「辞書引き学習」とは(監修:深谷圭助)

2010年 7月 16日 金曜日 筆者: 辞書ウェブ 編集部
「辞書引き学習」とは

深谷圭助先生(⇒プロフィール)が開発した、辞書を最大限に活用して、子どもが自ら調べ・自ら学ぶ習慣と能力とを身に付け、子どもの可能性を最大限に引き出すための画期的な学習方法です。

 

「やってみよう!」 「辞書引き学習」への取り組み
―先生方・保護者の方へ― 監修:深谷圭助

◎「辞書引き学習」へのステップ(0) ―準備するものは3つ―

◎「辞書引き学習」へのステップ(1) ―辞書は身近に置く―

◎「辞書引き学習」へのステップ(2) ―できる限り低年齢のうちに始める―

◎「辞書引き学習」へのステップ(3) ―知っていることばを引く―

◎「辞書引き学習」へのステップ(4) ―調べたことばに付箋を貼る―

◎「辞書引き学習」へのステップ(5) ―とことん、ほめる―

 この取り組みが、子どもの可能性を最大限に引き出すことにつながって行きます。
「辞書引き学習」は、無限の可能性を秘めた画期的な学習法です。

 

解説編 「やってみよう!」 「辞書引き学習」への取り組み


「辞書引き学習」へのステップ(0)―準備するものは3つ―

 「辞書引き学習」では、準備はとっても簡単、用意するものは次の3つです。

これだけで、お子さまの前に無限の可能性が広がります。


「辞書引き学習」へのステップ(1)―辞書は身近に置く―

 用意した辞書は、お子さまが調べたくなったときにすぐ手が届く範囲に置いておくこと。当たり前ですが、このことが最も大切です。本棚にしまっておくのではなく、まずは机の上などすぐ身近なところに置いておき、いつでも手軽に調べられるようにしてください。

→ケースやカバーも、本来は辞書の本体を保護するためにご用意しているものですが、辞書を引くためには不要なものでもありますから、すぐにはずしていただいて結構です。


「辞書引き学習」へのステップ(2)―できる限り低年齢のうちに始める―

 小学校では、ふつう3年生または4年生で辞書の引き方を学びます。

 しかし、深谷先生によれば、低学年の児童のほうがことばや知識に対する好奇心や吸収力がより強く、「辞書引き学習」にも無心に取り組んでいくことができるとされています。引き方を詳しく教えることさえ必要ではありません。お子さまもすぐに辞書を引けるようになります。

 できる限り小さいうちに、できれば小学校1年生から、取り組みを始めることが重要です。

→漢字が分からない小さいお子さまでも、ひらがなさえ読めれば、心配なく「辞書引き学習」に取り組むことができます。(⇒三省堂のお薦め『三省堂 例解小学国語辞典』紹介ページ


「辞書引き学習」へのステップ(3)―知っていることばを引く―

 一般に、辞書とは知らないことばを引くものである、と思われることが多いですが、「辞書引き学習」では、そのような先入観を裏切る、「知っていることばを調べる」ことから始めます。

 たとえば、今日のお昼に食べた「スパゲティ」を引いてみてください。その説明を読むことで、今食べたばかりのおいしいスパゲティのことが「ことば」としても理解できるようになるでしょう。そして、たとえば「スパゲティ」を引いたお子さんは、その解説の文章から、「細長い」「西洋」「ソース」などの様々なことばを見つけ出して引くことができます。さらに、「ソース」を引いたお子さんは、「調味料」→「砂糖」→「さとうきび」……と引き続けて行くかもしれません。

 そのような繰り返しから、少しずつ辞書に親しんでいただくということが、「辞書引き学習」の大きな特色の一つです。


「辞書引き学習」へのステップ(4)―調べたことばに付箋を貼る―

 調べたことばを付箋に書き込んで辞書に貼っていくということも、「辞書引き学習」の大きな特色の一つです。

 はじめのうちは、付箋には鉛筆で順番に番号をふっておき、そこに調べたことばを書き込んで、辞書のページの上のほうに貼っていくようにしましょう。すぐに辞書の上部に付箋がたくさん“立った”状態になります。これを繰り返していくと、見る間に付箋が貼り重ねられ、早いお子さまでは数カ月もすると、ブロッコリーのように上部が大きく膨らんだ辞書になります。

