コンサイス外国地名事典 第3版

品切れ
定価
5,280円
(本体 4,800円+税10%)
判型
B6変型判
ページ数
1,280ページ
ISBN
4-385-15338-8
寸法
17.7×11.7cm
  • 改訂履歴
    1977年7月1日
    初版 発行
    1985年12月10日
    改訂版 発行
    1998年4月20日
    第3版 発行

最新のデータに基づき、ソ連崩壊後の世界の地名の変化を網羅したハンディな世界地名事典。

谷岡武雄 監修/三省堂編修所 編

  • 最新のデータに基づき、ソ連崩壊後の世界の地名の変化を網羅したハンディな世界地名事典。
  • わが国最大の21,000項目を収録。マスコミなどで話題になった地名も気楽に調べられ、歴史や文学、エピソードなど興味深い記述もあり、読み物としても楽しい。
  • ラテン文字索引・漢字索引も完備。

特長

さらに詳しい内容をご紹介

「コンサイス外国地名事典」の内容より

『コンサイス外国地名事典 第3版』

谷岡武雄(たにおか・たけお 立命館大学名誉教授) 《自著自讃 小社PR誌「ぶっくれっと」No.130より》

 テラ・インコグニタ、知られざる大地、知られざる領域を次々と探検していく。これが人生である。知られざる大地は、私たち人間の知的好奇心をかきたてる。古代地中海世界では勇敢な航海者がテラ・インコグニタへ向けて次々と船出をしたし、大航海時代にも、そして現代においても、あらゆる困難を克服して探検が行われている。  私たちはいま世界大旅行時代に生きている。実際に旅立たない人でも、心の中でインナートリップを楽しんでいるのではないか。海外へ実際に、あるいは心の中で出かける場合の水先案内役を務める。という目的で『コンサイス外国地名事典』が出版されてすでに二十一年の歳月が流れた。その間に小改訂、大改訂を加えて、今春第3版が刊行されるに至ったのである。  進学・就職・結婚、あるいは事業計画の実行など、長い人生には勇気をもって決断する必要のあることが起きてくる。こういう折に、「さいは投げられた」のだ、思い切って「ルビコン川」を渡れと教えてくれた先輩がいる。ルビコン川と聞いて、さっそく『コンサイス外国地名事典』(以下『事典』と略す)を引いてみる。これには「ルビコーネ川」を見よとある。そして該当項目から、ルビコン川は英語名で、イタリア中北部を流れ、アドリア海に注ぐ川であることを知る。リミニの北西一六キロと記されているから『事典』でリミニの項目を引いたのち、実際にそこを訪れることができる。  なぜ「さいは投げられた」のか。こう叫んだのは古代ローマの勇将、カエサル(英語名ジュリアス・シーザー)である。ルビコーネ川は古代ローマ本国と西の植民地との境を北へ流れている。植民地から東の本国へ入る際には、この境で軍隊指揮権を放棄する決まりとなっていた。しかるに彼は紀元前四九年、遠征の留守中に権力を握ったポンペイウスを打倒するため、禁を犯して武装のままルビコーネ川を東へ渡り、ローマへ進軍して勝利を得た。短い地名記述の中に、このような興味深い歴史が記載されている。  そのうえ、こういう歴史的事件に触れるだけでなく、ルビコーネ川より西側の植民地であった地域では、古代ローマのケンチュリアとよばれる土地区画が今もなお明確に残ることが『事典』に記されており、実態調査のデータを生かしたことで『事典』の価値の高いことがわかる。アイウエオ順に配列された『事典』では最後の方のラ行から例をとったので、こんどは最初の方のア行からもう一つの例を得よう。  アーヘンはドイツ中西部で人口二四・六万(『事典第3版』)の鉱工業都市である。英語やオランダ語でアーケンと呼ぶのは理解しやすいが、フランス語でエクス・ラ・シャペルと言うのは、いったい何事かと問いたくなる。しかし、『事典』では古称がアクイ・グラニまたはアキス・クラーヌムとなっており、国によって現在の呼び名がたいそう違っていても、元は同じであることがわかる。アクイやアキスはラテン語のアクァと同じで水を意味しており、今でもアクァラングを身につけて水中に潜る人が多い。アーヘンは古代ローマ時代から温泉町として知られてきた。イギリス人のピーター・メールが著した『南仏プロヴァンスの十二か月』(池央耿訳、一九九三)がベストセラーとなって、にわかに若い日本人観光客が多くなったエクサン・プロバンスも、アクァに由来するエクスと言うから、同じく古い温泉町である。  古代からの温泉町であり、しかもフランク国王で、ローマ教皇から西ローマ皇帝の冠を授けられたカール大帝の都であったことを『事典』で知ると、どうしてもそこへ行ってみたくなる。『事典』では鉄道でケルンの西七〇キロとあるから行きやすい。九三六~一五三一年の間、神聖ローマ皇帝の載冠式がここアーヘンで行われたと記載されているので、見るべき所も多いに違いない。私は近年に再度この地を訪れ、遠征につぐ遠征で疲れたカール大帝も、首都に帰ったおりは温泉につかり、「いい湯だな」と言ったかも知れぬと思うと、ほほえましくなった。  今日、加盟国が十五か国にまで発展し、明年には共通通貨を採用するEUの原型は、カール大帝の帝国と範囲がほぼ同じであることに気付く。さらに、『コンサイス日本地名事典』にも取りあげられた京都府加茂町には名刹の浄瑠璃寺があり、そこから赤田川が北へ流れていること、兵庫県太子町の斑鳩寺の東側を、聖徳太子が開削したという灌漑用水路の赤井が流れていることを、私はアーヘンに来て思い起こした。赤井や赤田川のアカは赤色ではなくて、仏に供える水の閼伽を意味している。ラテン語のアクァはサンスクリット語のargya, arghaに由来する。この源流から東は日本まで流れて閼伽となった。こう見ると、アジア東端の日本における歴史の古い町と、ヨーロッパ西端の町とが水という言葉を通じてつながっていることがわかる。  『コンサイス外国地名事典』は『コンサイス日本地名事典』とともに、私たちの知的好奇心を大いに刺戟し、生活をますます楽しく、豊かなものとしてくれる。


