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地域語の経済と社会 第345回 「こぴっと」全盛!―山梨の方言グッズ近況―

2016年 1月 16日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第345回 「こぴっと」全盛!―山梨の方言グッズ近況―

 第230回「週末は山梨にいました。―山梨の方言グッズ事情2012―」で取り上げた山梨の方言グッズの近況を調査してきました。2012年の時点では,方言絵はがきやハンカチなど,オーソドックスな商品を目にしました。また,取り上げられている方言も,「かじる」〔掻く〕など,外から見ると面白みを感じるものが使われていました。

 その後,NHKの連続テレビ小説「花子とアン」の大ヒットは,方言グッズの世界にも,大きな影響を与えたようです。ドラマの舞台となっただけでなく,甲州弁もふんだんに使われたので,「こぴっと」〔ちゃんと〕「てっ!」〔えっ!〕などをあしらったグッズが出回るようになりました。

 まず,「買える方言」としては,甲州名物のワインのラベル(3種類)です。

「呑んどくんなって」【写真1左】
  〔呑んでください〕
「はんで呑めし」
  〔いつも呑んでください〕
「おんだあが育てた葡萄が こぴっと した葡萄酒に なったっちゅうこんさ, ふんだから はんで呑んでくりょうし」【写真1右】
  〔俺が育てた葡萄がちゃんとした葡萄酒になったということさ。それだから,いつも呑んでくださいよ。〕

 

(画像はクリックで全体表示)
【写真1】 【写真2】
左:【写真1】甲州弁のラベルが貼られた地元産ワイン
右:【写真2】甲州名物「ほうとう」も甲州弁でアピール

 

次に目に飛び込んできたのが,これまた当地の名物「ほうとう」のコピーです。

「今夜は 甲州名物 ほうとうずら こぴっと!! 作ってくりょう!」【写真2】

 第314回「マスメディアが後押し(山梨県の方言)」で紹介された「甲州弁No.1決定戦」でも,「こぴっと」がトップになっていましたね。

 以上のほかに,「買える方言」として,次のような例を確認しました。

○甲州弁スタンプ:
「こぴっとしろし」〔しっかり。ちゃんと〕
「がんばってくりょう」〔がんばってください。〕
「てっ!」〔えっ!まあ!:驚いた時に出る言葉〕
「いいさよ」〔いいよ。大丈夫だよ。〕
「ちょびちょびしちょし」〔調子にのるなよ。〕
「ほうずら」〔そうでしょう。だよね。:同意を求める言葉〕
○甲州弁ストラップ:
「てっ!」「こぴっとしろし!」
○和菓子(饅頭):
「なんずらまんじゅう」〔なんでしょう饅頭〕

 また,「買えない方言」としては,次の例を見つけました。

○観光案内チラシ:
「石和温泉『こぴっと朝めし』」(石和温泉観光協会)
○ホテルの広告:
「泊まっていくじゃん。お城のそばに。」〔泊まっていきましょう〕

 人気を誇った方言グッズですが,ドラマの放送終了後には,富士山の世界遺産登録というビッグニュースが飛び込み,今や,これらの商品はやや影が薄くなり,売り場は富士山関連グッズ全盛です。

 『魅せる方言』でも紹介されている「甲州弁かるた」など,従来の商品に加えて,今後,どんなものが登場してくるか,その展開に注目したいところです。

◇その他、山梨の地域語の回へのリンク
第27回 古株じゃん 新米じゃね
第33回 「方言かるた」あれこれ

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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

『魅せる方言 地域語の底力』大橋敦夫先生監修の本大橋敦夫(おおはし・あつお)
上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。

* * *

【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。

* * *

この連載への質問、また「ここでこんな方言みやげ・グッズを見た」などの情報は、問い合わせフォーム( http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/support/question.html )から、「地域語の経済と社会」への質問・情報である旨を記してご投稿ください。

地域語の経済と社会 第335回 福井でフィールドワーク

2015年 8月 22日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第335回 福井でフィールドワーク

