学会情報:第48回語彙・辞書研究会

2015年 10月 16日 金曜日 筆者: 辞書ウェブ 編集部

第48回 語彙・辞書研究会 研究発表会のお知らせ

語彙・辞書研究会の第48回研究発表会が下記の通り開催されます。

日時:2015年11月7日(土) 13時15分~17時
場所:新宿NSビル 3階 3G会議室
   (東京都新宿区西新宿2-4-1) 電話03-3342-4920

[シンポジウム]
国語辞書の見出し語の立て方―複合辞・造語成分などの扱いを中心に―

国語辞書では、複合辞(連語)、造語成分、慣用句、また派生形など、いわゆる単語ではないものも見出し語として立てられているが、辞書によって扱いが異なっている。今回のシンポジウムでは、国語辞書の編集に携わっていらっしゃる2名の方に、これらについてどのように考えていらっしゃるかをご紹介いただき、また日本語教育の側からの観点や、英語辞典(2か国語辞書)での扱いについても、それぞれの分野からご紹介いただき、これらの要素と国語辞書の課題について検討する。

(パネリスト)
矢澤真人氏(筑波大学教授、『明鏡国語辞典』編集委員)
山崎 誠氏(国立国語研究所准教授、『三省堂国語辞典』編集委員)
田中 寛氏(大東文化大学教授)
井上永幸氏(広島大学教授、『ウィズダム英和辞典』編者)
(司会)
前田直子氏(学習院大学教授)

参加費:【一般】1,800円 【学生・院生】1,200円
    (会場費・予稿集代等を含む)
 * 事前のお申し込みは必要ありません。当日会場受付でお手続きください。
 * 研究会に参加なさらずに予稿集のみご希望の方は、事務局にご連絡ください。

(事務局)
〒101-8371 東京都千代田区三崎町2-22-14
三省堂出版局内 語彙・辞書研究会事務局

詳しくは、語彙・辞書研究会のウェブサイト(http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/affil/goijisho/index.html)をご覧ください。


学会情報:第46回語彙・辞書研究会

2014年 11月 7日 金曜日 筆者: 辞書ウェブ 編集部

第46回 語彙・辞書研究会 研究発表会のお知らせ

語彙・辞書研究会の第46回研究発表会が下記の通り開催されます。

日時:2014年11月29日(土)13:00~17:00
場所:新宿NSビル 3階 3J会議室
   (新宿区西新宿2-4-1) 電話03-3342-4920

[シンポジウム]
辞書に載せる語、載せない語―辞書の見出し語をめぐって―

(パネリスト)
赤峯裕子氏(岩波書店『岩波国語辞典』編集担当)
奥川健太郎氏(三省堂『三省堂国語辞典』編集担当)
村井康司氏(小学館『新選国語辞典』編集担当)
森川聡顕氏(学研教育出版『学研現代新国語辞典』編集担当)
(司会)
木村義之先生(慶應義塾大学教授)

参加費:1,800円(会場費・資料代等を含む)。
    ただし、学生・院生は1,200円。
 * 事前のお申し込みは必要ありません。当日会場受付でお手続きください。
 * 研究会に参加されずに予稿集だけをご希望の方は事務局にご連絡ください。

(事務局)
〒101-8371 東京都千代田区三崎町2-22-14
三省堂出版局内 語彙・辞書研究会事務局

詳しくは、語彙・辞書研究会のウェブサイト(http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/affil/goijisho/index.html)をご覧ください。


国語辞典入門:使い方【 】見出し(漢字表記)についている○▽×

2010年 8月 11日 水曜日 筆者: 飯間 浩明

第29回 ×とか▽とか、これは何だ?

