2015年の選評

3. 共生への期待を表す「LGBT

2位の「マイナンバー」は官製語です。年金や納税などに関して、個人を識別するための番号を指します。2013年にマイナンバー法が成立し、今年の10月から通知が始まりました。今後、私たちの生活に深く関わるであろうことばで、上位にランクインしたのは妥当な結果でした。

2位 マイナンバー

『新明解国語辞典』風

マイナンバー 日本国内の地方自治体に住民票を有する全員に付与される、4個の数字を3組合わせた計12桁の数字によって表された番号。社会保障・税制の効率性・透明性を高め、国民にとって利便性の高い公平・公正な社会を実現するためのインフラ整備の一貫として施行される。個人情報の保護をいかに保つかなどの課題も多いとされている。

『三省堂国語辞典』風

マイ ナンバー(名)〔和製 my number〕 国民一人一人に政府が割りふった十二けたの番号。社会保障や税に関する手続きなどで使われる。個人番号。〔二〇一六年から利用開始〕「━カード」

『三省堂現代新国語辞典』風

マイナンバー〈名〉[my number] 日本国の住民票をもつ人に対して、国によって定められた十二桁の数字。個人番号。▼行政の効率化、国民の利便性の向上、公平・公正な社会の実現をめざすために、二〇一五年一〇月から日本国の住民票をもつすべての人に対して通知された。二〇一六年一月からは、社会保障、納税、災害時の支給金を受けとるためなどに必要となる。

昔も「国民総背番号制」という表現で、似た制度が検討されたことがあります。当時は、「国民に番号を割り振るとは何ごとか」といった猛反発があり、実現しませんでした。今回、制度導入が成功したのは、「マイナンバー」という親しみやすいネーミングのおかげもあったでしょう。「ネーミング特別賞」(というのはありませんが)をあげてもいいくらいです。

官製語は、過去にいろいろなものが生まれています。「クールビズ」のように定着したことばもあれば、「実年」(=50~60代)のようにイマイチ使われていないことばもあります。「タウンミーティング」を言い換えた「政策ライブトーク」ということばもありましたが、知る人は少ないでしょう。

「マイナンバー」は、この分だと、しっかりと定着しそうな様子です。ただ、私たち選考委員は、手放しで称賛するわけではありません。個人情報の流出や不正利用など、「マイナンバー」が問題の原因になることも懸念しています。ぜひとも制度をしっかり運用していただきたいものです。

3位の「LGBT」。今年、相当多くの人に知られるようになったことばです。性的少数者、つまり、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル(=両性愛者)・トランスジェンダー(=自分の性に違和感を持つ人)の略語です。

3位 LGBT

『三省堂国語辞典』風

エル ジー ビー ティー[LGBT](名) 〔←lesbian, gay, bisexual and transgender〕性的少数者。レズビアン・ゲイ・バイセクシャル〔=両性を愛する人〕・トランスジェンダー〔=体の性と心の性が異なる人〕。GLBT。「━権利運動」

今年、アイルランドで同性婚を認めるかどうかについて国民投票が行われ、賛成多数の結果が出ました。渋谷区では同性のカップルを公認する証明書が発行され、世田谷区でも同趣旨の要項ができました。2015年は、性的少数者の権利についての認識が前進した年として記憶されるでしょう。

今や、日本人の13人に1人は性的少数者という調査(電通)もあります。「LGBT」は、多様な人々の共生への期待をも抱かせることばです。

選考委員は、2013年には「LGBT」を採集していました。『現代用語の基礎知識』には2013年版から載っています。ただ、当時はまだ一般的に知られているとは感じられませんでした。選考委員の一人も、この文字列がなかなか覚えられず、言い間違ったりしていました。今年になり、これだけ盛んに報道されるようになると、さすがに言い間違うこともなくなりました。

このことばが今後いっそう普及することを期待して、3位としました。

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