現代ジャーナリズム事典

定価
4,950円
(本体 4,500円+税10%)
判型
A5判
ページ数
384ページ
ISBN
978-4-385-15108-3

いまを生き、いまを知るための待望の事典。

武田徹、藤田真文、山田健太 監修

  • 主義・思想・理論・運動・表現・権利・制度・事件・報道・規制・団体等、今日のジャーナリズムに関わる項目約700を収録。

  • 「語義」(「背景」「歴史」)、「実例」(「影響」「特色」)、そして「参考文献」の流れで丁寧に解説。

  • 事項・人名索引、判例一覧付き。

特長

さらに詳しい内容をご紹介

「現代ジャーナリズム事典」の内容より

はじめに

 いま、ジャーナリズムと社会を巡る状況は、大きく変化しつつあります。  製造業を中心とする長期正規雇用体制を前提に維持されていた戦後日本型の社会システムは、グローバル経済の進展や、少子高齢化による国内人口構成の変化など多くの要因の重なりにより、いまや著しく安定性を失いつつあります。  こうして社会システムが明らかな機能不全状態を呈しているのに、それに見合う抜本的な改革を打ち出せない政治に対する反発は強まっています。例えば未曾有の災害をもたらした3・11後初の国政選挙だったにもかかわらず、2012年末の衆院選が極めて低い投票率しか得られなかったことは歴史的事実として銘記すべきでしょう。その後の参院選や地方選挙でも同様の傾向はうかがえ、それは選挙制度ではもはや社会を変えられないという諦念が蔓延しつつある事情を如実に物語っているのではないでしょうか。  このような社会情勢の中で、「選挙」とは別の回路を通じて社会に対するガバナンス機能を発揮すべきジャーナリズムの役割は、今まで以上に重大となっています。にもかかわらず、ソーシャルメディアを中心に厳しい批判がマスメディア・ジャーナリズムに対してなされ、ここでもまた強い不信感が表明されています。  そうした「異議申立て」については個々に内容を精査すべきでしょう。報道の信頼性を根本から揺るがすような誤報や、マスメディア組織の中で不祥事が繰り返されているのは紛れもない事実であり、改善は喫緊の課題です。報道によって人権侵害などの被害が発生していないか、報道機関自らが、そして市民社会が、注意深くチェックする必要性は増えることすらあれ、減ることはありません。   加えて、ジャーナリズムが置かれた環境それ自体も大きく変わりつつあります。一方で「公益」の名の下に、言論表現の自由の制約を求める右派勢力の動きがあります。他方、デジタル技術は報道の現場をすっかり様変わりさせました。インターネットの普及は「放送と通信の融合」だけに留まらない、大きな地殻変動をジャーナリズムの世界にもたらしつつあります。先に挙げたソーシャルメディアの登場も、ジャーナリズム界の地図を大きく書き換える可能性をはらんでいます。  このような時期にこそ、ジャーナリズムの来し方を省み、ジャーナリズムの行く末を検討する上で役立つ事典が求められている、私たちはそう考えました。 私たちは「現在」がジャーナリズムにとって「危機の時期」であり、「変革を求められている時期」であるという認識をもっています。いま、ジャーナリズムは社会システムの変化を確かに見定め、伝えるべきことを正しく伝えているのか。それを改めて検証することでジャーナリズムは信頼を回復し、市民社会の中で孤立することなく自らの社会的使命を果たして、言論活動を守る闘いに臨む必要が生じています。 マスメディア組織の内発的改革の担い手や、新世代のジャーナリストたることを志望する人たちが、こうした危機的状況に臨む際に必要となるであろう語彙や概念についての知識を提供したい。そしてソーシャルメディアを通じて「相互に発信しあい、検証しあう市民社会」を実現してゆく時に求められるジャーナリズムリテラシーを、職業ジャーナリストに限らず多くの人が手に入れられるよう手助けしたい、そんな考えで私たちはこの事典を編みました。 ジャーナリスト、メディア関係者、研究者、学生、そして日常的にメディアに接し、情報を受けとめ、発信している多くの市民の皆さんにとって、『現代ジャーナリズム事典』が、いまを生き、いまを知るために役立つことを願ってやみません。 監修者一同

2014年4月1日


凡例

1.本事典の構成

【本文】 主として今日のジャーナリズムに関わる項目(約700)を、五十音順に収録した。内容は主義・思想・倫理・原則・理論・運動・表現・権利・裁判・制度・協定・事件・報道・規制・団体・機関・協会等、多岐にわたる。 【付録】 判例一覧 *収録項目に関連し、参照すべき判例を一覧にした。 【索引】 事項項目/人名項目