 国語辞典の記号が分からない――と言う人の念頭にまず浮かぶのは、漢字表記欄に書いてある「×」「▽」などの記号でしょう。「×隘路(あいろ)」「校倉(あぜくら)」などの印の意味が分からないまま(気にしないまま)使っている人は多いはずです。

 学習国語辞典の漢字表記を取り上げた時(第16回)、学習漢字は無印、学習漢字でない常用漢字は「○」、それ以外は「×」、などの記号が使われていると説明しました。そして、これらの記号は、どの漢字から覚えればいいかという指標になると述べました。

 一般向けの国語辞典の場合は、学習漢字かどうかまでは示さないものが多数派です。むしろ、ポイントは、「常用漢字か、そうでないか」「常用漢字の音訓表で認められた読み方か、そうでないか」を示すことにあります。

 『三省堂国語辞典』の場合で言うと、常用漢字は無印、それ以外の漢字は「×」をつけています。また、常用漢字表にある字でも、音訓表に示されていない読みは「▽」をつけています。つまり、「×隘路」の「隘」は「あまりなじみのない漢字」、「校倉」の「校」は「読み方がむずかしい漢字」というくらいに思っておけばけっこうです。

 この記号が何の役に立つかと問われれば、やはり、どの漢字から覚えればいいかという指標になると、繰り返しておきます。文章を書いて生活する人ならば、常用漢字表にない字を避けるために辞書で確認することもありますが、一般には、自分の使いたい字を自ら制限する必要はありません。「×」や「▽」の記号は、ことばを覚えるための手がかりとして使うほうが便利です。

 ことばを覚えるための記号といえば、英和辞典の方式が思い浮かびます。英和辞典では、「***important」「**relative」「*comparative」のように、どの語を優先して覚えればいいかが星の数で示してあります。受験勉強では、これがたいへん役に立ちます。

 国語辞典でも、星をつけたりして重要度を示すことがありますが、これは全部で数千語程度で、主に学生や日本語学習者に向けたものです。一般の利用者にとっては、星の数はあまり問題になりません。むしろ、そのことばが常用漢字で書かれるかどうかといった情報のほうが、ことばの重要度を知る材料としては有用です。

「各書各様」の表記欄

 私の経験を話します。もう以前のこと、ある人の書いた原稿に「株主総会で、取締役の定数削減等が大宗(たいそう)を占めた」という部分がありました。その筆者に「大宗って何ですか」と尋ねたところ、「大宗、知りませんか。主要な部分ということですよ」と言われました。勉強不足を大いに恥じた次第でした。

 国語辞典では「大」「宗」は無印、つまり、常用漢字です。常用漢字で書くことばなのに知らなかったことがショックで、いまだに強く印象に残っています。私にとっても、常用漢字か否かは、ことばを覚えるときの指標のひとつになっています。

 漢字表記欄の記号は、こんなふうに役立てることができますが、必ずしも注意されていないのはもったいないことです。これは、ひとつには、国語辞典によって使う記号がまちまちで、読者に一定のイメージが定着していないためです。

 たとえば、「一蓮托生」という熟語(常用漢字以外の字を含む)を、それぞれの国語辞典がどんな記号を使って示しているかをまとめると、次のようになります。

  一××托生……『三省堂』『岩波』『新選』『集英社』『学研現代新』
  一托生……『明鏡』『現代国語例解』『大辞林』
  一托生……『旺文社』
  一〈蓮托〉生……『新明解』
  一[蓮(托生……『新潮現代』

 まさに「各書各様」です。これだけならともかく、ある辞書で使われている記号が、他の辞書では別の意味で使われることがあるので、話はややこしくなります。たとえば、「×」は、『旺文社』では「あて字」の意味です。また、「△」は、『岩波』『集英社』では「常用漢字にない読み方」の意味です。読者の誤解を招くおそれがあります。

 国語辞典ごとに考えがあってのことなので、記号を統一することは簡単ではありません。当分は、このまま行くしかなさそうです。

 ただ、常用漢字以外の字を「×」で示すのは、そろそろやめてはどうかと思います。バツ印は、「使ってはだめ」というメッセージを含みます。「×」は、制限色の強かった当用漢字の時代のなごりです。何か別の中立的な印を考えたほうがいいでしょう。

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◆飯間先生のもう一つの連載は⇒「『三省堂国語辞典』のすすめ」目次へ

◆飯間先生の記事はここにも⇒「三省堂WebDictionary」ことばパティオ第8回「「串刺し」に堪える語釈でなければならない」

筆者プロフィール

【飯間先生の新刊『非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門』】飯間浩明(いいま・ひろあき)
 早稲田大学非常勤講師。『三省堂国語辞典』編集委員。
 早稲田大学文学研究科博士課程単位取得。専門は日本語学。古代から現代に至る日本語の語彙について研究を行う。NHK教育テレビ「わかる国語 読み書きのツボ」では番組委員として構成に関わる。著書に『遊ぶ日本語 不思議な日本語』(岩波書店)、『NHKわかる国語 読み書きのツボ』(監修・本文執筆、MCプレス)、『非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門』(ディスカヴァー21)がある。
URL:ことばをめぐるひとりごと(http://www.asahi-net.or.jp/~QM4H-IIM/kotoba0.htm)

