明解PISA大事典:発問 最善の解決策を模索する
2009年 9月 18日 金曜日 筆者: 北川 達夫第19回 発問:問題解決プロセスの完結
第17回・第18回とフィンランド国語教科書(3年生)の素材文を用いて、問題解決プロセスについて説明してきたが、それも今回で完結である。念のため素材文を再掲する(1)。
●物語「ちょうど35キロ」のあらすじ●
学校でバザーが開かれている。バザー会場に体重計があり、おじさんが呼びこみをやっている。料金1ユーロで体重を計測し、ちょうど35キロであれば賞品がもらえるとのこと。ユッシ少年の体重は36.5キロ、ラミ少年の体重は33.5キロで、いずれも賞品を獲得できない。そこでユッシは目的を告げぬまま、ラミにレモネードを1.5リットル飲ませる。わけのわからぬままラミはレモネードを飲み、体重計に乗る。ちょうど35キロ! みごと賞品を獲得する。レモネードを飲みすぎて気持ち悪くなったラミが受け取った賞品は、レモネード一箱だった。
この物語の“問題と解決例”は「体重を35キロにすること」、解決策は「(体重33.5キロの)ラミにレモネードを1.5リットル飲ませる」と設定した。
ここでフィンランド国語教科書に示された発問④を見てみよう。
「どうすればユッシは体重を1.5キロ軽くすることができますか」
「ラミが体重を1.5キロ重くする方法はほかにはありませんか」
この発問の目的は「ほかの解決策を可能な限り模索すること」。できるだけたくさんの代案を出して、そこから最善の解決策を見出す。これで問題解決プロセスは完結である。いくつかの方法があるのだが(2)、ここでは小学生向けの定石を紹介することにしよう。
まずは自由に代案を出させる。ブレイン・ストーミングと同じく、批判や抑制は一切禁止して自由にアイデアを出させることが肝要である。
やはりラミを1.5キロ重くする方法のほうが思いつきやすい。「肉を1.5キロ分食べる」「服をたくさん着る」「1.5キロの石を隠し持つ」などなど。
ユッシを1.5キロ軽くするのは難しい。「1.5キロ軽くなるまでサウナに入る」「校庭を走り回る」「服をぜんぶ脱ぐ」…苦しまぎれに「ぜい肉を1.5キロ切り落とす」などというアイデアまで出てきたりする。
これらのアイデアから「最善の解決策」を決定するのだが、その前に評価基準を設定しなければならない。単に「みんなで話し合って、いちばん良い解決策を選びましょう」と指示するだけでは、何を基準に選んだらよいのか分からない。単に個人の好き嫌いで選ぶことになってしまう。そこで、まずはみんなで評価基準を定め、それに従って客観的に「最善の解決策」を見出していくのである。
評価基準を設定するにあたって必要なのは、テキストに示された解決例の評価である。たとえば「ラミにレモネードを1.5リットル飲ませる」という方法の利点と難点を挙げる。利点としては「正確に体重を増やせる」「すぐに体重を増やせる」。体重計に乗るたびに1ユーロかかるのだから「正確さ」は重要な要素だ。また、このイベントの期間内に体重を増減できなければ賞品がもらえないのだから、「迅速さ」も重要な要素である。難点としては「レモネードを1.5リットル飲むのは苦しい」。もっと楽な方法はないだろうか?
