現代詩大事典

定価
13,200円
(本体 12,000円+税10%)
判型
A5判
ページ数
832ページ
ISBN
978-4-385-15398-8

詩歌の潮流ここに完結。
三部作ついに完成!

安藤元雄、大岡信、中村稔 監修

  • 現代詩を網羅した人名約1,000人、事項約500!
  • 詩歌の世界が拡がる鑑賞詩約200!
  • 引きやすく調べやすい、五十音見出し!

特長

関連リンク

さらに詳しい内容をご紹介

「現代詩大事典」の内容より

発刊のことば

精細かつ厖大な内容を満載

大岡 信(監修者)

『現代詩大事典』がいよいよ刊行されることになった。私は一九三一年生まれだが、このような精細な内容を盛った現代詩事典が、自分の生涯のいつの日にか発刊されることがありうる、というようなことは、夢にも想い見ることはできなかった。 現代詩なるものは、生まれはしたものの、どのような経過をたどって成熟してゆくものか、およそ見当もつかないものとして、私のような人間には考えられていたのである。 しかし、現代詩は着々と大きく育ってきた。それを作る人々の数も、論じる人の数もふえてきた。現代詩が実験性や冒険性の同義語であるように考えられていた、かつての揺籃期の様相はだいぶ様変わりして、現代詩の作り手たちも、何ひとつ風変わりな仕事にたずさわってなどいない、と思うことが、普通のことになった。 現在ここに『現代詩大事典』と銘うって刊行されるのは、時代でいえば、明治、大正、昭和という、政治的にも社会的にも大きな激動を経験した近代日本をすべて包含し、その昭和時代を受け継いで、今も伸展しつつある平成時代をも結集した大事典である。 私一個のささやかな思い出をたどると、私は中学三年生の時、八月一五日に敗戦の日を迎えた。その当時のことは不思議なくらい鮮明に記憶に甦る。そのころを思い返しながら、私はこんなことを書いたことがある。「ぼくにとって、詩のはじまりは、結局この日以後のことであったのだと思う。『何かが決定的に失われることが、この世界には必ずあるのだ』という認識の獲得の日であったのだ。」(「わが前史」) そんな経験を経て、私は中学四年生になったとき、友人三人と一緒に、年長の友人のようだった二人の教師とともに「鬼の詞」と題するガリ版雑誌を発刊(八号まで)した。「焼跡の堀立小屋のような中学校の校舎で、日暮れにガリ版を刷った。リルケ、日本浪曼派、中村草田男、ドビュッシー、立原道造、そして子供っぽい天文学などがぼくらの中にロマンチックに変貌しながら住んでいた。」(第一詩集『記憶と現在』あとがき) 第一詩集のあとがきなどを引いたのは、日本の戦後のはじめのころ、詩を作る少年たちの周辺がどのような雰囲気だったかを、スナップ・ショット風に寸描しようと思ったからである。私たちは運よく空爆をまぬがれ、焼夷弾にも焼かれずに生き残ることができたので、現在にまで生存することができた。私に関して言えば、「鬼の詞」を一緒に作っていた他の仲間は全員とっくに鬼籍に入ってしまった。 私一個の貧しい経験をご披露したのは、第二次大戦の終わったころは、日本中どこでも、似たような少青年がいて、現代詩などという言葉は聞いたこともなく、こつこつと紙に字を書きしるし続けていた、ということを書いておきたいと思ったからである。 そんな経験を持つ私のような者にとっては、よくぞ私の生きているあいだに、このような精細かつ厖大な内容を満載した『現代詩大事典』が刊行されたものだと、嘆声とともに本書の誕生を祝福するばかりである。 2007年8月


推薦のことば

美しい詩歌のために

篠 弘(しの ひろし)

近代の詩人は、短歌から入った人が意外に多い。逆に詩から、短歌に専念した人も少なくない。恩師の空穂の『まひる野』も、善麿の『黄昏に』も詩歌集であり、詩を収める。きわめて詩と短歌は近接ジャンルであり、相互間の影響や交流も少なくない。人間の生存の哲理がもとめられる今世紀において、ともに美しい日本語の表現を競いあうにちがいない。この事典を通じて、詩人の豊饒な成果と、挑戦する現状を知りうることを期待したい。 (歌人)

短詩型文学の宝

鷹羽狩行(たかは しゅぎょう)