 北陸新幹線開業の時流に乗って,なおかつ「食べにきね、福井」〔食べにいらっしゃい,福井へ〕【写真1】の誘いにも乗って,さらなる新幹線延伸が予定されている福井へ行ってみると……。

 福井駅前には,福井市地域交流プラザが鎮座。その愛称は「アオッサ(AOSSA)」〔会いましょう〕【写真2】。

【写真1】福井への旅を誘う看板 【写真2】福井市地域交流プラザAOSSA外観
  左:【写真1】福井への旅を誘う看板(クリックで拡大)
  右:【写真2】福井市地域交流プラザAOSSA外観(クリックで周辺も表示)

 地元の方に伺うと,「きね」よりも「きねの」,「あおっさ」よりも「あおっさの」の方が,より親しみがわく言い方との由。そのためでしょうか,坂井市の文具店のオリジナル商品である方言金封(のし袋に福井方言をあしらったもの)の語例も,以下のとおり,「の」の使用がポイントになっています。

「かたいけの」〔お元気ですか〕
「またきねの」〔また来てね〕
「ありがとの」〔ありがとう〕
「おおきんの」〔ありがとう〕
「つるつるいっぱいの愛情」〔あふれんばかりの愛情〕

 これまで本サイトで,福井がメインに取り上げられたのは,第139回「いやしの方言(福井県)」のみで,方言グッズが紹介されています。それは,現代的な商品である携帯電話用の画面クリーナーの表面に,福井方言によるメッセージが記されたものと,オーソドックスな商品である福井方言の番付を染め抜いた方言手ぬぐいの2種でした。

 今回の調査で,方言グッズに加えて,方言メッセージと方言ネーミングがあることが確認できました。福井方言を対象にしたものは,今まで,報告が少なかっただけで,多種多様なものがあることがわかりました。

 上記の例以外でも,下記のようなものが記録できました。

○方言グッズ
「これがうまいんじゃ福井」〔これがおいしいですよ〕……サトイモの煮物
「福井方言豆知識」……おせんべい(第243回「青森の方言名のお菓子」第248回「方言名のお菓子の全国展開」で取り上げられている「方言豆知識」シリーズの一つ)
「おちょ金時」……福井特産のサツマイモ「越前金時」を用いた焼き菓子
方言Tシャツ
 「おちょきんしねまっ!」〔正座しなさい〕
 「おちょきん」〔正座〕
 「じゃみじゃみ」〔テレビの画面が,砂嵐のようになっていること〕
 「だわもん」〔怠け者〕
 「つるつるいっぱい」〔あふれるほどいっぱい〕
 「ちゃまる」〔捕まる〕
 「ちゅんちゅん」〔すごく熱い状態〕

○方言メッセージ
「好きやざぁ!福井」……某ビールメーカーのご当地ポスターの標語

こうして見ると,「おちょきん」〔正座〕が好まれていることがわかります。語呂合わせに好適な語だと,一気に用例が増える可能性がありますね。

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『魅せる方言 地域語の底力』大橋敦夫先生監修の本大橋敦夫(おおはし・あつお)
上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。

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皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
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地域語の経済と社会 第325回 信州方言2万円

2015年 4月 4日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第325回 信州方言2万円

 第262回「大阪方言10万円」にならって,長野県方言をあしらった商品がいかほどになるかをまとめてみました。大阪のように,一店舗で10万円を優に超えるというわけには,いきません。ですが,広い県内のあちこちをめぐり,合計すれば,どうやら2万円を超え,京都・愛知・沖縄・青森・岩手の5府県に次ぐことになりそうです。

 根拠となる有力な事例としては,第240回「方言ステッカーで交通安全の呼びかけ(長野県飯田市)」で紹介したステッカーがさらに増えていることが挙げられます【写真1】【写真2】。

【写真1】 【写真2】
  左:【写真1】祖父母世代の強い要望で開発された追加バージョン
  右:【写真2】環境への配慮を県民に呼びかけるニューバージョン

 飯田弁を活用してきた流れに乗る追加バージョンは,飯田地方で多用される「とる」〔~ている〕「もんで」〔~ので〕を使い,決め文句は「かにや」〔堪忍してください〕となっています。

