2017年の選評
3. SNS発のことばが上位に
「忖度」の存在感があまりにも大きかったため、2位以下の順位を確定する作業は難航しました。「忖度」に比べれば、どれかが特に突出したということがなかった、というのが率直な印象です。
そうした中で、「上位に来るのが順当だ」と考えられたのが、SNSを中心に広まったと考えられるいくつかのことばです。
2位の「インフルエンサー」は、「インフルエンス」(影響)と「~する人」を表す「-er」を合わせた英語から来ています。とりわけ、SNSで発言力があり、他人の行動、特に消費行動に影響を与える人物を指します。情報発信の主体が、マスメディアだけでなく個人に広がっていることを象徴することばです。
2位 インフルエンサー
『三省堂現代新国語辞典』風
インフルエンサー 〈名〉[influencer]経済・流行・価値観などに関して、多くのひとびとに強い影響を持つ人物。特に、インターネットなどのメディアを通して購買活動に大きな影響を与える人を言う。「―マーケティング」
「グーグルトレンド」の検索数データを見ると、この数年、英語でも「influencer」の使用頻度が高くなっています。日本語の「インフルエンサー」はどうかというと、特に今年、急速に一般化した観があります。主な要因として、アイドルグループの乃木坂46の「インフルエンサー」という歌がヒットしたことが挙げられます。
この歌の内容は、「好きな相手が自分に影響を与えている」というもので、必ずしもSNSとは関係がありません。でも、この標題がネットのインフルエンサーを踏まえていることは明らかです。今年、この歌のヒットとともに、「インフルエンサー」という時代を象徴することばが一般化したと見ておきます。
3位の「パワーワード」に関しては、「ツイッターを中心に確実に今年広まった気がする」といった投稿者の声が多く寄せられました。このことばは、前々回(第1回)の「今年の新語2015」の時から投稿がありましたが、前回・今回と投稿数が大幅に増えました。多くの人の関心を引くことばになっています。
3位 パワーワード
『三省堂国語辞典』風
パワー ワード〔power word〕(名)①説得力のある ことば。②表現が異様で、強烈(キョウレツ)な印象のある ことば。パワワ〔俗〕。〔二〇一〇年代に広まった用法〕
「パワーワード」とは、文字どおり「力強いことば」ですが、SNSでは特に、表現が異様で強烈な印象のあることばを指します。投稿者が示してくれた例としては、「知り合う前に会いに来るなよ」(アニメ「君の名は。」のせりふ)、「ストロベリーチーズチョコレートピザ」などがありました。以前からある例を挙げるなら、「学級崩壊」「名ばかり管理職」などもパワーワードと言えるでしょう。
自分の発言をSNSで広めるためには、まずは目を止めてもらうことが必要です。いきおい、誇張した表現、強烈な表現が多用されます。人目を引く表現を考えることに誰もが熱中しはじめた結果、「パワーワード」という用語が広まりました。「パワワ」という略称も生まれており、このことばの定着の度合いをうかがわせます。
やや先走りますが、5位の「フェイクニュース」、6位の「草」も、SNS専用ではないにせよ、その界隈でよくお目にかかることばです。「今年の新語」は、SNS用語だけを偏重するつもりはありません。それでも、今回はその方面のことばが多くランクインしました。それだけSNSが無視できなくなっているのです。