2017年の選評


「今年の新語2017」選考委員会の様子

1. 投稿数だけでは入選しないが…

「今年の新語」は、今回から募集期間がやや短くなりました。前回は9月1日から11月末日まで91日間受け付けていましたが、今回は11月15日までの76日間です。そのせいか、投稿総数は2,452通、1,072語で、前回(2,834通、1,182語)よりも若干減りました。ただ、1日当たりで見ると、むしろ若干増えています。  

このイベントに対する認知度が上がりつつあると同時に、「今年の新語」ファンといえる層が現れてきたと感じます。1人で数十通、多くは百通を超える投稿をしてくださった方もいます。  

投稿数の多かった語としては、たとえば、「インスタ映え」「忖度(そんたく)」「プレミアムフライデー」「卍(まんじ)」「フォトジェニック」……などがありました。 「今年の新語」では、投稿数が多いからという理由だけで入選することはありません。今年特に広まったと言えるか、今後の国語辞典に載ってもおかしくないか、ということが重要な選考基準になります。「今年だけの流行語」を選ぶという趣旨ではないのです。  

たとえば、前回の「今年の新語2016」で投稿数が一番多かったのは「神ってる」でしたが、選外になりました。一時的に脚光を浴びている印象がぬぐえなかったからです。投稿者の間にも、「流行語だからといって、必ずしも選ばれるとは限らない」という「傾向と対策」は浸透しつつあるように思います。  

今回、最も投稿数が多かったのは「インスタ映え」でした。画像共有のためのSNS(交流サイト)である「インスタグラム」に投稿した際、写真が映える(引き立つ)ことを言います。投稿者のコメントにも「テレビでよく聞くことばだった」「これが一番はやったんじゃない?」「大賞決定やんか」などの声がありました。  

でも、「インスタ映え」はランクインしませんでした。辞書的には、「インスタ映え」は「インスタ(グラム)」と「映え」の2つの項目があれば説明が可能です。一般に、SNSに投稿した写真が映えることを「SNS映え」とも言うので、「インスタ映え」だけを項目に立てにくいという理由もあります。  

SNSなどで写真うつりのいいことを言う「フォトジェニック」も、投稿数の多さに反して、ランクインはなりませんでした。このことばは昔から一般に使われ、『三省堂国語辞典』『三省堂現代新国語辞典』などにも載っています。初耳の人もいるかもしれませんが、意味に大きな変化もなく、「今年の新語」とまでは言えません。  

そうした中で、「忖度」に関しては、投稿数の多さと選考委員の評価の高さとが一致しました。しかも、堂々の大賞です。投稿者の多数意見と同じだったため、意外性は低かったかもしれません。もっとも、「投稿数の多いことばは選ばれない」とにらんだ投稿者にとっては、かえって意外だったでしょうか。

では、なぜ「忖度」が大賞に選ばれたのか。そのことから解説していきましょう。

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