2016年の選評
1. イベントが支持されている実感
「今年の新語」のイベントも2年目を迎えました。1年目は、先が五里霧中でどうなるか分からないまま、「とにかく始めてみよう」と、思い切って船出をしました。2年目の今年は、少し余裕も出てきました。そして、「このイベントは支持されている」という確かな実感が湧いてきました。
その実感は、主に投稿数の増加から来ています。
2年前、選考委員の一人がツイッターで個人的に「今年からの新語2014」と題した試みを行いました。一過性でなく、この先も使われそうな新語を募集するものでした。この時はのべ100語あまりの応募がありました。ちなみに、ベストテンに入ったのは「ワンチャン」「それな」「あーね」「安定の」「自撮り」「プロジェクションマッピング」「NISA」「危険ドラッグ」「~み(『つらみ』など)」「ぽんこつ」でした。
その翌年、三省堂の主催で「今年の新語2015」が始まりました。やはり、一過性でない、今後の辞書に載ってもおかしくないものを集めようというのが趣旨です。寄せられた候補はのべ約700語。別ページにも示したように、「じわる」が大賞に選ばれ、以下「マイナンバー」「LGBT」「インバウンド」「ドローン」「着圧」「言(ゆ)うて」「爆音」「刺さる」「斜め上」がランクインしました。
そして、今年。同じ趣旨で2回目のイベントを行うことになりました。ウェブサイトおよびツイッターで投稿を呼びかけ、皆さんからお寄せいただいた候補は、最終的にのべ約2,800語。昨年の約4.2倍と、非常に増加しています。イベントの認知度が上がり、「面白い」と思ってくださる方が増えたということでしょう。
その年の新語や流行語を順位づけする試みは、ほかにも複数あります。その中で、私たちのイベントの特徴と言えるのは、なんと言っても「今後定着しそうなことば」を選んでいる点です。「そこがいいところだ」と、賛同の声も多くいただいています。
一過性のことばのランキングにも意義があるのは否定しません。後で振り返ったとき、それらのキーワードによって、当時の空気がありありとよみがえるからです。でも、私たちの狙いは別の所にあります。
昔はなかったことばや、ほとんど使われなかったことばが、いつの間にか広まって、日常語として当たり前に使われるようになる。「ことばの定着」という、この興味深い現象に光を当てたいと考えるのです。
「そう言えば、このことば、自分も今年あたりから特によく使うようになったな」
今回選ばれた10語の中に、あなたがそう感じることばは、はたして入っているでしょうか。以下、詳しく見ていくことにしましょう。