大規模英文データ収集・管理術 第40回

2012年 12月 24日 月曜日 筆者: 富井 篤

7 英文データの実践的収集方法(カード方式)

前回までは、「トミイ方式」の分類について説明してきました。今回から、英文データを実際に収集し、それをどのように分類し、収納するか、その実践的手法について述べていきます。

この連載の第10回(2011年10月24日公開)に述べたように、「トミイ方式」は

1 赤線時代
2 ノート時代
3 カード時代
4 コンピュータ時代

というようにいくつかの時代を変遷してきました。現在では、10数年前から「コンピュータ時代」に入っているわけですが、「カード時代」の方式を完全に捨てきることができず、TPOに合わせて、いまだに、適宜、「カード方式」も使っています。そのため、ここでは以下に示すように、7回にわたって「カード方式」と「コンピュータ方式」の両方について述べていきます。

(1) カード方式 (第40回から第43回まで)
(2) コンピュータ方式 (第44回から第46回まで)

この「カード方式」というのは、30数年前から「トミイ方式」に取り入れ、10数年前にその主体が「コンピュータ方式」に移行した後も、これから順次述べるいろいろな理由により、長い期間「コンピュータ方式」と併用してきました。

いかなる方式とも同じように、「カード方式」にもさまざまな変遷があります。以下は、この連載の第11回(2011年11月7日公開)に詳しく説明してある、大まかな変遷を示したものです。

(a) 複件一葉式
(b) 1件一葉式
(c) 複文一葉式

ここでは、上記したさまざまの方式について、実例を挙げて、実践的なデータの収集法を示していきます。初期の頃の方式は、今では全然使われていないものではありますが、読者の環境によっては向いている部分もありますので、それらの方式も含め、最初から順に述べていきます。

その前に、一体、「カード」とは何かということですが、「カード」というと、ともすると、学生時代の「単語カード」を連想してしまいますが、「トミイ方式」でいう「カード」とは、いわゆる「図書カード」のことで、タテ7.5cm、ヨコ12.5cmのカードです。そして「カード方式」とは、そのカードに、英文データを、ある時は手書きしたり、またある時はタイプライタで打ち込んだり、さらには原稿をコピーし、該当部分をcut-and-pasteしたりして移していくことをいいます。

この際、一番大事なことは、採取するデータというのは、語や句ではなく、採取したい英文データの入った文章を文単位で採取するということです。あるいは一歩譲っても、節単位で採取する必要があります。

ただ、この「カード方式」が、その前の「ノート方式」と決定的に違うところは、この「カード方式」は物理的な収納場所が必要になるということです。その収納場所にもいろいろな変遷がありますが、これにつきましても、順次述べていくことにします。

(a) 複件一葉式

これは、「1枚のカードに複数の同種の英文データを記入する」というやり方です。しかし、記入した時は同種のデータだと思っていても、件数が増え、分類も細かくなっていくと、その中のあるデータは別の場所に移籍しなければならなくなってしまったりすることがあり、あまり実用的ではないことから、ごく短期間で、次の「1件一葉式」に切り替えざるをえませんでした。したがって、この「複件一葉式」については、実例は挙げません。

(b) 1件一葉式

これは、「1枚のカードには絶対に1件の英文データしか記入しない」というやり方です。実例を挙げてみますので、「添付-A」を見ながらお読みください。英文データが収録されているカードを3枚載せていますが、これ以降、これを「データカード」と呼ぶことにします。

atomii40.jpg

「データカード1」「データカード2」は手書きした例であり、「データカード3」は英文原稿をコピーし、該当箇所をcut-and-pasteした例です。

いずれの「データカード」も、乱雑な出来あがりですが、これが、実際に翻訳しながら、限られた時間内でデータ収集できる限度です。

データカード1

これは、前置詞inの用法を学習するために採取した英文です。
上部には 前置詞、in、(〜の)と赤字で書いてありますが、これは

中分類が「前置詞」、小分類が「in」、細分類が「〜の

であることを表しています。大分類が「品詞別」であることは分かっていますので、それは省略しています。

中ほどには英文を書き込み、該当する単語、ここではin、に赤でアンダーラインを引きます。

下部には出典(必要であれば、収集年月日も)と、出典文献の中のページ番号およびページ中の英例文の場所を書き込みます。

この例文は

increase in viscosity

とありますが、「粘度の増加」という意味です。この場合には、英語からアプローチしていますので、この部分を「粘度の中の増加」などと訳す人はいませんが、和文英訳の際、「粘度の増加」という日本語を英訳しようとする場合、ともすると日本語の「の」に引きずられ

increase of viscosity

としてしまうことがあります。そこで、和文英訳の際に「の」を「of」としてしまうような間違いを犯さなくなるように採取したものです。このような意識を持って英文データを集めていくと

「変化・変動」、「増加・減少」、「差・バラツキ」など + in + 物理量

も例がたくさん集まってきます。

なお、この例文では、1つの文から1つの英文データしか採取していませんが、1つの例文から2つ以上の英文データを採取することもでます。昔、このようにして1つの文から複数の英例文を採取していたころは、カードを何枚か重ね、その間にカーボン紙を入れ、同じ例文を一遍に複数枚作り、いろいろな場所に入れていました。この例でいうならば、increase という単語を「増加」という分類で採取し

大分類が「表現別」、中分類が「増加」、小分類が「名詞形

と分類します。この種の方法については、この後、何回も出てきます。

実際には、複数の英文データを1枚のカードに記入するということは絶対にありえませんが、ここでは、解説用として、2つ目の英文データである increase には赤の点線でアンダーラインしておきました。

カーボン紙を入れて書き込む方法だと、最大3枚まではコピーできます。

データカード2」以降については、次回に取り上げます。

【筆者プロフィール】

富井篤(とみい・あつし)
技術翻訳者、技術翻訳指導者。株式会社 国際テクリンガ研究所代表取締役。会社経営の傍ら、英語教育および書籍執筆に専念。1934年横須賀生まれ。
主な著書に『技術英語 前置詞活用辞典』、『技術英語 数量表現辞典』、『技術英語 構文辞典』(以上三省堂)、『技術翻訳のテクニック』、『続 技術翻訳のテクニック』(以上丸善)、『科学技術和英大辞典』、『科学技術英和大辞典』、『科学技術英和表現辞典』(以上オーム社)など。


大規模英文データ収集・管理術 第39回

2012年 12月 10日 月曜日 筆者: 富井 篤

(7) その他・3

これ以降は、どのユーザーにとっても共通に必要であるというものではなく、それぞれのユーザーによってその重要度や優先順序が異なるものです。そのため、詳細の記述は避け、主な分類だけに絞って解説します。

5 列挙法

これは、筆者の知る限り、ルールとしてはまだ確立していないようです。そこで、過去35年以上前から収集し続けてきた実例をもとに「トミイ方式」では以下のように分類してきました。

まず、「小分類」として

1 文中に列挙する場合
2 文章とは別に列挙する場合

の2つに分け、それを下に示すように、それぞれ「細分類」「細々分類」しています。

1 文中に列挙する場合

 (1) 記号や数字を使わないで列記する場合
 (2) 記号や数字を使って列記する場合
  (a) 本文と列記された構成要素の両方で一つの文章を構成している場合
  (b) 本文と列記された構成要素とは互いに独立している場合

2 文章とは別に列挙する場合

 (1) 本文と列記された構成要素の両方で一つの文章を構成している場合
  (a) 各構成要素が語句である場合
  (b) 各構成要素が文である場合
 (2) 本文と列記された構成要素とは互いに独立している場合
  (a) 各構成要素が語句である場合
  (b) 各構成要素が文である場合

英例文を示さずに、項目だけを挙げてもわかりづらいと思いますが、実は、わずかこれだけの項目に対して、収集した英例文の形態は、若干不適切なものも含みますが、主なものだけで40種類に分けられます。ここですべての例文を挙げるということは、とても不可能なことですので、いずれ訪れる機会をお待ちください。

6 パラレリズム

これは、文章を整然と書くために必要なテクニックです。よく、文章中にいくつかの語句や文を羅列することがありますが、その場合、すべての構成要素は、語句ならば語句、文ならば文というように統一しなければなりません。

パラレリズムが乱れた例文をたくさん集めておくと、反面教師となって、非常に参考になります。これは、英語にのみならず、日本語にもよく見られるもので、収集するとよいと思います。

7 言語

これは、日本語、英語、およびその他の言語について、翻訳者として知っておかなければならないことを収録するものです。次の3つに「小分類」し、「1 日本語」はさらに3つに「細分類」しています。

1 日本語

(1) 句読点

句読点は、その打ち方で意味が大きく変わることがありますので、間違った例をたくさん収集することにより、自分の悪いところを学ぶことができます。

(2) 悪い日本語

日本語のライターが犯した一般的な誤りや、日本語と英語とでは違う「修飾語と被修飾語」の関係を誤った例などを、収録することです。

(3) 外来語

今では日本語として定着している外来語を収録しています。

2 日本語≠英語

普段、英語だと思って使っているカタカナ語が、実は英語ではなかったという例は枚挙にいとまがありませんが、それらを収録し、翻訳の際に誤らないようにしています。和英翻訳の際には、細心の注意をもって使うようにしないといけません。

3 対句

これは、文字通り、対になっている言葉ですが、これが、英語と日本語では、その順序が違うことがよくあります。その実例をたくさん集め、英和翻訳・和英翻訳を問わず、正しい対句が使えるようにしています。

8 用語

ここには代表的な用語を挙げたものです。これは30数年前の習慣であり、今では、各種の用語集が完備されていますので、今さら、用語を収集する必要はありませんが、それでも、時々、用語集にも載っていないような用語に出合うときがあります。そのような時は、何らかの手段、例えば、独自のデータベースを使つかったり、手持ちの用語集に転記したりして、記録しておくとよいと思います。

