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モノが語る明治教育維新 第11回―文部省発行の家庭教育錦絵 (1)

2017年 6月 13日 火曜日 筆者: 唐澤 るり子

第11回―文部省発行の家庭教育錦絵 (1)

 これまでご紹介したように、当時の文部省は教科書や掛図、地球儀など学校教材を自ら手掛けることもしていましたが、その視線は家庭教育にも向けられていました。

 明治6年、「幼童家庭ノ教育ヲ助ル為メニ」「画四十七種製造ノ器二品ヲ頒布ス」との布達を出し、実際に未就学児童向けに47枚の玩具絵(子ども用の錦絵)と玩具2点(カードゲームのような玩具と女児用織機)を製造頒布、その後数年のうちに100種類以上もの教育錦絵を世に出したのです。明治6年といえば全国的に学校が始動した年、その当初から学校だけではなく幼児教育、特に就学以前の家庭教育が大切なことを、欧米に範を取りつつ認識していたことがわかります。

 「文部省報告」では、親が姑息の愛におぼれ、子どもを好き勝手に遊ばせ道理の分からない愚かな大人になってから後悔しても遅い、当省が家庭教育の為に欧米列国の先案を模擬して造った絵画玩具を頒布するので、これを用いて徐々に導いていけば、知能も啓発され、徳性は善良となり、就学も順調になる、と発行の意図を高らかに述べています。

 では、そんな教育的効果が高い錦絵とは具体的にどんな内容だったのでしょう。テーマ別に次の6シリーズに分類できます。

1 「衣食住之内家職幼絵解之図」(いしょくじゅうのうちかしょくおさなえときのず) 20枚
2 農林・養蚕関係 16枚
3 教訓・道徳関係 11枚
4 「西洋器械発明者の像」 15枚
5 数理・力学関係 24枚
6 切り取って遊ぶもの 16枚

 このうち1・2・3は江戸期の文物やモラルを引き継いだ伝統的色彩の濃いもの、4・5・6が開化的傾向の強いものといえます。

 具体的な内容を、次回から1つずつ順にみていきます。

◆この連載の目次は⇒「モノが語る明治教育維新」目次へ

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【筆者プロフィール】

『図説 近代百年の教育』

唐澤るり子(カラサワ・ルリコ)

唐澤富太郎三女
昭和30年生まれ 日本女子大学卒業後、出版社勤務。
平成5年唐澤博物館設立に携わり、現在館長
唐澤博物館ホームページ:http://karasawamuseum.com/
唐澤富太郎については第1回記事へ。

※右の書影は唐澤富太郎著書の一つ『図説 近代百年の教育』(日本図書センター 2001(復刊))

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【編集部から】

東京・練馬区の住宅街にたたずむ、唐澤博物館。教育学・教育史研究家の唐澤富太郎が集めた実物資料を展示する私設博物館です。本連載では、富太郎先生の娘であり館長でもある唐澤るり子さんに、膨大なコレクションの中から毎回数点をピックアップしてご紹介いただきます。「モノ」を通じて見えてくる、草創期の日本の教育、学校、そして子どもたちの姿とは。
更新は毎月第二火曜日の予定です。

2017年 6月 13日