三省堂 辞書ウェブ編集部による ことばの壺
西洋絵画作品名辞典
ルネサンスの始まりを告げるチマブーから、ウォーホル、ホックニーまで。
ルネサンスの始まりを告げるチマブーから、ウォーホル、ホックニーまで。
画家は五十音配列。作品は主題別、製作年代順など画家の個性に応じた分類・配列。歴史・文化背景も含め多面的読解ができる詳細なデータと解説。
<画家>原綴、国籍、生没年(生没地)、プロフィール、文献資料。
<作品>原綴、素材・寸法、所蔵地・所蔵者、必要に応じて作品分類ごとの解説、重要作品の解説。
「主題別索引」で、同じ主題を描いた画家、多くとりあげられた時代・国が逆引きできる。
巻末に「主題解説」「絵画の流れ」主要参考文献表「日本の美術館所蔵主要作品」「世界の主要美術館一覧」を収録。
特長
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さらに詳しい内容をご紹介
「西洋絵画作品名辞典」の内容より
まえがき
画家はひとりで生涯にどれ程の点数の作品を制作するものであろうか。人知れず消えてしまったものを含めれば、知られているものの数などは、知れたものなのかもしれない。 「知れたもの」とはいうものの、世に出ている画家別の作品総目録(カタログ・レゾネ)の類を前にすれば、たじろぐのが普通であろう。それを承知で挑戦したのが、この『西洋絵画作品名辞典』である。 本書の企画は、『クラシック音楽作品名辞典』(三省堂、1981年)の編集を担当した横山民子が、その完成をみた返す刀で、美術の領域でも「作品名辞典」ができないであろうかと、黒江光彦にもちかけたことから出発する。ちょうど『新潮世界美術辞典』(1985年)が完成し、15年間その編集にかかわって、辞書作りのなんたるかを会得したであろうと想像しての、黒江へのアプローチであった。 思えば、新潮社の辞典がコピー機の汎用化の時代に作られたとすれば、本辞典はワードプロセッサ、パーソナル・コンピュータ時代の産物といってよかろう。最初の仲間として木村三郎に白羽の矢をたてたのは、彼がこれらの器材の美術研究・博物館学の領域における有用性にいちはやく興味をもっていることを黒江は識っており、検索を主体とする実作業に欠くべからざる能力のもち主として、横山からのアイデアを彼に伝え、鼓舞し、「この一つの辞典だけで、君の仕事は世に残るだろう」とさえ言いつのって、引き入れたのであった。 はじめは「音楽作品名辞典」のように独力でやれるであろうかと問いかけたのであったが、のちに編集委員として、執筆もし、若い後輩たちの「まとめ役」としても活躍していただくことになった仲間が増えて、協同で、献身的にことに当っていただくこととなる。監修者としての任は、横山を木村に引き合わせることを思いつき、木村を中核として執筆陣を形成したときに終ったといっても過言ではない。 何故に黒江が監修の座に就いているかといえば、この辞典の編集委員、執筆者、協力者が、昭和2桁の世代に属していて、そのトップに位置しているのが、昭和10年1月1日生まれの黒江であるからにすぎない。大それたとさえいえるかもしれない作品名辞典を、諸先達を差し置いて作ったことを大目にみていただけるとすれば、「昭和2桁」の力を結集してみようという暗黙の発意があったことを了としていただくほかはない。 作品ひとつひとつが、美術研究や美術史研究の出発点であり、到達点であり、研究対象として、あるいは情報としてつねに特定されていなければならない。この世に創り出されたひとつの作品の生命・価値を、他のものとは違った独自の存在として認識すること―これが「作品名辞典」の存在理由であろう。日頃はアトリエで営々として作品の修復に取り組み、ひとつひとつの作品に新たな息吹きを吹き込んでいる黒江ができることとは、本辞典の仕事を通じても、どの作品をも大切に扱って欲しいと願うことであった。 