三省堂 辞書ウェブ編集部による ことばの壺
近代知の翻訳と伝播 漢語を媒介に
近代の知と学問を支えた、近代漢語の全体像を明らかにする。
- 近代日本語研究の大きなテーマのひとつである近代漢語、新漢語の創出と拡大、中国との相互の伝播など、漢語研究の第一人者である著者の長年にわたる研究の集大成としての著作。
- 明治以降の近代の知と学問を支えた、近代漢語の全体像を明らかにし、また近代漢語の中国への流布の詳細、また日中の言語交渉によってもたらされた諸問題、それらの現代中国語への影響をも明らかにする。
特長
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著者プロフィール
陳力衛(ちん・りきえい)
1959年生まれ。北京大学大学院日本語日本文学専攻修士課程修了、東京大学大学院人文科学研究科国語国文学専攻博士課程単位取得退学。博士(文学)。目白大学外国語学部教授を経て、2009年より成城大学経済学部教授。主要著書に、『和製漢語の形成と展開』(汲古書院、2001)など。
目次
序章 漢語の近代
第Ⅰ部 漢語の由来と翻訳語としての確立
第1章 漢語の抽出
第2章 唐話の学習と吸収
第3章 近代知としての『博物新編』
第4章 漢訳『万国公法』から和訳『国際法』へ
第5章 近代翻訳語の宝庫 ─英華字典
第6章 蘭学以来の漢語創出 ─「- 力」、「- 性」を中心に
第7章 明治の文体に支えられて ─漢語故事・ことわざの盛衰
第Ⅱ部 中国に伝わる新語・新概念
第1章 近代欧化文体に見られる日本的要素
第2章 「同文同種」の陥穽 ─『和文漢読法』の増補と『言海』
第3章 政治小説『雪中梅』の翻訳と新漢語の伝播
第4章 社会主義思想の中国への伝播 ─『共産党宣言』の翻訳を通して
第5章 波寄せてくる日本新名詞にいかに対処すべきか─近代中国語辞書の対応
第6章 英和辞書による中国語への語彙浸透
第7章 現代中国語にどのくらいの日本借用語があるのか
第Ⅲ部 語史から概念史へ
第1章 近代漢語の出自と語史記述
第2章 漢語の出典確認の限界 ─『四庫全書』を例に
第3章 近代漢語の履歴
第4章 日本語の「気管支炎」から中国語の「支気管炎」へ
第5章 「民主」と「共和」の意味補完
第6章 「主義」の流布と中国的受容
第7章 「優勝劣敗、適者生存」 ─進化論の伝播に寄与する和製漢語
第8章 「金字塔」の由来とそのイメージ形成