 そのようにして貼られたたくさんの付箋は、お子さまにとって、自分が取り組んできたことの目に見える成果として映り、学びに対する自信にもつながってゆくでしょう。


「辞書引き学習」へのステップ(5)―とことん、ほめる―

 「辞書引き学習」が成功するか否かは、先生方・保護者の方のサポートにも大きく依拠しています。お子さまの辞書に付箋が立ち始めたら、積極的にほめてあげるようにしましょう。お子さまも、ほめられることで、自分の取り組みが正しく評価されていることを実感し、さらに努力をしていこうという気持ちを強めていきます。

 付箋でふくらんだ辞書は、多少見栄えはよくないかもしれませんし、かえって引きにくいのではないかと思われるかもしれません。しかし、お子さまにとってはそのような辞書こそが、自分の努力の証明であり、勲章なのです。決してあせらず、根気強く、お子さまの学ぶ気持ちを育ててゆけるよう、大らかに導いてあげてください。

 

「辞書引き学習」無限の可能性

 このように「辞書引き学習」は、辞書という昔から私たちの身近にある手頃なツールを手掛かりにして、子どもたちのなかに学ぼうとする意欲を芽生えさせ、調べる方法を身に付けさせ、達成感を実感させる学習法です。

 小学生向けの国語辞典は、このような「辞書引き学習」によって導き出されるお子さまの好奇心に十分に応えられるように編集されています。

 辞書に収録された数万のことばは、そこから広がる無限の世界への入り口であるということもできるのです。

 そして、国語辞典を引いて調べる楽しさを味わったお子さんは、たとえ1年生であったとしても、すぐに漢字辞典も難なく使いこなして漢字の学習に取り組んでいけるようになるでしょうし、より上級の辞書を調べるようになったり、辞書の枠も越えて、図鑑や百科事典・インターネットなど様々な場で、自らすすんで学んでいこうとするようにもなるでしょう。

 そのような取り組みのなかで、お子さま自身の個性や好奇心の向かう方向もだんだんと定まり、学習に必要な集中力も養なわれることが期待できます。

 「辞書引き学習」は、そのような無限の可能性を秘めた画期的な学習法です。

 

「辞書引き学習」に最適な辞書の選び方

 深谷先生によれば、「辞書引き学習」で利用できる辞書の条件は、

1)新しいこと
2)語数が多いこと
3)すべての漢字にふりがながついていること

の3つとされています。

 三省堂では、上記の条件にぴったりと合った『三省堂 例解小学国語辞典』をご用意しております。是非一度ご覧ください。(⇒紹介ページ


【深谷圭助先生プロフィール】

深谷圭助(ふかや・けいすけ)

1965年生まれ。愛知教育大学卒業。名古屋大学大学院博士後期課程修了。博士(教育学)。
1989年愛知県刈谷市立亀城小学校に着任。国語辞典を学校生活のさまざまな場面で取り入れることで、児童が主体的に学ぶ指導法(辞書引き学習)を展開。この実践を『小学校1年で国語辞典を使えるようにする30の方法』(明治図書)にまとめ、教育界の注目の的に。
2005年立命館小学校の設置メンバーとなり、06年4月から同校教頭、08年4月には校長に就任。辞書引き学習の普及にと、校内だけでなく全国各地を飛び回りながら、学習法のさらなる向上のため、現在は中部大学准教授として研究活動に没頭する毎日。
おもな著書に『7歳から「辞書」を引いて頭をきたえる』(すばる舎)、『辞典・資料がよくわかる事典―読んでおもしろい もっと楽しくなる調べ方のコツ』(PHP研究所)、「辞書引き学習自学ドリル」シリーズ(MCプレス)などがある。

【編集部からのお知らせ】

■最新のイベント情報は右にあります「おすすめ記事」からご覧ください。今後のイベント情報、また、これまでの報告など関連情報は以下からもご覧いただけます。
 ⇒辞書引き学習についての情報

■三省堂では、書店さんといっしょに「辞書引き学習」の体験会を考えました。活動のもようは以下をご覧くださいませ。
 ⇒深谷圭助先生の「辞書引き学習体験会」のご紹介

■編集部で立命館小へうかがいました。以下に訪問記を掲載しています。
 ⇒「辞書引き学習」の立命館小訪問記1
 ⇒「辞書引き学習」の立命館小訪問記2

★深谷先生から推薦をいただいております

例解小学国語辞典 第四版
編者:田近洵一
B6判 1,216ページ 1,995(本体1,900)円 ISBN 978-4-385-13821-3
[ワイド版] A5判 2,205(本体2,100)円 ISBN 978-4-385-13822-0