2.見出しについて

見出しは太字であらわし、(    )に読みをひらがなで示した。

3.配列について

見出しの配列は、現代仮名遣いによる五十音順(同一のかなの中では清音、濁音、半濁音の順。同音の場合は、かたかな、ひらがな、漢字の順)に配列した。なお、長音「ー」は直前の母音に置き換えて配列した。

4.本文表記について

・解説は常用漢字・現代仮名遣いとし、「である調」を用いた。引用文の仮名遣いは、原則として原文に従った。なお、難解な人名・用語・書名、難読語などには適宜、振り仮名を付けた。 ・外国語・外来語の原音における「V」音は原則としてバビブベボであらわした。 ・数字は洋数字を使い、原則として十百千の単位語は省略した。ただし、解説中の二十代、数千人といった場合はこの限りではない。 ・年代表記は原則として西暦とし、同世紀の記述が繰り返される場合、下2桁で示した。 [例] …1956年、○○○が成立し、85年には…。2012年に…となり、また1988年の…  ・外国人人名については、できるだけ原語に近い読みに従い、原則として名は略号を使用した。 [例] W・リップマン *冤罪・実名報道に関連する人権に配慮したが、事典としての統一上、人名については敬称を省略した。

5.解説について

・「用語」関連項目等は、原則、・or・からなる。 ・「事件」関連項目等は、原則、・or・からなる。 ・「その他」の項目等は、原則、・or・からなる。 *特に注目すべき項目は、小見出しにしばられず詳しい解説を加えた。 *は、原則、刊行順に並べた。

6.使用記号等について

・原則、書名は『   』、作品名、雑誌名は「   」、解説中の引用は「   」で示した。なお、では、雑誌論文名を「   」で紹介し、雑誌名は『   』で示した。

7.署名について

各項目の解説末尾に執筆者名を[      ]で示した。


この事典の使い方~とりわけ学生の皆さんへ~

■索引を活用してください。 例えば1つの事件名にしてもいろいろな通称があります。そこで、項目としては1つでも、索引では一般に使用されている名称を可能な限り拾い、的確な解説にたどり着けるようにしています。したがって、本文の項目になくても諦めず、想像される項目名を索引で探してみてください。 ■人名は索引で探してください。 この事典には、「人名項目」がありません。そのかわり特に人名索引を設け、関連する事項項目で、その人の活躍、背景などがわかるようにしました。 ■項目の中には特大解説があります。 項目はその長さによって、小・中・大項目に分かれており、その目安は、1段の半分くらい、1段分、1ページ分となっています。ただしそれ以外に、およそ2ページを割いた「特大解説」をいくつか設けています。直接、当該事項項目を引くことは少ないかもしれませんが、他の項目を理解する上で、そして何より「現代」の「ジャーナリズム」状況を知る上で欠かせない解説となっています。 [例] 海外のメディア/国際的なニュースの流れ/個人情報/災害報道/ジェンダーとメディア/ジャーナリズム関連の表彰制度/ジャーナリズム教育/弱者と報道/戦時下の情報統制/戦争報道/占領期の表現活動/日米同盟下の報道/ニュースの言説/報道被害/保守とリベラル/明治期の新聞/メディアコングロマリット/メディアと権力/メディアリテラシー ■メディア判例はまとめて巻末にあります。 本文解説中には、数多くの判例が出てきます。ただし、詳しく知りたいと思う場合に、それだけでは少し不便かと思います。そこで巻末に判例一覧を作り、その判決文が掲載されている判例集を付けました。判決文本文を探す場合の手がかりにしてください。

監修・編集委員

[監  修]武田徹(恵泉女学園大学)/藤田真文(法政大学)/山田健太(専修大学) [編集委員]小黒純(同志社大学)/川岸令和(早稲田大学)/土屋礼子(早稲田大学)/林香里(東京大学)/水島久光(東海大学)