とはいうものの、膨大な数の作品をハンディーな辞典の中に収録するための工夫を要求されたことも事実である。画家それぞれの作品を並べるのに、必ずしも統一的なシステムを採らなかった。 何らかの形で分類し、配列し、作品が孤立した存在ではなくて、ひとりの画家の芸術的展開を示す軌跡のごとき「群」や「順序」に還元して提示できないであろうかと、工夫を凝らすことが、執筆者への課題となった。執筆者ひとりひとりが、画家のひとりひとりと取り組むとき、そこにおのずと作品群の「くくり方」の独自性が生じてくる。 全作品に目を通す過程から引き出される配列法の模索が、まだ若い執筆者たちにとっての創意工夫と勉強になったに相違ない。こうした分類法は、膨大な数の連作や同一主題の作品群を簡潔に整理するという便宜を提供すると同時に、画家の全体像を浮び上らせ、その作風をとらえる有効な手法でもあろう。あえて統一的な配列法を採らなかった真意を汲みとっていただければ、幸いである。 本書を利用される方々も、ここに呈示された分類や区分にとらわれることなく、各自の問題意識の下に、各画家の作品体系を案出することも可能なはずである。そのための素材として本辞典が活用されれば幸いである。 作品の題名と材質・寸法、所蔵を羅列する単純作業は、正確を期すという課題の下で、編集委員、執筆者、校閲者、資料提供者らに、多大の緊張を強いたことはいうまでもない。 「昭和2桁」であればこそ、この労苦をいとわない献身と謙譲さを期待され、それゆえにこそそれに答えてもらえたと、世の人びとにいってもらえることを、監修者として念じたい気持でいっぱいである。 1994年 1月
監修者 黒江光彦
執筆・協力者一覧
(五十音順・敬称略)
監修者 黒江光彦 編集委員 木村三郎 島田紀夫 千足伸行 千葉成夫 森田義之
18世紀まで
【イギリス】谷田博幸 湊 典子 【イタリア】池上公平 石鍋真澄 石原 宏 岩井瑞枝 浦上雅司 大宮伸介 関根秀一 田辺 清 塚本 博 遠山公一 望月一史 森田義之 吉澤京子 【オランダ・ドイツ】千足伸行 千速敏男 【スペイン】雪山行二 【フランス】小林典子 駒田亜紀子 田中久美子 西野嘉章(以上14-15世紀)岩井瑞枝 木村三郎 (以上16世紀〉 木村三郎 清瀬みさを 栗田秀法 新畑泰秀(以上17世紀)伊藤已令 岩井瑞枝 木村三郎 清瀬みさを 下濱晶子 矢野陽子(以上18世紀) 【フランドル(ネーデルラント)】小池寿子 千速敏男 【ロシア】富田知佐子 新田喜代見
19世紀
【イギリス】谷田博幸 沼田英子 湊 典子 【イタリア】島田紀夫 山根隆也 【ドイツ】都築千重子 真野宏子 【フランス】浅野春夫 荒屋鋪 透 井出洋一郎 喜多崎 親 木村三郎 上月裕子 後藤トキ子 島田紀夫 鐸木道剛 高橋明也 冨田 章 中山久美子 矢野陽子 山根隆也 吉川知彦 【東欧】鐸木道剛 【ベルギー】小池寿子 冨田 章 【ロシア】新田喜代見
20世紀
【アメリカ】岡部昌幸 坂上桂子 千葉成夫 寺門臨太郎 光田由里 若松敏道 【イギリス】坂上桂子 清水哲朗 千葉成夫 【イタリア】岡村多佳夫 宮下 誠 【オランダ】清水哲朗 寺門臨太郎 【スイス】清水哲朗 【スペイン】大高保二郎 岡村多佳夫 【ドイツ】清水哲朗 千速敏男 都築千重子 宮下 誠 【東欧】五十殿利治 清水哲朗 【フランス】天野知香 荒屋鋪 透 岡部昌幸 尾島美那 坂上桂子 関 昭郎 関 直子 田冶協子 千葉成夫 西山純子 光田由里 山根隆也 【南米】岡村多佳夫 【ベルギー】清水哲朗 【北欧】山根隆也 【ロシア】五十殿利冶 新田喜代見
[付録] 主題解説=沼辺信一 絵画の流れ=千速敏男 参考文献=千速敏男 新畑泰秀 主題別索引=千速敏男 [協力] 青木祐子 遠山真佐美 槙田幸江