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『フランスAOCワイン事典』刊行に寄せて
2009年 9月 29日 火曜日 筆者: 須藤 海芳子
この事典のタイトルを目にし、「AOC」とは何か疑問に思われた方もいらっしゃることと思います。AOCは、一般にAOC(アペラシオン・ドリジヌ・コントロレ)法と呼ばれるフランスの法律で、食料自給率が120%を超えるといわれ、美食で世界に知られる農業国フランスにおいて、生産者(作る側)だけでなく、消費者(食べる側)の両方を守る大きな役割を担っています。
INAO(原産地・品質管理全国機関)という機関が、それぞれ任意の農産物について、原料や生産地域、生産方法など、法令で厳格に規定された基準を満たした場合にのみ、特定の呼称を名乗ることを認めています。原産地呼称を誤用や盗用から守り、消費者に正しい情報を提供する法律なのです。ワインの銘醸地として有名な「ボルドー」「ブルゴーニュ」「シャンパーニュ」、チーズで有名な「カマンベール」のほか、オリーヴ、オリーヴオイル、肉、野菜、蜂蜜など、その適用範囲は多岐に渡ります。
少し話は変わりますが、以前、シャンパーニュ(シャンパン)をイメージした香水が、ある会社から発売されたことがあります。シャンパーニュの地方委員会は、その呼称の使用停止を求めて訴訟を起こしました。結果、その会社は、名称を変えて販売せざるを得なくなってしまいました(パリ控訴院1993年12月15日判決)。まったく異なるカテゴリーの商品に対しても、「シャンパーニュ」の名称は保護されているということなのです。近年、産地偽装の横行がメディアを賑わす我が国では、とても信じられないような本当の話です。
さて、本書では、400あまりあるAOCワインのほぼすべてを紹介しています。先に記した「ボルドー」「ブルゴーニュ」などは世界的に有名な産地で、日本にも多く輸入されていますが、この本では、有名産地以外の、例えば年間生産量が数千本にしかならないような産地の情報も得ることができます。それぞれ、ブドウ品種、生産量、飲用最適温度、合わせる料理、といった基本データとともに、ワインの特徴、テロワールまで、詳しく案内しています。
また、私たち編者は、フランスのワイン産地に興味深い歴史や文化があることに着目し、概説では、ワインそのものだけではなく、その「背景」についても記すよう心懸けました。ナポレオン、ルイ16世、ピカソなど、歴史上の人物が姿を現します。藤田嗣治や開高健などの日本人も登場しています。印象的なエピソードとともに、ワインがより身近に感じられるような一冊になったと思います。
ワインを片手にフランスを旅する、そんな気分で愉しんでいただければ嬉しいです。
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【筆者プロフィール】
須藤海芳子(すどう・みほこ)
1968年生まれ。明治学院大学文学部フランス文学科卒。(社)日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー。シュヴァリエ・デュ・タストフロマージュ(フランスチーズ鑑評騎士)。著書に、『シャンパン&スパークリングワイン』(主婦の友社)など。
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【編集部から】
原産地を名乗れる400種あまりのフランスAOCワインのほとんどを網羅した待望の事典『フランスAOCワイン事典』について、編者の一人、須藤海芳子先生にお書きいただきました。なお、10月2日(金)にTSUTAYA六本木ヒルズ店にて、刊行記念ミニ試飲会が開催されます。入場無料、予約不要です。お気軽にお越しください。
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