以上から、たとえば次の3つの評価基準を見出すことができる。
・確実に1.5キロ増やす/減らすことができる方法である。
・その場で1.5キロ増やす/減らすことができる方法である。
・レモネードを1.5リットル飲むよりも楽な方法である。
以上の基準をすべて満たす方法であれば、テキストに示された方法(原案)との比較において、ある意味で「より良い方法」といえるだろう。わざわざ代案を考えたのだから、そこから何らかの基準に照らして「より良い方法」を見出さなければ意味がないのだ。
実際のフィンランドの授業では、ここまでを一斉の授業で行い、あとはグループ作業に任せるのが一般的である。以上の3つの評価基準に、子どもたちは自分たちで考えた評価基準を加えていく。子どもたちから必ず出てくるのが「ズルはいけない」。ただ、その場合は「どこからがズルになるのか?」も併せて決めなければならない。
また、フィンランドでも学級の状態によっては「ぜい肉を切り落とす」などというアイデアを放置しておくわけにはいかない場合がある。そういうときは、たとえば先生が「ユッシやラミが実際にできる方法である」という評価基準を加えることによって、そのような非常識なアイデアを排除するようにする。アイデア出しの段階ではなく、評価基準の段階で排除するあたりがポイントである。その一方で、「いちばん面白い方法である」「いちばんめちゃくちゃな方法である」という評価基準も“例示”することによって、できるだけ子どもの独創性を引き出そうとする先生もいる。
評価基準を定めたうえで、グループごとに「最善の解決策」を決めていく(合意形成には様々な方略が必要なのだが、これについては回を改めて紹介しよう)。そして、自分たちなりの評価基準を示しつつ、自分たちにとっての「最善の解決策」を発表する。こうして問題解決プロセスは完結するのである。
* * *
(1) 『フィンランド国語教科書 小学3年生』pp80-81 メルヴィ・バレ他著/北川達夫訳/経済界 2006年
(2) たとえば先に評価基準を設定し、それに従ってアイデア出しをする方法もある。だが、小学生の場合は先にブレイン・ストーミングをしたほうが盛り上がることが多い。
* * *
◇この問題の最初へ⇒第17回 発問 問題解決型の読解問題作法「「なぜ?」の連鎖」
◇この問題の一つ前の問題へ⇒第18回 発問 結果から原因の推論「問題解決プロセスの続き」
◇この問題の最後の発問へ⇒第20回 発問 劇にしてみましょう「最後の一問 ~本当に完結」
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【プロフィール】

北川達夫(きたがわ・たつお)
教材作家・教育コンサルタント・チェンバロ奏者・武芸者・漢学生
(財)文字・活字文化推進機構調査研究委員
日本教育大学院大学客員教授
1966年東京生まれ。英・仏・中・芬・典・愛沙語の通訳・翻訳家として活動しつつ、フィンランドで「母語と文学」科の教科教育法と教材作法を学ぶ。国際的な教材作家として日芬をはじめ、旧中・東欧圏の教科書・教材制作に携わるとともに、各地の学校を巡り、グローバル・スタンダードの言語教育を指導している。詳しいプロフィールはこちら⇒『ニッポンには対話がない』情報ページ
著書に、『知的英語の習得術』(学習研究社 2003)、『「論理力」がカンタンに身につく本』(大和出版 2004)、『図解フィンランド・メソッド入門』(経済界 2005)、『知的英語センスが身につく名文音読』(学習研究社 2005)、編訳書に「フィンランド国語教科書」シリーズ(経済界 2005 ~ 2008)、対談集に演出家・平田オリザさんとの対談『ニッポンには対話がない―学びとコミュニケーションの再生』(三省堂 2008)、組織開発デザイナー・清宮普美代さんとの対談『対話流―未来を生みだすコミュニケーション』(三省堂 2009★新刊★)など。
『週刊 東洋経済』にて「わかりあえない時代の『対話力』入門」連載中。
* * *
【編集部から】
学習指導要領の改訂に大きく影響したPISAってなに?
PISA型読解力ってどんな力なの?
言語力、言語活動の重視って? これまでとどう違う?