 

例解小学漢字辞典 第三版 新装版
編者:林 四郎(主幹)・大村はま
B6判 1,152ページ 1,995(本体1,900)円 ISBN 978-4-385-13817-6
[ワイド版] A5判 2,205(本体2,100)円 ISBN 978-4-385-13818-3

 

★立命館小学校で使われています

クラウン学習国語百科辞典
監修:金田一春彦 編者:三省堂編修所
A5判 1,200ページ 3,990(本体3,800)円
ISBN 978-4-385-15048-2

 


勉強工学 - Web時代の学習法 第7回

2008年 1月 29日 火曜日 筆者: 増井 俊之

第7回 iPodで勉強

様々なコンテンツがPodcastとしてWeb上で公開されています。ブログやニュース番組は従来から沢山配信されていますが、最近は大学の授業のような質の高いものもWeb上で沢山公開されています。MITの「熱血教授」の授業が最近話題になっていたのでいくつか見てみたのですが、これまで見たどんな物理の授業よりも面白いエンターテインメントになっており、流石にMITは違うなと感心させられました。

授業に限らず、Steve JobsのStanford大学でのスピーチのような感慨深い動画も沢山ネット上で公開されているので、すきま時間にこのような良質なコンテンツを試聴することを習慣づければ、楽しみながら様々な勉強をすることができるでしょう。

物理の勉強はちょっとしんどいという場合は、ドラマなどを見てみるのも良いかもしれません。天才数学者がFBIに協力して様々な問題を解決するというNumb3rsというドラマが米国で放映されているのですが、これは1エピソード2ドルほどで売られており、これを購入すればドラマを楽しみながら様々な数学のトピックと英語を同時に勉強することができます。
ちなみに米国のクレジットカードを持っていなくても、米国のスーパーで販売しているプリペイドカードを利用すれば米国のiTunes Music Storeから音楽やテレビ番組を購入することが可能です。

動画の場合は「ながら勉強」することは難しいかもしれませんが、音声Podcastの場合はそれを聞きながら別の仕事をすることもできるので、非常に効率的に勉強することができます。特に、つまらない仕事や肉体トレーニングをする場合、Podcastで勉強しながら作業をするようにすれば、辛さを忘れつつ知識を増やすことができます。
たとえば、科学関連の英語のPodcastを聞きながら掃除をする場合、英語の勉強と科学の勉強と掃除を同時に行なうことができるうえに、掃除が面倒で嫌だという意識が軽減されることになるので、三重に得だということができます。歩きながら動画を見たり本を読みながら英語を勉強したりするのは難しいかもしれませんが、身体や脳の中で同時に利用可能な領域をなるべく並列に使うようにするコツは確かに存在します。脳や身体の効率的なスケジューリングを可能にするツールとしてiPodのような携帯システムを利用すると良いでしょう。


■筆者プロフィール

増井俊之

東京大学大学院修了,工学博士。
ユビキタスコンピューティング時代のユーザインタフェースに興味を持つ。
ソニーコンピュータサイエンス研究所,産業技術総合研究所を経て,
現在,米Apple Inc. 勤務。
著書に『Perl書法』『インターフェイスの街角』などがある。
ウェブサイトはpitecan.com

◆編集部より:POBoxやQuickML, 本棚.orgなど数々のシステムやサービスを作り,最近ではiPod touchの日本語入力システムを手がけたことで知られる,増井俊之さんの「勉強工学 — Web時代の学習法」を連載します。第6回は1月15日の掲載でした。まもなく最終回を迎えます。お見逃しなく!