短歌・俳句・詩は総称して“短詩型文学”と呼ばれるが、それぞれ近くて遠い親戚である。資料を探すにもはるばる訪ねて行かねばならなかったが、既刊の『現代短歌大事典』『現代俳句大事典』、このたびの『現代詩大事典』によって三部作が完結し、すべてが分かることになった。これは快挙だ。 解説にしても、その歴史から代表作に到るまで大変行き届いている。詩人はもちろん、一般文芸愛好家にとっても便利この上ない大事典である。 (俳人)

大いなる船出

竹西寛子(たけにし ひろこ)

世界のすぐれた詩に教わってきたのは、言葉で人間を開くよろこびと、言葉で人の限りを知るつつしみである。心のさまを映し続けてきた詩の歴史は、もっとも具体的で象徴的な人間の歴史であろう。 戦後六十年を過ぎてようやく『現代詩大事典』の出版を見る。その分析と整理によき案内を待つこと久しかった戦後詩がとりわけ重く扱われているという。詩の戦後はすなわち日本語の、日本人の戦後。重荷満載の船出である。 (作家)


監修/編集委員

監修

安藤元雄(あんどう・もとお)

昭和9年、東京生まれ 明治大学名誉教授、詩集『水の中の歳月』『わがノルマンディー』、評論集『現代詩を読む』『フーガの技法』、翻訳『悪の華』他

安藤元雄(あんどう・もとお)

大岡信(おおおか・まこと)

昭和6年、静岡生まれ 詩集『記憶と現在』『大岡信詩集』、評論集『紀貫之』『蕩児の家系』『子規・虚子』『折々のうた』他

大岡信(おおおか・まこと)

中村稔(なかむら・みのる)

昭和2年、埼玉生まれ 詩集『無言歌』『鵜原抄』『羽虫の飛ぶ風景』、評論集『中原中也-言葉なき歌』『私の昭和史』他

中村稔(なかむら・みのる)

編集委員

大塚常樹(おおつか・つねき)

昭和30年、東京生まれ お茶の水女子大学教授、著書『宮沢賢治 心象の宇宙論』『宮沢賢治 心象の記号論』、共著『近現代詩を学ぶ人のために』他

大塚常樹(おおつか・つねき)

勝原晴希(かつはら・はるき)

昭和27年、兵庫生まれ 駒澤大学教授、共著『江戸文化の変容』、校注『正岡子規集』、編著『「日本詩人」と大正詩〈口語共同体〉の誕生』他

勝原晴希(かつはら・はるき)

國生雅子(こくしょう・まさこ)

昭和31年、鹿児島生まれ 福岡大学教授、編著『作家の自伝47 萩原朔太郎』、論文「北原白秋「雉ぐるま」贅注」「闇と光と-北原白秋「野晒」考-」他

國生雅子(こくしょう・まさこ)

澤 正宏(さわ・まさひろ)

昭和21年、鳥取生まれ 福島大学教授、著書『西脇順三郎の詩と詩論』、『詩の成り立つところ』、共編著『日本のシュールレアリスム』、共著『モダニズム研究』他

澤 正宏(さわ・まさひろ)

島村輝(しまむら・てる)

昭和32年、東京生まれ 女子美術大学教授、著書『臨界の近代日本文学』、共著『文学がもっと面白くなる-近代文学を読み解く33の扉』他

島村輝(しまむら・てる)

杉浦静(すぎうら・しずか)

昭和27年、茨城生まれ 大妻女子大学教授、著書『宮沢賢治 明滅する春と修羅』、共編著『新編 宮沢賢治歌集』『新校本 宮沢賢治全集』他

杉浦静(すぎうら・しずか)

宮崎真素美(みやざき・ますみ)

昭和39年、愛知生まれ 愛知県立大学教授、著書『鮎川信夫研究』、共著『言葉の文明開化』、『新日本古典文学大系 明治篇12 新体詩 聖書 讃美歌集』他

宮崎真素美(みやざき・ますみ)

和田博文(わだ・ひろふみ)

昭和29年、神奈川生まれ 東洋大学教授、著書『飛行の夢 1783~1945』『テクストのモダン都市』、共著『言語都市・ベルリン』『パリ・日本人の心象地図』他

和田博文(わだ・ひろふみ)