執筆者一覧

秋山幹男、浅利光昭、阿部圭介、井川充雄、伊藤高史、伊藤昌亮、稲葉一将、茨木正治、岩崎貞明、大井眞二、大石裕、大林啓吾、岡本峰子、小熊英二、小倉一志、小黒純、小田光康、片山等、加藤徹郎、金山勉、紙谷雅子、烏谷昌幸、川上隆志、川岸令和、川崎賢子、河崎吉紀、川本俊三、北出真紀恵、喜田村洋一、木村幹夫、黒田勇、後藤登、小林宗之、駒村圭吾、坂本衛、佐藤卓己、四方由美、柴野京子、清水真、章 蓉、菅沼堅吾、鈴木秀美、砂川浩慶、曽我部真裕、高田昌幸、高橋弘司、武田徹、竹田昌弘、佃克彦、津田正太郎、土屋礼子、鄭佳月、徳山喜雄、中村美子、難波功士、西田善行、西土彰一郎、丹羽美之、野口武悟、長谷川一、畑仲哲雄、服部桂、濱野智史、林香里、林恭一、原 真、弘中惇一郎、福井健策、藤代裕之、藤田真文、星野渉、堀木卓也、前泊博盛、丸山敦裕、三木由希子、水越伸、水島久光、毛利透、本橋春紀、諸橋泰樹、柳澤伸司、山口寿一、山口仁、山田健太、山中茂樹、山本龍彦、山本博史、横大道聡、林怡蕿[五十音順]

主要項目一覧(抜粋)

海外のメディア-活字/海外のメディア-放送/国際的なニュースの流れ/個人情報/災害報道/ジェンダーとメディア/ジャーナリズム関連の表彰制度/ジャーナリズム教育/弱者と報道/戦時下の情報統制/戦争報道/占領期の表現活動/日米同盟下の報道/ニュースの言説/報道被害/保守とリベラル/明治期の新聞/メディアコングロマリット/メディアと権力/メディアリテラシー

愛国心/新しい歴史教科書をつくる会/インターネット/記者/記者クラブ/客観報道/検閲/言論・出版・表現の自由/広告表現/広報/雑誌ジャーナリズム/差別表現(差別語)/事件報道/自主規制/ジャーナリスト/ジャーナリズム/取材/取材源の秘匿/取材・報道の自由/出版/少年事件報道/情報公開/知る権利(自由)/新聞 新聞社(新聞産業)/世論/著作権/通信社/ナショナリズム/ニュース/ニュースキャスター/発表ジャーナリズム/プライバシー侵害/編集/放送/放送法/報道/報道機関/報道倫理/民主主義/名誉毀損・信用毀損/メディア/有害情報(図書)/有事法制/ルポルタージュ/猥褻

アクセス(権)/イエロー・ジャーナリズム/裏付け取材(事件報道)/映画/映画会社/衛星放送/エスニックメディア/オフレコ/お詫びと訂正/隠し撮り/可謬主義/キャンペーン/憲法修正1条[アメリカ]/公共放送[アメリカ]/広告代理店(広告会社)/皇室報道/公文書管理法・条例/国益/国家の秘密/誤報/コミュニケーション/コンテンツ規制/コンプライアンス/サイバースペース/再販制度/CATV/CM/自主規制制度[出版]/自主規制制度[新聞]/自主規制制度[放送]/市場原理主義/事前差止/思想・信条の自由/視聴率/実名報道/紙面制作/写真(フォト)ジャーナリズム/主観報道/取材拒否/出版社(出版産業)/出版流通/守秘義務/肖像権/情報格差/情報化社会/情報倫理/職能団体/スキャンダリズム/スポーツジャーナリズム/政局報道/青少年保護(育成)条例/政党新聞/政府公報/整理部/セキュリティ/選挙報道(評論の自由)/ソーシャルメディア/タブー/多様性・多元性/知的財産権/調査報道/通信の秘密/テレビ放送/電波法/ドキュメンタリー/匿名報道/図書館の自由/内部的自由/日本放送協会(NHK)/ニュージャーナリズム/ニュースバリュー/ニューメディア/捏造/ノンフィクション/ハードとソフトの分離・一致/媒体責任/番組制作・演出/番組制作会社・プロダクション/番組編集の自由/犯人視報道/反論権/東日本大震災/被差別部落/秘密保護法制/ファシズム/フィルタリング/フェミニズム/覆面取材・潜入取材/不正アクセス禁止法/フリーランス(フリージャーナリスト)/プレス・カウンシル/プロパイダ責任(制限)法/プロパガンダ/偏向報道/編集権/編集者/放送局(放送産業)/放送ジャーナリズム/報道協定/ポータルサイト/マスメディア集中排除原則/ミニコミ(誌)/明治憲法(大日本帝国憲法)/免許/ラジオ放送/倫理綱領/労働組合・労働争議/湾岸戦争