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WISDOM in Depth: #7
2007年 11月 30日 金曜日 筆者: 縄田 裕幸辞書の凝縮された記述の裏には,膨大な知見が隠れています。紙幅の関係で辞書には収めきれなかった情報を,WISDOM in Depth と題して,『ウィズダム英和辞典』の編者・編集委員の先生方にお書きいただきます。第7回は編集委員の縄田裕幸先生です。
コーパスから分かる構文情報
英語学習者にとって,ある動詞が取ることができる構文パターンは,英作文などで文の骨格を形作る際に重要な情報である。しかし同じ内容を複数の構文で表すことができる場合,それらの間にどのような違いがあるのか,非母語話者であるわれわれには分かりづらいことが多い。『ウィズダム英和辞典』では,コーパスを活用することにより,構文パターンの量的・質的な差異を記述に盛り込むことができた。筆者が担当した動詞decideを例として紹介する。
他動詞としてのdecideはその目的語として名詞句・不定詞節・that節・wh節[句]を取り,それぞれ「…を/…することを/…かを決める」という意味を表す。問題は不定詞節とthat節の場合で,どちらも訳語の上では「…することを」に対応する。そこで従来の英和辞典では,両者しばしばThey decided to leave. = They decided that they would leave.のような書き換え用例とともに,同一の項目として扱われることがあった。
しかし三省堂コーパスを調査すると,decide + to不定詞とdecide + that節が次のような違いを持つことが分かる。(i) 出現頻度の点ではdecide + to不定詞の方がdecide + that節よりも圧倒的に多い。(ii) 日常的な場面では decide + to不定詞が用いられるのに対し,decide + that節は主語の強い決意・決心を表す場合に好まれる。(i) は用例のヒット数から得られる量的な違いであり,(ii) は検索された個々の用例から分かる質的な差異である。
このような分析結果に基づき,decideの該当項目を以下のように記述した(下の画像はDual Dictionaryにおけるdecideの項からの抜粋)。

具体的な工夫として以下の3点を挙げることができる。第一に,decide + to不定詞とdecide + that節を語義番号1の下位区分 (a) (b) として独立させ,(a) のdecide + to不定詞が高頻度であることを示した(『ウィズダム英和辞典』では語義は全て頻度順で並んでいる)。第二に,decide + to不定詞にのみ「…することに決める」という日常的な訳語を与えた。第三に,それぞれの用例に関しても,両構文のニュアンスの違いが分かる英文例と日本語訳を与えた。
類似した構文が単なる書き換えではないことをコーパスが教えてくれる,よい例である。
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【筆者プロフィール】
縄田裕幸 (なわた・ひろゆき)
島根大学准教授。博士(文学)。
専門は英語学・言語学。著書に『英語学用語辞典』(1998, 三省堂; 共著)など。
『ウィズダム英和辞典』編集委員。
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