「今年の新語2018」の選評

4. 「~み」の用法の拡大

3位 わかりみ

『三省堂現代新国語辞典』小野正弘先生

わかりみ〖分かりみ〗〈名〉理解できること。共感できること。また、その度合い。「━が深い・━がすごい」[最近の若い世代の言い方。接尾辞「み」は、本来、「赤み」「面白み」「新鮮み」のように、一部の形容詞・形容動詞の語幹にのみ付くものであったが、「つらみ」「尊み」のように、従来は「つらさ」「尊さ」と、接尾辞「さ」しか付かない形容詞語幹へも広がった。「分かりみ」は、それが、さらに動詞の連用名詞形にまで広がったもの]

3位の「わかりみ」については、選考過程で「ベストテンに選ぶのは今さら感がある」という意見もありました。というのも、この「今年の新語」のプレ企画に当たる「今年からの新語2014」で「~み」という接尾語を選んでいるからです。当時は「~み」を〈形容詞の語尾「…い」を、名詞のように言い終えることば〉と説明し、「ねむみ(=ねむい)」「おやつを横取りされてつらみ(=つらい)」の例を添えました。それから4年も経っている以上、「~み」を「今年の新語」とするのはいかがなものか、というわけです。  

ところが、この「~み」は、以前よりも用法が拡大しています。「眠い」「つらい」などの形容詞につくばかりではありません。「わかる」など動詞にもついて、「わかりみが深い」の形で「非常によくわかる」の意味を表すようになりました。4年前の「~み」の記述は、すでに現状に合わなくなっています。

「~み」はこのほか、「ラーメン食べたみが強い(=とても食べたい)」のように助動詞「たい」にも使うし、「髪型の武田鉄矢みがすごい(=武田鉄矢にすごく似ている)」のように名詞にも使います。  

こうした「~み」の用法拡大を確認しておく意味で、「わかりみ」が3位に選ばれました。  

4位 尊い

『三省堂国語辞典』飯間浩明先生

とうと・い[尊い]タフトイ(形)〔俗〕〔アイドル・キャラクターなどが〕とても美しくて、いとおしい(と思わせるようすだ)。「ヒデキ━!」〔二〇一〇年代半ばからの用法〕

4位の「尊い」は、「尊敬する気持ちを引き起こす」という意味ではありません。「『ラブライブ!』の千歌(ちか)ちゃん尊い……」というように、美しすぎて、いとおしいと思わせる様子を指します。  

用例は2014年頃から増えていますが、2018年になって、この意味の「尊い」がタイトルになった書籍が複数現れました。たとえば、『推しが尊すぎてしんどいのに語彙力がなさすぎてしんどい』という「腐女子語」の辞典はそのひとつです。こうしたことから、ランクインの好機と判断しました。

日本の古典文学では、自分が大切に思う人のことを「あが仏(=私の仏様)」と呼びます。「尊いアイドル」も、「自分が仏様のように思うアイドル」と考えれば、昔の日本人の捉え方を受け継いでいるとも言えます。  

5位 VTuber

『大辞林』編集部

ブイ チューバー3〖VTuber〗〔バーチャル-ユーチューバーの略〕動画配信サイトのユーチューブで、生身の人間に代わって投稿コンテンツに出演するコンピューター-グラフィックスのキャラクター。

5位の「VTuber」は、CGで描いた人の姿(アバター)で活動するユーチューバー(動画サイトのユーチューブで活動する人)のことです。読み方は「ブイチューバー」でいいでしょう。表記は、今のところはカタカナ書きよりもアルファベット書きのほうが多いようです。  

これまで、ユーチューバーは画面に自分の顔を出して話していました。それが、CGに自分の代わりをさせるという方法で、「顔出しNG」の人にも情報発信ができるようになりました。VTuberは今後、人々の情報発信の機会を格段に広げるでしょう。  

ネットの検索数の推移を見ると、「VTuber」ということばは2018年に入って一気に広まったと考えられます。用例も、それ以前は比較的少数です。「今年の新語」の資格は十分ということで、5位に入りました。

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