 一方,長野県下で広く親しまれている「ずく」〔気力〕を前面に押し出したニューバージョンは,環境への配慮を呼びかけるものです。

 このほか,本サイトでまだ取り上げていない信州方言グッズでは,

「おひょっくり」〔ひょっとこ〕の語を染め抜いた方言手ぬぐい。当地独特のすいとんを「おひょっくり」と呼んでいる。熱い具材をフーフーしながら食べる顔の様子からの命名。……白馬村
「まめったぃ」〔健やかによく働く〕という靴の中敷き……白馬村
「あちゃまおやき」〔あらまあ(おいしい)〕の語を冠した「おやき」(野菜などを具にした蒸かしまんじゅう)……中野市
「じょんのび」〔気楽だ〕という豆菓子……木島平村
「大まくらい」〔大食い〕という洋菓子……信濃町
「おおまくらい」を超大盛りのざるそばのメニューとしている店がある……長野市
「500円でなっちょ!?」〔どうですか?〕という書名のグルメ&スィーツのガイド本……長野市
「ぬっくたい」〔暖かい〕というネクタイ……長野市

などがあり,2万円超えに貢献しています。

 全国の各都道府県の状況をつかむには,「方言産業グラフ」(井上史雄氏『経済言語学論考』明治書院2011.12 p.149)が参考になります。それによると,「京都・大阪・愛知,青森県付近,高知,鹿児島,沖縄が上位で,大都市と,国土のはずれという両端に際立」っています。また,個別の事例については,『魅せる方言』(三省堂2013.11)の「第二部 買える方言・買わせる方言」をご覧いただくと,品目や地域の広がりを実感できます。

 今日の状況を考えると,私たちのような方言グッズ愛好家の目が行き届きつつあることと,方言を意識的に,積極的に使って,その地域らしさを強くアピールするようになってきたことがあると思われます。

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地域語の経済と社会 第315回 地域通貨の方言ネーミング

2014年 11月 8日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第315回 地域通貨の方言ネーミング

 これまでの連載で取り上げられることのなかったアイテムとして,地域通貨に目を向けてみます。地域通貨とは、『大辞林 第三版』(三省堂)によると「限られた地域や共同体だけで利用できる通貨や通貨システム」のことです。通貨の愛称や単位の命名に,地域の方言を利用している例が十数年前から見られます。長野県内の例をあげてみます。

信州木の駅プロジェクトたつの実行委員会(上伊那郡辰野町)
地域通貨「木判(こばん)」の単位「beyta(ベイタ)」

 「ベイタ」とは,なたで切れる程度の太さの木を意味する当地の方言です。地元の山から間伐材を切り出し,「木の駅」に持ち込むと木判がもらえます。木判は,地元の商店街や飲食店で使えます。

デイサービス施設「美事(みごと)」(松本市)
地域通貨「ずーら」

 第300回「長野県方言の拡張活用例ベスト3」第130回「ずら(その2)」第25回「ずら―長野・山梨・静岡を結ぶきずな」で取り上げた「ずら」が応用されています。リハビリにつながる気軽な運動をした施設利用者が対価として得ます。1,10,100,500,1000の5種類があります。【写真】

【写真】壱ずーら  【写真】各種ずーら紙幣

【写真】地域通貨「ずーら」(クリックで拡大表示)
(施設を「中央銀行(発券銀行)」のように見立てて,「美事銀行」の文字が入っています。)

 利用者の方々の評判も上々ということです。施設内通貨というアイディアに,当地で親しまれている方言「ずら〔だろう。でしょう。(語尾につけて用いる)〕」を用いて命名したことが当たっているようです。

 インターネット上でも,「ずーら」と同様の地域通貨が見られます。662件(2011年1月現在)の中で,現在も通用していると思われるものが11種(上記を入れて13種)見つかりました。大部分が中部地方です。どうしてでしょう。

