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「日本考古学事典」の内容より

刊行のことば

 わが国では、考古学は現在隆盛をきわめているかに見えます。たしかに今この学問の周辺には、日本の近代考古学百年の歴史のなかでは見られなかったほど多数の人たちが関心をもって集まっております。発掘調査もいたるところで絶えまなく実施されています。それらが新聞やテレビなどのマスメディアの視線を考古学に向けさせ、それがまた人々の関心をひきおこしています。考古学の周辺には、社会の関心と多量の情報とが過剰にまであふれています。

 そこでよく感じることがあります。もう少し適切なわかりやすい形で正確に調査や研究の成果に関する情報を提供できないものだろうか、ということです。それは、やさしい文章で書くことはもちろんですが、それだけではありません。やや固くいえば、現在の厖大な情報を分析するとき、新しい調査や研究への出発点にすること、簡潔にいえば、過去と未来を現在から展望する視点を明確にする必要がある、ということでしょう。われわれの考古学が現在おかれている学問的状況がいかに形成されてきたか、学術用語や学術上の概念の一つ一つについてそれを明確にしていくことは、現状を分析し、未来を展望するうえで、有効な、そして、不可欠な手続きでありましょう。この事典を企画するうえで、まずそれを願いました。(「内容見本」より)