また、それ以外にも、翻訳の際に役に立つ「e-mail 用語」や「時事用語」なども収集すると、意外な便利さを発見することがあります。

1 業界別専門用語

ここは、各技術分野・業界分野ごとに用語を収集し、収納するための場所で、

(1) 安全用語

から

(69) 冷凍空調用語

までの、技術分野のみならず、経済、経営、貿易、環境分野の用が収集されています。

2 顧客別用語集

顧客は、よく、市販されている用語集の言葉とは別の言葉を社内では規定していることがあります。そのようなとき、遭遇した用語を、各顧客別に収納しておくと便利です。

3 性差別用語

近来、英語においては特に注意しなければいけない用語に、「差別用語」があります。ネイティブが使う、「差別を避けた用語」をたくさん集め、それに沿って和英翻訳をすると、読み手から批判されることを回避することができます。

4 投票用語
5 OCR用語
6 数学用語
7 特許用語

8 e-mail 用語

e-mail独特の表現にはいろいろありますが、「結び —-@—-」を収集してみると、面白い票がいろいろ集まります。これは、e-mailの最後に、自分の名前を書き、アットマークを介して、その時の自分の気持ちを書いてe-mailを閉じるという「結びのメッセージ」です。

9 手紙

ここに収録してある項目は「1結び —-ly yours」ですが、これも基本的には、上の8 e-mail 用語の「結び —-@—-」と同じです。普通、手紙を結ぶ場合、われわれが学校で習ったのは、Sincerely yours とか Truly yours などです。しかし、実際の例文を集めてみると、その時のライターの気分で、___ly yoursをいろいろに変化させてe-mailの結びに使っている例をよく見ることがあります。derikeeto-na-nuansu-wo-weighingly yours, とか Wishing to be informed-ly yours, などは、まさに名人芸ともいえるものです。

10 職場関連用語
11 現場用語
12 時事用語

9 ビジネス関係

ここに収録されている言葉は、ビジネスに関するいろいろな名称や表現です。

1 省庁名
2 役職名
3 団体名
4 企業名
5 契約書

10 簡潔表現

ネイティブは、よく、極めて簡潔に物事を表現することがあります。それらを収集し、いざというときにすぐに使えるように分類しておくと便利です。それにより、彼らの発想に近い、簡潔な表現をすることができます。

ここでは
1 簡潔表現
2 便利な表現
3 補足説明

などに「小分類」されています。

11 異種の情報

これは、ある「こと」や「もの」を表わす場合、情報が1つではなく、2つ組み合わされている場合の表現について収集・分類してある場所です。

たとえば、「金額」という情報と「年」という情報が組み合わされている表現として

from $1.5 million in 1986 to $28.1 million in 1997

という例がありますが、これは、単に

$1.5 million から $28.1 million に拡大する

といっているのではなく

1986年の$1.5 million から 1997年の$28.1 millionに拡大する

というように、「金額」と「年」の両方の情報を記述しているわけです。これを、「異種の情報」と称しています。「金額」と「年」の組み合わせ以外、さまざまの「量」の組み合わせ例が収録されています。

12 対称(対照)表現

一方では、前々回(第37回)に取り上げた「表現のバリエーション」という概念があり、他方では、表現に変化をさせないで、2つの表現を同じように、相似式の表現で書く必要のあるシチュエーションがあります。それが、ここに属する分類です。

13 擬音語・擬態語

日本語では難なく使えるこれらの言葉も、英語では、われわれは、なかなか自由勝手には使えません。英語の「擬音語・擬態語」に出会ったときには、躊躇することなく収集し、使いやすい形に分類・整理しておくと、やがて役に立つことがあります。

14 ことわざ

これは、格言なども含めるわけですが、日本語、英語とも、本がたくさん出版されています。しかし、その状況を表しているセンテンスとして集めておくと、自信をもって利用することができるので、出くわした都度、実例として集めるようにしています。

これで、分類の最後である「7 その他」を終わり、ほぼ1年前の第16回から連載している、「分類の構成」をすべて終わります。

繰り返しになりますが、この「7 その他」に関しては特にそうですが、30数年前から始まった「トミイ方式」としての分類です。したがいまして、ユーザーの方は、ご自身のニーズに従って新しい分類をし、収集項目を設定して始められることを、強くお勧めします。

次回から、「英文データの収集と分類・収納」が始まります。

【筆者プロフィール】

富井篤(とみい・あつし)
技術翻訳者、技術翻訳指導者。株式会社 国際テクリンガ研究所代表取締役。会社経営の傍ら、英語教育および書籍執筆に専念。1934年横須賀生まれ。
主な著書に『技術英語 前置詞活用辞典』、『技術英語 数量表現辞典』、『技術英語 構文辞典』(以上三省堂)、『技術翻訳のテクニック』、『続 技術翻訳のテクニック』(以上丸善)、『科学技術和英大辞典』、『科学技術英和大辞典』、『科学技術英和表現辞典』(以上オーム社)など。


大規模英文データ収集・管理術 第38回

2012年 11月 26日 月曜日 筆者: 富井 篤

(7) その他・2

2 反意語

ほとんどの辞書には、「この言葉はあの言葉の反対語である」という表示は出ていますが、「この言葉の反対語は何々である」という表示は出ていません。そのような時のために「反意語」を集め、語幹の頭をアルファベット順に並べておくと、「反意語」を簡単に調べることができるようになります。「単語」欄には接頭辞を取ったもとの単語が、「反意語」欄には接頭辞や接尾辞を付けた、真の「反意語」が収録されており、「例文」欄には、その反対語を使った英例文が収録されています。ここでは、反対を表す接頭辞を取り除いた英単語がアルファベット順に収録されていますので、使いやすくなっています。

わかりやすいように、表組みと典型的な例を以下に示します。

肯定語 品詞 意味 接頭 接尾 反意語 品詞 意味 英例文 和訳文
connect v 接続する dis disconnect v 切り離す …………. 。。。。。。

下に示す例は、1つの反意語に2つ以上の異なった意味がある場合です。

肯定語 品詞 意味 接頭 接尾 反意語 品詞 意味 英例文 和訳文
regular a 規則的な ir irregular a 不規則な …………. 。。。。。。
法に反する …………. 。。。。。。

下に示す例は、1つの肯定語に2つ以上の異なった意味がある場合です。

肯定語 品詞 意味 接頭 接尾 反意語 品詞 意味 英例文 和訳文
human a 人間的な in inhuman a 非人間的な …………. 。。。。。。
non nonhuman 人間ではない、人間以外の …………. 。。。。。。

下に示す例は、接尾辞lessなどを伴う反意語の場合です。

肯定語 品詞 意味 接頭 接尾 反意語 品詞 意味 英例文 和訳文
ground n 根拠 less groundless a 根拠の無い …………. 。。。。。。

possibleのようなやさしい言葉はその反意語を思い出すのに苦労はしませんが、例えば、symmetricという言葉について、正しい範囲語を即座に言えと言われても出てこない場合が多いと思います。接頭辞はdisだったかな、inだったかな、noだったかな、nonだったかな、unだったかななどと迷う人が多いのではないかと思います。正しくは、単にaです。asymmetricなのです。

日頃、自分に自信のない言葉の反意語を集めておくと、いざというときに役に立ちます。

上に示した表は、データが500枚とか1,000枚集め終わってから表形式にまとめた後の姿で、集めはじめは、コンピュータなり、カードなり、ノートなどを使って
  肯定語  反意語  英例文  出典
を、この順に、行き詰らないように考慮した方式で集めていくだけでよいと思います。

3 パンクチュエーション

パンクチュエーションは、「ピリオド」、「カンマ」、「コロン」、「セミコロン」、「コーテーション」の5つに分類してあります。日本語と違うところがいくつかありますので、極端に言うと、「ピリオド」は別として、その他のパンクチュエーションは、出てくるたび収集しておくとよいとすら言えるものです。

1 カンマ

「カンマ」にはいろいろな意味や用法がありますが、そのうちの1つである、「3つ以上の語や、句や、節を区切るときに用いられるカンマ」は大事です。普通、最後から1つ前の語・句・節と最後の語・句・節の間にandとかorを入れますが、そのandとかorの前には、新聞や雑誌などで入れていません科学技術文では、必ず入れる習慣をつけることが大事です。件(くだん)のandとかorが入っている例文と入っていない例文を多数集め、自分で学習してみることをお勧めします。

2 コロン

普通、2つの語や、句や、節の前後が、内容・意味ともに同じ時に使うのがコロンですが、その意味では、この後の「5 列挙法」で述べる、いくつかの構成要素を羅列したり、列挙したりするときの用法としても注意するとよい。

3 セミコロン

これは、英語にはありますが日本語にはないものです。特に、英和翻訳の際には、必ず、訳出するように心がけなければいけません。さらに厄介な問題は、「セミコロン」は、「しかしながら」、「したがって」、「一方」、「例えば」、「すなわち」などなど、十数個の意味に使われています。そのすべてを分類してあります。

4 コーテーション

これは、米語方式では、日本語の感覚と違って、「ピリオド」や「カンマ」と組み合わせて使った場合、「ピリオド」や「カンマ」を「コーテーション」の中に入れます。「トミイ方式」では、その用法を

(1) カンマとの関係
(2) ピリオドとの関係
(3) セミコロンとの関係
(4) コロンとの関係

の4つに「小分類」しています。

4 ハイフン

ハイフンは、普通、2つ以上の言葉をつないで、1つの形容詞を作るときに使われるものです。文法的に決められている用法もあり、その時のライターの思いつきで造語するときもあり、非常にバラエティーに富んでいます。ハイフンは、応用範囲が非常に広く、上手に使うと、英文が、非常に簡潔になります。

「トミイ方式」では、その用法を下に示す7つに「小分類」しています。

(1) 名詞-動詞 ⇒ 動詞
(2) 名詞-分詞 + 名詞
(3) 数量表現の中のハイフン
(4) hard (difficult, easy) - to - _____
(5) _____-_____-………-_____-_____
(6) ハイフンを使った汎用語