「やっぺ」〔しましょう〕福島県いわき市
「らて」〔~だと。~だって〕新潟県三条市
「キトキト」〔新鮮(精力的なこと)〕富山県富山市
「きまっし」〔来ましょう(「まっし」は優しい命令や勧誘)〕石川県金沢市
「ござっせ」〔いらっしゃい〕石川県能美市
「だら」〔だろう(推量表現)〕静岡県浜松市
「だら~」〔だろう(推量表現)〕愛知県豊川市
「じゃん・だら・りん」〔~じゃないか(同意確認)・~だろう(推量)・~なさい(勧告) (三河地方を代表する方言)〕愛知県豊橋市
「助け合いチケットじゃん」〔~じゃないか〕愛知県三好町
「だんだん」〔ありがとう〕愛媛県関前村
「よかよか」(〔良い〕を重ねたもの)福岡市博多区

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地域語の経済と社会 第305回 いばらきの「~ぺ」補足(茨城+栃木)

2014年 6月 21日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第305回 いばらきの「~ぺ」補足(茨城+栃木)

 「いばらきの『~ぺ』」については,第96回・第163回・第244回・第249回で取りあげられていますが,その補足を。

 「「~っぺ」は茨城県また千葉県の方言を特徴づけると言ってもいいくらい,両県では勢力のある語法」(第249回)であることを裏付けるかのごとく,以下の用例を確認しました。

「ハスだっぺ」……洋菓子(れんこんサブレー)。レンコン生産日本一の土浦市の銘菓。
「よかっぺまつり」……日立市多賀地区で毎年行われている市民祭り。

 また,販売終了となってしまいましたが,かつてJR水戸駅には,次の2種の駅弁がありました。

「いかっぺ」……イカの唐揚げが載っている弁当。(イカと「いい(良い)」をかけている)
「よかっぺ寿司」……ちらし寿司。

【写真1】ゆずっぺ
【写真1】ゆずっぺ

 とても造語力の高い語なので,今後も用例は増えそうです。

 さらに,茨城県の隣,栃木県でも,「~ぺ」の追加例を発見【写真1】。

「ゆずっぺ」……栃木県産のゆずを使った清涼飲料水。「すっきり爽やかだべ」のキャッチコピーも添えられています。
「うまかんべ」……純米酒。

 このほか,漫画「北斗の拳」での名ゼリフが以下のように栃木弁になってプリントされている方言Tシャツもあります。

「お前はもう死んでっぺ」
「おれの生涯に一片の悔いねえべよ!!」

 「ぺ」もしくは「べ」と発音されるこの語は,関東一円で使われるため俗に「関東べい」と呼ばれます。すでに,上で示したほかに,第220回・第250回(群馬),第263回(埼玉) で紹介したので,神奈川県の例が見つかると面白いですね。地理で「太平洋ベルト地帯」というのを習いますが,「関東「べ(ぺ)ルト」地帯」の用例が完成します。

 なお,「ぺ」「べ」の地理的分布については,GAJ(『方言文法全国地図』国立国語研究所)第3集・第106~114図(動詞・意志形,推量形)で扱われています。それによると,関東から東北一帯を中心に分布していることがわかります。

 このうち,東北の用例については,「方言エール」(第146回)でも,取り上げられており,『魅せる方言 地域語の底力』三省堂(12~13ページ)にも再録されています。

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第96回 ワンポイント方言メッセージ
第163回 「茨城県筑西市」の方言Tシャツ
第244回 イバラキズム宣言(Declaration of “IBARAKISM”)
第249回 「よかっぺ号」が関西へ
第220回 群馬の「だんべ」
第250回 「べーべーことば」を生かした方言グッズ(埼玉県)
第263回 埼玉県秩父には「べえ」がいっぱい
第146回 『地域語の力』~東日本大震災復興のメッセージ

GAJ(『方言文法全国地図』国立国語研究所)第3集
第106図 起きよう(動詞・意志形)
第107図 開けよう(動詞・意志形)
第108図 寝よう(動詞・意志形)
第109図 書こう(動詞・意志形)
第110図 来よう(動詞・意志形)
第111図 しよう(動詞・意志形)
第112図 書くだろう(動詞・推量形)
第113図 来るだろう(動詞・推量形)
第114図 するだろう(動詞・推量形)

