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地域語の経済と社会 第185回 ご当地マスコットがしゃべった!
2012年 1月 21日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第185回 ご当地マスコットがしゃべった!
「ゆるキャラ」と称され、全国各地で親しまれているご当地マスコット。名産品などにちなんで作られるものが多い中にあって、ありそうでなかったのが、ご当地のコトバをしゃべるマスコット。
が、ありました!その名も「いまばりゆるきゃら バリィさん」(愛媛県今治市)。

【いまばりゆるきゃら バリィさん「ステッカー」】
2009年5月、瀬戸内しまなみ海道(尾道市~今治市)10周年を盛り上げようと製作されました。
焼き鳥日本一のまち・今治生まれということで、トリがモチーフ。今治タオルの腹巻をし、来島海峡大橋形の王冠をかぶり、手には船の形の財布を持っています。そして、今治地方の方言を使いこなすことも、大きな特徴とされています。
「いまばりのことしっとるで? なんでもきいとん おしえたるけん!」のセリフにたがわず、今治弁講座も開いてくれています。
このほかにも、ゴーフレット・クッキー・ドーナッツ・お酒・フィナンシェ・ふりかけ・Tシャツ・クリアファイル・カレンダー・年賀状・ぬいぐるみ・ストラップ・ノートといった提携商品が作られています。
あえて今治弁を語らせた点について、製作サイドでは、
「今治弁がどんなものなのか、たくさんの人に知ってもらいたいと思っています。それと同時に、今治から県外に出られている方々には、なつかしんでもらいたいと思っています。方言は、人の心をあたたかい気持ちにする力があると思いますので、これからも今治弁で話していくつもりです。」
とおっしゃっています。
東京都内のアンテナショップでも、懐かしがっているお客さんが多く、地元で親しまれているマスコットだということがよくわかります。
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【筆者プロフィール】
言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)
大橋敦夫(おおはし・あつお)
上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。
【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。
この連載への質問、また「ここでこんな方言みやげ・グッズを見た」などの情報は、問い合わせフォーム( http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/support/question.html )から、「地域語の経済と社会」への質問・情報である旨を記してご投稿ください。
地域語の経済と社会 第180回 おもてなしの気持ちを方言にこめて(長野市)
2011年 12月 10日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第180回 おもてなしの気持ちを方言にこめて(長野市)
長野市内では、毎年2か所にスポットがあてられ、観光地を積極的にPRしています。今年は、信州新町と篠ノ井。それぞれ「2011信州新町イヤー」「2011篠ノ井イヤー」のスローガンのもと、さまざまな催し物が企画され、観光客の呼び込みを期待しています。
信州新町のポスターやチラシでは、「寄ってけさ」「くつろいでけさ」と呼びかけています。「さ」は、共通語では「よ」に相当し、勧誘の文には付きにくいとされています。が、「さ」が付くと、暖かみが増すように感じられますが、いかがでしょうか。新町を「心町」と表現している点とあわせて、製作者のねらいがこのあたりにあるようですね。
一方、篠ノ井には、駅前商店街のなかに、「駅前案内所・お休み処 およんなし亭」が開設されています。

【およんなし亭の入り口柱と看板】
「どうぞお寄んなして」[=どうぞお寄りください]にかけた命名で、「当地の最高のホスピタリティをあらわす言葉として名づけました。」とは、内山 一氏(篠ノ井地区まちづくり研究会会長)の弁。
「観光客の方はもちろん、地元の方にも向けた表現・施設で、お気軽にご利用ください。」との由。
寒さの折から、皆様、信州へ心も暖まりに、どうぞおよんなして。
なお、類例が第133回で紹介されています。
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【筆者プロフィール】
言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)
大橋敦夫(おおはし・あつお)
上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。
【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。
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地域語の経済と社会 第175回 九州で信州弁の謎かけ
2011年 11月 5日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第175回 九州で信州弁の謎かけ
この秋、観光立県をめざす長野県が福岡市を中心に大々的に信州観光のPRを行いました。そのアイテムの一つが福岡市地下鉄の車内釣り広告で使われたポスターです。
これをご覧になって、「おや?」と思われたら、製作者のねらい通りというものです。
「『誘い文句がくるべきところに、なぜ、否定の言い方をしているのだろう』との疑問を出発点に、信州に興味を持っていただきたいとの思いで、じっくり広告を見てもらえる時間のある電車内で、あえてひねった信州弁を使いました」とは、このポスターのコピーを考え出した担当者の方(長野県企画部企画課ブランド推進係)のお話です。