これらの「小分類」について、例を挙げながら、簡単に説明します。

(1) 名詞-動詞 ⇒ 動詞
これは、名詞と動詞をハイフンでつなげて、新しい動詞を作る用法です。

例  ― is factory-set ⇒ ― は工場でセットする
   ― is copy-protected ― はコピーのプロテクトがかかっている

(2) 名詞 - 分詞 + 名詞
これは、名詞の後ろにハイフンで分詞をつないで形容詞を作り、その後ろに来る名詞を修飾する用法です。後ろに来る分詞により、さらに下記のように「細分類」しています。さらに (a) は、その意味により2つに「細々分類」されています。

(a) 名詞の後ろに過去分詞を場合   _____(名詞) - ……(過去分詞) + ――(名詞)
 (i) _____ によって …… されている ――

例 a coin-operated telephone set ⇒ コインで操作される電話機 ⇒ コイン式電話機

 (ii) _____ が …… されている ――

例 a liquid-filled tube ⇒ 液体が充填されているチューブ ⇒ 液体封入管

(b) 名詞の後ろに現在分詞をつないだ場合   _____(名詞) - ……(現在分詞) + ――(名詞)
      _____ を …… している ――

例 an oil-producing nation ⇒ 油を産出している国 ⇒ 産油国

(3) 数量表現の中のハイフン
これは、どの辞書や参考書にも書かれていない用法で、技術文では非常に大事な用法です。

(4) hard (difficult, easy) - to - _____
これは、ハイフンを使った「~しやすい」とか「~しにくい」という表現の造語法です。

例 easy-to-read books ⇒ 読みやすい本
  difficult-to-solve problems ⇒ 解きにくい問題

(5) _____-_____-………-_____-_____
これは、ライターのその時の気持ちで、自由闊達に長い形容詞句を作る際の用法です。これには

(a) 範囲を表す場合

から

(h) 二者択一(または、二者併用)を表す場合

まで、いろいろな用法に「細分類」されていますが、ここでは

(i) その時の気持ちをそのまま表す場合

について取り上げることにします。これは、非常に大事で、誰もが、どのような形容詞句でも作ることできるようになっていないといけません。ここでは、わずか2つの例文しか挙げられていませんが、ユーザー自身が、この種の例文をたくさん収集し、その感を養っていくことが理想的です。

例 Don’t do that with a cat-that-swallowed-a-canary smile. ⇒ カナリヤを飲み込んだ猫のような薄笑い
  Tourists pose for an I-was-there picture at Freedom Bridge in Panmunjon, South Korea. ⇒ 私がそこにいた写真 ⇒ 記念写真

(6) ハイフンを使った汎用語
ここには、よく使われる以下の9つが「細分類」されています。

(a) _____ - like ――.

から

(i) well-_____ed ――

までが「細分類」されています。この中に

(g) ,,,,,,-____ed ――

というハイフンの用法がありますが、これは

   ,,,,,, が _____ されたままの ――

というもので、大変重要なハイフンの用法です。

例  as-received conditions ⇒ 受け入れたままの状態

【筆者プロフィール】

富井篤(とみい・あつし)
技術翻訳者、技術翻訳指導者。株式会社 国際テクリンガ研究所代表取締役。会社経営の傍ら、英語教育および書籍執筆に専念。1934年横須賀生まれ。
主な著書に『技術英語 前置詞活用辞典』、『技術英語 数量表現辞典』、『技術英語 構文辞典』(以上三省堂)、『技術翻訳のテクニック』、『続 技術翻訳のテクニック』(以上丸善)、『科学技術和英大辞典』、『科学技術英和大辞典』、『科学技術英和表現辞典』(以上オーム社)など。


大規模英文データ収集・管理術 第37回

2012年 11月 12日 月曜日 筆者: 富井 篤

(7) その他・1

「その他」は、今までの6つの大分類に属さない、その他のすべての項目が収録されています。考えられるすべての項目を用意していますが、究極的には、ユーザーが自分のニーズや問題意識などにより項目を追加したり、英文データを追加したりすることにより、まさに、手作りのデータベースができあがるはずです。

そのすべてについてここに言及することはできませんので、下の表のうち1から5までは今回と次回の2回にわたってやや詳しく解説し、6から14までは次々回にまとめて簡単に説明することとします。

中分類
1 表現のバリエーション 第37回
2 反意語 第38回
3 パンクチュエーション
4 ハイフン
5 列挙法 第39回
6 パラレリズム
7 言語
8 用語
9 ビジネス関係
10 簡潔表現
11 異種の情
12 対称(対照)表現
13 擬音語・擬態語
14 ことわざ

1 表現のバリエーション

英語では、隣接するところでは同じ言葉や表現は避けるのが普通です(表現の変化)。しかし、その反面、一度良い言葉や表現を使ったら、最初から最後まで、徹頭徹尾それを使わなければなりません(表現の統一)。このことは、日本語でも同じことがいえます。ここでは、英語の「表現の変化」という概念をより深く理解するための前提として、全体を英語と日本語に「小分類」し、まず、日本語の「表現の変化」について解説します。ついで、その概念に基づいて、英語の「表現の変化」を「細分類」して、そのバリエーションを考察します。それと同時に、英語の場合には、「表現の統一」についても考えてみます。
ただ、日本語、英語とも、表現に変化を富ませるか否かは、各個人の好みや感性の問題ともいえます。決して、「変化を富ませなければいけない」という文法的な規則があるわけではありません。しかし、筆者は、日本語、英語とも、「表現に変化を富ませる」派であり、それに沿って、例をたくさん収集し、ほぼ完全な分類ができています。

1 日本語の場合

今までに例文は、何十、何百と収集していますが、例文はそれぞれ1つだけにとどめ、必要以外の解説は一切割愛するようにします。

(a) 変化を富ませる

(1) 文学からの引用

どちらも御れんし(連枝)であらせられながらおもしろからぬ間柄でござりましたから、一方がかついえ公の肩をもたれましたにつけ、一方がひでよし公のしりおしをなされたのでもござりましょう

これは谷崎潤一郎の「盲目物語」から引用した例ですが、「味方する」という意味では「肩をもつ」も「尻押しをする」も同じですが、隣接したところでは、同じ表現を避けている例です。

(2)  新聞・雑誌・随筆などからの引用

しかし、伝達手段が変わってきたとはいえ手紙には手紙の使命があり、e-mail には e-mail の役割がある。

「使命」も「役割」も同じ意味ですが、近くのところでは、表現の繰り返しを避けているわけです。

(3) その他からの引用

異動前の集団暴行を訓練と呼び、見せしめを「はなむけ」と称しているかにみえる。

4年ほど前、海上自衛隊の特殊部隊での訓練中の出来事を伝える新聞報道ですが、「呼ぶ」も「称している」も意味的には同じですが、違う表現で表わしている例と考えられます。

筆者も、この3つの例を紹介する際の表現に変化を富ませていますが、お気づきになりましたでしょうか?

2 英語の場合

「変化」については「変化しなければならない」ということはあり得ませんので、一端にあるのは「変化させた方がよい」ということになり、一方、「統一」については、当然、他端にあるのは「統一しなければならない」ということになりましたがって、両極端にあるのは、この2つになります。

これについては、今まで5回、いろいろな国際会議や国内会議に出席した折、「表現のバリエーション、変化と統一」というテーマで講演し、ついでにネイティブのアンケート調査も行い、お墨付きを頂いているので、安心して活用していただいてよいと思っています。

「トミイ方式」のコレクションとしては、品詞を「名詞」、「動詞」、および「その他」に分けて収集・分類していますが、それらすべてについて例文を取り上げると内容が膨大になりますので、それぞれシンボリックな例文だけを取り上げます。

(a) 変化させた方がよい

「名詞」の例

Applications of HDPE range from film products to large, blow-molded oil-storage tanks. One of the largest market areas is in blow-molded bottles for packaging consumer and industrial liquid products. Other major uses include high-quality, injection-molded housewares, water and gas-distribution pipe, and wire insulation.

例文の長さが長く、核心の部分を捉えにくいかもしれませんが、applications と uses です。どちらも、「応用用途」とか「使用用途」などという意味ですが、先に applications を使ってしまったため、次に出て来るところでは uses としているわけです。

このような場合、語源とか、ニュアンスなどはあまり意を介さず、もっぱら、表現にバラエティを富ませることにより、文章のエレガントさを高めようとしているわけです。

この文章は「名詞」の例として挙げてありますが、動詞も変化させています。最初の文では range from … to … というように range を使っているのに対して、後ろの文では、include …, …, and …. としています。

「動詞」の例

When the roof is flat, the material used to form the inner layer is usually referred to as decking. If it is sloped, the inner skin materials is called the roof sheathing.

どちらも、「―と呼ばれる」とか「―という」と意味ですが、隣接しているために、わざわざ表現を変えていると考えられます。また、When the roof is flat, と If it is sloped, という場合、もちろん、全体としては意味が違いますが、When と If もある種のバリエーションといえるかもしれません。

(b) 変化させてもよい
(c) 統一した方がよい
この2つは割愛します。

(d) 統一しなければならない

In this mode, the load and extension reading are stored at the fail point. If a sudden break occurs on the rising portion of the load-extension curve then the load-at-peak mode will provide an accurate measure of the load just prior to rupture. If a sudden failure occurs on the failing portion of the load-elongation curve, then use the Sample Break Module to obtain an accurate load value just prior to break.

