今回は話し手の感情を直接表現する間投詞について述べてみたいと思います。
間投詞は感嘆詞と呼ばれることもありますように、もともとなんらかの刺激から生じた感情が無意識のうちに口から出る表現です。つまり、元来ことばにならない音が中心となります。今回はそのような音が文字化されたものに焦点を当ててみます。
喜びなどポジティブな驚きを表すとき、自然とwow /wau/ という音が出てきます。美しい景色を見て、‘Wow!’と一言言ってみたりする場合です。興味深いことは、この用法が発展して、この語を使うことで喜び、うれしさなどを表現するという機能が生まれていることです。たとえば、苦心して修理した大切なおもちゃが動いたときに、‘Wow, it works!’(やった、動いた!)と言うときのwowは自然と発声される上記のwowとは質的に異なり、wowを使うことによって喜びの感情を抱いていることを意図的に伝える働きがあります。wowは本辞典では立項していませんが、以上のことをふまえると、次のような記述となるでしょう。(用例は三省堂コーパスから改変)
1 〈景色・光景などに感動して〉わー、すばらしい: Wow! What a beautiful place!わー、なんてきれいなんだろう
2 〈目の前で起こっている状況に感動して〉わー、わーお、やった: 《ほしかったジーパンを目の前にして》Wow, you bought me jeans. Thank you.やった、ジーパン買ってくれたんだ.ありがとう/《あこがれのスターと握手をして》 Wow, this is really happening to me! わーお、こんなこと現実に起こるんだ!
3 〈相手の話に驚いて〉へえー、すごい、わーお:Wow, I cannot believe that you actually run your own company.へぇー、本当に自分の会社を経営しているんだなんて信じられない/ “Do you have a car?” “Well yeah, you know we have three of them.” “Wow, you must be rich.”「車もってる?」「えー、まあ. 3台もってるけど」「すごーい、金持ちなんだ」
同じような間投詞でポジティブにもネガティブにも反応するものに、aw/ɔː/があります。本辞典の記述のなかから基本的な感情表現としての語義1と相手の言動に対してネガティブに反応する、語義2,5,6をあげておきます。
1 〈感嘆して〉ああ, おお: Aw, gee, you’re wonderful! すごいな, 君は最高だよ!
2 〈抗議を表して〉ああ, おう: 《通りを歩きながら》 “Have a look at that belly-button fashion.” “Aw, don’t be old-fashioned. That’s the fashion among young women.” 「ちょっとあのへそピアス見ろよ!」「ああ, 古くさいことを言うなよ. あれが今若い子の間ではやっているんだよ」.
5 〈相手の発言を否定して〉おお, とんでもない: “George is very nice!” “Aw, you don’t know what you’re talking about! Wait till you know him a bit better.” 「ジョージってとてもすてきね」「おお, とんでもない. あなたは自分が何を言っているのかわかっていないのよ. やがて彼の本性がわかるから」
6 〈相手の行為を促して〉さあ(◆come onを伴うことが多い):/ “Can I have some more chocolate?” “No.” “Aw come on, please!” 「チョコレートもうちょっといい?」「駄目よ」「ね, いいでしょう. お願い!」.
以上、自然発生的な発声を語源とする語がいわゆる「語」として確立し、本来の意味から発展して別の機能をになうことをみてきました。なかでも自分の発話の前や、相手の発話を受けて用いられるとき、最近の用語で、談話辞(discourse particle)とか談話標識(discourse marker)ということがあります。