コンサイス露和辞典 第5版

定価
4,400円
(本体 4,000円+税10%)
判型
A6変型判
ページ数
1,344ページ
ISBN
978-4-385-12118-5
寸法
16.7×11cm
  • 改訂履歴
    1954年12月25日
    初版 発行
    1963年4月10日
    増訂版 発行
    1971年1月1日
    第3版 発行
    1977年9月20日
    第4版 発行
    2003年7月15日
    第5版 発行

小型・高性能「コンサイス露和」の第5版。

新生ロシア連邦成立後初の大改訂。総語彙数10万余。

井桁貞義 編

  • 小型・高性能「コンサイス露和」の第5版。新生ロシア連邦成立後初の大改訂。総語彙数10万余。
  • 動詞の見出し語は全て派生の順に立てて引きやすく、訳語は簡潔・明解。必須の文法・語法上の指示と豊富な用例・成句を採用。新しい政治・経済体制下の情報科学を含む各分野の新語を網羅し、口語、俗語も豊富に採録。
  • 巻末に「ロシア語の概要(歴史・文法・語彙)」(16頁)。

特長

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この辞書の構成と使い方

ロシア語の概要(最初の2頁)

第5版の序

  1. 1977年の第4版刊行以来四半世紀が経過している。この間、ロシアではきわめて大きな政治的、経済的、社会的、文化的な変化が起こった。その第一は 1917年のロシア革命から続いてきたソビエト社会主義連邦共和国が1991年に崩壊し、イデオロギーによる文化支配が終息したことである。1980年代末のレストロイカ期から始まっていた政治・経済の自由化は急速に進行し、企業は民営化され、社会システムは資本主義化され、新生ロシア連邦はグローバリゼーションの動きの中に巻き込まれていった。この変動は言語にも反映し、政治・経済・社会の用語は驚くほどの変容を示してきている。第二には、いま挙げた変化とともに、社会全体のコンピュータ化が一気に進んだことが挙げられる。これに呼応する形で情報テクノロジー関連のロシア語が広く流通するようになった。第三に、ロシア社会の精神的な変化を指摘しなければならない。イデオロギーに代わって宗教的なものが復活している。それはロシア正教ばかりでなく諸流派、またかつての民間信仰が呼び起こされ、一方で超常現象に注意を払うオカルト的な信仰も芽生えている。第四に、これまで闇の部分として抑制されてきた犯罪者やマフィア仲間の暴力や麻薬など裏側の世界とその用語とが社会の表面に浮上し、これについてのたくさんの辞書が出版されたことが挙げられる。

  2. 第5版の改訂は、これらすべての面を言語的に反映するものでなければならなかった。そこで、政治・経済・社会の領域での新語新語義については通訳者の小宮山俊平氏、コンピュータ・情報テクノロジー関連では慶応大学教授金田一真澄氏という第一線の方にご協力を仰ぐことができた。またこれらの領域も含め、俗語や新語、新語義については編者の責任において全体的に点検した。これに際して主に参考にしたのは新語8000と熟語3000を収録した1994年モスクワ大学出版の「モスクワ俗語辞典」および新語25000および熟語7000を収録して2000年に出されたサンクト・ペテルブルグ大学出版の「ロシア俗語大辞典」であった。前者からの語の選択についてはタチアナ・ジヴルトーヴィチ氏、後者についてはヴラジーミル・フィラトフ氏の助言をいただいた。また 5500語を収めて1998年に出されたロシア科学アカデミーの「20世紀末のロシア語辞典」のほぼ全容を収めた。

  3. 「コンサイス露和辞典」は1954年の初版発刊以来約半世紀にわたり、のべ20万部が刊行され、多くの方々に愛用されてきた。この辞典の簡潔な訳語と高い携帯性には定評のあるところである。今回の改定でもこの簡潔さと携帯性を維持するように努めた。また出版社の努力により価格を低く抑えることができたことは編者の大きな喜びとするところである。

  4. 第4版の訳語には現代ではあまり使用されなくなった語や表現もあった。これらは全般的にできるだけ現代的表現に変更している(たとえば「内股膏薬」など)。しかしすべてを新しいものに直すべきかどうか。辞書改訂者のおそらく誰もが迷う問題に編者もやはり直面したが、日本語の古い層を残す言葉や表現で意義深いものはルビをふり、別の訳語を並置するなどして、日本語の豊かさを保持するようにしている。

  5. 本辞書には200以上に上る「諺」が収録されている。今回の改訂ではこれら諺の語釈について新たに徹底的な検討を加えることができた。ことわざ研究会代表の北村孝一氏に綿密な考察の上に立った新訳をお願いすることができたことは編者の大きな幸運であった。諺の比喩を重視し、言語表現をなるべく原語に近い形で訳すとともに、意味のわかりにくいものはそれを括弧内に示している。

  6. 各語の説明については、基本的に語義のすべてを最初に提示し、例文はそのあとにまとめるという第4版までの方針を踏襲している。利用者が欲しい訳語に早く行き着くことができるようにとの配慮である。これは、簡潔さと携帯性とともに、机上辞典とははっきり異なる本辞典の「現場主義」を表すものである。

  7. 動詞の項目については派生の順序に則して、基本的には完了体で表現することとした。ここでも読者の現場での使い易さを考慮している。また成句についてもゴチック体に変え、項目の最後にまとめて、同様に読者の発見し易いようにしている。さらに新しく変化形を記号で示すようにしている。

  8.  ロシア連邦の文化的変化に伴って、「神」、「聖母」をはじめとするキリスト教関連の語は革命以前の文化に立ち戻って大文字で書き始めるようになっている。第5版ではこうした動きをできるだけ反映するように努めている。

  9. 人名や地名についてはカタカナ表記を示すようにした。この際、慣用にしたがったものもある。また人名と地名に関しては原音に近づける意味で「ヴ」の表現を採用している。

  10. 第5版では新語、新語義をできるだけ多く収録するため、従来あった図版を断腸の思いで削除せざるを得なかった。

  11. 第5版改訂では校正者小林ますみ氏に、また校閲にあたっては早稲田大学講師の佐藤千登勢氏、大学院の尾子洋一郎、鈴木健司、野中春菜の各氏に、入力では早稲田大学大学院の神岡理恵子、福本妙、森脇千絵の各氏にお世話になった。御礼申し上げたい。

  12. 最後になったが三省堂外国語辞書編集部の鈴木剛氏にこの場を借りて心より御礼申し上げたい。鈴木氏の若い頃からのロシア語への燃えるような愛情なくしてはこの第5版は成立しなかった。鈴木氏はコンピューターによる編集のシステムを開発するところから始まり、改訂の全般にわたって作業を進められ、また進行を促された。編者はこの数年ロシア文化・文学研究から大学改革まで多忙な日々を送っており、鈴木氏の粘り強い励ましがなければこの改訂を完成することはできなかったであろう。

  13. 改訂にあたっては言葉にできる限り誠実に対したが、思わぬ誤りがあるかも知れない。使用する皆様のアドバイスによって、より完全なものにしていきたいと考えている。大方のご叱正を待ちたい。

第5版を、父子2代にわたる辞書作りを見守ってきた母に捧げる。

   2003年 3月

編者