この一見、反対言葉のように感じられる表現ですが、長野県上田市あたりでは、「真田の逆さ言葉」と解説する場合があります。由来は、戦国時代にさかのぼります。甲斐の武田信玄の軍勢に攻め込まれた真田勢は、敵を混乱させるために、わざと反対の言い方をしたというのです。もっともらしい説明ですが、事実は、その当時の一般的な表現が少し形を変えて、使われているのです。
「行きましょう」という誘いかけを、当時は「行かうず」と言いましたが、その「う」が落ちた形で現在もつかわれ続けているわけで、「古語は方言に残る」の典型と言えます。なお、「ず」の語源については、平安朝古文にさかのぼり、「むとす」→「むず」→「んず」→「うず」→「ず」と変化したと考えられています。
ところで、武田信玄のお膝元・甲府市でも「行かず」を使っています。地元の方に、由来を尋ねると、これは「武田の逆さ言葉」といって、武田勢だけにわかるように、わざと反対の言葉を使ったのだと、上田市と同様の説明を受けることがあります。
いずれも、民間語源(言語学的な裏付けを伴わない語源解釈)ということになりますが、そこに込められた地域の人々の思いを読みとることが大切と思われます。
この点について、民間語源の語に変えて「当事者語源」という表現の使用を柴田武氏(言語学者)が提唱されています。
さらに、この一見「逆さ言葉」に見える勧誘表現は、『方言文法全国地図』(国立国語研究所刊)では、長野・山梨から静岡まで、東中部に連続的に分布しています。静岡では、どんな語源説明がなされているか、探りたいものです。
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【筆者プロフィール】
言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
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大橋敦夫(おおはし・あつお)
上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。
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地域語の経済と社会 第170回 方言カレンダー(新潟県長岡市)
2011年 10月 1日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第170回「方言カレンダー(新潟県長岡市)」
長岡市内の商店街を歩いていると、素敵なカレンダーが目にとまりました。
こちらの驚きを先取りするかのように、表紙には、
「おーこっこ、このカレンダー、長岡弁が書いてあるねっか」
[=おやまあ、このカレンダー、長岡弁が書いてある!]
とあり、各月1語が、長岡の風景にあしらわれています。
1月……あおーれ
会いましょう。会おうよ。(2012年1月完成予定の市役所を中心とする複合施設の名称は「アオーレ長岡」)
「まんまくったら、ちけん様で、あおーれ」(ごはんを食べたら、平潟神社で、会いましょうね)
2月……ずらねえ
動かない。「ずる」の否定形。(以下例文略)
3月……かがっぽい
まぶしいこと。
4月……おっこっこ
おやまあ、なんということだ。
5月……なじらね
どう?英語のHow do you do?に近い。
6月……はらくっちぇ
満腹。
7月……わんざ
セミの幼虫。
8月……こって
かなり。はなはだしい様。
9月……なんぎ
体調が最悪な様。
10月……タンタン
靴の幼児語。
11月……しょうしい
はずかしいこと。
12月……げっぽ
びり。最後尾。最後。
例年、長岡の花火をモチーフに製作していたものを、今回、方言カレンダーとしたねらいについて、長岡花火デザインプロジェクト(企画・製造・販売)の小森さんに伺ったところ、「長岡花火がモチーフのものを作ってきましたが、これまで数回、長岡弁カレンダーを作り、リクエストが多かったので、今年も作りました」とのことでした。
単語(方言)の選択については「長岡市出身のアートディレクター内藤昇氏とともに選択」されたそうです。
購入した方々の反応については、「ほのぼのとした写真と、なつかしい方言でお喜びいただきました」とのことで、製作者冥利に尽きるというものです。
シリーズ化の計画についておたずねしたところ、「なるべく、毎年作りたいと思っています」と、頼もしいお答えをいただきました。
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【筆者プロフィール】
言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
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大橋敦夫(おおはし・あつお)
上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。
【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。
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地域語の経済と社会 第165回 (2) 上越弁 高田言葉のCD(新潟県上越市)
2011年 8月 27日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第165回「上越弁 高田言葉のCD(新潟県上越市)(2)」
製作者へのインタビュー
「おまんた えますぐ使える えっちょまえの上越弁」の脚本・演出など、全般にわたって関わられた滝沢いっせいさんにお話を伺ってみました。
●脚本の場面は、どのように選ばれましたか?