執筆者一覧

青木亮人/赤塚正幸/秋元裕子/浅田隆/渥美孝子/阿毛久芳/荒井裕樹/有光隆司/猪狩友一/池川敬司/池田誠/池田祐紀/石田仁志/乾口達司/井上洋子/井原あや/岩崎洋一郎/岩見幸恵/岩本晃代/上田正行/碓井雄一/内田友子/内堀弘/内堀瑞香/内海紀子/大沢正善/太田登/大塚常樹/大塚美保/奥山文幸/小澤次郎/小平麻衣子/影山恒男/梶尾文武/勝原晴希/加藤邦彦/加藤禎行/川勝麻里/川原塚瑞穂/菅聡子/神田祥子/北川扶生子/木股知史/金貞愛/國中治/九里順子/熊谷昭宏/久米依子/倉田容子/栗原敦/栗原飛宇馬/黒坂みちる/小泉京美/紅野謙介/河野龍也/古賀晴美/國生雅子/小関和弘/児玉朝子/小林幸夫/五本木千穂/坂井明彦/坂井健/榊祐一/坂口博/坂本正博/佐藤健一/佐藤淳一/沢豊彦/澤正宏/澤田由紀子/島村輝/真銅正宏/菅邦男/菅原真以子/杉浦静/杉本優/鈴木健司/鈴木貴宇/瀬尾育生/瀬崎圭二/高橋順子/高橋夏男/田口麻奈/田口道昭/竹内栄美子/武内佳代/竹田日出夫/竹松良明/竹本寛秋/棚田輝嘉/谷口幸代/田村圭司/垂水千恵/土屋聡/堤玄太/坪井秀人/鶴岡善久/出口智之/傳馬義澄/十重田裕一/冨上芳秀/外村彰/内藤寿子/中井晨/長尾建/中島佐和子/中地文/中西亮太/長野秀樹/中原豊/永渕朋枝/中村ともえ/名木橋忠大/波潟剛/二木晴美/西垣尚子/西原和海/西村将洋/信時哲郎/野村聡/野本聡/野呂芳信/橋浦洋志/濱崎由紀子/早川芳枝/林浩平/日置俊次/東順子/疋田雅昭/樋口覚/日高佳紀/平居謙/平澤信一/藤本恵/藤原龍一郎/松下博文/松村まき/馬渡憲三郎/水谷真紀/南明日香/宮内淳子/宮川健郎/宮崎真素美/村木佐和子/百瀬久/安智史/安元隆子/矢田純子/山田兼士/山田直/山田俊幸/山根知子/山根龍一/山本康治/吉田文憲/和田敦彦/和田桂子/和田康一郎/和田博文/渡邊章夫/渡邊浩史


本文編/付録編/索引編

本文編

  • 五十音順。引きやすい、調べやすい、読みやすいレイアウト。
【詩人(評論家)】
  • 詩人(評論家含む)、約1000人掲載。
  • 人名(詩人・評論家)項目は、原則、〈略歴〉〈作風〉〈詩集・雑誌〉〈代表詩鑑賞〉〈参考文献〉から構成。なお、代表的詩人には〈評価・研究史〉を加えた。
  • 詩人の人間像にせまる〈代表詩鑑賞〉約100編、総掲載詩約200編。
  • 解説は正確を期し、代表詩の出典(刊行年・月・出版社名)まで詳細に記述。
【事項(雑誌・書籍・詩用語)】
  • 事項項目(雑誌・書籍・詩用語他)約500項目。
  • 雑誌項目は、原則、〈創刊〉〈歴史〉〈特色〉〈参考文献〉、事項(詩論・用語他)項目は、原則〈語義〉〈実例〉〈参考文献〉から構成。
【コラム】
  • 読んで楽しめるコラム