この例は、統一すべき言葉を統一していない、悪い例として挙げているものです。

それは、load-extension curve と load-elongation curve です。共に「負荷-伸び曲線」という意味でしょうが、それならば、純粋の技術用語の場合には、extension とするか elongation とするか、どちらかに統一しなければなりません。

If a sudden break occurs と If a sudden failure occurs における break と failure,および just prior to rupture と just prior to break における rupture と break,これらは「(a) 変化を富ませる」か「(b) 変化させてもよい」に属するもので、統一しなければならないものではないと考えられます。

ご自分で、まず、「表現の変化と統一」に関心を持ち、その上で、日頃の翻訳活動を通して例文を集めていくと、立派なデータベースができあがります。

【筆者プロフィール】

富井篤(とみい・あつし)
技術翻訳者、技術翻訳指導者。株式会社 国際テクリンガ研究所代表取締役。会社経営の傍ら、英語教育および書籍執筆に専念。1934年横須賀生まれ。
主な著書に『技術英語 前置詞活用辞典』、『技術英語 数量表現辞典』、『技術英語 構文辞典』(以上三省堂)、『技術翻訳のテクニック』、『続 技術翻訳のテクニック』(以上丸善)、『科学技術和英大辞典』、『科学技術英和大辞典』、『科学技術英和表現辞典』(以上オーム社)など。


大規模英文データ収集・管理術 第36回

2012年 10月 29日 月曜日 筆者: 富井 篤

(6) 数量表現別・3

3 各種物理量の表現

「物理量」とは、今まで、すでに何回も出てきましたが、要するに、数値と単位で表現する科学技術分野で使用される「量」のことです。筆者が行っている現在の分類では、「明るさ」から始まり、「厚さ」、「圧力」、「粗さ」、「エネルギー」というように、物理量を50音別に79個に分類してあります。

ただ、この79個という物理量も、これだけしかあり得ない物理量として最初から存在していたものではありません。どのようにして、この79個という物理量が生まれて来たか、その経過を、時系列にして簡単に述べてみます。

○ 第一期(1975年頃から約5年間)

脱サラした直後、まだ英文和訳の翻訳をしていたころ、物理量に関する英例文に出会ったら、すべて、片っ端から図書カードに収集しました。前回と前々回に述べた「数量表現」全般については除き、物理量についての英例文だけで、2,500点から3,000点位に達しており、物理量の種類としては124個ありました。(図書カードへの収集方法につきましては、今年の12月の後半に具体的に説明します)

○ 第二期(1980年頃から約5年間)

ある出版社からの依頼により「英語の決めて 数量表現」の執筆に着手しました。本の構成は

第1編 概説編
第2編 基礎編
第3編 応用編

とし、物理量は第3編に載せることにしました。しかし、物理量の種類としては124個ありましたが、英例文が必要な数だけ集まっていなかった物理量や、あまり一般的ではない物理量などを除き、本では、最終的に76個に絞って執筆を始めました。

○ 第三期(1985年頃から現在に至る)

1985年以降は物理量に関しては、この76個の物理量に対して集中的に収集してきました。

○ 第四期

その後、コンピュータやエレクトロニクス関連の物理量が増え、2004年に三省堂から最新版として「技術英語 数量表現辞典」を出版した段階では物理量の数は79個になっています。

その79個の物理量を、以下に50音順に示します。これは、「トミイ方式」では、「数量表現別」が「大分類」ですから、その中の「物理量」は「中分類」ということになります。この「中分類」の下にさらに、「小分類」、「細分類」、「細々分類」、「極細分類」、「極細々分類」と続いていくのですが、これにつきましては、この先で説明します。

あ行 明るさ、厚み、圧力、あらさ、エネルギー、大きさ、応力、押しのけ量(排水量)、重さ、温度
か行 回数、回転および回転速度(回転数)、価格、角度、加速度、硬さ、含有量、期間、距離、公差(誤差、精度)勾配(傾斜)、効率、誤差
さ行 時間、湿度、質量、周期、周波数、出力、寿命、情報通信関係、すきま、ストローク、精度
た行 体積、高さ、たわみ、弾性、弾力、直径(径)、強さ、定格、抵抗、電圧、電源、電流、電力、トルク
な行 内径(外径)、長さ、熱量、年代、粘度、濃度
は行 パーセント、吐出し量、波長、幅、速さ、ばらつき、馬力、半径、比重、ひずみ、負荷(荷重)、深さ、浮力、振れ、分子量
ま行 摩擦・摩擦係数、密度、目盛、面積
や行 容積、容量
ら行 粒度、流量

この79個の物理量というのは、あくまでも「トミイ方式」で採りいれられているものであって、それぞれの読者のニーズによって、この中から不要なものを削除したり、新たに必要なものを加えたりしていただくと、それぞれの読者にとって使い勝手のよいデータベースができると思います。
注:「パーセント」は、単位であって物理量ではありませんが、表現方法が物理量とよく似ているので、あえて、物理量の中に入れてあります。

第34回の冒頭に説明しましたが、これら79個の物理量に対して収集した英例文を、それぞれ、第34回で取り上げた、「1 数量表現の基本パターン」に基づいて分類していくと、学習にもなるし、使いやすいデータベースを創り上げることもできます。

「温度」という物理量を例にとって、「小分類」以下について、簡単に説明します。

「温度」はさらに、以下のように、16個の「小分類」に細分されていきます。(「小分類」は(1),(2),(3),…… で表示されています。これらは、さらに「細分類」、「細々分類」と細分されていきます。屋上屋を避けるため、ここでは、「小分類」(4)についてのみ、「細分類」と「細々分類」に細分してあります。(a),(b),(c)は「細分類」を、(i),(ii),(iii)は「細々分類」を、それぞれ表しています。(4)以外の「小分類」についても、「細分類」、「細々分類」に細分されていることは、言うまでもありません。

(1) 温度はX□である
(2) ___の温度はX□である
(3) ___は温度がX□である
(4) 温度がX□の___
  (a) 数量語句+名詞
     (i) X□… +___
     (ii) X□+___
  (b) 名詞+数量語句
     (i) ___+X□ in …
     (ii) ___+X□ …
  (c) 名詞+他の語句+数量語句
     (i) ___+of X□in …
     (ii)___+having X□in …
     (iii) ___+範囲語 X□in …
(5) X□の温度
(6) X□の___
(7) 温度がX□もある
(8) 温度がX□しかない
(9) 温度がX□もある___
(10) 温度がX□しかない___
(11) X□もある温度
(12) X□しかない温度
(13) 最大(高)X□の温度
(14) 最小(少、低)X□の温度
(15) X□(単独の形)
(16) 周辺表現

「(16) 周辺表現」は、「数量表現」だからといって数量語句を含んだ例文だけにこだわらず、各物理量固有の周辺の表現も集めたものです。これは、後で英文を書くときとか、和英翻訳する際には、大いに役に立つものです。例えば、この「温度」に関していえば、数量語句は含まれていませんが、「温度を上げる」とか「温度が上がる」、「温度を下げる」とか「温度が下がる」、「温度が変化する」、「温度が高い」などという表現が収録されています。

以下に「周辺表現」の「小分類」を示します。なお、(2)については、参考のため、「細分類」、「細々分類」まで示してあります。

(1) 加熱・冷却に関する表現
(2) 昇温・降温に関する表現
  (a) 昇温
     (i) 温度が上がる
     (ii) 温度を上げる
     (iii) 温度の上昇
  (b) 降温
      (i) 温度が下がる
     (ii) 温度を下げる
     (iii) 温度の下降
(3) 変化・変動に関する表現
(4) 状態に関する表現
(5) X °Fの温度を維持する表現
(6) 極低温に関する表現
(7) その他

これで「数量表現別」の説明は終わりますが、もう少し詳しくお読みになりたい方は、「技術英語 数量表現辞典」(三省堂、富井篤著)を参照されることをお勧めします。ただし、この本は「トミイ方式」としての「数量表現」の書籍ではなく、あくまでも、「数量表現」そのものについての辞書です。「トミイ方式」としての「数量表現別」をもう少し詳しくお読みになりたい方は、この連載が終わり、書籍化されるようなことがありましたら、それをご参照ください。

次回37回から39回までの3回は、「分類」の最後となる「7 その他」です。

【筆者プロフィール】

富井篤(とみい・あつし)
技術翻訳者、技術翻訳指導者。株式会社 国際テクリンガ研究所代表取締役。会社経営の傍ら、英語教育および書籍執筆に専念。1934年横須賀生まれ。
主な著書に『技術英語 前置詞活用辞典』、『技術英語 数量表現辞典』、『技術英語 構文辞典』(以上三省堂)、『技術翻訳のテクニック』、『続 技術翻訳のテクニック』(以上丸善)、『科学技術和英大辞典』、『科学技術英和大辞典』、『科学技術英和表現辞典』(以上オーム社)など。


大規模英文データ収集・管理術 第35回

2012年 10月 15日 月曜日 筆者: 富井 篤

(6) 数量表現別・2

2 数量表現のスタイル

前回は、数量表現の基本パターンを「極細分類」まで、やや屋上屋を架すような分類をしてきましたので、今回は、英文和訳というよりも、和文英訳の際に役に立つような項目だけを取り上げてみようと思います。したがって、分類そのものは、現状の「トミイ方式」よりは少なくなりますが、内容に重点をおいて説明して行きたいと思います。

今回取り上げる項目は以下の通りです。

1 数と量
2 基数詞と序数詞
3 小数と分数
4 単位
5 以上・以下、超え・未満

これ以外に、数量表現周りの表現として、最大・最小、以内、概略、間隔、範囲、比、平均、合計、四捨五入、?当たりなどなどいろいろありますが、これらについては触れることができません。ご興味のある方は『英語数量表現辞典』(三省堂)をご参照ください。

1 数と量

英語では「数」と「量」の扱いが日本語とは比べ物にならないくらい厳密です。例えば、日本語の「たくさんのボート」は英語では many boats です。しかし、「たくさんの水」は much water です。このように、日本語では、boat のように可算名詞であろうと water のように不可算名詞であろうと、形容詞は「たくさん」ですが、英語では、boat のように可算名詞ならば形容詞は many であり、water のように不可算名詞ならば much です。この厳密さが「単数・複数」にも、「冠詞」にも響いてきます。

このようなことはまだ序の口で、この違いは、広範囲の品詞に関係してきます。例文をたくさん集めることにより、その「違いの概念」をマスターできるようになりますが、これをおろそかにしておくと、後々、和文英訳にとっては、ボディーブローのようにきいてきます。

2 基数詞と序数詞

1 基数詞
基数詞とは、1、2、3、というものです。この用法にはいろいろなルールがあります。英文和訳の際には、あまり面倒なルールはありませんが、和文英訳の際には、いろいろなルールがありますので気を付けなければなりません。

(i) 文頭の数値
原則的には文頭に数詞を置いてはいけません。どうしても置かなければならない場合には、その数値を綴るか、数値が文頭に来ないように、文構造を変えなければいけません。

(a) その数値を綴る
例えば

45 students are in our class. → Forty-five students are in our class.

