コミュニケーションと言語におけるキャラ

定価
3,300円
(本体 3,000円+税10%)
判型
A5判
ページ数
288ページ
ISBN
978-4-385-34912-1
寸法
21×14.8×1.6cm

コミュニケーションにおける人間とは、どのようなものなのか?

定延利之 著

「人間は基本的には変わらないものだ」という伝統的な人間観に、人間は昔も今も、強く縛られている。変わりたくてもなかなか変われないし、変わってしまってもそれを認めるわけにはいかない。ここに人間の不自由さがあり、コミュニケーションの難しさがある――しかし、その伝統的な人間観は実際どれほどのものなのだろうか。
さまざまな「キャラクタ論」「キャラ論」を整理・紹介しつつ、実例も豊富に、コミュニケーションにおける人間の姿を「キャラ」を切り口に広く深く明確に論じる。

今日,日本で暮らすということは,キャラクタに囲まれることを意味する。
複雑で奥深い現実の人間と比べると,それらのキャラクタたちは多かれ少なかれ単純で扁平な存在である。だが,人々が他者を,そして自分自身をも,それらのキャラクタのように単純な存在と見なしたがることは,実は珍しくない。その場合,キャラクタという概念は,人間のあり方に関わってくる。
(「まえがき」より抜粋)

特長

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【著者プロフィール】

定延利之(さだのぶ・としゆき)

京都大学大学院文学研究科教授。神戸大学名誉教授。博士(文学)。
専攻は言語学・コミュニケーション論。軽視・無視されがちな「周辺的」な現象の考察を通じて言語研究・コミュニケーション研究の前提に再検討を加えている。

単著に『認知言語論』(大修館書店,2000),『ささやく恋人,りきむレポーター 口の中の文化』(岩波書店,2005),『日本語不思議図鑑』(大修館書店,2006),『煩悩の文法 体験を語りたがる人びとの欲望が日本語の文法システムをゆさぶる話』(ちくま新書,2008,増補版が2016年に凡人社より刊行),『日本語社会 のぞきキャラくり 顔つき・カラダつき・ことばつき』(三省堂,2011),『コミュニケーションへの言語的接近』(ひつじ書房,2016),『文節の文法』(大修館書店,2019)など。編著に『日本語学と通言語的研究との対話 テンス・アスペクト・ムード研究を通して』(くろしお出版,2014年),『限界芸術「面白い話」による音声言語・オラリティの研究』(ひつじ書房,2018)など。

目次

まえがき

序章

第1節 問題意識

第2節 目的

第3節 考察対象

第4節 手法

第5節 この本の構成

第Ⅰ部 準備的考察
第1章 「キャラ」「キャラクタ」論の概観

第1節 キャラ1:外来語「キャラ(クタ)」

第1.1節 「ゆるキャラ」とは何か?
第1.2節 登場人物にとって物語は必要か?

第2節 キャラ2:伊藤(2005)のキャラ(Kyara)

第2.1節 さまざまな「拡大解釈」とその検討
第2.2節 登場人物の変化

第3節 キャラ3:状況次第で意図と関わり無く変わる人間の部分

第3.1節 「キャラ3」概念の概要
第3.2節 スタイル・人格との対比

第4節 まとめ

第Ⅱ部 日本語コミュニケーションにおけるキャラ(クタ)
第2章 伝統的な人間観の限界

第1節 前提:伝統的な人間観

第1.1節 静的な人間観
第1.2節 意図を前提とする人間観
第1.3節 伝統的な人間観で説明できること
第1.4節 伝統的な人間観の3つの変異形

第2節 伝統的な人間観の限界

第3節 意図を前提とするコミュニケーション行動観の問題

第3.1節 意図を前提とするコミュニケーション行動観(狭義)の問題
第3.2節 目的論的な発話観の問題
第3.3節 道具論的な言語観の問題

第4節 まとめと補足

第3章 伝統的な人間観の重要性

第1節 伝統的な人間観の浸透の実態

第1.1節 症状1:意図の秘匿/露出に鈍感になってしまう。
第1.2節 症状2:「狩人の知恵」と「クマの知恵」を同一視してしまう。
第1.3節 症状3:現象の説明に「カメレオンの見立て」を持ち出してしまう。
第1.4節 症状4:「機能」「働き」「役割」概念を無制限に導入してしまう。

第2節 伝統的な人間観の浸透の原因:良き市民社会の「お約束」

第3節 まとめと補足

第4章 タブーとカミングアウト

第1節 欲求の相克と共同体のカミングアウト

第2節 関節の分担

第3節 「キャラ」の誕生

第4節 まとめと補足

第5章 まとめと補足

第1節 予想される反論と再反論

第1.1節 予想される反論1:「意図のある行動はどうするのか」
第1.2節 予想される反論2:「当たり前のことではないのか」
第1.3節 予想される反論3:「代案は? さもなくば」
第1.4節 予想される反論4:「タブー違反は否定的な反応を必ずしも呼び起こさない」

第2節 他の「キャラ」論との関わり

第2.1節 伊藤(2005)の「キャラ」(Kyara)論との関わり
第2.2節 岩下(2013)の「キャラ(Kyara)人格」論との関わり
第2.3節 斎藤(2011)の「キャラ(クタ)」論との関わり
第2.4節 瀬沼(2007他)の「キャラ」論との関わり
第2.5節 ベケシュ(2018他)の「キャラ」論との関わり

第Ⅲ部 日本語におけるキャラ(クタ)
第6章 キャラに関わる2種類の行動

第1節 キャラの発動と付与

第1.1節 キャラの発動
第1.2節 キャラの付与

第2節 キャラ発動とキャラ付与に関する補足説明

第2.1節 「口をとがらせる」
第2.2節 「口をゆがめる」
第2.3節 善悪尺度との関連性如何

第7章 キャラの発動

第1節 前提

第1.1節 前提1:発話キャラの認定は発話形式の独自性にのみ基づく
第1.2節 前提2:物語内の発話は中心としない
第1.3節 前提3:ここで述べる「発話キャラ」とは「事実上のキャラ」である

第2節 先行研究

第3節 発話キャラクタの2分

第3.1節 キャラ発動の持続性
第3.2節 他言語社会での存否
第3.3節 分布の粗密
第3.4節 重なり方
第3.5節 ことばの生起環境
第3.6節 まとめ

第4節 《在来》タイプの発話キャラと「品」「格」「性」「年」

第4.1節 発話キャラクタの「品」
第4.2節 発話キャラクタの「格」
第4.3節 発話キャラクタの「性」
第4.4節 発話キャラクタの「年」
第4.5節 キャラに応じた話し方が強く求められる社会

第5節 まとめと補足

第8章 キャラの付与

第1節 前提

第1.1節 前提1:観察対象は慣習的なものに限る
第1.2節 前提2:文脈の影響は排除する

第2節 キャラ付与の3分

第2.1節 直接の付与
第2.2節 行動表現を介した付与
第2.3節 思考表現を介しておこなうキャラ付与

第3節 キャラ付与の伝統

第3.1節 直接のキャラ付与の伝統
第3.2節 行動表現を介したキャラ付与の伝統
第3.3節 思考表現を介したキャラ付与の伝統 

第4節 まとめと補足

第9章 まとめと補足
第10章 結論

参考資料

参考文献

あとがき

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