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第70回【消費減税】しょうひげんぜい

筆者:
2025年6月30日

[意味]

消費税の税率を引き下げること。消費税減税。

[対義]

消費増税

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6月22日の東京都議会議員選挙、7月20日投開票の参議院議員選挙など注目の選挙が続きます。コメの価格高騰をはじめとする物価高を背景に、今年は消費税率を引き下げる「消費減税」が紙面をにぎわせるようになりました。

記事データベース「日経テレコン」を使い、日本経済新聞で「消費減税」を見出しにとった記事件数を検索すると、2000~2024年の25年間で33件。それが2025年は半年で43件(6月22日現在)と、その突出ぶりがはっきりと分かります。参院選対策として一時期、与野党の双方から「消費減税」を求める声が上がり、それらが紙面に登場したことが大きく影響する形となりました。

とはいえ、国民の多くが必ずしも消費減税を求めているとは限りません。日本経済新聞社とテレビ東京が行った5月の世論調査では、消費減税を巡り、日常生活の負担軽減だけでなく財源や財政規律への有権者の意識の高さが明らかになっています。消費税率に関し「社会保障の財源確保のために維持すべきだ」が55%、「赤字国債を発行してでも引き下げるべきだ」が38%という結果になり、減税を訴えるだけでは国民の支持を得られないというのが実情でしょう。「ばらまき」もしかりです。

参院選の公示が7月3日に迫りました。物価高対策として、国民1人あたりに2万円(子供と住民税非課税世帯の大人は4万円)を配布する与党案と消費減税の野党案が選挙の争点になりつつあります。いずれにせよ、財源は国民が負担するようなもの。単なる聞こえのよいだけの公約では納得できません。政党には、選挙目当てではなく責任ある政策の立案が求められます。

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。1990年、日本経済新聞社に入社。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書に『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『方言漢字事典』(項目執筆、研究社)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)などがある。日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

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