズの接続規格を「ユニバーサルマウント」と呼びます。

「ユニバーサルタイム」

いわゆる世界時(学術的にはUTC = 協定世界時、UT0、UT1、UT2 の総称)のことを「ユニバーサルタイム」と呼びます。これは「世界の」という意味のユニバーサルの例です。

言い換えたい場合は?

文脈によって「宇宙に関わる」「世界的な」「普遍的な」「汎用」「万人向け」などの表現から、適切な言葉を選び取って下さい。同じ「ユニバーサルな観点」という表現を言い換える場合でも、文脈によって「世界的な観点」を表す場合もありますし、「汎用性という観点」を表す場合もあります。

なお国立国語研究所の『「外来語」言い換え提案』(2006年)では、ユニバーサルサービスを「全国一律サービス」「全国均質サービス」に、またユニバーサルデザインを「万人向け設計」「だれにでも使いやすい設計」に言い換える提案を行っています。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

USB の U パソコンとプリンターをつなぐ時や、スマホとコンセントをつなぐ時などに登場する「USB ケーブル」。この USB とは universal serial bus(ユニバーサルシリアルバス)の略。「汎用のシリアルバス」(注:シリアルバスは通信方式のひとつ)を意味します。「情報機器にあらゆる周辺機器を接続できる」という特徴が「ユニバーサル(汎用)」という名前に表されています。

筆者プロフィール

もり・ひろし & 三省堂編修所

新語ウォッチャー(フリーライター)。鳥取県出身。プログラマーを経て、新語・流行語の専門ライターとして活動。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)の「流行観測」コーナーや、辞書の新語項目、各種雑誌・新聞・ウェブサイトなどの原稿執筆で活躍中。

編集部から

「インフラ」「アイデンティティー」「コンセプト」等々、わかっているようで、今ひとつ意味のわからないカタカナ語を詳しく解説し、カタカナ語に悩む多くの方々に人気を博したコンテンツ「10分でわかるカタカナ語」が、ふたたび帰ってきました。

「インテリジェンス」「ダイバーシティー」「エビデンス」など、日常生活の中で、新たなカタカナ語は引き続き、次々に生まれています。世の中の新しい物事は、カタカナ語となって現れてくると言っても過言ではありません。

これら悩ましいカタカナ語をわかりやすく考え、解説してゆきます。

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