現代の教育観は変わってきたのか。変わってきたとしたら、そこにどんな経緯があるのか。
国際的に活躍する教材作家である北川達夫先生がやさしく解説する連載「明解PISA大事典」。金曜日に掲載しています。
明解PISA大事典:発問 結果から原因の推論
2009年 9月 11日 金曜日 筆者: 北川 達夫第18回 発問:問題解決プロセスの続き
前回はフィンランド国語教科書(3年生)の素材文を用いて、問題解決の「きっかけ」づくりについて説明した。「きっかけ」だけを説明して終わるのも奇妙なので、引き続き問題解決プロセスの進めかたについて説明することにしよう。念のため素材文を再掲する(*)。
●物語「ちょうど35キロ」のあらすじ●
学校でバザーが開かれている。バザー会場に体重計があり、おじさんが呼びこみをやっている。料金1ユーロで体重を計測し、ちょうど35キロであれば賞品がもらえるとのこと。ユッシ少年の体重は36.5キロ、ラミ少年の体重は33.5キロで、いずれも賞品を獲得できない。そこでユッシは目的を告げぬまま、ラミにレモネードを1.5リットル飲ませる。わけのわからぬままラミはレモネードを飲み、体重計に乗る。ちょうど35キロ! みごと賞品を獲得する。レモネードを飲みすぎて気持ち悪くなったラミが受け取った賞品は、レモネード一箱だった。
この物語の“問題と解決例”は「体重を35キロにすること」、解決策は「(体重33.5キロの)ラミにレモネードを1.5リットル飲ませる」と設定した。
ここでフィンランド国語教科書に示された発問の②と③を見てみよう。
「ラミが素直な性格で、ほかの人に言われたとおりにすることは、この話の、どこの部分で分かりますか」
「ユッシが算数が得意であることは、この話の、どこの部分でわかりますか」
このような発問を「結果から原因の推論」という。「ラミは素直な性格だ」という解釈の“結果”を示し、そのような解釈を成り立たせる“情報(原因)”を文中から探させるのである。文中から解釈の根拠となる情報を取り出させるのだから、いずれもPISAでいえば「情報の取り出し」の発問になる。
日本であれば「ラミはどういう性格ですか?」と問うところだろう。このような発問を「原因から結果の推論」という。ラミがどういう性格かを推論するためには、まず文中からラミの性格を示す“情報(原因)”を拾い、それらの情報と自分の知識や経験とを関連付けて推論し、ラミの性格に関する解釈の“結果”を示さなければならないからだ。
欧米の読解教育では、このような「結果から原因」「原因から結果」という双方向の推論が重視されている。特に小学校の低学年のうちは、「結果から原因」の推論が重要だとされている。「ラミはどういう性格ですか?」という発問よりも、「ラミが素直な性格で、ほかの人に言われたとおりにすることは、この話の、どこの部分で分かりますか」という発問のほうが重要ということだ。
これには大まかにいって、次の二つの理由がある。
1.子どもの思考と語彙の枠を拡げる
小学校低学年では使いこなせる語彙が限られている。そのため「ラミはどういう性格ですか?」と問われると、情報を縮約して答える傾向がある。つまり、「良い子です」とか「悪い子です」など、極端に単純化して答えてしまう。そこで、子どもが自力では思いつかないような解釈を示し、その解釈について考えさせることによって、子どもの思考の枠を拡げると同時に、使いこなせる語彙の枠も広げようというのである。
2.他者の意見の成り立ちを考える
「結果から原因」の推論について、PISAなら次のように問うところである。
●この物語を読んだジョンは次のように言いました。
「ラミは素直な性格なんだね」
この意見の理由を言うとすると、ジョンはどのようなことを言ったらよいと思いますか。
文章の内容にふれながら答えてください。
発問の求める作業内容はほとんど同じなのだが、発問の目的はこちらのほうが明確だろう。つまり、「他者の意見」を示し、その成り立ちを考えさせることが目的なのである。「自分の意見」を求めているのではない。「他者の意見」を成り立たせることを求めているのだ。これはコミュニケーション教育としての意味合いが強い。他者の意見の成り立ちを推論することは、コミュニケーションにおいては重要な技能だからだ。このあたりについて詳しくは、いずれ章を改めて紹介することにしよう。
