2016年の選評

4. 威力を示す外来語

4位から7位までは外来語が並びました。9位・10位も同様です。さらに、外来語を一部に含む語もあります。結局、外来語でない日本語は「ほぼほぼ」「ゲスい」の2語だけという結果です。

昨年の選考結果では、全10語のうち、外来語は4語でした。それと比較すれば、今年は外来語が威力を示しています。漢字で書くことば(漢字語)をもっと多く入れてもよかったところですが、全体として、入賞に足るめぼしい漢字語が少なかったため、この結果になりました。

4位 レガシー

『三省堂現代新国語辞典』風

レガシー〈名〉[legacy]あるイベントのためにつくった施設が、のちのちまで再利用できること。また、その施設。「五輪後の―になれるかを議論する」[英語本来の意味は、「遺産」「遺物」]

4位の「レガシー」は「遺産」という意味です。特に、東京五輪の計画に関する報道でよく聞きました。競技施設など、五輪後もその国・都市に価値をもたらす有形無形のものをこう呼びます。今年就任した小池百合子東京都知事が「レガシー」と繰り返していた声が耳に残る人も多いでしょう。このほか、政権が後の世代に残す成果のことなども「レガシー」と言います。また、少し違った意味では、既存の航空会社のことを「レガシーキャリア」とも言います。

現時点で、国語辞典は概して「レガシー」の項目を立てておらず、項目のある辞書でも、上記のような意味は載せていません。今後は辞書に入れるべき意味だということで、今年の新語に選びました。

5位 ヘイト

『三省堂国語辞典』風

ヘイト〔hate=にくしみ〕①にくしみから来る、差別的・犯罪的な行為(コウイ)。「―団体・―クライム〔=差別にもとづく犯罪〕」②⇨ヘイト スピーチ〔にくしみから来る、差別的な発言・表現。憎悪(ゾウオ)表現〕。

5位の「ヘイト」は、英語では「憎悪」の意味を表します。日本語ではここ数年、「ヘイトスピーチ」の形でよく使われるようになりました。憎悪感情に基づいて、人種・民族などに関する差別的な発言を行うことを指します。今年5月にはヘイトスピーチ対策法が成立し、これまで野放し同然にも思われたこの種の行為を許さない環境が整いつつあります。

ことばとしては、「ヘイト行為」のような複合語のほか、「ヘイトはやめろ」のように、単独で、憎悪による差別的行為を指すこともあります。人権に関わる重要語であり、今後の辞書に載せるべきことばです。

6位 スカーチョ

『新明解国語辞典』風

スカーチョ 〔スカート+ガウチョパンツ〕 裾が広がりゆったりとして履きやすく行動しやすい、女性用の衣服。 ⇨ガウチョパンツ

6位の「スカーチョ」は、今年大流行したファッションです。「ガウチョ」という、すねぐらいまでのゆったりしたズボンがありますが、見た目がスカートにそっくりなガウチョのことを「スカーチョ」と言います。来年以降、流行は落ち着くとしても、普通のファッションとして存続すると考え、今年の新語に選びました。

同時に流行したものに「スカンツ」があります。これは、見た目がスカートにそっくりなパンツ(ズボン)のこと。「スカーチョ」との違いは、足首まで丈があるところです。

どちらがより流行したかは一概に言えません。今回は、「スカート」とちょっと音が重なりながらも実は意味が違う、という意外性から「スカーチョ」を選びました。辞書には両方載せるのが適当でしょう。

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