ホトトギス新歳時記 第三版

定価
4,620円
(本体 4,200円+税10%)
判型
A6変型判
ページ数
1,040ページ
ISBN
978-4-385-34275-7
  • 改訂履歴
    1986年5月30日
    初版 発行
    1996年11月1日
    改訂版 発行
    2010年6月1日
    第三版 発行

俳句愛好家必備の友

稲畑汀子 編

  • 季題は季節の推移に従って春夏秋冬に大別し、一月から十二月の月別に配列。
  • 季題解説は句作に役立つよう事実に即して簡潔に記述。
  • 第三版では新季題30を加え、季題2,626、例句約16,100(作者約4,200)を収載。
  • 巻末の五十音順季題(傍題を含む)索引には季節と月別も明示。
  • 大きな文字で読みやすい、大活字版も同時発売!

ここは普通版のページです。同じ内容で他の大きさ・装丁のものがあります。

特長

さらに詳しい内容をご紹介

ケースの中身(普通版/革装版/大字版)

「ホトトギス新歳時記 第三版」の内容より

特徴

豊富な季題2,626を収録

俳句の根本要素をなす季題については、高浜虚子の季題観を踏襲し、文学的価値の高い季題を選択。また、時代の変化とともに現われ、詩として諷詠するに足る季題も収録。第三版では新たに30の新季題を追加して、季題2,626、傍題を含めて5,747を収録。

句作に便利な配列

句作の便をはかり、季題は、春夏秋冬に大別し、季節の推移に従って一月から十二月の月別に配列した。

例句約16,100を収載

例句は、実作の参考になるよう現代の新しい句を中心に約16,100(作者約4,200名)を収載。また古句や子規などの名句も収録した一大アンソロジー。

簡潔な解説

句作上役立つように、事実に即して簡潔に解説。特に行事関係は詳細に記述。解説文は新仮名遣いを原則とした。カットも豊富に収録。

検索に、兼題俳句に便利な五十音索引

巻末に全季題(傍題も含む)を網羅した五十音索引を収め、季節と月別も明示。


第三版に際して

 『ホトトギス新歳時記』の改訂版が出版されてから十四年の歳月が経った。この間は読者からご指摘頂くと真摯に検討し、訂正すべきは訂正して来た歳月であった。  この度、第三版を出版するに当たり、読者からの希望のあって追加すべき新季題を加え、例句の追加、差し替えなどをすることになった。特に例句の差し替えは慎重にした。例句として残したい俳句ばかりで、追加するのは簡単であるが、差し替えで削除しなければならないときが一番つらかった。ページの遣り繰りのためにどうしても削除しなければならない句もあったがお許し願いたい。  第三版には三十の新季題を追加した。新季題として登録する条件としては良い例句が必要であった。 新季題は次の三十である。 一月…初景色、淑気、凍滝。 二月…春の霜、金縷梅、春一番。 三月…斑雪、春祭、春障子。 四月…春の闇、春陰、菜種梅雨、昭和の日、桜蘂降る。 五月…ラベンダー、茅花流し。 六月…山椒魚、やませ、父の日。 七月…夕菅、ナイター、海の日。 八月…終戦の日。 九月…無し。 十月…秋思、鷹渡る、時代祭、檸檬、初鴨。 十一月…朴落葉。 十二月…数へ日。  『ホトトギス新歳時記』第三版を編むに際して、これまで編集委員としてご協力頂いた深見けん二、今井千鶴子、松尾緑富各氏、それに若い世代の今井肖子、稲畑廣太郎各氏が参加し、加えて野分会の方々が季題解説の執筆などに協力してくれたことは有難かった。総責任者として私稲畑汀子も参加し検討してきた。造本では横長の形を継承していくのは困難になるとのご指摘を三省堂から受けたが、今回はその形を継承して頂けるとのことになってほっとした。  ご協力頂いた各氏に感謝申し上げ、三省堂の増田正司氏には今回もお世話になった。    平成二十二年二月吉日(虚子生誕記念の日)

稲畑汀子


序(初版)

 虚子編『新歳時記』(三省堂刊)が世の出たのは、昭和九年十一月であるので、はや半世紀が経過したことになる。その間自然の営みは変わっていないが、人々の暮らしは大いに変わったというべきであろう。歳時記の季題の中にもすでにほとんど行われなくなったものや、全くその姿を消してしまったものが少なくない。一方、五十年前には存在すらしていなかったものの中で今日季題とするにふさわしいまでに人々の生活に深く関わっているものもある。  これらの時代の変化に対して虚子編『新歳時記』は昭和十五年、同二十六年の二度にわたって小改訂を行ったのみであった。  このような事情から父高浜年尾は、昭和五十五年ホトトギスが刊行一千号を迎えるにあたり、その記念事業の一つとして歳時記の大改訂を企画したが実行に移さぬままに冥界の人となった。  一方、版元である三省堂は昭和五十六年、創業百年を迎えるにあたっての記念出版として虚子編『新歳時記』の改訂、あるいは姉妹編としての「新しい歳時記」の刊行を強く希望してきたので、私は父の遺志を継ぐ意味もあって本書の出版に踏み切ったのである。  当初は『新歳時記』の全面的な改訂をとも考えたが、虚子編『新歳時記』はやや時代に合わぬ面があるとは言え、古今の名著であることを鑑み、絶版とせず、新たな一書を編み『ホトトギス新歳時記』として出版することにした。両者共に持ち味を生かし句作の助けとなるよう意図したつもりである。従って本書については今後も時代の変化に合わせて改訂を繰り返していくつもりである。  編集方針としては虚子編『新歳時記』におよそ倣っているが若干について以下に触れておこう。