すぐ後の (ii) で示すように、「1ケタの数字――9以下という説もある――で後ろに可算名詞が来る時は、数値は綴らなければならない」というルールもありますが、そのルールよりも、このルールの方が優先すると考えて差支えありません。

(b) 文を変える

45 students are in our class. → There are 45 students in our class.

(ii) 1ケタの数[10未満の数]
(a) 後ろに可算名詞が来る時
必ず綴ります。

例 three desks,four rooms,five persons

(b) 後ろに単位記号が来る時
数詞で表わします。

例 2 kg/cm2、100 VAC、60 km/h

(c)  1ケタの数[10以下の数]の数詞と2ケタの数[10を超える数]が1つの文の中で隣接して混在する時
次のようないろいろな説があります。
 ① 前者を綴り、後者を数字で表わす

例 This system consists of two to 16 processors.

 ② いずれも数字で表わす

例  This system consists of 2 to 16 processors.

 ③ いずれも綴る(ただし、いずれも、1ケタの数[10未満の数]の数字の場合

例 This system consists of two to eight processors.

(iii) 異なった2つの異なる数値――普通、前の数字が「数」を表わし、後者が「量」を表わす――を併記する時
これにも、いろいろな説があります。

(a) いずれか一方を綴る(あまり一般的ではありません)

例  5 five-gallon drums

(b) 数の小さい方を綴る(これが最も普通な書き方です)

例  five 5-gallon drums

(c) 前の数字――「数」を表わしている数値――には数詞を使い、後の数字――「量」を表わしている数値――を綴る

2 序数詞
序数詞とは、first、second、third、というものです。
(i) 1番目、2番目、3番目などを表わすもので、英語では、その前には、必ずtheを付けて使用します。
(ii) 序数詞の前に不定冠詞が付くこともあります。その時は、順番、順序、序列などを表わすのではなく、単に、「もう一つの~」というような意味です。

3 小数と分数

一般に「小数」はより厳密な数値を表示することができ、それに対し「分数」は、粗い「数量」しか表わすことができない。

それよりももっと大事なことは、これは特に「分数」について言えることですが、1未満の「分数」が後ろに「数」を表わしている名詞(すなわち、可算名詞)を伴うか、「量」を表わしている名詞(すなわち、不可算名詞)を伴うかによって、その名詞が複数形になるか単数形になるか違ってくるということです。

例を挙げてみます。

○「分数」の後ろに「可算名詞」が来ている場合

Nearly 1/4 of the respondents were female.

たとえ1/4であっても、「回答者」の1/4であるということは、「回答者」の数が4人以下である場合は別として、常識的には何十人、何百人いるものと考えられますので、その全体の1/4ならば、当然、複数人であろうということは想像がつきますので、1/4 of the respondents は複数扱いとなります。したがって、この主語を受ける動詞は was ではなく were になります。

○「分数」の後ろに「不可算名詞」が来ている場合

Three quarters of the surface area of the product is new surface that ….

Three quarters というのは3/4を綴ったものです。surface area は「表面積」で、数えられない名詞ですから、2倍であろうと3倍であろうと、また1/2であろうと3/4であろうと単数扱いとなり、この主語を受ける動詞は are ではなくisになります。

「小数」や「分数」は、それがどんな使い方をされているものであれ、たくさん例文が集まるまでは、しばらく、すべての例文を収集しておくと、必ず、後で学習の対象になると思います。

4 単位

「単位」は、まず最初に出てくる問題は、単位記号で書くか、綴るかということです。それ以外にも、「単位」には、下に示すようにいくつかの大事なルールがあります。

○ 数値と単位の間にはスペースを空ける。ただし、oCやoF、′ や ″ 、%などは空けない
○ 単位記号には複数形はない
○ 単位記号にはピリオドは打たない。ピリオドを打つのはインチだけ(in.)
○ 数値を数字で書く場合は、単位は必ず記号で書き、綴ってはいけない

これらのルールは、和英翻訳の時には絶対に守らなければなりません。日頃、たくさんの例文を集めておくと、正しい英文を書くことができるようになります。

「単位」と似たものに「準単位」というものもあります。これは者を数えるときに使うもので、その表現方法は、日本語と著しく異なっていませんので、これも、日頃から、集めるように心しておくとよいと思います。

5 以上・以下、超え・未満

ここで詳しく述べる余裕はありませんが、「以上・以下」、「超え・未満」は、日本語と英語の対応関係に注意が必要です。日本語の「以上・以下」は英語の more than,less than と同じだと思っている人が意外に多くいますが、英語の more than,less than は日本語の「超え・未満」と同じ表現です。

この点を理解していただくと、初心者がよく間違える more than one … という表現を勘違いすることが無くなります。

例えば、more than one person といった場合、初心者は、よく、これを「一人以上」と訳してしまいます。ここでも、「数」として扱うものと「量」として扱うものとの違いをよく理解しておかないといけないのですが、これは正確には「二人以上」なのです。混ぜならば、more than は 「…を超え」であり、一方「人」というのは「数」として扱うもので、「一人を超えること、即、二人以上」になるからです。

それならば、more than one pound はどうでしょうか。pound は「ポンド」という単位ですから「量」として扱うものであり、「1ポンドを超えること、即、2ポンド以上」にはなりません。したがって、この場合には、「2ポンドを超える」としなければなりません。

要するに、全く同じではなく、若干ニュアンスは違いますが、意味的には、more than one の後ろに「数」として扱うものが来ている場合には

more than one —-  イコール  two or more —-s

ということになります。日頃、英文を注意深く見ていると、

more than two —-s  イコール  three or more —-s
more than three —-s  イコール  four or more —-s

というような例文が、面白いように集まってきます。

さらに、「数量語句まわりの表現」として、「最大(高)、最小(低、少)」、「以内」、「概略」、「平均」、「合計」、「四捨五入(まるめる)」、「~あたり(~ごとに、~につき、毎~)」など、文字通り、「数量語句まわりの表現」をたくさん集めると、表現の種類とその意味・用法の差異、さらには、よい表現と悪い表現などの学習ができ、それがさらに、和英翻訳の際に活用できるようになります。

【筆者プロフィール】

富井篤(とみい・あつし)
技術翻訳者、技術翻訳指導者。株式会社 国際テクリンガ研究所代表取締役。会社経営の傍ら、英語教育および書籍執筆に専念。1934年横須賀生まれ。
主な著書に『技術英語 前置詞活用辞典』、『技術英語 数量表現辞典』、『技術英語 構文辞典』(以上三省堂)、『技術翻訳のテクニック』、『続 技術翻訳のテクニック』(以上丸善)、『科学技術和英大辞典』、『科学技術英和大辞典』、『科学技術英和表現辞典』(以上オーム社)など。


大規模英文データ収集・管理術 第34回

2012年 10月 1日 月曜日 筆者: 富井 篤

(6) 数量表現別・1

今回から3回にわたって「数量表現別」を取り上げていきます。「数量表現」というのは、もちろん「数」と「量」に関する表現ですが、ただ、それだけではなく、「数」という概念として取り扱う「表現」と、「量」という概念として取り扱う「表現」とがあり、これが、英語と日本語とでは、厳密さという意味で、全く違っています。そこに大きな難しさ、厄介さがあります。
「トミイ方式」では、「数量表現」を次の3つに「中分類」しています。

1 数量表現の基本パターン
2 数量表現のスタイル
3 各物理量の表現

1 数量表現の基本パターン

これを今回取り上げます。数量表現を構成する各要素、すなわち、数値、単位、物理量、名詞の4つをどのように組み合わせて「文」や「句」を構成するかについて記述している分類です。

2 数量表現のスタイル

これは次回(第35回)で述べるもので、基数詞、序数詞、単位、分数、小数、数量表現周りの語句、以上・以下、超え・未満などにつき、和訳する時ではなく、どちらかというと英訳する際の重要なルールなどについて説明している分類です。

また、ここでは、「数量表現」を単に分類して解説するだけではなく、上述した、「数」および「量」という概念として取り扱う「表現」の違いにもスポットライトを当てて分類しています。

3 各物理量の表現

これは第36回で扱います。温度、湿度、速度、圧力、電圧、電流、価格、高さ、幅、長さなど、重要な物理量を79個取り上げ、そのそれぞれを、1 数量表現の基本パターンに基づき、分類しているものです。

1 数量表現の基本パターン

「トミイ」方式では、これをさらに次の4つに「小分類」しています。ついでに、それぞれの「小分類」に対して「細分類」まで表示してあります。「小分類」は(a)、(b)、(c)、で「細分類」は(i)、(ii)、(iii)、で表示してあります。

(a) 何々は何々である
 (i) ……は×□である
 (ii) _____の……は×□である
 (iii) _____は……が×□である

(b) 何々の(が)何々
 (i) ……が×□の_____
 (ii) ×□の……
 (iii) ×□の_____
 (iv) ×□(単独の形)

(c) 何々は何々もある[何々しかない]
 (i) ……は×□もある[何々しかない]
 (ii) _____の……は×□もある[×□しかない]
 (iii) _____は……が×□もある[×□しかない]

(d) 何々もある[何々しかない]何々
 (i) ……が×□もある[×□しかない]_____
 (ii) ×□もある[×□しかない]……
 (iii) ×□もある[×□しかない]_____
 (iv) (最大[少、小、高、低、など])×□も[×□しか]

ここで、×は数値を、□は単位を、……は物理量を、_____は名詞をそれぞれ表わしています。

(a)と(b)は通常の数量表現を表わしており、(c)と(d)は、驚き、嬉しさ、失望、困惑など、感情を表わす数量表現を表わしています。そして、(a)と(c)は、それぞれ数量表現全体が完全な文になっており、(b)と(d)は数量表現が文の中の一部となっています。

それぞれの「細分類」に対する対応英語は下記の通りです。対応英語ですからこれを「分類」とは言いませんが、対応英語が2つ以上あるものもありますので、これを便宜上、「細々分類」と呼び、(1)、(2)、(3)、で表示しています。

(a) 何々は何々である

(i) ……は×□である
 (1) …… is ×□.