「やわやわ生活篇」は、ひと組の家族や井戸端会議の奥様方を軸に、日常生活のなかで、どのように高田言葉が使われるかを主眼に構成しています。非日常的なシーンよりも、聴く方だれもが、「自分ならこうしゃべるところだ」「標準語ならこう話す」と想像できる、ごくありきたりな日常の方が、高田言葉の特徴をつかみやすいと考えたのです。
シーンは、全くの想像で書きました。が、川に落ちた人の話などは実話です。
「高田の四季篇」は、高田在住者なら誰でも知っている市民歌「高田の四季」からタイトルだけをもらいました。
憲法前文は、いろんなお国ことばで言ってみると……という運動が全国でなされており、それに乗っかって行なってみました。
●録音で苦労されたことはありますか?
高田言葉の部分は、地元の読み語りの会のメンバー、地元のアマチュア劇団の座長さんらにお願いしました。60代のご婦人方は、案に相違して、高田言葉をあまり話せなかったので苦労しました。高校生の若者たちも全く話せませんでした。監修者にもなった有沢栄一さんを主とした指導によって、なんとか形にできたというところです。
●CDを購入された方の反応はいかがですか?
概ね好評のようです。「もっと簡単なものかと思ったら、ちゃんとしていて驚いた」などの声を聞いています。また、故郷を離れて首都圏等にいらっしゃる方々からは、「郵送前から待ち焦がれていた」「聞いて涙が出た」「父母や祖父母を思い出した」といった声を寄せていただいています。
●上越市内の全小中学校に寄贈されたとのことですが、反響はいかがですか?
直接のリサーチはしておりません。残念ながら、あまり活用されていないかも……と感じています。
●直江津言葉の製作も計画されているとのことですが……。
資金のめどが立ちませんが、関西に近い糸魚川言葉にも、興味を持っています。
追加情報ですが、今年度中に、「新潟ことばシンポジュウム」を開こうと、有沢さんとともに計画しています。各地からネイティブスピーカーを集め、寸劇あり、お国自慢ありの楽しいものにしたいと考えています。
地域の言葉の過去と現在、そして未来を見つめた企画だということがわかります。こうした動きが各地に広まると楽しいですね。
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大橋敦夫(おおはし・あつお)
上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
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地域語の経済と社会 第165回 (1) 上越弁 高田言葉のCD(新潟県上越市)
2011年 8月 27日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第165回「上越弁 高田言葉のCD(新潟県上越市)(1)」
CDの内容
「おまんた えますぐ使える えっちょまえの上越弁」と題するCD(2枚組)が作られました。
子どものころから慣れ親しんできた上越市高田地区の言葉が、だんだん使われなくなっていくことに寂しさを感じていた有沢栄一さんの企画によるもので、次のような構成になっています。
上越弁 高田言葉 その壱 やわやわ生活篇
1.朝 今日も始まる幸せな一日
2.兄弟姉妹の呼び方
3.生きいきした動詞
4.これであなたも聞き上手
高田言葉の簡単な挨拶
5.酒場にて 「おまん、きないや」
6.「そ」だけで成り立つ相槌
7.酒場にて 「どっさんがん飲んだ」
8.あくたもくた(罵詈雑言) その1
9.酒場にて 「ああえっぱい食った」
10. えちゃぽんさげた!
上越弁 高田言葉 その弐 高田の四季篇
1.お正月
2.運動会 血だらまっか
3.生きいきした動作表現
4.高田言葉訳 吾輩は猫である
5.あくたもくた(罵詈雑言) その2
6.朝市
7.「なぐるぞ、蹴るぞ、くすぐるぞ」高田言葉 喧嘩の仲裁 兄貴の花道
8.高田ならではのオノマトペ
9.高田言葉訳 日本国憲法前文 後段より
10. 春夏秋冬 高田の四季
11. えちゃぽんさげた!