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地域語の経済と社会 第300回 長野県方言の拡張活用例ベスト3

2014年 4月 12日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫

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第300回 長野県方言の拡張活用例ベスト3

 300回の節目を迎えたのを機に、主な調査地とした長野県方言の拡張活用例からベスト3を選びました。例の多さやインパクト等を総合的に勘案して、

(写真はクリックで拡大表示)
【写真1】
【写真1】

  Ⅰ.ずく(第5・55・115・190回)
  Ⅱ.ずら(第25・130回)
  Ⅲ.~ず(第175回)

と、してみました。

Ⅰ.ずく[=精を出してする気力]

 和菓子や店名などのネーミング、方言Tシャツを挙げましたが、さらに以下の活用例が加えられます。

①「ずくもち」 和菓子 (上田市内)
②「ずくっ娘味噌」 味噌 (上田市内)
③「ZUKU」 缶バッチ・トートバック;ローマ字表記 (佐久市内)【写真1】
④「ずく出し!知恵出し!おもてなし。プロジェクト」 観光キャンペーン 長野県観光部
⑤「ずくだすガイド」(身体活動ガイドライン) 健康増進運動 長野県健康長寿課
⑥「坂ちゃんのずくだせえぶりでぃ」 番組名 信越放送ラジオ

 「ずく」の使用範囲は、全県を覆っていることもあり、県民に発するメッセージとして選ばれやすい語と言えます(④・⑤)。

Ⅱ.ずら[=~だろう]

 ネーミングやメッセージの例を挙げましたが、清酒「いいずら」の地元には、大町特産館「いーずら」があり、「ズーラ」(信州諏訪温泉泊覧会)は、現在も継続中です。

Ⅲ.~ず[=~しよう]

【写真2】
【写真2】

 その後、公務員募集の方言活用(第271回)の例を見つけました。長野市内を走る路線バスに取り付けられた自衛官募集の広告です。
意味は、「あなたも行きましょう! 一緒にやりましょう!」となります。

 これらのうち、「ずく」は、造語力が強く、「おーずく」[=大きな仕事に立ち向かう活力]、「こずく」[=まめまめしく働く様子]、「ずくなし」[=怠け者]などの類語とともに、県民に親しまれており、方言みやげ・グッズ・ネーミング・メッセージなど、今後も、さまざまな方式での活用が予想されます。

第5回 信州人の好きなことば―「ずく」をめぐって―」
第55回 信州人の好きなことば―『ずく』をめぐって―(その2)
第115回 方言Tシャツ(長野県・下諏訪町)
第190回 若手経営者の方言選択(長野市)
第25回 ずら―長野・山梨・静岡を結ぶきずな
第130回 ずら(その2)
第175回 九州で信州弁の謎かけ

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地域語の経済と社会 第295回 まだまだあります、埼玉方言グッズ

2014年 3月 8日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第295回 まだまだあります、埼玉方言グッズ

 第250回第263回につづいて、埼玉県内で見つけた方言グッズのご紹介を――。

 まずは、その名も「方言銘菓 そうなん娘」(深谷市・西倉西間堂)。

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【写真1】

 パッケージの裏の説明には、

「そうなん」とは埼玉県北部・群馬県東部地方で使われる方言で「そうですか」という意味です。おもに「相槌(あいづち)」として使われるこの言葉は、相手のはなしに調子を合わせる暖かみのある言葉としてこの地方の人たちに使われています。

と、あります。

 つづいて、秩父郡でみつけた味噌2点、その名は「おあがんな」「あちゃむし」。

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【写真2】(クリックで拡大表示)

 それぞれのパッケージには、

  「うまい御御御付(おみおつけ)をたっぷりおあがんな」
  「うまい御御御付(おみおつけ)ならあちゃむし この味噌だんべ」

(編集部注=「おあがんな」「あちゃむし」「だんべ」に圏点)

のコピーも添えられています。

 命名の由来等を伺ってみました。

*

●たくさんの種類の商品を販売なさっている中で、この2点に方言で名付けをされたのは、なぜですか?