(ii) _____の……は×□である
 (1) …… of ____ is ×□.
 (2) ____ …… is ×□.
 (3) ____ has a …… of ×□.

(iii) _____は……が×□である
 (1) _____ is ×□ in …….
 (2) ____ is ×□ ===.

注:…… は物理量ですので名詞ですが、時には、その物理量を形容詞で表現することもあります。=== がその形容詞形です。例えば、lengthに対するlong,heightに対するhigh,depthに対するdeepなどがそれです。

(b) 何々の[が]何々
(i) ……が×□の____
 (1) 数量語句 + 名詞
  ① ×□ …… + ____
  ② ×□ === + ____
  ③ ×□ + ____

 (2) 名詞 + 数量語句
  ① ____ + ×□ in ……
  ② ____ + ×□ ===

 (3) 名詞+他の語句+数量語句
  ① ____ +  of + ×□ in …… [===]
  ② ____ +  having + a …… of ×□
  ③ ____ + 範囲語 + ×□ in …… [===]
 ここでは、「極細分類」まで使っています。

(ii) ×□の……
 (1) 一点の物理量
  ① a …… of ×□
  ② a ×□……

 (2) 範囲のある物理量
  ① ……s (of) up to ×□
  ② ……s (of) down to ×□
  ③ ……s below [under] ×□
  ④ ……s over [above] ×□
  ⑤ ……s 範囲語 ×□
  ⑥ ……s of ×□ or [and] 形容詞の比較級

 (3) 範囲ある物理量の一点
  ① a …… of from ×□ to y□
  ② a …… of ×□ or 形容詞の比較級
  ③ a …… (of) up to [down to] ×□
  ④ a …… of more [less] (または形容詞の比較級) than ×□

(c) 何々は何々もある[何々しかない]
(i) ……は×□もある[何々しかない]
 (1) …… is as ~ as ×□.

(ii) ____ の……は×□もある[×□しかない]
 (1) …… of ____ is as ~ as ×□.
 (2) ____ …… is as ~ as ×□.
 (3)  ____ has a …… of as ~ as ×□.

(iii) ____ は……が×□もある[×□しかない]
 (1) ____ is as ~ as ×□ in …….
 (2) ____ is as ~ as ×□ ===.
 (3) ____ is as ~ as ×□.

(d) 何々もある[何々しかない]何々
(i) ……が×□もある[×□しかない]____
 (1) 名詞+数量語句
  ① ____ + as ~ as ×□ in ……
  ② ____ + as ~ as ×□ ===
  ③ ____ + as ~ as ×□
 (2) 名詞+他の語句+数量語句
  ① _____ + of + as ~ as ×□

(ii) ×□もある[×□しかない]……
 (1) 物理量 + 数量語句
  ① …… + as ~ as ×□
 (2) 物理量+他の語句+数量語句
  ①…… + of + as ~ as ×□

(iii) ×□もある[×□しかない]____
 (1) 数量語句が物質名詞を修飾
  ① as ~ as ×□ +  of + _____
 (2) 数量語句が普通名詞(可算)を修飾
  ① as ~ as ×□ +  _____

(iv) (最大[少、小、高、低、など])×□も[×□しか] 
 (1) 動詞の目的語としての用法
  ① 動詞 + as ~ as ×□
 (2) 前置詞の目的語としての用法
  ① 前置詞 + as ~ as ×□

基本パターンは以上です。数量表現は、文であっても句であっても、ほとんど上に述べて来たパターンの中に納まるのではないかと思います。

最後に、基本パターンの中で重要なパターンを3つほど、例を挙げて説明します。

その1 have動詞を使った表現

「(a) 何々は何々である」の中で、「(ii) _____の……は×□である」の中に英語の表現方法には次の3つがあると説明しました。

(1) …… of ____ is ×□.
(2) ____ …… is ×□.
(3) ____ has a …… of ×□.

例えば

水の沸騰点は100℃である.

という日本語を英語で書く場合、多くの日本字は、「(1) …… of ____ is ×□.」を使って

The boiling point of water is 100°C.  …………①

と書きます。もちろん、これで間違っているわけではありませんが、ネイティブは、よく「(3) ____ has a …… of ×□.」を使って

Water has a boiling point of 100°C.  …………③

と書きます。③ のように発想できるようにしておくと、便利な場合が非常に多いです。

その2 1点の物理量の表現

例えば

100℃の温度

という場合、「(b) 何々の(が)何々」、その中の「(ii)  ×□の……」、さらにその中の「(1) 一点の物理量」の中にある「① a …… of ×□」を使って

a temperature of 100°C

と書きます。これは基本中の基本で、必ず正確に覚えておかなければならない表現です。すなわち

不定冠詞 + 物理量(単数形) + of + 数値 + 単位

という5つの要素を、正しい語順で正しく書かなければなりません。

その3 範囲のある物理量の表現

例えば

100℃までの温度

という場合、「(b) 何々の(が)何々」、その中の「(ii) ×□の……」、さらにその中の「(2) 範囲のある物理量」の中にある「⑤ ……s 範囲語 ×□」を使って

temperatures up to 100°C

と書きます。これも基本中の基本で、必ず正確に覚えておかなければならない表現です。すなわち

無冠詞 + 物理量(複数形) + 範囲語 + 数値 + 単位

です。

次回は、2 数量表現のスタイルをお届けします。

【筆者プロフィール】

富井篤(とみい・あつし)
技術翻訳者、技術翻訳指導者。株式会社 国際テクリンガ研究所代表取締役。会社経営の傍ら、英語教育および書籍執筆に専念。1934年横須賀生まれ。
主な著書に『技術英語 前置詞活用辞典』、『技術英語 数量表現辞典』、『技術英語 構文辞典』(以上三省堂)、『技術翻訳のテクニック』、『続 技術翻訳のテクニック』(以上丸善)、『科学技術和英大辞典』、『科学技術英和大辞典』、『科学技術英和表現辞典』(以上オーム社)など。


大規模英文データ収集・管理術 第33回

2012年 9月 17日 月曜日 筆者: 富井 篤

(5) 構文別・4

今回は、4回にわたった「構文別」の最後で、「省略構文」と「補足説明構文」を取り上げます。

「省略構文」とは、ぼてぼてと重苦しい構文にならないように、ありとあらゆる方法を使って、不要な語句を省略している構文で、「補足説明構文」は、2つの文の関係とバランスを巧みに処理した、日本人にとっては、やや近寄りがたいような構文です。

5 省略構文

「トミイ方式」では、「省略構文」を次の6個の「小分類」に分類しています。その他にも、前置詞や冠詞の省略ということはありますが、これらについては、それぞれの品詞のところで収録されています。

1 目的格の関係代名詞の省略
2 助動詞の省略
3 動詞の省略
4 主語(または、その一部)の省略
5 名詞の省略
6 特殊省略法

1 目的格の関係代名詞の省略

これは、学校英語の守備範囲ですので、どなたでもお分かりのことと思います。

2 助動詞の省略

これは、技術文ではよく目にする省略法で、大変大事なテーマですので、例を挙げて説明します。
この省略のメカニズムを、「公式」として示してみますと、下記のようになります。

S1 V1 and S2 V2

すなわち、2つの文が and で結ばれている時、2つ目の文の中の助動詞が省略されることです。わかりやすいように、実例を挙げて説明します。

Here, the amount of moisture that can be tolerated must be specified first, and the required dew point determined from this value.

この英文において、主語(S1)は the amount of moisture,助動詞は must be,動詞(V1)はspecified,主語(S2)は the required dew point,そして動詞(V2)は determined です。

この例文では、the required dew point と determined の間に、must be が省略されています。したがって、後段は、

必要な露点はこの値から決定しなければならない

となります。全体を通して、英文通りに素直に訳すと、

まず最初に許容できる湿気の量を決めなければならない、そしてこの値から必要な露点を決定しなければならない

となります。しかし、これでは、「なければならない」が両方の文にあって重いので、日本語では、後の文だけに残し、

まず最初に許容できる湿気の量を決め、ついで、この値から必要な露点を決定しなければならない

とします。
もし、the required dew point と determined の間に must be が省略されていることに気が付かなかったとすると、後段は訳しようがなく、文法的にはめちゃめちゃになりますが、determined という、本来は過去分詞であるものを過去形と解釈して、「必要な露点をこの値から決定した」と訳してしまうことになります。

結論として

英語では助動詞を前の文に残し、後の文から省略してしまいますが、日本語では、「なければならない」を前の文からは省略し、後ろの文にのみ残す

これが、助動詞の省略法というものです。

和訳文は省略しますが、3つの文から成る重文の例と4つの文から成る重文の例を挙げます。わかりやすいように、助動詞が省略されている個所には*マークを付けてあります。

Establishment of clear channels of information feedback from the operator in the field to the designer and manufacturer, so that the cause of failure may be remedied, the performance evaluated, and maintenance techniques developed.