付録編

  • [現代詩文庫一覧]、[アンソロジー一覧]、[全集・叢書・辞典・総覧・事典一覧]、[受賞一覧]、近現代100年の歩みが多層的にわかる、[近・現代詩年表]ほか。

索引編

  • 詳細・利便性のある、[人名索引]、[雑誌索引]、[事項索引]、[代表詩索引]ほか

本文編の項目例

詩人他

鮎川信夫/大岡信/北原白秋/島崎藤村/高村光太郎/谷川俊太郎/田村隆一/中原中也/西脇順三郎/萩原朔太郎/宮沢賢治/天沢退二郎/荒川洋治/安西冬衛/安東次男/安藤元雄/飯島耕一/石垣りん/石原吉郎/伊東静雄/伊藤比呂美/茨木のり子/伊良子清白/入沢康夫/大手拓次/小熊秀雄/長田弘/小野十三郎/金子みすゞ/金子光晴/川崎洋/蒲原有明/北川冬彦/北園克衛/北村太郎/北村透谷/清岡卓行/草野心平/黒田喜夫/黒田三郎/佐藤春夫/渋沢孝輔/新川和江/鈴木志郎康/薄田泣菫/関根弘/高橋新吉/滝口修造/立原道造/谷川雁/富岡多恵子/富永太郎/那珂太郎/中桐雅夫/永瀬清子/中野重治/中村稔/萩原恭次郎/春山行夫/平出隆/堀口大学/まど・みちお/三好達治/三好豊一郎/村野四郎/室生犀星/八木重吉/山之口貘/山村暮鳥/山本太郎/吉岡実/吉田一穂/吉野弘/吉原幸子/吉増剛造/吉本隆明/ほか多数

事項

詩と政治/詩と短歌・俳句/詩と美術/詩の音楽性/詩の構造と展開/詩の視覚性/装丁と挿絵/大東亜戦争と詩/日中戦争と詩/パロディ/比喩と象徴/プロレタリア詩/メタファー/流行歌/アイロニー/アナーキズム/イメージ/沖縄の詩史/関東の詩史/九州の詩史/近畿の詩史/近代詩と現代詩/近代の漢詩/形式主義/口語自由詩/四季派/四国の詩史/詩と病/詩と朗読/詩におけるジェンダー/シネポエム/シュールレアリスム/象徴主義/昭和の浪漫主義/新散文詩運動/新即物主義/一九五〇年代の詩/一九六〇年代の詩/一九七〇年代の詩/一九八〇年代の詩/一九九〇年代の詩/戦後詩/大正の人道主義/台湾の日本語の詩/ダダイズム/ダブルミーニング/短詩運動/中国の詩史/中部の詩史/朝鮮半島の日本語の詩/東北の詩史/日露戦争と詩/北陸の詩史/北海道の詩史/「満洲」の日本語の詩/明治の浪漫主義/アイヌの詩/アメリカ文学と日本の詩/アンソロジー/イギリス文学と日本の詩/移民と日本語の詩/漢詩と日本の詩/感情詩派/劇詩/『古今和歌集』と現代詩/サークル詩/讃美歌/散文詩/児童詩/詩とエロティシズム/詩と音楽/詩とキリスト教/詩と自然/詩と写真/詩と風俗/詩と仏教/詩と民謡/詩とメディア/詩とラジオ放送/詩の書記行為/唱歌/昭和戦前期の詩論/昭和戦前期の詩論争/昭和戦後期の詩論/昭和戦後期の詩論争/叙事詩/抒情詩/『新古今和歌集』と現代詩/新体詩/大正期の詩論/大正期の詩論争/朝鮮戦争と詩/ドイツ文学と日本の詩/童謡/南方の日本語の詩/日清戦争と詩/芭蕉と現代詩/パフォーマンス/蕪村と現代詩/フランス文学と日本の詩/文語定型詩/ベトナム戦争と詩/マチネ・ポエティク/『万葉集』と現代詩/未来派/民衆詩派/明治期の詩論/明治期の詩論争/モダニズム/ロシア文学と日本の詩/ほか多数

詩集・雑誌

亜/赤と黒/荒地/櫂/感情/コギト/四季/詩・現実/詩と詩論/新領土/銅鑼/日本詩人/明星/歴程/列島/愛誦/赤い鳥/アルス/あんかるわ/Etoile de Mer/オルフェオン/凶区/近代風景/現代詩/現代詩 ラ・メール/現代詩手帖/朱欒/詩歌/椎の木/詩学/時間/詩神/詩人/詩人会議/詩と思想/詩之家/詩法/純粋詩/白樺/白百合/新詩人/新日本詩人/スバル/青樹/聖盃/セルパン/地球/日本詩壇/日本未来派/日本浪曼派/VOU/×/パンテオン/プロレタリア詩/文芸汎論/文庫/満洲詩人/未来/民衆/ユリイカ/リアン/驢馬/ほか多数

コラム

詩集とデザイン/詩は青春の文学?/詩人の職業/「現代詩文庫」と詩/詩と桜/富士山と近現代詩/ほか