 秩父地方の名産である大豆を使用しているので、秩父らしさを出すために、当地の代表的民謡の「秩父音頭」にヒントを得ました。歌詞の中に、「ちいろばよつて おあがんな」[=火のそばへ あおがりください]があり、囃し言葉は、有名な「あちゃむしだんべ」です。

●お客様の反応はいかがですか?

 発売から15年ぐらいになりますが、大豆等の原材料の生産地を秩父と限定しているので、埼玉県からも「地産地消食品」の認定をいただきました。製造量と販売量のバランスの良い商品です。

(新井武平商店・新井藤治氏談)

*

 以前の例に加えて分析してみると、秩父は、「秩父音頭」を生かして、用例が豊富になっていることがわかります。本連載をまとめた『魅せる方言』(三省堂 2013)でも示している「方言でおもてなし」「方言みやげ・グッズ」「方言メッセージ」「方言ネーミング」などの各例において、「べぇ」の使用が中心になっています。

 今後は、埼玉県東部での発見にチャレンジしたいと思っています。

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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

大橋敦夫先生監修の本大橋敦夫(おおはし・あつお)
上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。

* * *

【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。

* * *

この連載への質問、また「ここでこんな方言みやげ・グッズを見た」などの情報は、問い合わせフォーム( http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/support/question.html )から、「地域語の経済と社会」への質問・情報である旨を記してご投稿ください。

地域語の経済と社会 第290回 地域ブランド創世のキャッチフレーズは、地域の言葉で「やらまいか」(静岡県浜松市)

2014年 2月 1日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第290回 地域ブランド創世のキャッチフレーズは、地域の言葉で「やらまいか」(静岡県浜松市)

 「やらまいか」とは、浜松市でよく使われる方言で、「やってみよう」「やろうじゃないか」を意味します。浜松商工会議所では、この語を用いた「やらまいか浜松」を地域ブランド創世のキャッチフレーズに採用しています(第261回参照)。

 「やらまいか浜松」認定の品目には、特産のミカンやうなぎに交じって、浜松初のブランド米、その名もずばり「やら米か」(浜松地域特別栽培米研究会)があります。

「やら米か」

*

●命名のねらいは?

 「やら米か」は、静岡県浜松市内の浜松地域特別米栽培研究会会員(23人)によって生産される浜松地域初のブランド米です。ネーミングを検討した結果、メインターゲットである浜松の消費者になじみのある方言をもじった「やら米か」に決定しました。

 「やら米か」という言葉には、「(皆で一緒に)やってみよう」という浜松人の心意気を象徴する前向きな思いがこめられています。

 「やら米か」のブランド化活動は、「誰がいくらで買ってくれるか分からない」という意見もあるなか、「何もしなければ何も変わらない、できることから、みんなではじめよう」という、まさに「やらまいか精神」から始まった活動です。

●お客様の反応は、いかがですか?

 お客様皆様、特に浜松地域にもともと住んでいる方の「やら米か」認知度は高く、若い方から年配の方まで商品名に親しみを持ってくださっています。

浜松市外や遠方のお客様には「やらまいか」という方言独特のユニークな響きが受けているようです。

*

 ちなみに、ホンダの創業者・本田宗一郎氏(浜松で起業)の評伝のタイトルにも、この言葉が使われています。(梶原一明監修『本田宗一郎の見方・考え方――ビジネスには「やらまいか」精神で当たれ!――』PHP研究所 2007)

 なお、「やらまいか」と、それに類似する表現は、長野県の南部でも使われており、「なやし方言」(第25回参照)の一例に加えられそうです。以下に、その使用例を挙げてみましょう。

[長野県飯田市]
 ・書名
  『やらまいか松尾――自分たちのまちは自分たちの手で――(松尾地区基本構想)』(飯田市:松尾地区自治会 2002)
 ・市政に対する市民からの提言箱の愛称
  「やらまいか提言」(平成10年代半ばから使用)