If stiffener spacing is varied, web frames curved, many different shapes used, and plate stiffeners located asymmetrically, the design may become difficult to fabricate and offset savings in material costs by increasing labor costs.

3 動詞の省略
4 主語(または、その一部)の省略
5 名詞の省略

3、4、5は省略します。

6 特殊省略法

まず、実例から見てみましょう。

Two-stage helical reducers are used for reductions of 3:1 to 40:1, three-stages from 30:1 to 200:1, and four-stages from 150:1 to 900:1.

この英文は、ヘリカル減速機の減速範囲について述べたものですが、二段式ヘリカル減速機は Two-stage helical reducers というように正式な呼び名で書かれているのに対し、三段式ヘリカル減速機と四段式ヘリカル減速機については three-stages とか four-stages などと書かれています。実は、これが「特殊省略法」というもので、helical reducers の最後の s を three-stage とか four-stage などの後ろに付けて表現しているわけです。この表現方法は非常に頻繁に目にすることがあります。この「特殊省略法」は、英和翻訳の時に間違わずに正しい日本語に翻訳できるようになり、さらには、この「特殊省略法」を和文英訳の時に活用できるようになると、出来上がった英語が、ストレスの抜けた、すっきりした英文になります。

大事ですのでいくつか英例文を挙げておきます。

Generally, metallic particles show up white and nonmetallics in varying shades of gray.

Separate flow-control valves are used much less frequently in pneumatic systems than in hydraulics.

いろいろな形の省略構文をたくさん集めると、おのずから自分でも、省略法を取り入れた省略構文を書くことができるようになり、今までのぼてぼてした英文が、贅肉を落とした英語らしい英文になるはずです。

6 補足説明構文

この構文は、1つの文(以下、主文と称します)の後ろに、その文をさらに補足している文(以下、補足文と称します)が続く時の文構造です。その時、主文と補足文の間が

○ 対等にならないように
○ 無関係にならないように

配慮している文構造です。

もし、主文と補足文を and でつないでしまうと、これら2つの文は対等になってしまいます。一方、主文と補足文を、主文の文末にピリオドを打って区切ってしまうと、両者の関係が無くなり、単に2つの文が、丸太のように並べられているような関係になってしまいます。

そこで、この構文では、下に示すように、主文の後ろにカンマを打ち、補足文を主語+分詞で表わした述部動詞を、主文の後ろにつなげます。分詞には現在分詞が最も多いですが、過去分詞のこともあります。そして、現在分詞の場合、自動詞の現在分詞もあれば他動詞の現在分詞もありますが、最も多いのは being です。

S1 + V1 + 〜, S2 + V2ing [または、V2 ed] + 〜.

以下に、いろいろな述部動詞を取る文構造の例を英例文とともに示してみます。(補足文の部分だけを示します)
(a) S2 + being + 〜 .

Radiation is one of the three basic methods of heat transfer, the other two methods being conduction and convection.

(b) S2 + 現在分詞 + 〜 .
 (i) S2 + 自動詞の現在分詞 + 〜 .

The double-pipe type consists of one tube inside another, one fluid flowing inside the inner tube and the other flowing in the annular space between tubes.

 (ii) S2 + 他動詞の現在分詞 + 〜 .

Each television frame consists of two interlaced fields, each requiring 1/60 sec.

 (iii) S2 + being + 過去分詞 + 〜 .

Ten or twelve of these possible combinations are normally used for dialing information, the other four codes being reserved for data sending purposes.

(c) S2 + 過去分詞 + 〜 .

In the signal box are pulleys, each connected to an operating lever.

要するにこの構文は、まず主文を述べておいて、その後に、「あなたは、もしかしたらわからないかもしれませんが、もう少し細かく説明すると、これこれこうなんですよ」といって、声のトーンを少し下げて相手方に補足説明するというシチュエーションを想像していただくとよいと思います。

【筆者プロフィール】

富井篤(とみい・あつし)
技術翻訳者、技術翻訳指導者。株式会社 国際テクリンガ研究所代表取締役。会社経営の傍ら、英語教育および書籍執筆に専念。1934年横須賀生まれ。
主な著書に『技術英語 前置詞活用辞典』、『技術英語 数量表現辞典』、『技術英語 構文辞典』(以上三省堂)、『技術翻訳のテクニック』、『続 技術翻訳のテクニック』(以上丸善)、『科学技術和英大辞典』、『科学技術英和大辞典』、『科学技術英和表現辞典』(以上オーム社)など。


大規模英文データ収集・管理術 第32回

2012年 9月 3日 月曜日 筆者: 富井 篤

(5) 構文別・3

今回は、「構文別」の中の「倒置構文」と「強意構文」を取り上げます。この2つの構文は、いずれも、ふつうの文で書いただけでは正確なニュアンスが出せない時に使用する構文です。

「倒置構文」は、文法上やむを得ず語順を倒置させたり、ある言葉を強調するために倒置させたりする構文です。また「強意構文」は、ある言葉を強調するための構文です。
この2つの構文も、前回の「否定構文」と同様、それぞれの構文を構成している各項目を羅列し、説明や解説を必要としている項目だけについて簡単に説明していくことにします。

3 倒置構文

「トミイ方式」では倒置構文を、次のような2個の「小分類」に分類しています。その2個の「小分類」をそれぞれ「細分類」し、それをさらに「細々分類」しています。この表では、「細分類」を(a)、(b)、(c)、……で表わし、「細々分類」を(i)、(ii)、(iii)、……で表わしています。

1 文法上決められた倒置

 (a) Here is …..、There is …..の構文
  (i) Here is ……
  (ii) There is ……
  (iii) There are no ……
 (b) 否定詞で始まる文
  (i) not only
not onlyの例を一つだけ挙げておきます。
Not only do these signals provide unambiguous feedback to the naive user, but their duality (audio and visual) unsures some feedback under the extremes of either high ambient lighting or high noise levels.
これは、not only …… but (also) の構文ですが、not only が文頭に出ると、these signals という主語と provide という動詞が倒置するわけです。provide を do provide として書かれています。これをわかりやすい語順にしてみますと These signals not only provide …… となります。
  (ii) neither、nor、およびno
  (iii) その他

2 強調のための倒置

 (a)前置詞を文頭に
  (i) across
  (ii) against
  (iii) among
  (iv) at
  (v) behind
  (vi) below
  (vii) between
betweenの例を1つだけ挙げておきます。
Between these two aft stations are the on-orbit pilot and payload handling stations.
これは
これら2つの船尾機関ステーションの間には、軌道パイロット用ステーションとペイロード操作ステーションがある
と訳せるものですが、Between these two aft stationsが、決して主語ではありませんが、文章の頭に来ています。それは「2つの船尾機関ステーションの間には」ということを強調したいために倒置しているわけです。これを、通常の文章に並び替えてみますと
The on-orbit pilot and payload handling stations are between these two aft stations.
となり、この英文では、The on-orbit pilot and payload handling stations に重点を置いて書いた平叙文に過ぎません。Between these two aft stations は全然強調されていません。
  (viii) beyond
  (ix) in
  (x) inside
  (xi) into
  (xii) of
  (xiii) on
  (xiv) over
  (xv) to
 (b) 過去分詞を文頭に
   過去分詞を文頭に置いて倒置することも、よくあります。
Attached to the moving coil is a pen arm, which traces an ink record o a continuously moving paper chart.
これは
可動コイルに取り付けられているのは、ペン・アームである
と訳される文です。決して
ペン・アームは可動コイルに取り付けられている
と言っているものではありません。
 (c) 形容詞を文頭に
 (d) onlyを文頭に
 (e) asを文頭に
 (f) その他の語を文頭に

4 強意構文

これは、文字通り、文中のある語句を強調したいときに使う構文です。
「トミイ方式」では強調構文を、次のような4個の「小分類」に分類しています。その4個の「小分類」をそれぞれ「細分類」し、それをさらに「細々分類」しています。この表では、「細分類」を(a)、(b)、(c)、……で表わし、「細々分類」を(i)、(ii)、(iii)、……で表わしています。

1 強調したい語や句を文頭に

例えば
地球上では、水素はあまり豊富ではない
という場合、強調ということを、あまり意識せずに英訳すると、おそらく
Hydrogen is much less abundant on the earth.
となってしまいます。英語そのものとしては、別におかしいものではありませんが、元の日本語は、「他の惑星ではどうか知らないが、地球上では、水素はあまり豊富ではない」というニュアンスが込められているのであり、単に、このような英語では
水素は、地球上ではあまり豊富ではない
というニュアンスになってします。そのため、「地球上では、」という語句を強調しなければなりませんが、そのような場合、「地球上では、」という語句を文頭に出し
On the earth, hydrogen is much less abundant.
とするわけです。
これは、どちらかというと、状態や条件などを強調する場合にとられる強調のし方で、前置詞に導かれた副詞句を伴ったものである。そこで、「トミイ方式」では、前置詞順に並べ、英例文を分類しています。
 (a) at
 (b) from
   fromの例文が非常に多いので、英例文を2つ、和訳文とともに挙げます。
From air, oxygen is made by liquefaction and fractional distillation.
  空気から、液化と分別蒸留により酸素が作られる

From water, very pure oxygen can be made by electrolysis as a by-product of hydrogen manufacture.
  水から、非常に純粋な酸素が、電解により水素製造の副産物として作られる

 (c) in
 (d) inside
 (e) on
 (f) through
 (g) to
 (h) with
 (i) without

2 It is 名詞thatで名詞を強調

 (a)  “It is 名詞 that 動詞”の例
 (b) その他の例

3 動詞の前にdo動詞を

これは、一般動詞の前に、さらにdo(does, didなど)を添え、その動詞を強調するものであり、したがって、行為や動作を強調するときに用いられるものです。英例文を挙げますが、これは動詞を強意しているだけですので、和訳は省略します。
Even where interfaces do exist the packages usually are not integrated well enough to allow ready exchange of information about design changes.