季題の取捨

 虚子編『新歳時記』は季題の取捨ということにとくに意を用いていた。そして取捨の方針として以下の五条を謳っている。  ①俳句の季題として詩あるものを採り、然らざるものは捨てる。  ②現在行はれてゐるゐないに不拘、詩として諷詠するに足る季題は入れる。  ③世間では重きをなさぬ行事の題でも詩趣あるものは取る。  ④語調の悪いものや感じの悪いもの、冗長で句作に不便なものは改め或は捨てる。  ⑤選集に入選して居る類の題でも季題として重要でないものは削り、新題も詩題とするに足るものは採択する。  ここに述べられていることは虚子の季題観を端的に表わしており、要は文学的な価値のある季題を選ぶということである。  そこで本書においてもこの方針で臨んだわけであるが、やや具体的に示せば、  ①虚子編『新歳時記』に収録されている季題はそのほとんどを採用した。  ②ただし一題としての価値の少なくなったと思われるものは適宜傍題として統合した。  ③季題として近年定着してきたと思われるものを新たに加えた。  ということになろう。なお③の例として従来虚子編『新歳時記』に収載されていず、虚子編『季寄せ』に追加されてきたものがかなりあるので、まずこの中より取捨選択し、さらに最近時代の変化とともに現れた新しい季題もいくつか採用した。新季題はおよそ二百余に及ぶ。この場合も、あくまで詩として諷詠するに足るという観点から選んだので、世に行われている他の歳時記に収録されていて本書に載せられていないものがあるのは当然である。

四季の区別

 四季の区分については明治時代、それまでの太陰暦に代わって太陽暦が採用されてから月との関係が変わり幾つかの矛盾が生じた。例えば、春であった新年が一月となって寒の前となり盆が七月の暑中となった類である。  しかし、これらはその後の生活の中にいろいろの形で定着して来ており、俳句では立春、立夏、立秋、立冬を各季の初めとする陰陽五行説を採用し、月でいう場合、その大部分が所属している、二、三、四月を春、五、六、七月を夏、八、九、十月を秋、十一、十二、一月を冬とするのである。  この五行説による区分は中国における季節感を基本とするのであるが、おおむねわが国にもあてはまっているようである。  ところで春を二、三、四月としてみると、月名の異称である「睦月」「如月」「弥生」というのが感じとしてそれぞれに対応することとなり、五、六、七月は「卯月」「皐月」「水無月」となった。したがって十二月は「霜月」にあたるわけであるが、「師走」という異称も捨てがたく、結果として十二月に「霜月」と「師走」を入れることとした。なお、このことは虚子編『新歳時記』を踏襲したまでである。

季の決定

 季の決定は歳時記にとってまことに重要な問題であるが、世に行われている多くの歳時記が必ずしも統一されていない。  本書においては虚子編『新歳時記』を踏まえ種々検討を加えたが、その主張は「あくまで文学的見地から季題個々について、事実、感じ、伝統等の重きをなすものに従って決定」するというものである。したがって理屈の上からも、事実とややくいちがう部分のあるのは虚子自身の指摘するとおりである。  例えば、牡丹より藤は遅いにかかわらず、牡丹を夏、藤を春とすること。西瓜や蜻蛉はむしろ夏が多いのに秋とすること。七夕は陽暦では夏であるのに陰暦の一と月遅れとして秋とし、端午も陽暦では立夏前であるのに夏としたことなどである。  しかし、駒鳥は従来三月であったが五月以降でなければ日本に渡来しないということで六月に配列したごとく、事実や文献の調査、旧季題の歴史的研究等により、明らかになった事柄に則して改めたものもある。  なお、時代の変遷の中で、従来の『新歳時記』とは異なった季へ収めた季題もあり、その一例が「運動会」である。これは従来春秋二回の運動会のうち春季をその代表的なものと考えて「春」の部に属させていたものであるが、昭和三十九年の東京オリンピック以後、十月十日が体育の日に定められたことも手伝って、近年では秋に行われるものが圧倒的に多く、結果としては秋季の季題とせざるを得ない現状となっているのである。  また、行事についても若干の移動があった。例えば「奈良の山焼」は現在一月十五日に行われているので二月から一月へ移した。また「薪能」はその起源である奈良興福寺の薪能が現在五月十一、十二日に行われるので、五月、夏に移した。これは虚子編『新歳時記』の編纂されたときに廃絶していた興福寺法会中のものが復活したことによる。詳しくは解説文を読んでいただきたい。  また古人の忌日などについては陰暦の気分が強いので陰暦(ほぼ一と月遅れとして)で扱ったが、現在陽暦に直して行事が行われているものについては実際の行事に合わせた。例えば「業平忌」は陰暦五月二十八日であるので季節感としては現在の六月にすべきところであるが、陽暦の五月二十八日に実際の「業平忌」が行われているのでこれに従った。という類である。