もうひとつ、ここでの問題解決プロセスにおいては、これらの発問には「解決策を成り立たせている条件に気付かせる」という意味がある。
3.解決策を成り立たせている条件
「体重を35キロにする」という問題を解決するために「(体重33.5キロの)ラミにレモネードを1.5リットル飲ませる」という手段をとるには、「ラミが素直で、人に言われたとおりにすること」「ユッシは算数が得意であること」という二つの条件が必要である。どちらが欠けても物語通りには話が進まなくなってしまう。物語に示された解決策が特定の条件下で成り立っていることに気付くかどうか。その気付きへの“きっかけ”となる発問なのである。ここから派生する発問として次のようなものがある。
「ラミがレモネードを飲むのをいやがった場合、ユッシはどうしたらよいと思いますか」
ラミについての条件が欠けた場合、ユッシはどうすればいいのか。ラミを説得してレモネードを飲ませるか(物語では『わけのわからぬまま』レモネードを飲んでいる)、それとも他の方法を考えるか。さまざまな答えが可能だろう。
物語に示された解決策以外の方法を模索し、そこから最善の解決策を見出せれば問題解決プロセスは完結である。これについては次回。
* * *
(*)『フィンランド国語教科書 小学3年生』pp80-81 メルヴィ・バレ他著/北川達夫訳/経済界 2006年
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◇この問題の前へ⇒第17回 発問 問題解決型の読解問題作法「「なぜ?」の連鎖」
◇この問題の続きへ⇒第19回 発問 最善の解決策を模索する「問題解決プロセスの完結」
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【プロフィール】

北川達夫(きたがわ・たつお)
教材作家・教育コンサルタント・チェンバロ奏者・武芸者・漢学生
(財)文字・活字文化推進機構調査研究委員
日本教育大学院大学客員教授
1966年東京生まれ。英・仏・中・芬・典・愛沙語の通訳・翻訳家として活動しつつ、フィンランドで「母語と文学」科の教科教育法と教材作法を学ぶ。国際的な教材作家として日芬をはじめ、旧中・東欧圏の教科書・教材制作に携わるとともに、各地の学校を巡り、グローバル・スタンダードの言語教育を指導している。詳しいプロフィールはこちら⇒『ニッポンには対話がない』情報ページ
著書に、『知的英語の習得術』(学習研究社 2003)、『「論理力」がカンタンに身につく本』(大和出版 2004)、『図解フィンランド・メソッド入門』(経済界 2005)、『知的英語センスが身につく名文音読』(学習研究社 2005)、編訳書に「フィンランド国語教科書」シリーズ(経済界 2005 ~ 2008)、対談集に演出家・平田オリザさんとの対談『ニッポンには対話がない―学びとコミュニケーションの再生』(三省堂 2008)、組織開発デザイナー・清宮普美代さんとの対談『対話流―未来を生みだすコミュニケーション』(三省堂 2009★新刊★)など。
『週刊 東洋経済』にて「わかりあえない時代の『対話力』入門」連載中。
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明解PISA大事典:発問 問題解決型の読解問題作法
2009年 9月 4日 金曜日 筆者: 北川 達夫第17回 発問:「なぜ?」の連鎖
「問題解決方式」の読解問題作法においては、作中人物がどのような問題に遭遇し、それをどのように解決したのかをとらえさせるのが発問の第一ステップとなる。ここで、単純に「主人公はどういう問題に遭遇しましたか?」「その問題を主人公はどうやって解決しましたか?」と問えば、それこそ問題解決なのだが、これではいかにも工夫がない。テキストに示された問題と解決策をとらえながら、同時に問題と解決策の背景も探っていくような発問が望ましいのである。
では、どうすればいいのか、具体例を挙げて説明しよう。フィンランドの小学校3年生用の教科書に掲載されている事例である(*)。