勉強工学 - Web時代の学習法 第6回

2008年 1月 15日 火曜日 筆者: 増井 俊之

第6回 Wikipediaで勉強

小学生のとき百科事典を読破したとか塀の中でも百科事典を読んでるとかいう人物が話題になったことがありますが、百科事典は確かに知識の宝庫であり、眺めるだけでいろいろな勉強になります。

百科事典を前から順番に読んでいくと途方に暮れることは必至ですが、Web上の百科事典Wikipediaには「おまかせ表示」というリンクがあり、これをクリックするとランダムなエントリが表示されるようになっているので、ランダムに百科事典の内容を勉強することができます。

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Wikipediaには膨大な情報が登録されているので、クリックすると大抵の場合自分が知らないエントリが表示されます。パーティーなどでこのリンクをクリックするとトリビア遊びを楽しむことができますし、坊主めくりや占いのような楽しみ方もできるかもしれません。いずれにせよ、クリックするたびに新鮮な無駄知識が増えていくのは楽しいものです。

いちいちクリックして次のエントリを表示させるのは面倒ですから、第1回の記事と同じ考えにもとづいて、20秒ごとに自動的にエントリが更新されるページを作ってみました。
常にこのページをブラウザで表示しておくようにすれば、あっという間に頭の中がミニ知識であふれてしまうでしょう。


■筆者プロフィール

増井俊之

東京大学大学院修了,工学博士。
ユビキタスコンピューティング時代のユーザインタフェースに興味を持つ。
ソニーコンピュータサイエンス研究所,産業技術総合研究所を経て,
現在,米Apple Inc. 勤務。
著書に『Perl書法』『インターフェイスの街角』などがある。
ウェブサイトはpitecan.com

◆編集部より:POBoxやQuickML, 本棚.orgなど数々のシステムやサービスを作り,最近ではiPod touchの日本語入力システムを手がけたことで知られる,増井俊之さんの「勉強工学 — Web時代の学習法」を連載します。第5回は12月17日の掲載でした。まもなく最終回を迎えます。お見逃しなく!


勉強工学 - Web時代の学習法 第5回

2007年 12月 17日 月曜日 筆者: 増井 俊之

第5回 寝ながら勉強

寝ている間に勉強できたら楽だろうというわけで「睡眠学習」という言葉をよく耳にしますが、本当に効果があったという話は聞いたことがありません。睡眠中に新しく何かを覚えるのはどうやら難しそうですが、睡眠中も脳は働いているわけで、睡眠中の脳を有効に利用することは実際に可能なようです。

発想支援の参考書として有名な「アイデアのつくり方」という本では、良いアイデアは以下のような5段階を経て創られるものだと述べられています。

  1. 1. 基礎資料を充分に集める
  2. 2. 資料を関連付けて咀嚼する
  3. 3. 別のことをやるなどして熟成させる
  4. 4. アイデア出現!
  5. 5. 人の評価をあおいで発展させる

何も無いところからアイデアを創り出ことはできませんから1.は重要ですし、よく考えなければ良いアイデアが出るわけがありませんから2.も重要なのは当然ですが、3.に関しては何か努力をする必要があるわけではなく、別のことをやりながら頭の中でバックグラウンド処理をさせておけば自然にアイデアが発生するものだというのがポイントです。
つまり、アイデアの元となる情報を集め、それについて充分検討しておけば、あとは寝ているだけでアイデアが出たり解法が見つかったりするというわけです。

そんな都合の良い話があるものか? と疑問に思う方も多いでしょうが、私は実際にこれがうまくいった経験があります。

以前、垂直に打ち込んだ1本のクギの上に同じクギを12本載せるには?というパズルを解こうとして四苦八苦したことがあり、実際にクギを沢山買ってきていろいろ試しているときは全く解法を思いつかなかったのですが、それから一月ぐらい経った朝、目が覚める直前に突然正解が脳裏にひらめきました。
寝ているだけで問題が解けることもあるものだなぁ、とその時は結構驚いたものです。

また別の機会に、コンパスで円を描くだけで2点の中点を求めるには?という問題に苦しんだことがあるのですが、やはり一月ぐらい悩んだ後、目が覚める直前に解法の鍵が頭にひらめきました。
どうやら目が覚めているときと寝ている時では脳の働きが違うようで、寝ている時の方が柔軟で全体的な考え方ができるような気がします。

難しい問題を解く場合や、複雑な条件がある問題を解決する場合は、情報を集めた後でとりあえず寝るというのが実は最も有効な方法なのだろうと思います。

睡眠状態をもっと積極的に楽しもう! という試みとしてLucid Dreamingという技術があるそうです。夢の中で意識を持って行動することは普通は不可能ですが、修練すれば、夢の中だということを理解しながら意識的に好きな行動をとることができるようになるのだそうです。
自分の夢の中では空を飛ぼうが破廉恥をしようがやりたい放題ですから、自由に夢の中で行動できるようになれば、コストパフォーマンスが最高の趣味になるかもしれません。