「やらまいか提言箱」

[長野県木曽福島町]
 ・書名
  『つくらまいか 木曽福島の味』(四季の会(木曽福島町)編・木曽農業改良普及センター 2001)
  『つくらまいか 木曽の味』(四季の会編・発行 2009)

 勧誘表現の全国分布については、GAJ(『方言文法全国地図』国立国語研究所)第5集・第235図・第236図(「行こうよ」)で扱っています。

第235図 http://www2.ninjal.ac.jp/hogen/dp/gaj-pdf/gaj-map-legend/vol5/GAJ5-235.pdf(PDF)
第236図 http://www2.ninjal.ac.jp/hogen/dp/gaj-pdf/gaj-map-legend/vol5/GAJ5-236.pdf(PDF)

 それによると、岐阜(イコマイカ・イカマイカ・イカマイ)・愛知(イコマイ・イカマイ)にも分布のあることがわかります。

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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

大橋敦夫先生監修の本大橋敦夫(おおはし・あつお)
上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。

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地域語の経済と社会 第285回 方言と外国語で感謝――大手企業の言語戦略――

2013年 12月 21日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第285回 方言と外国語で感謝――大手企業の言語戦略――

 本欄執筆者からすると、目にした瞬間、一気にテンションが上がる商品がありました(発売期間は2012年3月から、4か月ほど。残念ながら、現在は販売終了)。

 その名も「THANK YOUのキモチガム」【写真1】。「方言でキモチつながる」「世界の言葉でキモチつながる」のコピーと共に、「ありがとう」の意を表す日本各地の方言と外国語が包み紙に印刷されています。

THANK YOUのキモチガム
【写真1】(写真提供:ロッテ)
(クリックで拡大)

 方言研究の面からも、興味をそそられる内容であり、いろいろとお話を伺ってみました。

*

●方言を取り上げたねらいは、何ですか?

 この商品が発売される前に、伝えたいキモチを選んで、応募してもらうキャンペーンを実施し、弊社から12種類を提示したのですが、その中で1位に選ばれたのが「ありがとう」でした。キモチを伝える上で、色々な表現があるなと考え、方言やさまざまな言語を使ったらどうだろうと考え、採用しました。

 ガムは、コミュニケーションツールでもあるので、ガムを渡した時に、包み紙に書いてあるちょっとした話題になればと思いました。

●御社の過去の商品において、類例がありましたか?

 ありません。

●「ありがとう」(感謝)をテーマに選んだのは、なぜですか?

 上記のように、キャンペーンで提示した12種類のうちから1位に選ばれました。

●方言(地域)や外国語は、どのようにして選び出されたのですか?

 方言が5種類、外国語が3種類、メッセージが書き込めるようになっているのが1種類で、計9種類です。
 全国で発売する商品なので、エリアに偏りがないようにしました。

●お客様の反響はいかがでしたか?

 本品と同時に、「甘ずっぱい恋のキモチガム」「シャキッと1枚!のキモチガム」【写真2】も発売しました。

「甘酸っぱい恋のキモチガム」「シャキッと1枚!のキモチガム」
【写真2】(写真提供:ロッテ)
(クリックで拡大)

 ブログなどで取り上げていただきました。お客様の印象に残ったのではないかと考えております。

●今後も、同種(方言をあしらった)の商品展開をお考えですか?