季題の配列

 季題の配列についても虚子編『新歳時記』を踏襲した。すなわち、世に多く出回っている歳時記のごとく、季題を「天文」「地理」「人事」「動物」「植物」に分類することをせず、すべての季題を十二か月の季節の推移に従って配列したのである。  この方法によると同じ春の季節の中にあっても海苔(植物)と海苔舟(人事)が全く別のページに分かれて解説してあるという不便が解消されるわけである。実際に春の海辺に出てみれば「海苔」も「海苔舟」も同時に目にされるわけで、解説も同じ部分でなされているのは当然のことなのである。  これはあくまでも作句の便ということに重きを置いたためである。  また、南北に細長い日本の国土を考えるとき季節の遅速は必ずしも一様でないことは当然である。そこで一つ中心点というか基準点を設ける必要があり、古い歳時記ではそれが京都であったが、虚子編『新歳時記』では東京が基準となった。これについては本書でも東京の季節の推移を一応基準として考えた。  季節、月の中でもどこに配列するかということについては、そのものの感じが最も強調される季節に定めた。従ってものによっては出始め、すなわち走りを重んじたものもあれば、最も多く出回るころ、すなわち旬を重んじたものもある。  なお、やや別の次元の問題であるが、立春、立夏、立秋、立冬を四季の初めとしているので、例えば五月でも立夏前の「メーデー」「憲法記念日」などは四月の末に連ねてある。月としての見方より季節としての見方を重んじたためで、同様の例は他の季節の「ゆきあい」の中にも何例かがある。

解説

 あくまでも実作上役に立つようにと心がけた。そのため必要以上に細かな記述はあえて避けた。季題は詩の題材であり、博物学的な知識に偏ることを意識的に避けたためでもある。なお、幾つかの季題にはカットを添えた。

例句

 例句は実作の参考となる句をと考慮し、できるだけ新しい例句を採用した。これは虚子編『新歳時記』以後の句を多く載せることによって、長い歴史を持つホトトギスのアンソロジーとしての完成度を高めることを期したからである。具体的には、虚子編『新歳時記』中の例句、『ホトトギス雑詠選集』、および原則として一千号までの「ホトトギス」雑詠欄から選んだ。なお、高浜虚子、高浜年尾、稲畑汀子の三主宰、および星野立子については別に選んだ。  本書を出版するために、とくに深川正一郎氏をはじめとし、清崎敏郎氏、後藤比奈夫氏ほか多くのホトトギス俳人諸氏の力をお借りした。また、今井千鶴子、柴原保佳、野村久雄、橋川忠夫、深見けん二、藤松遊子、三村純也、本井英、松尾緑富氏等、歳時記委員の方々の熱意と三省堂出版局の亀井竜雄氏の御助力には深く感謝している。諸氏の献身的なお力添えがなければ本書は成らなかったであろう。    昭和六十一年一月十二日

稲畑汀子


凡例

一、本書を大きく春、夏、秋、冬の四季に分け、且つ、一月から初めて十二月に終わるように十二か月に細分した。結果として冬が巻頭の一月と巻末の十一、十二月に分かれた。 一、見出し季題の右側には「旧仮名」で、左側には「新仮名」でルビを施した。 一、見出し季題の下に[三] の記号を挿入したものは、その月に限らず、同季の三月にわたるということを指示している。これは実際は二月程度にしかわたらぬものを含んでいるが、つまり、一月には限らぬという程度である。また、花や実などの中にはこの他にも事実上は二月以上にわたるものがあるであろう。 一、解説文は新仮名遣いを原則とした。ただし、季題、例句は旧仮名遣いで記した。 一、漢字は新字体を原則とした。ただし、固有名詞等はその限りではない。 一、カタカナによる外来語表記に関しては、季題についても、現在普通に通用している表記法に従った。 一、解説文中や末尾にゴシック文字で記したものは、季題の異称、季題の活用語、あるいは季題の傍題等である。 一、例句はおよその時代順に並べた。たいがいの作者は姓および俳号で示したが、古句についてはその限りではない。 一、巻末に五十音索引を付した。これには見出し季題(ゴシック文字)に限らず傍題等もすべて収めてある。配列は新仮名遣いの五十音順である。