子どもの教育に役立ててもらおうとの思いも込められているためか、ナレーションは、落ち着いた声で、語学講座のようにプログラムを進めていきます。
それぞれ、40分ほどの内容ですが、
「おまんた」[=「あなた」の敬称]
「ばらこくたい」[=めちゃくちゃ]
「じょんのびする」[=のんびりする]
など、高田言葉特有の語が取り上げられる一方、
「えますぐ」[=いますぐ]
「えっちょまえ」[=いっちょうまえ・一人前]
のような、「い」と「え」の交替についても織り込まれ、CDならではの生き生きとした会話が展開されています。
また、高田言葉訳の「吾輩は猫である」や「日本国憲法 前文」もあり、方言で語られると、深みや説得力が増すようにも感じられます。
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大橋敦夫(おおはし・あつお)
上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。
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皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
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地域語の経済と社会 第160回 もう一つの「方言エール」
2011年 7月 23日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第160回「もう一つの「方言エール」」
東日本大震災による被災地の様子(第151回)や、それに関連した方言メッセージ(第146回)・方言エール(第156回)が紹介されています。
こうした現地での例に加え、被災された方たちを受け入れている地域での、方言を活用した取り組みをご紹介しましょう。
にいつ子育て支援センター・育ちの森(新潟市秋葉区)では、子育て支援情報誌「Cocokara(ここから)」を発行中。このたび、新潟県外からの転入者に好評を博してきた方言解説ページ(各号連載)を集成、大震災後に新潟県に避難してきた方々を対象に『新潟の方言講座&子育てミニ情報』(A4判、27ページ)を作製し、配布しています【写真1】。
方言講座は、
【かたる】子どものおもりをする
例 おれがかたるて。
〈訳〉 私が子どものお守りをしますよ。
のように構成され、かわいいイラストが誌面を楽しいものにしています【写真2】。
『新津市の方言』(新津市図書館発行)を参考資料に、120語が50音順に紹介されています。
「イントネーションがわからないときは育ちの森スタッフまでお問い合わせください」
の注記も添えられています。
方言講座(10ページ)に続く後半は、避難所周辺のお薦めスポット・医療機関・授乳中の母親向けの体操などを紹介しています。
この冊子を手にされた方々の反応について、お問い合わせをしたところ、
「福島には、こんな方言があるよ」
「新潟の○○という方言は、福島では○○と言うよ」
「イラストも楽しく笑えて良かった」
など、上々のようです。
作製・配布にあたられた椎谷照美さん(育ちの森館長)は、
「コミュニケーションをとるきっかけになることを意図し、避難されてきた方が、近隣の公園などを知ることでリフレッシュでき、少しでも新潟に親しみをもってほしいと願い発行しました」
と、話されています。
読者の皆様、同様の取り組みをご存知でしたら、お知らせください。
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地域語の経済と社会 第155回 もてなしの方言(長野・再び)
2011年 6月 18日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第155回「もてなしの方言(長野・再び)」
第85回で取り上げた「もてなしの方言(長野・新潟/落ち穂ひろい)」のうち、長野県内の用例を補足します。
| 語例 | 地域 | 方言区画 |
| 1 おいでなして | 長野市 | 〈北信〉 |
| 2 おいでなんし | 小海町 | 〈東信〉 |
| 3 おいでなんしょ | 飯田市 | 〈南信〉 |
ながの観光コンベンションビューロー作成のポスター用の壁紙のみを掲示しているお店を、長野市内でたまに見かけます【写真1】。
南佐久郡小海町は、「おいでなんし 小海町」を町全体で観光の合言葉に掲げています。JR小海駅構内の看板【写真2】、駅前の観光案内板【写真3】、駅前のベンチ【写真4】などに、その用例が見られます。
先ごろ、松原湖観光案内所で行われた、町の物産や観光スポットなどを紹介するイベントも、「おいでなんし 小海町」がメインタイトルでした【写真5・6】。
以前、小諸市内のホテルにも、入口に「おいでなんし」の看板を掲げているところがありましたが、今ははずされています。地元の方に伺うと、明治20年代生まれの方が、昭和30年代までは使っていたが、現在、使う人はいないとのこと。小海町でも、若い世代は使わない、とのことで、地元の方に向けては、郷愁を誘うキャッチフレーズともなっているようです。