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学校でバザーが開かれている。バザー会場に体重計があり、おじさんが呼びこみをやっている。料金1ユーロで体重を計測し、ちょうど35キロであれば賞品がもらえるとのこと。ユッシ少年の体重は36.5キロ、ラミ少年の体重は33.5キロで、いずれも賞品を獲得できない。そこでユッシは目的を告げぬまま、ラミにレモネードを1.5リットル飲ませる。わけのわからぬままラミはレモネードを飲み、体重計に乗る。ちょうど35キロ! みごと賞品を獲得する。レモネードを飲みすぎて気持ち悪くなったラミが受け取った賞品は、レモネード一箱だった。
この物語における問題は、たとえば「体重を35キロにすること」、解決策は「(体重33.5キロの)ラミにレモネードを1.5リットル飲ませる」である。
ここでフィンランドの教科書に掲載されている発問①を見てみよう。
「なぜ、ユッシはラミに、レモネードを飲ませたのですか?」
実はこれが“作中人物がどのような問題に遭遇し、それをどのように解決したのかをとらえさせる”発問なのである。ただ、「問題は何か?」「解決策は何か?」と一問一答で答えさせるのではなく、「発問の連鎖」を生み出すための“きっかけ”となる発問である。
この場合の「発問の連鎖」として、たとえば次のような展開が考えられる。
「なぜ、ユッシはラミに、レモネードを飲ませたのですか?」
「賞品をもらうため」
「なぜ、レモネードを飲ませれば賞品がもらえるのですか?」
「体重が35キロになれば賞品がもらえるから」
「なぜ、体重が35キロになれば賞品がもらえるのですか?」
「体重がちょうど35キロなら賞品をもらえるというイベントをやっているから」
「なぜ、ラミにレモネードを飲ませれば、体重が35キロになるのですか?」
「ラミの体重は33.5キロなので、レモネードを1.5リットル飲ませれば、ちょうど35キロになるから」……
もちろん問いと答えの順序はさまざまになりうる。たとえば「なぜ、ユッシはラミにレモネードを飲ませたのですか?」に対して、「体重を35キロにするため」という答えが返ってくる可能性もあるからだ。こうなると、次の発問は「なぜ、体重を35キロにしようとしたのですか?」になり、それに対する答えは「体重を35キロにすれば賞品がもらえるから」となるだろう。順序はさまざまだが、結局は同じ方向に収束していくことになる。そして、この一連の問いと答えの連鎖から、テキストに示された問題と解決策を明らかにすることができると同時に、その背景事情も探ることができるのである。
コツは「解決策の『なぜ?』を問う」ところにある。
「なぜ(解決策となりうる)その行動をとったのか?」と問われれば、そもそもどのような問題が存在するのか、なぜその行動が問題の解決になりうるのかを答えていかなければならない。答えに応じて、さらに「なぜ?」を問う。それによって、テキストに示された問題と解決策を詳細に分析していくことができるのだ。
もちろんテキストはさまざまであり、読解問題はテキストへの依存性が高いため、あらゆるテキストにこの方法が使えるわけではない。だが、「解決策の『なぜ?』を問う」ことによって“作中人物がどのような問題に遭遇し、それをどのように解決したのかをとらえさせる”のは、読解問題作法の定石なのである。
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(*)『フィンランド国語教科書 小学3年生』pp80-81 メルヴィ・バレ他著/北川達夫訳/経済界 2006年
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北川達夫(きたがわ・たつお)
教材作家・教育コンサルタント・チェンバロ奏者・武芸者・漢学生
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日本教育大学院大学客員教授
1966年東京生まれ。英・仏・中・芬・典・愛沙語の通訳・翻訳家として活動しつつ、フィンランドで「母語と文学」科の教科教育法と教材作法を学ぶ。国際的な教材作家として日芬をはじめ、旧中・東欧圏の教科書・教材制作に携わるとともに、各地の学校を巡り、グローバル・スタンダードの言語教育を指導している。詳しいプロフィールはこちら⇒『ニッポンには対話がない』情報ページ
