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WISDOM in Depth: #3

2007年 11月 13日 火曜日 筆者: 有吉 淳一郎
【編集部より】
辞書の凝縮された記述の裏には,膨大な知見が隠れています。紙幅の関係で辞書には収めきれなかった情報を,WISDOM in Depth と題して,『ウィズダム英和辞典』の編者・編集委員の先生方にお書きいただきます。第3回は編集委員の有吉淳一郎先生です。

動詞wipeと共起前置詞について

動詞 wipe は「ふく」「ぬぐう」といった意味を基本とし,以下の形でよく用いられる。

(1) a. wipe one’s hands
  b. wipe the table

この用法の wipe について手元にあるいくつかの英和辞典を見てみると,おおよそ次のような記述が確認される。

(2) 〈人が〉…を《…で》ふく,ぬぐう《with, on》

(2)より我々は,wipe の語義に加え,この動詞が主語として人を選択し目的語を1つとるということがわかる。さらにここでは共起前置詞も挙げられており,「…で」に相当する意味部分を担う前置詞として,with と on が並記されている。これはとりもなおさず,この「…で」の部分は,with と on いずれの前置詞によっても表現可能であることを意味する。しかし本当にそうであろうか。「布でテーブルをふく」は,wipe the table with a cloth とも wipe the table on a cloth とも言えるのであろうか。以下では,このような wipe および共起前置詞の生起に関する問題について掘り下げて考えてみたい。

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