凡例(一部、省略)

【見出し】

1.本書にいう「地名」とは、日本をのぞいた土地および地点の名称をさし、海域・海底地形をも含む。 建造物は原則として項目としないが、運河・ダム・鉱山などで、主要なものは地名に準じた。 2.見出し語は太字を用い、「かな」と「原綴り」で表した。 (1)「かな見出し」の表記は現地音に近いものとするが、日本で慣用的表記が一般的に用いられている場合は、適宜に調整した。なお、V音はヴを用いずに、バビブベボで表記した。     例:キューバ(慣用)………本項目       クバ(現地音)…………見よ項目 (2)ラテン文字以外の字母をもつ言語はラテン文字への転写を行い、旧ソ連圏の国の場合のみはラテン文字の後にキリル文字(ロシア文字)を記した。 (3)中国・朝鮮の地名は「ひらがな」と「漢字」とで表した。ただしカタカナ表記が一般的に用いられている地名は「カタカナ」のまま見出しとした。 中国については、見出し語の後に中国国務院教育部公布によるピンインの読みをカタカナで、次にピンインによる表記とウェード式による表記とを記した。さらにピンインとウェード式以外の表記があれば必要に応じてつけ加えた。 朝鮮については見出し語の後にハングル文字の読みをカタカナで、次にハングル文字のラテン文字への転写を記した。 3.見出し語に対して別表記がある場合には、必要に応じて見出し語の後の( )内に示した。 例:オクスフォード(オックスフォード) 4.見出し語の自然地名には山・川・島などの普通名詞を付した。なお、「カナ」と「原綴り」とが対応しない場合には見出し語の漢字部分を( )でくくった。 例:アルプス(山脈) Alps 5.原綴りがわかち書きをしている場合は、かな表記もわかち書きとし、ハイフンで結んだ。なお、リエゾン(連音)する場合はその限りでない。 例:アンコール-ワット Angkor Wat 6.見よ項目の場合は、=で同地名、→でその地名について説明のある見出し語地名に導いた。ただし、アクティブなリンクにはなっていない。

【見出し語の配列】

1.見出し語は五十音順に配列した。ただし長音「ー」を含む場合は、長音を無視して長音を含まない見出しの後に配列した。 2.見出し語は清音・濁音・半濁音の順に配列した。 3.見出し語のかな見出しが同音の場合は、ひらがな・カタカナの順に配列した。 4.かな見出しが同音で並ぶ場合は、国あるいは州・県名の五十音順とし、かな見出しの右肩に123の番号をつけた。

【本文】

1.各項目の解説では、前段で地名の位置・性格、異なる呼び名、交通手段、面積・人口などのデータを示した。後段では自然・産業・歴史・文化、地名に関するエピソード、地名の成り立ちや由来を解説した。 2.政体を表す共和国・王国などを省略した。なお、下記の国名は慣用に従い略記した。 アメリカ合衆国                アメリカ グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国 イギリス 大韓民国                   韓国 朝鮮民主主義人民共和国            北朝鮮 中華人民共和国                中国 3.見出し語に対する正しい呼び名、別の呼び名、古い呼び名は【 】でくくり、 【正称】 【別称】 【旧称】 【古称】などで示した。 4.年号は西暦で示し、年の字を省略した。同一世紀内の年号については、初出年号以外の上2桁を略し’をつけた。 5.文学作品名などは「 」内に、事件などは“ ” 内に記した。 6.解説文中に見出し語となっていない地名が出てきた場合は、原則として原綴りのラテン文字を記した。 7.地図上で見出し地名の所在を明確にするため、必要と思われる場合は緯度経度を解説文末[ ]内に示した。