はじめに

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発音のしかた

人間の口の中はどうなっているのだろう.まずは右の図1を見ながら,自分の口の中の構造を確かめてみよう.

われわれはほとんど無意識に,口からいろいろな音を出しているが,実は口の中のこれらの器官が互いに協力しているのだ.まず声帯 ― これをふるわせるかふるわせないか.それから舌 ― 舌面を高めるか低めるか.そしてくちびる ― 閉じておくか開いておくか,丸めるか平たく横に開くか.さらに英語の発音について言えば,舌先を上の歯ぐきにつけるかつけないか,歯の間に舌先をはさむかはさまないか,上の歯で下くちびるを軽く押さえるか押さえないか,などなど.

英語には日本語にないような音(おん)がたくさんある.そういう英語の音を正確に,しかも日本語の場合と同じように,口の動きを意識せずに発音することができるようになるためには,繰り返し繰り返し練習しなければならない.

母音(ぼいん)の発音

母音は声帯を通過して来た「こえ」(声帯をふるわせて出る音)や「いき」(声帯をふるわせないで出る音)が舌やくちびるに邪魔されないで出て来る音である.日本語で言えば「アイウエオ」のような音だ.ではいろいろな母音はどこで違いが生まれるのだろう.それは舌面の高まりの位置による.

下の図2~4を見てみよう.舌面の高まりの位置が口の中の前の方にあるもの(図2),後ろの方にあるもの(図3),中央にあるもの(図4)に分けることができる.そしてまた,それぞれの中での舌面の高低によっていろいろな音が出て来る.

また母音には二つの音が組み合わさって一つながりに発音されるものがある.これは二重母音と呼ばれる.例えば /o//u/ が組み合わさって /ou オウ/ という二重母音になる.

次にそれぞれの母音の発音のしかたを説明するので,図2-4を参考にしながら指示に従って発音してみよう.

/ɑːr アー/ 例:star

日本語の /アー/ と似た口の形であるが,それよりももっと口を大きくあけて発音する(→図3).また,本書では starに /stɑːr/ という発音記号を示しているが,これは米国式発音で /stɑːr/,英国式発音で /stɑː/ と発音するという意味である.すなわち米国式発音では /ɑː/ という音の終わりに /r/ 音をひびかせることを示している.

/ʌ ア/ 例:sun

口の開きを中くらいにし,くちびるをやや丸めて発音する(→図4).驚いた時に発する鋭く短い日本語の /ア/ に似ている.

/æ ア/ 例:map

口を横に大きく開き,あごを引くようにして,口の奥で発音する./e エ/ を発音する時の口の形で「ア」というとこの音に似た音が出る(→図2).

/ə ア/ 例:labor/əː ア~/ 例:earth

ほとんど口を開かないまま,舌面の高さも自然のままにしておいて軽く「ア」といえば /ə/ という音になる(→図4).口の形をそのままにしてこの音を伸ばせば /əː/ という長母音(ちょうぼいん)になる.英語の発音の中で最も重要な音の一つである.

/i イ/ 例:finger/iː イー/ 例:bean/iə イア/ 例:hear

/i/ は日本語の/イ/と同じ口の形で発音すればよい(→図2).これを長く伸ばせば /iː/ という長母音になる./i/ の音に軽く/ə/をそえると/iə/という二重母音になる.

/u ウ/ 例:good/uː ウー/ 例:school/uə ウア/ 例:poor

/u/ は日本語の /ウ/ よりもくちびるを丸くすぼめて発音する(→図3).それを長く伸ばせば/uː/という長母音になる./u/の音に軽く /ə/ をそえると /uə/ という二重母音になる.

/e エ/ 例:best/ei エイ/ 例:take

/e/ は日本語の /エ/ と同じ口の形で発音すればよい(→図2)./e/ の音に軽く /i/ をそえれば /ei/ という二重母音になる.

/ɔ オ/ 例:pond/ɔː オー/ 例:walk/ɔi オイ/ 例:boy

/ɔ/ は日本語の /オ/ よりも口をやや大きめに丸めて発音する(→図3).それを長く伸ばせば/ɔː/という長母音になる./ɔ/ の音に軽く /i/ をそえれば /ɔi/ という二重母音になる.

/ai アイ/ 例:mind/au アウ/ 例:mindnow

/ɑː/ の発音の時よりも舌面の高まりの位置を少し前にして短く発音すると/a/の音になる(→図2)./a/ という音は通例英語では単独には存在せず,その後に軽く /i/ または /u/ をそえた /ai//au/ という二重母音として現れる.

/eə エア/ 例:hair

/e/ は日本語の /エ/ と同じ口の形で発音すればよい(→図2)./e/の音に軽く/ə/ をそえれば /eə/ という二重母音になる.