南信では、中央道飯田ICを降りたところに、歓迎のメッセージとして、「おいでなんしょ」の看板が立ち【写真7】、さらに、そのすぐ近くのガソリンスタンドの看板にも使われています【写真8】。(第44回の天龍村の例に、今回、飯田市の例が加わったことになります。)
「なさります」の変化形「なんす」の命令形「なんし」に、助詞の「よ」が付くか、付かないかで、南信・東信の地域差が出ています。
残念ながら、まだ中信の使用例が見つかっていません。読者のみなさん、ご存じありませんか。
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井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)
大橋敦夫(おおはし・あつお)
上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。
【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載の始まりです。
この連載への質問、また「ここでこんな方言みやげ・グッズを見た」などの情報は、問い合わせフォーム( http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/support/question.html )から、「地域語の経済と社会」への質問・情報である旨を記してご投稿ください。
地域語の経済と社会 第150回 フィールドワークの好適地・十日町市(新潟県)
2011年 5月 14日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第150回「フィールドワークの好適地・十日町市(新潟県)」
「地域語の経済と社会」の調査対象となる、さまざまな実例が採集できる街・十日町市(新潟県)をご紹介します。(今回の範囲は、JR線・ほくほく線十日町駅から徒歩15分以内です。)
まずは十日町市博物館へ
新潟県下唯一の国宝・火焔型土器を目当てに十日町市博物館へ向かい、ミュージアムショップのコーナーをのぞいてみると――。
そこには、十日町市博物館友の会「方言を楽しむグループ」の皆さんが作成された方言手ぬぐいが3点【写真1~3】、さらに、同会・方言研究グループ発行の方言研究書『はちゃ 中魚・十日町の暮らしと方言①』も並べられています。
いずれも、郷土と郷土の言葉を愛する気持ちが伝わってくる力作です。
商店街を歩く
十日町駅に戻りがてら、地元の物産を販売する「キナーレ」(第85回で紹介)にちょっと寄り道。
駅を背にして、商店街を歩き始めます。有線放送からは十日町弁で、地元の話題が語られています。
随所に貼られた十日町市観光協会のポスターには、
「いいとこだぜの、とおかまち」[=いいところですよ]
「だんだん どうも」[=いつも どうも]
の標語があしらわれています。お店の看板も十日町弁で呼びかけています【写真4】。
歩き疲れたので、喫茶店をさがすと、「ほんやら洞」[=かまくら]というお店がありました。
さらなる方言グッズを求めて、和菓子の木村屋を訪ねると、そこは方言和菓子の宝庫。
「なじょだの」[=いかがですか]
「つぼんこ」[=雪玉]
「おこめし花」[=しょうじょうばかま]
「あちこたね」[=心配ない]
「だんだん どうも」[=いつも どうも]
などのネーミングで、和菓子がずらりと並んでいます。
十日町弁を愛する小林博さん
地元紙・十日町新聞には、次のような広告が載っています。
ようやっと貝類に肉がついてきた。白みの魚も、
いかの赤ん坊もうまくなってきたぜの。
食欲の秋、うめぇもんをちっとなじだの。一ヶでもいいやんだぜの。加賀町の 松乃寿司
広告の主は、小林博さん。実は最初に紹介した方言手ぬぐいや方言研究書は、小林さんが中心になって作成されたもの。十日町弁の広告も、50年以上続けているそうです。
街歩きをたっぷり楽しんで、仕上げに小林さんのお店で十日町弁に浸る。実りの多い一日となることでしょう。
帰路には、駅でもうひと稼ぎできます【写真5】。
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【筆者プロフィール】
言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)
大橋敦夫(おおはし・あつお)
上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。
【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
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地域語の経済と社会 第145回 方言土産の定番・方言手ぬぐい健在なり!