 現在のところ、同様の企画は考えておりません。

(株式会社ロッテ・大峠美貴氏談)

 市場調査をふまえた上での商品開発であることが理解できるお話でした。全国的な商品展開をする中にあって、現代における方言の位置づけ(気持ちを込めるには方言が有効)が示されている好例と思われます。

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(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

大橋敦夫先生監修の本大橋敦夫(おおはし・あつお)
上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。

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皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。

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地域語の経済と社会 第280回 鳥取の地酒を、鳥取方言で

2013年 11月 16日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第280回 鳥取の地酒は、鳥取方言で

 その地域の方言が、地元産のお酒(日本酒や焼酎)のネーミングに用いられている例は、これまでにも折々取りあげられました(第12571225263回参照)。

 それらは、たいてい1メーカーの1銘柄だったわけですが、6品まとめて店頭に並んでいる例を見つけました。

(写真はクリックで拡大表示)
【写真1】

 鳥取県内の6つの蔵元が、「鳥取飯酒」の共通ブランド名のもと、それぞれの1銘柄に対して、鳥取方言をあしらったラベルを貼っています。

 「あっとろし」[=驚いた] 「がんじょ」[=頑張る]
 「えらい」[=疲れた]   「すいたやに」[=好きなように]
 「がいな」[=大きい]   「たばこしょいな」[=休憩しましょう]

また、それぞれの方言のわきには、

 「鳥取県の酒はなぁ、どれも旨い」
 「カニも飲んどるで」
 「あっとろし! それで赤いだか!」
 (えーびっくり! それで赤い色をしているのか)

のように会話例がついていて、ユーモアとともに方言の使い方が生き生きと示されています。

 「鳥取飯酒」とは、鳥取県酒造組合HPによると、

 清らかな水と米、蔵元のこだわりが生む上質な地酒と、日本海と中国山地の恵みを受けた新鮮な山海の幸をこよなく愛する県民応援団によって平成18年に設立。
 鳥取の純米酒と肴を楽しみ、鳥取県の地酒の輪を増やしていくことがその旨です。

との由。そこで、さらにお話を伺ってみました。

*

●「鳥取県御国言葉ノ酒」開発の経緯を教えてください。

(写真はクリックで拡大表示)
【写真1】

 4年ほど前に需要開発活動のひとつとして発売し、当時17社が各1銘柄ずつを販売しました。(現在は、廃業等により2社が撤退。)

●方言は、どのようにして選ばれたのですか。

 当組合の需要開発委員会で選びました。鳥取県の場合、東中西部で明確に異なる言葉使いもあるので、各地域でこよなく愛されている言葉を盛り込むようにしました。

   東部……あっとろし,えらい,しょうから[=わんぱく],まんぐるじゅう[=回り中],がんじがんじ[=よく噛む]
   中部……ごしないな[=~して下さい],かっさま[=本当に!?],きょーてー[=怖い],すいたやに,たばこしょいな,よからぁ[=それでいいでしょう],なんだいや[=どういうことだ]
   西部……ばんじまして[=こんばんは],あげ、どげ、そげ[=あれ・どれ・それ],ええしこ[=いい具合に],がいな,がんじょ

 また、できればお酒を飲んでいる場所で、気軽に使ったり、県外の方が「え、こんな表現するのか」と興味をひく表現も入れるようにしました。解説も、「地元の日常的情景」が浮かぶようなスタイルを心がけました。

●「たばこしょいな」は、今も地元の皆さんの日常語ですか。

 主に、県中部・西部の言葉ですが、50代から上で使う言葉です。いわゆる「おじいちゃん語」です。「たばこ=休憩」の意味を知らない方は、「いや吸いません」と必ず断ります。ただ、20代以下でも地元なら意味は通じると思われます。

●お客様の反応はいかがですか。

 反応は様々ございますが、中部のある蔵元さんは発売から4年たった今でも、方言ラベルの増刷をされています。また、全種類集めて、「方言パネル」のようにしている方もいらっしゃいます。

●そのパネルをぜひとも拝見したいですね。

*

 なお、選ばれている語のうち、「えらい」は、鳥取県域で広く使われている語です。また、「がんじょ」は、『日葡辞書』(1603年)にも「がんじょう」[=労働をしたり、旅行をしたりなどする体力]として載っていて、意味の変化はあるものの、鳥取方言の特徴の一つである語彙の古態性を示すものです。

 総じて、日本酒の香り・味とともに、鳥取らしさをアピールすることに成功していると言えるのではないでしょうか。

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言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

大橋敦夫先生監修の本大橋敦夫(おおはし・あつお)
上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。

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