« 広告の中のタイプライター(12):Crandall New Model - 『日本国語大辞典』をよむ―第13回 懐かしいことば »

続 10分でわかるカタカナ語 第21回 ドローン

2017年 7月 29日 土曜日 筆者: もり・ひろし & 三省堂編修所

10分でわかる「ドローン」の意味と使い方

どういう意味?

 「無人飛行機」のことです。

もう少し詳しく教えて

 ドローン(drone)は英語がもとになった言葉で、「無人飛行機」のことです。

 昨今よく見聞きする「ドローン」は「回転翼を複数持っている小型ヘリコプター」がほとんどですが、それはドローンの概念の一部にすぎません。例えば機体の形状が回転翼のヘリコプターであっても固定翼の飛行機であっても、どちらもドローンです。また機体がどんな大きさ(小型・大型)か、どんな操縦方法(遠隔操作・自律飛行)かによらず、「無人の飛行体」のことを「ドローン」と言います。

 なお音楽の分野ではドローンに「同じ高さで鳴り続ける(低い)音」の意味もあります。くわしくは後述します。

どんな時に登場する言葉?

 もともとドローンは軍事分野で使われる言葉でしたが、用途の広がりとともに農業(農薬散布など)・物流・土木(建設物の点検など)・災害対策・娯楽(動画撮影など)・報道・警備など、民生の分野でも多岐にわたり使われています。

どんな経緯でこの語を使うように?

 そもそも英語の drone は「蜂(はち)の羽音」や「オスの蜂」のことを意味します。この言葉がなぜ「無人飛行体」を表すのでしょうか。その答えは、軍用機の歴史に隠されています。

 イギリス海軍で1935年から運用されていた、DH82Bという標的機(訓練用の標的とする飛行機)がありました。この標的機DH82Bは、Fairey Queenという偵察用複葉機をもとに作られ、DH82の「B」モデルであることからか、 Queen Bee(女王蜂)との通称を持っていました。このQueen Beeを参考にアメリカ海軍も標的機を自主開発。女王蜂を参考にしたという意味を込めて、自主開発した機体にオスの蜂を意味するdroneと名付けたのです。以後英語では、標的機をtarget drone(ターゲットドローン)と呼ぶ習慣が定着しました。こうして、オスの蜂と無人飛行機が結びついたわけです。

 また1980年代にアメリカで製造開始された無人偵察機「プレデター」が開発されて以降は、無人偵察機や殺傷を目的とした無人機が実戦で使用されるようになりました。これらの無人機もドローンと呼ばれてきました。

 いっぽう、2010年代には「回転翼を複数持つ小型ヘリコプター」をさすドローンが登場します。2010年にフランスのパロット社が「AR Drone」と名付けたクアッドコプター(意味は後述)を発表。以後、ドローンの民生市場が急拡大したのです。日本では2015年にマスコミなどでの注目度が一気に高まり「空の産業革命」という表現も登場しました。

ドローンの使い方を実例で教えて!

「ドローン○○」

 民生利用の拡大に伴い、ドローンを冠した複合語も増え続けています。例えば「ドローンビジネス」(ドローンを応用したビジネス)、「ドローンレース」(ドローンの競争)、「ドローン映像」(ドローンによる空撮映像)などの表現が存在します。

飛行機ではない「ドローン」

 船舶や潜水艦など「飛行機以外の無人機」もドローンと呼ぶ場合があります。「ドローン船」や「水中ドローン」などの表現も登場しました。

音楽の「ドローン」

 音楽の世界では同じ高さで鳴り続ける(低い)音をドローンと呼びます。バグパイプでずっと鳴っている低い方の音などを指します。またそのような音を積極的に用いる「ドローン音楽」と呼ばれる音楽ジャンルも存在します。このジャンルを単に「ドローン」と呼ぶ場合もあります。

言い換えたい場合は?

 まず軍事分野のドローンは「(無人)標的機」「無人偵察機」「無人攻撃機」「無人(航空)機」などと言い換えることができます。また民生用のドローン(遠隔操作・自律飛行が可能な小型のヘリコプター)は、新聞などのマスコミで「小型無人(飛行)機」「無人小型(飛行)機」などの言い換えが定着しています。なお音楽のドローンについては「同じ高さで鳴り続ける音」などの表現を試してみてください。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

マルチコプター 世間一般のドローンのイメージが「回転翼を複数持つ小型のヘリコプター」であることは前述したとおり。このようなヘリコプター(回転翼が3つ以上のもの)を「マルチコプター(multicopter)」と呼びます。このうち特に回転翼が4つのものを「クアッドコプター(quadcopter、クワッドコプターとも)」と呼びます。

マリリン=モンロー 20世紀を代表する女優の一人、マリリン=モンロー(Marilyn Monroe)。彼女のデビューとドローンには、ちょっとした関係がありました。彼女はデビュー前、標的機(ターゲットドローン)の製造工場で工員として働いていたのです。この工場に取材で訪れた米陸軍の報道記者が彼女を撮影。その写真がきっかけとなり、彼女は芸能の道を歩みはじめました。ちなみにその報道記者の上司が、のちに米大統領となる俳優ロナルド=レーガンだったといいます。

  *  

◆この連載の目次は⇒「続 10分でわかるカタカナ語」目次へ

◆以前の連載は⇒「10分でわかるカタカナ語」へ

* * *

【筆者プロフィール】

もり・ひろし & 三省堂編修所

■もり・ひろし
 新語ウォッチャー(フリーライター)。鳥取県出身。プログラマーを経て、新語・流行語の専門ライターとして活動。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)の「流行観測」コーナーや、辞書の新語項目、各種雑誌・新聞・ウェブサイトなどの原稿執筆で活躍中。

*

【編集部から】

 「インフラ」「アイデンティティー」「コンセプト」等々、わかっているようで、今ひとつ意味のわからないカタカナ語を詳しく解説し、カタカナ語に悩む多くの方々に人気を博したコンテンツ「10分でわかるカタカナ語」が、ふたたび帰ってきました。
 「インテリジェンス」「ダイバーシティー」「エビデンス」など、日常生活の中で、新たなカタカナ語は引き続き、次々に生まれています。世の中の新しい物事は、カタカナ語となって現れてくると言っても過言ではありません。
 これら悩ましいカタカナ語をわかりやすく考え、解説してゆきます。
 毎週土曜日更新。

【関連書籍】

●『コンサイスカタカナ語辞典 第4版』
定評あるカタカナ語辞典の第4版。約56,300語収録。詳細は こちら

●『見やすいカタカナ新語辞典』
大きく見やすい活字でカタカナ新語が引ける。約13,000語収録。詳細は こちら

2017年 7月 29日