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【編集部から】
これまで「『三省堂国語辞典』のすすめ」をご執筆くださった飯間浩明先生に「国語辞典の知っているようで知らないことを」とリクエストし、「『サンコク』のすすめ」が100回を迎えるのを機に、日本語のいろいろな辞典の話を展開していただくことになりました。
辞典はどれも同じじゃありません。国語辞典選びのヒントにもなり、国語辞典遊びの世界へも導いてくれる「国語辞典入門」の始まりです。


国語辞典入門:見出し 拗促音(ゃゅょっ)の配列、和語・漢語の区別

2010年 7月 28日 水曜日 筆者: 飯間 浩明

第28回 見出しの仮名の謎

 探していることばが国語辞典に載っていない、と早合点するのは、追い込み処理に気づかない場合のほかに、項目の並び順を勘違いしている場合もあります。

 10年前のある小学校国語教科書を見ると、4年生で国語辞典の引き方を扱っています。項目の並び順を説明する部分では、「小さく書くかなは、どんな順になっているでしょうか」との設問があり、「りゆう(理由)」と「りゅう」の例が挙がっています。

 私の知るかぎり、小学生用の学習国語辞典では、「やゆよ」「つ」が先に、「ゃゅょ」「っ」が後に来ます。したがって、上の正解は「『りゆう』が先」となります。

 ところが、児童の中に大人用の国語辞典を使っている子がいると、大変です。一般の辞書では、「りゅう」が先に、「りゆう」が後に来るものが、むしろ多いからです。

 「ゆ」「ゅ」のいずれが先かで、主な辞書を分けてみると、次のようになります。

 ・「ゆ」が先……『岩波』『旺文社』『学研現代新』
 ・「ゅ」が先……『三省堂』『新明解』『新選』『明鏡』『集英社』『新潮現代』『現代国語例解』『大辞林』『広辞苑』『日本国語大辞典』

 つまり、子どもの辞書の常識と、大人の辞書の常識とが異なっています。

 「理由」と「りゅう」なら、隣り同士なので、どちらでも大差ない――とは言えません。辞書によっては、「柳」「流」「留」「竜」「琉」など「りゅう」と読む漢字を多数項目に立てるものがあります。「理由」の項目は、その前に来るか後に来るかで、ずいぶん位置が変わります。結果として、「『理由』が載っていない」と思いこむことにもなるのです。

 国語教科書も、この点については検討したようです。今の小学3年生の教科書では、「あなたがよく使う国語辞典で、次の言葉はどちらが先に出ているか調べてみましょう」という設問に変わっています。これなら、辞書ごとに並び順が違っていてもかまわないし、むしろ、違いがあることを理解させるきっかけにもなります。

 「ゆ」「ゅ」のどちらを優先する国語辞典にも、それぞれ根拠があります。「ゆ」を先にする辞書は、特殊仮名の「ゅ」を後回しにするという考え方です。「ゅ」を先にする辞書は、2音の「りゅ・う」を3音の「り・ゆ・う」よりも先に置くという考え方です。

和語・漢語が分かると便利

 見出しの部分には、まだ謎があります。辞書によって、「ばしょ(場所)」の見出しの仮名を「ば ショ」としたり、「ば-しょ」(「しょ」だけがゴシック体)としたりするものがあります。前者は『新潮現代国語辞典』、後者は『新選国語辞典』(小学館)の方式です。素直に「ばしょ」と書けばよさそうなのに、なぜこんな表記にするのでしょうか。

 これは、和語と漢語を区別して示しているのです。この区別はたいへん役に立つのですが、理解している人は多くなさそうなのは、もったいないことです。

 大ざっぱに言えば、和語は「山(やま)」「桜(さくら)」など漢字を訓読みすることば(日本で生まれたことば)、漢語は「山河(さんが)」「桜桃(おうとう)」など漢字を音読みすることばです。音読みの特徴は、「河(か)」「左(さ)」など1音か、「回(かい)」「高(こう)」など、「い・う・き・く・ち・つ・ん」の音で終わることです。