著書に、『知的英語の習得術』(学習研究社 2003)、『「論理力」がカンタンに身につく本』(大和出版 2004)、『図解フィンランド・メソッド入門』(経済界 2005)、『知的英語センスが身につく名文音読』(学習研究社 2005)、編訳書に「フィンランド国語教科書」シリーズ(経済界 2005 ~ 2008)、対談集に演出家・平田オリザさんとの対談『ニッポンには対話がない―学びとコミュニケーションの再生』(三省堂 2008)、組織開発デザイナー・清宮普美代さんとの対談『対話流―未来を生みだすコミュニケーション』(三省堂 2009★新刊★)など。
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明解PISA大事典:発問 問題解決型の読解問題
2009年 8月 28日 金曜日 筆者: 北川 達夫第16回 発問:問題をつくろう(初歩)
欧米型の読解問題、つまり“PISAの読解力で出されているような問題”には「大枠」となる原理がある。いくつかの原理が存在するのだが、今回は最も基本的な「問題解決方式」を紹介することにしよう。
何らかの問題に対処する場合、自分が過去に積み上げてきた知識と経験だけで解決することも不可能ではない。だが、第13回で述べたように、急激で予測不能な変化をする社会においては、過去に積み上げた知識や経験は必ずしも通用しない。そこで、新たな知識を取得し、それを過去に積み上げた知識や経験と関連付けながら問題解決を図っていくことが必要になってくる。
このように、新たな知識(外部情報)と、自分の知識や経験(内部情報)とを統合して問題に対処することを、「創造的問題解決(Creative Problem Solving:CPS)」という。
PISAの読解力においては、この創造的問題解決の能力が求められている。すなわち、テキストに含まれる情報(外部情報)を取り出し、自分の知識や経験(内部情報)と関連付けながら解釈し、熟考し、評価するということだ。
PISAの読解力の創造的問題解決としての側面に注目し、それを大枠とした発問の原理のことを問題解決方式というのである。
問題解決方式においては、テキストを「問題と解決例の提案者」と見なす。テキストが「こんな問題があったので、このように解決しましたが、いかがでしょうか?」と提案しているととらえるのである。
たとえば、「桃太郎」であれば「鬼という問題があったので、こらしめて宝物を奪取するという解決策をとりましたが、いかがでしょうか?」となる。「スイミー」であれば、「まぐろという問題があったので、みんなで大きな魚の姿をつくって追い出すという解決策をとりましたが、いかがでしょうか?」となる。(これらは問題と解決例の設定の一例に過ぎない。同じ物語であっても、ほかのかたちで問題と解決例を設定することは可能である)
テキストの提案を受けて、「ほかの方法はなかったのか?」「ほかの方法があるのに、なぜその方法がとられたのか?」「その方法の利点と難点は?」というように、提案された解決例について徹底的に検証する。そのうえで「最善の解決策」を自分の意見として提案していく。第11回でも述べたことだが、「最善の解決策」を求める場合、「あなたが主人公だったら、どうやって問題を解決しますか?」と問うことが多い。
つまり、テキストに示された解決例を外部情報として、それと自分の知識や経験(内部情報)と関連付けながら、より良い解決策を見出していく。まさに創造的問題解決なのである。このような読解教育は、グループ学習で他人と相談しながら進めると、さらに効果的である。他者の意見や知識や経験も外部情報として利用できるからだ。もちろん、PISAのようなペーパーテストでは、独力で創造的問題解決するしかないのであるが。
この問題解決方式を大枠として発問を組んでいく。もっとも単純な発問の組みかたは、原理通りに聞くことである。たとえば――
・主人公が遭遇した問題は何ですか?
・主人公はその問題をどうやって解決しましたか?
・その解決方法の良い点と悪い点をあげなさい。
・そのほかに解決方法はありませんか?
・あなたが主人公だったら、どうやって問題を解決しますか?
これでもかまわないのだが、いかにも工夫がない。では、どのように工夫して聞けばいいのか? これについては、次回以降で説明することにしよう。
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