この技術を習得したあかつきには、自分が現在夢の中にいるのか現実世界にいるのかを判断する「Reality Check」技術が重要になるのだそうです。夢の中では崖から飛び降りてもかまいませんが、現実世界ではやめておくのが無難です。
たとえば「急に後ろを振り向いたとき何が見えるか」が Reality Check として有効なのだそうで、ありえないものが見えた場合は夢に間違いありませんから崖から飛び降りても安心だということになります。

私は残念ながら Lucid Dreaming はまだ習得していませんし、崖から飛び降りるか悩んだこともないのですが、睡眠しながら考えをまとめる方法は明らかに役にたつようなので、今後も活用しようと思っています。


■筆者プロフィール

増井俊之

東京大学大学院修了,工学博士。
ユビキタスコンピューティング時代のユーザインタフェースに興味を持つ。
ソニーコンピュータサイエンス研究所,産業技術総合研究所を経て,
現在,米Apple Inc. 勤務。
著書に『Perl書法』『インターフェイスの街角』などがある。
ウェブサイトはpitecan.com

◆編集部より:POBoxやQuickML, 本棚.orgなど数々のシステムやサービスを作り,最近ではiPod touchの日本語入力システムを手がけたことで知られる,増井俊之さんの「勉強工学 — Web時代の学習法」を連載します。第4回は12月3日の掲載でした。これからもまだまだ続きます。乞うご期待!


勉強工学 - Web時代の学習法 第4回

2007年 12月 3日 月曜日 筆者: 増井 俊之

第4回 みんなで勉強

ひとりで勉強しているとなかなかモティベーションが上がらないものですが、他人と一緒に勉強すると勉強がはかどることがよくあります。

勉強そのものがつまらない場合でも、他人に勝つことに喜びを見出だせる人にとっては競争自体が楽しみになるので、人より頑張って勉強しようとするものです。それほど競争が好きでなくても、他人の勉強状況が目に見える場合、人が頑張っているんだから自分も頑張らなきゃという気になるものです。

下の写真は、このような人情を利用して勉強のモティベーションを上げるために慶應義塾大学安村研究室で開発されたEnlight-Penというシステムです。ペンの中のライトは友人の勉強の進み具合を示しており、自分よりも友人の方が進んでいる場合、勉強しなきゃ! と発奮できるようになっています。

enlightpen.jpg

他人と競争などしたくない場合でも、誰かと一緒に勉強するといろいろ教えたり教わったりすることができますから、ひとりでやるよりも効果的に勉強することができます。

最近、ソーシャルネットワークサービス(SNS)を利用して友達とコミュニケーションしながら勉強しようというシステムがいろいろ出現してきました。

LiveMochaは外国語を勉強するためのSNSで、いろんな言語を勉強しようと思っている人たちがお互いに助けあうことができるようになっています。たとえば「スペイン語を勉強中の日本人」と「日本語を勉強中のスペイン人」がお互いに教えあったり間違いを訂正したりできますし、同じ言語を勉強中の人たち同士でリアルタイムに会話を楽しんだりできるようになっています。

英語を勉強する日本人のために教材やSNS機能を提供するiKnow!というサービスも人気を呼んでいます。iKnow!には市販教材に負けないすぐれた英語教材が沢山揃っており、単語やリスニングなど効率的に様々な勉強ができるようになっていることに加え、mixiなどと同様に友達関係を登録したり日記を書いたりすることができ、進捗状況やスキルレベルを比較できるようになっています。

勉強状況が比較されるので勉強に気合いが入りますし、関連する情報交換もやりやすくなっているので、Web時代の英語勉強法としてかなり有効そうです。

(クリックで拡大)
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自分の根性だけではなかなか勉強は長続きしないでしょう。ゲームやコミュニケーションの要素を勉強に活用する方法がこれからますます流行りそうです。


■筆者プロフィール

増井俊之

東京大学大学院修了,工学博士。
ユビキタスコンピューティング時代のユーザインタフェースに興味を持つ。
ソニーコンピュータサイエンス研究所,産業技術総合研究所を経て,
現在,米Apple Inc. 勤務。
著書に『Perl書法』『インターフェイスの街角』などがある。
ウェブサイトはpitecan.com

◆編集部より:POBoxやQuickML, 本棚.orgなど数々のシステムやサービスを作り,最近ではiPod touchの日本語入力システムを手がけたことで知られる,増井俊之さんの「勉強工学 — Web時代の学習法」を連載します。第3回以来,久々のご登場です。これからもまだまだ続きます。乞うご期待!


