「辞書引き学習」とは
深谷圭助先生(⇒プロフィール)が開発した、辞書を最大限に活用して、子どもが自ら調べ・自ら学ぶ習慣と能力とを身に付け、子どもの可能性を最大限に引き出すための画期的な学習方法です。
「辞書引き学習」へのステップ(0)―準備するものは3つ―
「辞書引き学習」では、準備はとっても簡単、用意するものは次の3つです。
- お子さま専用の紙の国語辞典1冊
- 付箋
- 鉛筆
これだけで、お子さまの前に無限の可能性が広がります。
「辞書引き学習」へのステップ(1)―辞書は身近に置く―
用意した辞書は、お子さまが調べたくなったときにすぐ手が届く範囲に置いておくこと。当たり前ですが、このことが最も大切です。本棚にしまっておくのではなく、まずは机の上などすぐ身近なところに置いておき、いつでも手軽に調べられるようにしてください。
→ケースやカバーも、本来は辞書の本体を保護するためにご用意しているものですが、辞書を引くためには不要なものでもありますから、すぐにはずしていただいて結構です。
「辞書引き学習」へのステップ(2)―できる限り低年齢のうちに始める―
小学校では、ふつう3年生または4年生で辞書の引き方を学びます。
しかし、深谷先生によれば、低学年の児童のほうがことばや知識に対する好奇心や吸収力がより強く、「辞書引き学習」にも無心に取り組んでいくことができるとされています。引き方を詳しく教えることさえ必要ではありません。お子さまもすぐに辞書を引けるようになります。
できる限り小さいうちに、できれば小学校1年生から、取り組みを始めることが重要です。
→漢字が分からない小さいお子さまでも、ひらがなさえ読めれば、心配なく「辞書引き学習」に取り組むことができます。(⇒三省堂のお薦め『三省堂 例解小学国語辞典』紹介ページ)
「辞書引き学習」へのステップ(3)―知っていることばを引く―
一般に、辞書とは知らないことばを引くものである、と思われることが多いですが、「辞書引き学習」では、そのような先入観を裏切る、「知っていることばを調べる」ことから始めます。
たとえば、今日のお昼に食べた「スパゲティ」を引いてみてください。その説明を読むことで、今食べたばかりのおいしいスパゲティのことが「ことば」としても理解できるようになるでしょう。そして、たとえば「スパゲティ」を引いたお子さんは、その解説の文章から、「細長い」「西洋」「ソース」などの様々なことばを見つけ出して引くことができます。さらに、「ソース」を引いたお子さんは、「調味料」→「砂糖」→「さとうきび」……と引き続けて行くかもしれません。
そのような繰り返しから、少しずつ辞書に親しんでいただくということが、「辞書引き学習」の大きな特色の一つです。
「辞書引き学習」へのステップ(4)―調べたことばに付箋を貼る―
調べたことばを付箋に書き込んで辞書に貼っていくということも、「辞書引き学習」の大きな特色の一つです。
はじめのうちは、付箋には鉛筆で順番に番号をふっておき、そこに調べたことばを書き込んで、辞書のページの上のほうに貼っていくようにしましょう。すぐに辞書の上部に付箋がたくさん“立った”状態になります。これを繰り返していくと、見る間に付箋が貼り重ねられ、早いお子さまでは数カ月もすると、ブロッコリーのように上部が大きく膨らんだ辞書になります。
そのようにして貼られたたくさんの付箋は、お子さまにとって、自分が取り組んできたことの目に見える成果として映り、学びに対する自信にもつながってゆくでしょう。
「辞書引き学習」へのステップ(5)―とことん、ほめる―
「辞書引き学習」が成功するか否かは、先生方・保護者の方のサポートにも大きく依拠しています。お子さまの辞書に付箋が立ち始めたら、積極的にほめてあげるようにしましょう。お子さまも、ほめられることで、自分の取り組みが正しく評価されていることを実感し、さらに努力をしていこうという気持ちを強めていきます。
付箋でふくらんだ辞書は、多少見栄えはよくないかもしれませんし、かえって引きにくいのではないかと思われるかもしれません。しかし、お子さまにとってはそのような辞書こそが、自分の努力の証明であり、勲章なのです。決してあせらず、根気強く、お子さまの学ぶ気持ちを育ててゆけるよう、大らかに導いてあげてください。
「辞書引き学習」無限の可能性
このように「辞書引き学習」は、辞書という昔から私たちの身近にある手頃なツールを手掛かりにして、子どもたちのなかに学ぼうとする意欲を芽生えさせ、調べる方法を身に付けさせ、達成感を実感させる学習法です。
小学生向けの国語辞典は、このような「辞書引き学習」によって導き出されるお子さまの好奇心に十分に応えられるように編集されています。
辞書に収録された数万のことばは、そこから広がる無限の世界への入り口であるということもできるのです。
そして、国語辞典を引いて調べる楽しさを味わったお子さんは、たとえ1年生であったとしても、すぐに漢字辞典も難なく使いこなして漢字の学習に取り組んでいけるようになるでしょうし、より上級の辞書を調べるようになったり、辞書の枠も越えて、図鑑や百科事典・インターネットなど様々な場で、自らすす<んで学んでいこうとするようにもなるでしょう。
そのような取り組みのなかで、お子さま自身の個性や好奇心の向かう方向もだんだんと定まり、学習に必要な集中力も養なわれることが期待できます。
「辞書引き学習」は、そのような無限の可能性を秘めた画期的な学習法です。
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深谷先生プロフィール
深谷圭助(ふかや・けいすけ)
1965年生まれ。愛知教育大学卒業。名古屋大学大学院博士後期課程修了。博士(教育学)。
1989年愛知県刈谷市立亀城小学校に着任。国語辞典を学校生活のさまざまな場面で取り入れることで、児童が主体的に学ぶ指導法(辞書引き学習)を展開。この実践を『小学校1年で国語辞典を使えるようにする30の方法』(明治図書)にまとめ、教育界の注目の的に。
2005年立命館小学校の設置メンバーとなり、06年4月から同校教頭、08年4月には校長に就任。辞書引き学習の普及にと、校内だけでなく全国各地を飛び回りながら、学習法のさらなる向上のため、現在は中部大学准教授として研究活動に没頭する毎日。
おもな著書に『7歳から「辞書」を引いて頭をきたえる』(すばる舎)、『辞典・資料がよくわかる事典―読んでおもしろい もっと楽しくなる調べ方のコツ』(PHP研究所)、「辞書引き学習自学ドリル」シリーズ(MCプレス)などがある。