It does not that the repeater (using bridges for that purpose), but it does have two additional node types, the MINIMAP node and the MAP/EPA gateway.

4 述部動詞を大文字で

これは、主に、マニュアルに使われる表現で、“確実に____してください”とか、“絶対に____してはいけません”などのように、強く強制する場合に用いる表現です。普通、述部動詞を大文字で書きますが、否定形の場合には、もちろん DO NOT ____ と書き、肯定形の場合でも、動詞の前によくDOを添えて書きます。しかし、これは、決して、文法的ルールではなく、書き手の気持ちですので、いろいろな書き方があります。例えば、
絶対にドライバは使用しないでください
という場合、
DO NOT USE a screwdriver.
DO NOT use a screwdriver.
Do NOT use a screwdriver.

など、いろいろな書き方があります。例文を2つ挙げます。
PLEASE DO write to us in Japanese.
I urge you NOT to vote for Mr. XXX in the upcoming election.

【筆者プロフィール】

富井篤(とみい・あつし)
技術翻訳者、技術翻訳指導者。株式会社 国際テクリンガ研究所代表取締役。会社経営の傍ら、英語教育および書籍執筆に専念。1934年横須賀生まれ。
主な著書に『技術英語 前置詞活用辞典』、『技術英語 数量表現辞典』、『技術英語 構文辞典』(以上三省堂)、『技術翻訳のテクニック』、『続 技術翻訳のテクニック』(以上丸善)、『科学技術和英大辞典』、『科学技術英和大辞典』、『科学技術英和表現辞典』(以上オーム社)など。


大規模英文データ収集・管理術 第31回

2012年 8月 20日 月曜日 筆者: 富井 篤

(5) 構文別・2

今回は、「構文別」の中の「否定構文」です。

2 否定構文

「否定構文」は、日本語と英語とでは大きく違います。日本語では、動詞に否定詞が付けて動作や状態を否定するのですが、英語では、主語や補語や目的語を否定して文全体を否定します。

例えば、日本語では、「~しない」とか、「~できない」とか、「~ではない」などといって動作や状態を否定しますが、英語では、When no metal presents, ……のように主語を否定して、「金属がない時には、……」とか、A ballistic missile has no wings. のように目的語を否定して、「弾道ミサイルには翼がない」などというように、文全体を否定します。

こうしたことをふまえ、「トミイ方式」では否定構文を、次のような9個の「小分類」に分類しています。その9個の「小分類」をそれぞれ「細分類」し、それをさらに「細々分類」しています。この表では、「細分類」を(a)、(b)、(c)、……で表わし、「細々分類」を(i)、(ii)、(iii)、……で表わしています。1個所、「極細分類」まで分類されているところがありますが、それは(1)、(2)、(3)、……で表わしてあります。

この「否定構文」では、今までとは違い、「トミイ方式」が採っている「細々分類」までのすべての項目を列記し、読者のみなさんに幅広い問題意識を提示してみたいと思います。「トミイ方式」では、すでに、これらすべての項目の中に英例文が入れられています。それは、今までに何回も繰り返し述べて来たように、「トミイ方式」というのは、先に分類をして、その中に収集した英例文を入れていくのではなく、収集したすべての否定構文の英例文を、たくさん集まったある時点で分類し、その中に英例文を入れていくわけですから、当然のことです。

紙幅の関係で、それぞれについて説明をすることも、例を挙げることもできませんので、代表的な項目についてのみ説明をしてみます。もし、この否定構文についてご関心またはご興味がありましたら、「科学技術英語構文辞典」(三省堂)をご参照ください。

ご自分でこの構文をゼロから攻略したいと思うならば、片っ端から否定語句を使った構文を収集し、ある時点で分類するという方法が良いと思いますが、それには時間がかかります。そうではなく、すぐに手っ取り早く否定構文を実務の翻訳にうまく活用できるようになりたいというのであるならば、筆者がすでに作成した以下の「分類表」を効率よく使い、集めたその時点でその「分類表」の中に入れていく方法を採ると、手っ取り早く、否定構文を攻略できると思います。

1 否定詞の種類

 (a) 直接否定詞
 (b) 準否定詞
 (c) 意味上の否定詞
 (d) 複合否定語句
  (i) 否定詞を含まない否定語句
  (ii) 否定詞を含む否定語句
 (e) 接頭辞・接尾辞
 (f) 否定代名詞

2 否定詞の位置

 (a) no
  (i) 主語に no を付ける場合
  (ii) 目的語に no を付ける場合
 (b) few
    注:これは、英語では「数」として扱われる名詞に使う「否定詞」です。
  (i) 主語に few を付ける場合
  (ii) 目的語に few を付ける場合
 (c) little
    注:これは、英語では「量」として扱われる名詞に使う「否定詞」です。
  (i) 主語に little を付ける場合
  (ii) 目的語に little を付ける場合
 (d) little or no
  (i) 主語に little or no を付ける場合
  (ii) 目的語に little or no を付ける場合

3 二重否定

 (a) 二つの否定詞の組み合わせ
 (b) 否定詞と否定を表す接頭辞を付けた形容詞との組み合わせ
  (i) not unadvisable の例
  (ii) not incompatible の例
  (iii) not uncommon の例
  (iv) not impossible の例
  (v) not unreasonable の例
  (vi) not unusual の例
  (vii) no inexpensive
  (viii) no unfavorable

4 部分否定

 (a) not all
 (b) not every
 (c) not always

5 間接否定詞

注:これらのほとんどのものは、否定詞と考えられる言葉を使われていませんが、日本語になると「否定詞」または「否定語句」となり、文全体を否定構文にしてしまう語句です。
 (a) hardly
 (b) scarecely
 (c) seldom
 (d) rarely
 (e) rather than
    注:一般には、「~というよりもむしろ~」というように肯定詞と思われていますが、いろいろ例文を集めてみると、「~ではなく~」というようにあたかも否定詞であるかのように使われていることが非常に多いです。
 (f) free from
  (i) be動詞 free from ____
  (ii) …… free from ____
 (g) only
    注:一般には、「~のみ~である」というように肯定詞と思われていますが、いろいろ例文を集めてみると、「~しか~ではない」というようにあたかも否定詞であるかのように使われていることが非常に多いです。
 (h) regardless of
  (i) 名詞を伴った場合
  (ii) 関係副詞を伴った場合
 (i) without
 (j) without ____ing …….
    注:この中には、without —- ____ing …….のように —- を入れることによって、「—- が …… を ____ することなく」というように意味上の主語を入れた否定表現ができることがわかります。
 (k) no longer
  (i) 動詞を否定する場合
  (ii) 形容詞を否定する場合
 (l) not necessarily
  (i) 動詞を否定する場合
  (ii) 形容詞を否定する場合
 (m) unless
 (n) less
  (i) 名詞を修飾する場合
  (ii) 形容詞(副詞)を修飾する場合
 (o) -less
 (p) in no case (event)
    注:日本語で、「いかなる場合も、~してはいけない」という場合、初心者は、In any case, do not ~(~してはいけない)と書いてしまいます。しかし、ネイティブの書き方は、そうではなく、In no case ~(~しなければいけない)と書きます。さらに面倒なことには、case の後ろにカンマを付けず、主文の主語と述部動詞を倒置させます。たくさんの例をご自分で集めてみると、よく理解できるようになります。後から出てくる、8の(c)の(i)がそれです。
  (i) 文頭に使う場合
  (ii) 文中に使う場合
 (q) by no means

6 否定の慣用表現

 (a) too ____ to ……
  (i) 形容詞と共に
   (1) too ____ to ……
   (2) too ____ for ,,,,,, to ……
  (ii) 副詞と共に
 (b) not ____ but ……
 (c)  not only ____ , but (also) ……
 (d) cannot ____ too ……
  (i) be 動詞を伴った場合
  (ii) 一般動詞を伴った場合
 (e) not ____ till (until)……
 (f) not ____ because ……
  (i) 理由を表す場合
  (ii) 条件を表す場合
 (g) no ____ because ……
 (h) neither ____ nor ……
  (i) 名詞を否定する場合
  (ii) 動詞を否定する場合
  (iii)  その他の語句を否定する場合
 (i) no ____ nor ……
 (j) not ____ either
 (k) no more than と not more than、no less than と not less than
 (l) no matter+ 関係詞 ____
  (i) no matter how
  (ii) no matter what
  (iii) no matter which
  (iv) no matter where
  (v) no matter whose
  (iv) no matter whether

7 There is ____構文

 (a) There is no ___
 (b) There is little ____
 (c) There is little or no ____

8 否定倒置構文

 (a) neitherの場合
 (b) nor の場合
  (i) no(または、not)___ nor …… が一つの文の場合
  (ii) 前の否定文を受けて Nor …… という形の場合
 (c) no の場合
  (i) in no case の例
  (ii) in no event の例
 (d) seldom の場合

9 否定代名詞

 (a) nothing
  (i) 主語として用いられ場合
  (ii) 補語や目的語として用いられた場合
 (b) nobody
 (c) none
  (i) ____ が複数名詞の場合
  (ii) ____ が単数名詞の場合
  (iii) none が複数名詞の場合
  (iv) none が単数名詞の場合
 (d) neither

次回は、「倒置構文」と「強意構文」です。

【筆者プロフィール】

富井篤(とみい・あつし)
技術翻訳者、技術翻訳指導者。株式会社 国際テクリンガ研究所代表取締役。会社経営の傍ら、英語教育および書籍執筆に専念。1934年横須賀生まれ。
主な著書に『技術英語 前置詞活用辞典』、『技術英語 数量表現辞典』、『技術英語 構文辞典』(以上三省堂)、『技術翻訳のテクニック』、『続 技術翻訳のテクニック』(以上丸善)、『科学技術和英大辞典』、『科学技術英和大辞典』、『科学技術英和表現辞典』(以上オーム社)など。


« 前のページ次のページ »