2011年 4月 9日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第145回「方言土産の定番・方言手ぬぐい健在なり!」
方言土産の定番と言えば、かつては、のれん・手ぬぐい・絵はがき・湯呑みといったところでしたが、現在、こうした品々は、ちょっと見つけにくくなっています。
が、新潟駅の土産品コーナーで、方言手ぬぐい「特撰新潟弁」を見つけました!
製造は、なんとお隣り長野県の土産品製造の大手メーカー株式会社タカチホ。
そこで、同社の方に、製造・販売にいたるいきさつをおたずねしてみました。
○信州弁ではなく、新潟弁が選ばれた理由は?
取引先である地元の染物屋さんからの発案です。他の地域で出されていた「方言」入りの商品が良く売れていることを知り、新潟でも作ってみたいというご要望にお応えしました。○どのようにして新潟弁(20語)を選んだのですか?
広い県域に配慮し、インターネット等でも検索しながら、代表的と思われるものを選びました。○販売開始は、いつですか。また、売れ行きはいかがですか?
平成15年4月です。ほかに、のれんも作りましたが、手ぬぐいのほうが、良く売れたので、今は手ぬぐいのみです。年間を通して安定した売れ行きですが、帰省客の多い1月・5月・8月は、特に売れます。
とのことでした。
新潟出身の学生や同僚に見せたところ、「なつかしい!」とたいへん好評でした。また、方言手ぬぐいを見たことのない学生が多く、新鮮な印象を持ったようです。定番商品の威光は依然としてあるのでは。
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【筆者プロフィール】
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大橋敦夫(おおはし・あつお)
上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
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皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
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地域語の経済と社会 第140回 佐渡の『~ちゃ』
2011年 3月 5日 土曜日 筆者: 大橋 敦夫地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第140回「佐渡の『~ちゃ』」
佐渡島で
佐渡観光の誘客・PRを目的とした「CHEER UP! ふんばれっちゃ佐渡キャンペーン」が佐渡市で展開されています(2011年3月31日まで)。
ステッカー【下写真(左)】のほか、Tシャツ(標語に佐渡島とトキをデザイン【下写真(右)】)が作られ、佐渡市や観光協会の職員の方々が着用、活動を盛り上げています。
また、相川地区では、商店街や地域の活性化を目指す「こいっちゃまつり」が8年ぶりに復活(2010年9月26日に開催)。
「~ちゃ[=だよね]」は、どことなく暖かみを感じさせる文末表現ですが、「そうだっちゃ」「行くっちゃ」のように、共通語の「よ」の代わりに用いられ、力を込めて使われている感じがします。
佐渡の酒と肴 だっちゃ
すぐに佐渡島へ出向けないという首都圏の方は、居酒屋「だっちゃ」(地下鉄銀座線浅草駅改札そば【下写真(左)】)へ。
そこは、方言Tシャツ(「へちこうぜい[=余計なお世話]」など5種あり【上写真(右)】)を身につけた店主・喜多村さやかさんが切り盛りするお店。佐渡市出身の喜多村さんの佐渡弁とともに佐渡の郷土料理と銘酒が楽しめます。
「だっちゃ」は、ラムちゃん語!?
「だっちゃ」と聞くと、漫画『うる星やつら』の主人公・ラムちゃんを思い出される方も多いのでは?
このラムちゃんの「だっちゃ」について、方言研究家・篠崎晃一氏は、仙台方言説(「仙台だっちゃ」といわれるように、仙台では有名な文末表現であること・原作者の高橋留美子さんが井上ひさしさんの小説にヒントを得たという説も根強い)に対し、宇宙方言説(ラムちゃんは宇宙人であり、自分のことを「うち」と呼んだりして、日本という枠を飛び越えている)を出されています(『しのざき教授のなまらやさしい方言講座 日本語でなまらナイト』小学館、2006)。
が、居酒屋「だっちゃ」では、佐渡方言説が有力。ふじの井酒造(新潟県新発田市)特別本醸造「うる星やつら」のラベルを眺めながら、原作者高橋さん(新潟市出身)のご親族は、佐渡のご出身というお話を聞いていると、説得された気持ちにもなります。
「年齢確認」が必要なフィールドワークですが、「対象年齢」の方は、盃を傾けながら、自説を練ってはいかがでしょう。
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2007年