 両者の区別ができれば、いろいろと便利です。文章を書くとき、文脈に合わない言い回しを使って、みすみす伝わりにくくしている人があります。その点、和語・漢語の区別ができる人は、「はじめは」と「当初は」、「近頃」と「近来」、「力の限りを尽くす」と「全力を傾注する」などの切り替えが自由にでき、よりこなれた文章が書けます。

 あるいは、語源を考えるときにも有効です。「とにかく」ということばは、「兎に角」と書くので、ウサギに関係があるかのようです。でも、「とにかく」は和語、「兔」「角」は漢語だと知っていれば、和語にあとから漢字を当てはめたにすぎないことが分かります。

 『新潮現代』では、見出しの和語はひらがな、漢語はカタカナで記しています。「ば ショ(場所)」の表記は、和語の「場(ば)」と漢語の「所(しょ)」からなることを示すものです。

 ほかにも、たとえば、「しら ギク(白菊)」「ぶた ニク(豚肉)」などともあって、ごく日常的な「菊(きく)」「肉(にく)」などのことばも漢語であることが分かります。あるいは、「かわい そう(可哀相)」「たんのう(堪能)」などはひらがなで書かれていて、漢語のような発音でありながら和語であることが分かります。

 『新選』の場合は、和語を太明朝(アンチック)、漢語をゴシックにしていますが、和語と漢語を区別するという意図は、『新潮現代』と同じです。両辞書がこの点でいかに便利かは、もっと注目されてもいいことです。

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筆者プロフィール

【飯間先生の新刊『非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門』】飯間浩明(いいま・ひろあき)
 早稲田大学非常勤講師。『三省堂国語辞典』編集委員。
 早稲田大学文学研究科博士課程単位取得。専門は日本語学。古代から現代に至る日本語の語彙について研究を行う。NHK教育テレビ「わかる国語 読み書きのツボ」では番組委員として構成に関わる。著書に『遊ぶ日本語 不思議な日本語』(岩波書店)、『NHKわかる国語 読み書きのツボ』(監修・本文執筆、MCプレス)、『非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門』(ディスカヴァー21)がある。
URL:ことばをめぐるひとりごと(http://www.asahi-net.or.jp/~QM4H-IIM/kotoba0.htm)

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【編集部から】
これまで「『三省堂国語辞典』のすすめ」をご執筆くださった飯間浩明先生に「国語辞典の知っているようで知らないことを」とリクエストし、「『サンコク』のすすめ」が100回を迎えるのを機に、日本語のいろいろな辞典の話を展開していただくことになりました。
辞典はどれも同じじゃありません。国語辞典選びのヒントにもなり、国語辞典遊びの世界へも導いてくれる「国語辞典入門」の始まりです。


国語辞典入門:辞書の使い方 辞書に書いてある記号、符号、略号

2010年 7月 21日 水曜日 筆者: 飯間 浩明

第27回 追い込み項目に注意せよ

 国語辞典を開いてみると、見慣れない記号や略号がたくさん書きこまれています。あれはいったい何の役に立つのか分からない、という声を聞きます。

 記号などの意味は、冒頭の「凡例」にすべて解説してあるのですが、小さな字でぎっしり書いてあって、読みにくいのも事実です。電器製品のマニュアルや、クレジットカードの約款を思わせます。凡例が読みにくいせいで、国語辞典の基本的なルールを知らないまま使い続けているという人も多いはずです。

 私としては、一般読者向けの凡例はぐっと簡略化し、国語辞典を使うために最低限必要な知識だけを示せばいいと思っています。編集方針や、専門家向けのより細かい凡例は、じゃまにならない所に、ひっそりと記しておくだけでもいいのです。

 では、国語辞典を使うための最低限の知識とはどんなことか。今から、それを私のことばで説明しようと思います。いわば、私なりの「より抜き凡例」です。

 まず、「追い込み」の話から始めましょう。多くの国語辞典では、紙面節約のために、上の部分が共通することばは1か所にまとめてあります。たとえば、「社会」の項目には、〈――あく[社会悪](名)〉〈――うんどう[社会運動](名)〉などと、いくつもの「小見出し」がぶら下がっています。この処理のことを「追い込み」と言います。