勉強工学 - Web時代の学習法 第3回

2007年 11月 2日 金曜日 筆者: 増井 俊之

第3回 Wikiで勉強

前回Web上の単語帳を編集して勉強に利用する方法を紹介しました。
この単語帳はWiki形式になっているのでブラウザ上で簡単に編集できるという特長を持っていますが、Wikiページ間の参照関係の視覚化を工夫することにより、勉強したい項目を関連づけながらさらに効果的に勉強を行なうことができるようになります。

たとえば社会科の勉強をするとき、

「静岡県はみかんの産地である」
「佐賀県は陶器の産地である」

のような断片的知識をバラバラに覚えるのは大変ですが、

「静岡県はみかんの産地である」
「みかんといえば、佐賀県や和歌山県もみかんの産地である」
「佐賀県といえば、佐賀県は陶器の産地である」
「陶器の産地といえば愛知県が有名である」

といった具合で様々な情報を関連づけることにより、より効果的な勉強を行なうことが可能になります。


勉強工学 - Web時代の学習法 第2回

2007年 10月 18日 木曜日 筆者: 増井 俊之

辞書で勉強

辞書や事典は勉強の基本です。

単語を覚えるには辞書を食べるのが良いそうですが、胃に負担がかかるので、素人はネット上の辞書を活用して勉強するのが無難です。

ネット上では三省堂 Web Dictionarygoo辞書のような辞書サービスが提供されており、知らない単語の意味を調べるのに非常に便利です。

たとえば“venue”という英単語の意味を三省堂 Web Dictionary(編集部注:内容は『デイリーコンサイス英和辞典』)で検索すると、以下のような説明が表示されます。

━━ n. 〔法〕犯行地,現場; 裁判地; ((話))集合〔開催〕地.

「犯行地」とか「裁判地」というのは意味がわかりにくいですが、
“venue”でGoogle画像検索してみると
検索結果として以下のような写真が出てきます。


勉強工学 - Web時代の学習法 第1回

2007年 10月 4日 木曜日 筆者: 増井 俊之

情報の宝庫であるWebは、情報を受信したり発信したりしながら様々な勉強を行なうのに最適の環境であるといえます。 Webを使った様々な勉強法について紹介します。

眺めて勉強

本や教材を使った勉強は骨が折れます。
遊びながら勉強ができたとしても疲れる点では同じです。
睡眠学習なら楽そうですが寝不足になるのが心配です。
全然苦労しない勉強法は無いものでしょうか。

頑張らずに勉強するには門前の小僧方式が効果的です。

学習したい内容をテレビやパソコンの画面にいつも表示しておくと、
勉強する気がなくても内容を覚えてしまうかもしれません。

まず、以下のような単語カードを沢山画像ファイルとして用意しておきます。

gorra

このようなカードをスクリーンセーバに登録しておけば、
使っていないパソコン画面には常に単語が表示されているようになりますから、
ぼーっと見ててもつい内容を覚えてしまうでしょう。

表示にブラウザを使うこともできます。

つぶやきシステム「Tumblr」に単語画像や引用文を登録しておき、
私が運営するFeedTVというサイトにTumblrのRSSフィードを流し込むように設定しておけば、
以下のようにTumblrページをブラウザ上で自動的に表示することができます。

私のパソコンにはいつも単語帳が表示されているので、
最近は単語を覚えすぎて困っています。

最近流行のデジタルフォトフレームに画像を入れておけば、
パソコンやテレビが無い場所でも勉強を楽しむことができます。
勉強しすぎに注意しましょう。


■筆者プロフィール

増井俊之

東京大学大学院修了,工学博士。
ユビキタスコンピューティング時代のユーザインタフェースに興味を持つ。
ソニーコンピュータサイエンス研究所,産業技術総合研究所を経て,
現在,米Apple Inc. 勤務。
著書に『Perl書法』『インターフェイスの街角』などがある。
ウェブサイトはpitecan.com

◆編集部より:POBoxやQuickML, 本棚.orgなど数々のシステムやサービスを作り,最近ではiPod touchの日本語入力システムを手がけたことで知られる,増井俊之さんの短期連載「勉強工学 — Web時代の学習法」が始まりました。学習法についても匠の技を見せていただきます。乞うご期待!


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