/ou オウ/ 例:road

/o//ɔ/ よりも口をもう少しすぼめて発音する(→図3)./o/ という音は通例英語では単独には存在せず,その後に軽く /u/ をそえた /ou/ という二重母音として現れる./u/ を発音する時は /o/ を発音する時の口をさらにすぼめるようにする.

子音(しいん)の発音

子音は声帯を通過して来た「こえ」(声帯をふるわせて出る音)や「いき」(声帯をふるわせないで出る音)が舌や歯やくちびるなどに邪魔されて出て来る音である.以下にそれぞれの子音の発音のしかたを説明するので,口形図を参考にしながら何回も練習しよう.

/p / /b / /m ,ン/

くちびるを閉じて,その閉鎖(へいさ)を「いき」で勢いよく押し開くと /p/ の音になり,「こえ」で押し開くと /b/ の音になる.また,くちびるを閉じたままで「こえ」を鼻腔(びこう)にひびかせると/m/の音になる.

rip /ríp/rib /ríb/rim /rím/

/t / /d / /n ,ン/

舌の先を上あごの歯ぐきの内側に軽くあてて空気の通路をふさいでおき,その舌先を「いき」で押し開くと /t/ の音になり,「こえ」で押し開くと/d/の音になる.また,舌の先を上あごの歯ぐきの内側にあてたままで,「こえ」を鼻腔(びこう)にひびかせれば /n/ の音になる.

mat /mǽt/mad /mǽd/man /mǽn/

/k / / /ŋ ン/

舌の後部を上あごの奥の方にあてて空気の通路をふさぎ,それを「いき」で押し開くと /k/ の音になり,「こえ」で押し開くと /ɡ/ の音になる.また,舌の後部を上あごの奥の方にあてたまま「こえ」を鼻腔(びこう)にひびかせれば /ŋ/ の音になる.

back /bǽk/bag /bǽɡ/bang /bǽŋ/

/f / /v /

上の歯を下くちびるに軽くあて,その間から「いき」を擦(す)るように出すと /f/ の音になり,「こえ」を擦るように出すと /v/ の音になる.

face /féis/very /véri/

/ /

歯の間に舌の先を少し軽くはさむようにして,そのままで「いき」を擦(す)るように出すと /ɵ/ の音になり,「こえ」を擦るように出すと /ð/ の音になる.

bath /bǽɵ/smooth /smuːð/

/s / /z /

上の歯ぐきの内側に舌の前部を近づけて,歯の間から「いき」を擦(す)るように出すと /s/ の音になり,「こえ」を擦るように出すと /z/ の音になる.

advice /ədváis/advise /ədváiz/

シュ/ ジュ/

舌面を上あごに近づけて,舌と上あごの間のせばめられた通路を「いき」を擦(す)るように出すと /ʃ/ の音になり,「こえ」を擦るように出すと /ʒ/ の音になる.

shape /ʃéip/measure /méʒər/

/ts / /dz /

/ts//t//s/ とを同時に一つの音として出すもので,舌の先を上の歯ぐきに近づけて,歯の間から「いき」を擦(す)るように短く出すと /ts/ の音になり,「こえ」を擦るように短く出すと /dz/ の音になる.

boots /búːts/goods /ɡúdz/

/tʃ / /dʒ /

/tʃ//t//ʃ/ とを同時に一つの音として出すもので,舌の前部を /ʃ/ を発音する時より上の歯ぐきの内側に近づけ,「いき」を擦(す)るように短く出すと /tʃ/ の音になり,「こえ」を擦るように短く出すと /dʒ/ の音になる.

teach /tíːtʃ/page /péidʒ/

/h /

歯や舌やくちびるで邪魔をせず,口を自然に開き,「いき」を喉頭で擦(す)るようにひびかせると /h/ の音になる.

home /hóum/

/l /

舌の先を上の歯ぐきの内側にあてたままで「こえ」を出せば /l/ の音になる.英語の発音の中でも特に重要な音である.次の /r/ との区別ができるように練習しよう.

light /láit/

/r /

舌の前部を軽く内側に巻くようにして,上の歯ぐきの内側に近づけ,舌をふるわせるように「こえ」を出すと /r/ の音になる.

right /ráit/

/j イ/

/j/ という音は口の形も音も /i/ の発音とよく似ていて母音のような性質を持っているので「半母音」とも呼ばれる./i/ の時よりもさらに舌を高く上げて発音する.常に次に続く母音にすばやく移っていくので,この音が語末に現れることはない.

yellow /jélou/

/w ウ/

/w/ という音は口の形も音も/u/の発音とよく似ていて母音のような性質を持っているので「半母音」とも呼ばれる./u/ の時よりもさらにくちびるに力を入れて丸くすぼめて突き出すようにする.常に次に続く母音にすばやく移っていくので,この音が語末に現れることはない.

wood /wúd/

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