追い込み項目の画像

 この追い込みのことを知らずに、あるいは考えずに辞書を引いて、「目当てのことばが載っていない」と早合点をすることは、よくあることです。

 『三省堂国語辞典』の小学生の読者から、「ライトノベル」ということばを載せてほしいという要望のはがきが来ました。でも、『三省堂』には、「ライトノベル」はすでに載っているのです。おそらく、この読者も、早合点をしたのだと思います。

 『三省堂』の「らいどう(雷同)」と「ライトモチーフ」の間には、たしかに「ライトノベル」はありません。でも、前のページの「ライト」を見ると、〈――ノベル(名)〉のように、追い込みの形で項目が設けてあります。

 追い込みは、小学生用の学習国語辞典にはないものです。小学生の投書者が知らなかったのは、やむをえないことかもしれません。

「意地悪」が載ってない!

 追い込みという処理方法を知っている読者でも、まだ勘違いするおそれは残っています。国語辞典によって、追い込みのしかたに微妙な違いがあるからです。

 私自身がたまに失敗するのは、こんな場合です。『三省堂』で「いじわる(意地悪)」を引くと、「いしわた(石綿)」と「いしん(威信)」の間に出ています。そのあとで、ほかの辞書の記述も参考にしようとして、「意地悪」を調べてみると、なんと軒並み載っていない、などということがあります。

 たとえば、『岩波国語辞典』の「石綿」の次はすぐ「威信」です。『新選国語辞典』(小学館)『新明解国語辞典』(三省堂)などもそうです。これらの辞書が「意地悪」を載せていないはずはありません。そこで気がついて、2、3ページ前の「意地」の項目を開いてみると、「意地っ張り」「意地悪」などが、ちゃんと追い込みになっています。

 つまり、こういうことです。『三省堂』では、追い込みにするのは、上のことばが3音以上の場合と決めてあります。たとえば、「ライト・ノベル」は「ライト」が3音なので、「ライトノベル」は追い込みにします。一方、「いじ・わる」は、「いじ」が2音なので、「意地悪」は追い込みにしません。このように、音数主義で徹底しています。

 『旺文社国語辞典』なども、『三省堂』に近い方針をとっています。

 一方、『岩波』『新選』『新明解』などは、方針が違います。『岩波』では、和語・漢語・外来語ごとに規則があり、漢語では、熟語にさらにほかの語がついた場合を追い込みにします。「意地」は漢語の熟語であり、したがって、「意地悪」は追い込みになるわけです。『新選』以下の辞書でも、ほぼ同じ理由で追い込みになっています。

 もっとも、「和語の場合」「漢語の場合」などと説明されても、戸惑う読者が大部分でしょう。実際には、「これは長い熟語だから、追い込みになっているだろう」といった、だいたいの見当で探しているはずです。私は、それで十分だと思います。

 大事なことは、ことばが載っていないと思ったときは、追い込みの可能性の有無を確認することです。それさえ忘れなければ、細かいことにはこだわらなくて大丈夫です。

 ちなみに、まったく追い込みをしない方針の辞書もあります。最大の国語辞典『日本国語大辞典』(小学館)のほか、『現代国語例解辞典』(同)などがそうです。

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筆者プロフィール

【飯間先生の新刊『非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門』】飯間浩明(いいま・ひろあき)
 早稲田大学非常勤講師。『三省堂国語辞典』編集委員。
 早稲田大学文学研究科博士課程単位取得。専門は日本語学。古代から現代に至る日本語の語彙について研究を行う。NHK教育テレビ「わかる国語 読み書きのツボ」では番組委員として構成に関わる。著書に『遊ぶ日本語 不思議な日本語』(岩波書店)、『NHKわかる国語 読み書きのツボ』(監修・本文執筆、MCプレス)、『非論理的な人のための 論理的な文章の書き方入門』(ディスカヴァー21)がある。
URL:ことばをめぐるひとりごと(http://www.asahi-net.or.jp/~QM4H-IIM/kotoba0.htm)

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【編集部から】
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辞典はどれも同じじゃありません。国語辞典選びのヒントにもなり、国語辞典遊びの世界へも導いてくれる「国語辞典入門」の始まりです。


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